報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「バスの旅」 3

2017-08-18 12:22:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日03:20.天候:晴 福島県本宮市 東北自動車道下り・安達太良(あだたら)サービスエリア]

 バスが2回目の休憩箇所に到着する。

 敷島:「んむ……?」

 それまでは寝ていたのだが、やはり停車すると目が覚めてしまうのは高速バス旅に慣れた人間のサガか。

 敷島:(しょうがねぇ)

 敷島はビールの空き缶を捨てに行くがてら、バスを降りることにした。

 敷島:「何か涼しいな……」
 エミリー:「現在の気温21.6度です」
 敷島:「あー、そりゃ涼しいわ〜……って!」

 敷島が後ろを振り向くとエミリーがいた。

 敷島:「今度はお前か」
 エミリー:「今度……は?」
 敷島:「羽生でも俺は降りたんだよ。そしたら付いて来たのはミクだった」
 エミリー:「ミクが?」
 敷島:「俺への監視は厳しいな」
 エミリー:「それはそうです。その体、社長お1人の物だけではないということです」
 敷島:「なるほど。いや、俺はちょっと缶ビール捨てに降りたんだ」
 エミリー:「いつの間に……」
 敷島:「羽生で降りた時。寝酒代わりにな。そしたら、2回目のここで起きたってわけ。それまでは爆睡していたつもりなんだが……」
 エミリー:「器用でいらっしゃいますね」
 敷島:「あー?……あー、まあそういうことでもあるか。まあいいや。何かいつもより涼しいから、トイレ行きたくなってきた。ちょっと行ってくる」
 エミリー:「行ってらっしゃい。ついでに何か買っておきますか?」
 敷島:「……水でいいよ」
 エミリー:「かしこまりました」

 エミリーは自動販売機でペットボトル入りのミネラルウォーターを購入した。
 それを手に、トイレの入口で待つ。

 エミリー:「…………」
 敷島:「お待たせ」
 エミリー:「お帰りなさいませ。水を購入しておきました」
 敷島:「そうなのか。いや、水道の水でいいと思ったんだが、まあいいや。ありがとう」
 エミリー:「バスに戻りますか?」
 敷島:「ああ。他にやることが……」
 エミリー:「!!!」

 エミリーは両目をギラリと光らせた。
 そして敷島の前に立つと、すぐにバッと振り返る。
 建物の陰から1人の男が飛び出して、エミリーに鉄パイプを振り下ろした。
 エミリーはそれをあえて左手で受け止め、体を低くして右手で男の腹部を軽くパンチ。
 そして受け止めた左手から電気を流して痺れさせた後、右手で顔面に拳を……入れる前に寸止めした。

 エミリー:「何のマネだ?……用途:執事、製造番号4番、ロイ!」
 ロイ:「いやー、申し訳無い。ちょっとドッキリを……」
 村上:「おー!相変わらず、鬼のように強いマルチタイプじゃのぅ……」
 敷島:「村上教授!……何やってるんですか、こんな所で?」
 村上:「ワシも仙台に行く所ぢゃ(^_^)v」

 村上大二郎は駐車場に止まっているキャンピングカーを指さした。
 最近はお手軽価格の軽ワゴンタイプも流行っているそうだが、村上のはマイクロバスを改造した本格的なものだ。
 家族と一緒に乗っているのだろうか。

 敷島:「……何しに?」
 村上:「息子夫婦と愛しのマイプリティ……もとい、孫娘に会いに行くのとボーカロイドの活躍ぶりを見に行くところだ」

 村上はボーカロイド達のライブのチケットを取り出した。

 村上:「最近はチケットを取るのも難しくなるくらい活躍しているそうじゃな」
 敷島:「おかげさまで。平賀先生経由で取りましたね?」
 村上:「おー、さすが分かっておるの〜」
 敷島:「平賀先生の大学でも、ボーカロイドのファンクラブがあるそうなんで……」
 村上:「凄い人気ぶりじゃの」
 エミリー:「社長。そろそろバスの出発する時間ですので……」
 敷島:「おっ、そうだ」
 村上:「ワシの車に乗り換えんか?」
 敷島:「うちのボーカロイドのナンバー1とスターを輸送中なんでね、またの機会にさせて頂きますよ」
 村上:「それは残念だ」

 敷島とエミリーはバスに戻った。

 敷島:「全く。あの爺さんも無茶しやがる。ヘタにロイをぶっ壊したらどうするんだよ。なあ?エミリー」
 エミリー:「そうですね。私は責任を負いかねます」
 敷島:「あー、それでいいよ」

 エミリーは敷島がプライバシーカーテンを閉めるのを確認してから、自分も充電コンセントを繋いだ。

 エミリー:(それにしても……)

 バスは安達太良サービスエリアを出発した。
 今後、何事も無ければ仙台駅西口まで直行することになる。

 エミリー:(ロイのヤツ、戦い方がキールに似ていた……。もしかしてロイは、キールのデータを受け継いでいる?まさか……)

 そして、キャンピングカーに戻った村上とロイ。

 村上:「ただいまじゃ」
 助手:「先生、あのマルチタイプとロイを戦わせるなんて無茶させないでくださいよ」

 運転席に座っている若い助手が文句を言った。

 助手:「いくらマルチタイプの生の戦闘データが欲しいとはいえ……」
 村上:「心配要らん。シンディなら壊してたかもしれんが、エミリーなら手加減すると思った。ワシの予想大当たりぢゃ(^_^)v」

 ロイがキャンピングカーのキッチンで入れたコーヒーを出す。

 ロイ:「でも、よろしいんですか?私のデータ更新の際、あのマルチタイプ5号機のキールのものを一部インストールしたことがあの御方にバレたら……私が壊されるだけでは済まないかもしれませんよ?」
 村上:「十条さんは道を誤った。マルチタイプの開発者じゃったからあれに拘ったのは理解できるが、しかしやはりあれはじゃじゃ馬じゃ。じゃじゃ馬を個人で飼い慣らせることができると明らかに判断できるのは、この日本でただ2人」
 助手:「敷島エージェンシーの敷島社長と、東北工科大学の平賀先生だけですか」
 村上:「いや、それは違うぞ」
 助手:「は?」
 村上:「敷島社長は合っているが、少なくとも平賀君は飼い慣らせるほどの力はあるまい。南里博士が見込んだのはマルチタイプを飼い慣らせる力ではなく、それを作る力じゃ。作る力を持ち合わせているからといって、飼い慣らせる力があるとは限らんよ」
 助手:「なるほど。確かに特撮モノの合体ロボだって、操縦しているのはそれの製造者ではなく、専属のパイロットですもんね」
 村上:「うむ。つまりはそういうことじゃ。平賀君の動向を見るに、ついにはエミリーをも手放しかねん状態になってる。それほど手に余る存在だということなんじゃ」
 ロイ:「もし敷島社長が、合体ロボが出てくる特撮番組でラスボスを張る悪の組織のリーダーだったとしたら大変なことになりますね」
 村上:「あのKR団をして傘下組織扱いになるじゃろうな」

 村上はズズズとロイに入れてもらったコーヒーを入れた。

 村上:「ワシは執事ロイドでも作って売る方が合っとるよ」
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“Gynoid Multitype Sisters” 「バスの旅」 2

2017-08-17 20:27:31 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日01:00.天候:晴 東北自動車道下り・羽生PA]

 敷島達を乗せた東北急行バス“ニュースター”号が東北自動車道最南端のパーキングエリアに入る。
 ここは1つ手前の、東北自動車道で最南端のサービスエリアである蓮田と比べても規模が大きい。
 どうしても蓮田サービスエリアが混雑する傾向があるので、その緩和の為というのもあるらしい。
 おかげでここは週末の行楽時期であっても、駐車場が満車になることはあまり無いそうだ。
 その為、混雑を嫌う高速バスの休憩箇所としてもよく利用されている。
 バスが大型車用駐車スペースに止まる。
 隣には、キャブ全体にカーテンを引いて仮眠を取っている大型トラックが止まっていた。

 敷島:「ん……?」

 敷島はバスが停車したことで、却って起きてしまった。

 敷島:(休憩か……)

 車内にトイレは付いているのだが、あえて降りてみようと思った敷島だった。
 尚、これがJRバス東北の夜行便だと乗客は降りられない。
 運転席と客室の間にはカーテンが引かれていたが、それが少し開けられていた。

 敷島:「夜風が気持ちいい……」

 敷島は真夜中のサービスエリアで降りた。

 初音ミク:「そうですね」
 敷島:「おわっ!?」

 いつの間にか後ろにミクがいた。

 敷島:「びっくりした」
 ミク:「驚かせてごめんなさい」
 敷島:「いや、いいよ」
 ミク:「お手洗いですか?」
 敷島:「ああ。気分転換がてらな。……あっ、休憩何分だっけ?」
 ミク:「15分だそうです。1時15分に出発するそうです」
 敷島:「そうか。悪いな」

 エミリーまで降りてきやしないかと思ったが、降りて来たのはミクだけだった。

 敷島:「他の2人は充電中なのに、ミクはもういいのか?」
 ミク:「はい。わたしの充電は終わりました」
 敷島:「ふーん……。もうKR団も滅んだことだし、俺の護衛はしなくてもいいんだぞ」
 ミク:「いえ、それはエミリーさんのお仕事ですから」
 敷島:「それもそうか。ちょっと俺はトイレに行ってくる」
 ミク:「行ってらっしゃい」

 駐車場が広ければトイレも広い羽生パーキングエリア。
 ずらっと小便器が並んだトイレが満員になることは無さそうだ。
 トイレから外に出ると……。

 敷島:「あれ?バスに戻って無かったのか?」
 ミク:「やっぱり、エミリーさんの代わりに護衛です。もっとも、わたしは回避しかできませんけど」
 敷島:「回避か。いや、いいんだよ。覚えてるか?俺とお前が会った頃。フィールドテストで、抜き打ち訓練があったよな」
 ミク:「覚えています。エミリーさんが『追跡者』になったんですよね」

 南里がマッドサイエンティストに再び目覚め、ミクを兵器に使おうとした。
 すぐにミクを戻すよう敷島に伝えたが、ミクのボーカロイドとしての機能の素晴らしさに気づいた敷島はミクの兵器使用を拒否。
 しかし南里はエミリーを派遣して、ミクの捕獲に当たらせた。
 もちろんこれは、南里と平賀が仕組んだ抜き打ち訓練であった。
 それとは知らずに敷島は仙台から東京、そして千葉へと逃亡し、千葉から再び仙台に戻る夜行バスに乗り込んだ。
 成田空港交通“ポーラスター”号である。
 エミリーの交通情報の中にバスが無かった為(もちろんウソ)、高速バスで舞い戻るという裏をかいた作戦であった。

 敷島:「今ならエミリーを撒けるか?」
 ミク:「エミリーさんは撒けても、後でシンディさんに捕まって酷く怒られそうです」
 敷島:「シンディの方が高性能だって?」
 ミク:「いえ、違います。シンディさんから逃げようと思えば逃げられると思いますが、エミリーさんに捕まると思います」
 敷島:「なるほど。あいつら姉妹だけあって、連携プレーすることも……あるか?」
 ミク:「連係プレーさせたら強いと思いますよ。今は社長達の都合で、単独行動が多いですが……」
 敷島:「お前もよく見てるな」

 敷島は売店で缶ビールを買い求めた。

 ミク:「飲まれるんですか?」
 敷島:「寝酒だよ、寝酒。量は少ない」

 敷島がアリスと飲む時は500mlの缶が多いのだが、自分1人で飲む時は350mlらしい。

 ミク:「わたしが代わりに買っといても良かったんですよ」
 敷島:「ミクだと見た目年齢でバレて買えないよ」
 ミク:「あ……」

 ミクの設定年齢は16歳。メーカー公式である。

 ミク:「ごめんなさい。お役に立てなくて……」
 敷島:「いいよいいよ。ビールくらい自分で買うよ」
 店員:「お車は運転されますか?」
 敷島:「いえ、バスの乗客です」
 店員:「ありがとうございました」

 売店を出てバスに向かう。

 敷島:「そういえばバスに乗る前、アイスクリームなんか買ってきてくれたよな」
 ミク:「はい。あのバスは途中休憩が無かったので」

 ポーラスター号もまたトイレ付きということもあってか、乗客が降りられる途中休憩は無い。

 敷島:「俺はこうして途中休憩がある方がいいな」

 そうしてバスに戻る。
 階段の段数が多いのは、スーパーハイデッカー(日野自動車・セレガR)だからだろう。
 先に出発した某・元ツアーバスのヒュンダイ・ユニバースと比べても車高が高い。

 ミク:「それでは、たかお社長」
 敷島:「ああ。一応、充電コードは繋いでおけよ」

 敷島は自分の席に戻ると、少しリクライニングを戻してテーブルを出した。
 プライバシーカーテンが引いてあるだが、それが無い真ん中のB席。
 エミリーは目を閉じてはいたが、やはり両耳の穴から機器のランプが漏れていた。
 それが交互に点滅している。
 もちろん故障ではなく、スリープ状態であっても稼働している機器があることの表示ランプなのだが。
 その前に座るMEIKOも、爪が淡く赤く光っている。
 どうしてもメカバレしてしまう要素が残るガイノイド達である。
 もっとも、こんな真っ暗な中を移動させるということを想定していないということなのだが。

 敷島:(まあ、いいか)

 敷島がプシュッと缶ビールの蓋を開けるのと、運転手が人数確認に来るのは同時だった。
 そしてそれが終わると、バスは再び暗闇の下り本線へと躍り出た。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「バスの旅」

2017-08-16 19:34:01 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月10日22:30.天候:曇 東京都江東区東雲 都営バス深川車庫前バス停→都営バス東16系統]

 さっきまで雨が降っていた中、敷島とエミリーはバス停でバスを待っていた。

 敷島:「やっと雨が止んで良かったな」
 エミリー:「ええ。これから夜行バスに乗ろうという時に、雨の中では大変ですから」
 敷島:「そうだな」
 エミリー:「それにしても珍しいですね。社長が移動に夜行バスを使うなんて」
 敷島:「何言ってるんだ。昔はよくそれで移動してたじゃないか。懐かしいなぁ。最初はミクを連れて乗ったし、あとはお前と一緒に乗ったこともあっただろう?」
 エミリー:「そうですね」
 敷島:「北陸自動車道でバスを襲って来たバージョン4.0と戦って、お前の圧勝だ」

 まだアリスが敷島達の敵として、その姿を露わにする前の話である。
 敷島達を養祖父を殺し、シンディも壊した仇敵として憎悪の対象にしていた。
 バージョン4.0を遠隔操作し、敷島達を散発的に襲撃させていた。

 エミリー:「圧勝という程のものではないんですけどね」

 話をしているうちにバスがやってきた。
 東16系統の東京駅行きとしては最終便である。
 これ以降の便は深夜14系統となり、運賃が倍になる深夜バスとなる。

 敷島:「KR団との戦いが終わった今、少しは思い出に浸らせてくれよ」
 エミリー:「思い出?」
 敷島:「東京決戦の……」

 敷島達は前扉から車内に入った。
 上りの最終便ということもあってか、車内は空いていた。
 もちろん、途中から乗客が多くなるというオチだろう。
 車椅子の乗客が乗り込んで来たらそのスペースとなる折り畳み式の座席に腰掛ける。
 大きな荷物はエミリーが持っており、その位置なら荷物が置きやすい。
 外は蒸し暑かったが、車内は冷房が効いていて涼しかった。
 エミリーも進んでその風に当たろうとする。
 如何にマルチタイプとて、やはりそこは精密機械。
 熱は油断大敵なのである。

〔発車します。お掴まりください〕

 発車の時間になり、前扉のグライドスライドドアが閉まってバスが発車した。
 それにしてもこのドア、引き戸と開き戸のいいとこ取りをしたものだが、最初に発明した人は凄いと思う。
 上から見た図が折り戸に似ていなくもないので、恐らく折り戸をヒントにしたのではないかと思うが……。

〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは豊洲駅前、月島駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は東雲一丁目、東雲一丁目。……〕

 因みにロイドは人間側の指示が無いと傘を差さない。
 かといってレインコートを着るわけでもなく、雨に濡れるままなのである。
 これについてエミリーは、
「護衛が自分の為に傘を差すと、いざという時に動きにくくなるからです」
 と答え、初音ミクは、
「わたし達も精密機械ですから、濡れて冷えた方がコンディションがいいんです」
 と、答えていた。
 シンディなんかはもっとざっくばらんで、
「“鉄腕アトム”ってヤツ、平気で雨の中でも飛んでるんでしょう?心配無いって」
 というもの。
 しかし、片足の脛の収納スペースには折り畳み傘が入っていて、いざという時そこから傘を出して渡すのである。
 シンディは大型ナイフを入れていたが、東京決戦で敗北した後は姉を見習って傘を入れている。

[同日22:35.天候:曇 豊洲駅前バスプール]

 バスは順調に運行を続け、豊洲駅前のバスプールに進入した。
 敷島エージェンシーの最寄りでもある。

〔「豊洲駅前です。ご乗車ありがとうございました」〕

 乗降客がいる為、前扉と中扉の両方が開く。
 かつての都営バスは中扉もグライドスライドドアという車両があったが、今は見受けられず、引き戸タイプになっている。
 で、そこからの乗客の中には……。

 初音ミク:「たかお社長、お疲れさまです」
 敷島:「よっ、お疲れさん」

 ミクが乗って来た。
 もちろん今は有名アイドルになっている為、変装している。
 シンボルでもあるツインテールを下ろし、帽子を被って眼鏡を掛ければ、まあ分からなくはなる。
 頭に着けていた、これまたよく目立つ赤に近いピンク色の髪留めについては両腕に嵌めている。

〔発車します。お掴まりください〕

 ミクは着席せず、エミリーもまた少し混んで来たので席を立った。

 初音ミク:「バスで行くのはわたし達だけですか?」
 敷島:「後でMEIKOが東京駅からやってくるよ。相変わらず、ホテルのディナーショーに呼ばれることが多い」

〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは月島駅前、リバーシティ21経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は豊洲二丁目、豊洲二丁目。……〕

[同日23:00.天候:曇 JR東京駅八重洲南口]

 終点の東京駅八重洲口には、だいたいダイヤ通りに着けたものと思われる。
 ここはJRバスなどの高速バスが発車するターミナルの一部でもあり、そこから乗るのであればとても便利だ。
 しかし敷島達が乗ろうとするバスは、ここからではない。
 ここに来たのには、理由があった。

 MEIKO:「社長!……それと、エミリーとミク!」
 社長:「よお、お疲れさん」
 MEIKO:「どうしたの?直接乗り場で待ち合わせじゃなかった?」
 社長:「どうせ都営バスがそこに着くんだし、だったらここで合流して乗り場まで一緒に行こうと思ったんだ」
 MEIKO:「へえ……」
 社長:「まあ、ちょっとまだ時間があるから、少し時間調整するけどな」

 敷島はニヤッと笑った。

[同日23:30〜23:40.天候:曇 東京駅八重洲通り→東北急行バス“ニュースター”号車内]

 
(写真拝借:“バスターミナルなブログ”様「東北急行バス スイート号」より。尚、写真は“スイート”号です)

 バスの乗り場に向かうと、1台のバスが停車していた。

 敷島:「久しぶりに夜行バスに乗るなぁ……。こっちの方が旅って感じだ」
 エミリー:「そうですね」

 エミリーは大の男でも両手で持つようなスーツケースをバスの荷物室に預けた。
 両手で持っていたのは、別にエミリーにとって重いからではなく、バランスを支える為である。
 乗車券を手に車内に乗り込む。
 高速バスでは珍しいスーパーハイデッカーであるが、窓のカーテンは全部引かれている。
 独立3列シートが並ぶが、席が確保されていたのは敷島が前から3列目のトイレの前、エミリーがその隣、ミクが敷島の前、MEIKOがミクの隣という感じであった。

 MEIKO:「お、充電コンセントある。社長、これって充電していいの?」
 敷島:「ああ。交流100V用のコンセント使えよ」
 MEIKO:「もちろん」
 ミク:「わたしも充電します」
 MEIKO:「エミリーはいいの?何か、あんたが充電したらバスのバッテリー上がりそうな気がするけど……」
 エミリー:「私は家を出る前に、バッテリーを交換してきたから大丈夫だ」

 これだけなら、他の乗客達はスマホやタブレットなどの充電の話と思うだろう。
 もちろん実際はそうではなく、ボカロ自身のバッテリーのことである。
 彼女らはダンスも行う為、軽量化の観点からバッテリーを今現在は1つしか搭載していない。
 これは正・副・予備の3つのバッテリーを搭載しているマルチタイプとは大きな違いだ。
 もちろん、緊急の為に交換用のバッテリーは持ち歩いている。

 敷島:「じゃ、後ろ倒しまーす」
 MEIKO:「社長の後ろ誰もいないって」
 敷島:「おっと!俺としたことがとんだボケを……。真ん中にトイレって、ちょっと違和感あるよなぁ……」

 スーパーハイデッカーという車体の構造のせいだろうか。

 MEIKO:「じゃ、私も倒すわね」
 エミリー:「ちょっと待て。お前は倒す必要無いだろう」
 MEIKO:「ちっ……」
 敷島:「別にいいだろう、エミリー。カタいこと言わなくても。ていうか、お前が前に座っていた方がいいんじゃないのか?」
 エミリー:「いえ。私はあくまでも、社長の護衛が第一ですので」
 MEIKO:「衝突事故くらい、私達は平気だからね。バージョン達が襲って来た時くらいは助けてよ」
 エミリー:「歌でも歌えば回避できるのではないか?」
 敷島:「バージョンが出てくる度に歌を歌ってたんじゃキリが無いだろ」

 夏休みということもあってか、バスは満席状態で出発した。

 敷島:「毛布もあるし、プライバシーカーテンもある。消灯したら、先に寝かせてもらうよ」
 エミリー:「はい」
 敷島:「ていうかお前達も、カーテン閉めておけよ。電源ランプ」
 ミク:「ああ……」
 MEIKO:「確かに」

 明るい所では分からないが、暗い所だと彼女達の目などに仕掛けられた電源ランプなどが淡く光って見えるので、そこでメカバレしてしまうからである。
 
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“Gynoid Multitype Sisters” 「イベント前夜の魔の嵐 〜さいたま編〜」

2017-08-15 20:12:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月9日20:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島は帰宅後、夕食を取っていた。

 アリス:「今日はこのまま帰って来たのね。向こうのマンションに帰るかと思ったわ」
 敷島:「お前の言う通り、KR団も崩壊した今、向こうのマンションにいてもしょうがないって感じがしてさ。マンスリーマンションだから、今月一杯で引き払うよ」
 アリス:「ということは……」
 敷島:「ここから電車通勤にするよ。もっとも、井辺君からは役員車にしたらどうかって言われたんだけど、まだそんな立場じゃないし」
 エミリー:「いえ、十分その立場だと思われます」

 因みに、この日の会社泊まり(ボーカロイド護衛)の任に就いているのはシンディ。
 KR団が崩壊した今でも、ボーカロイドの価値を狙う輩の警戒は引き続き行っている。
 エミリーは敷島とアリスにビールを注いだ。
 ここでは護衛兼メイドである。
 本物のメイドロイドである二海(ふたみ)は、どちらかというとナースメイド(乳母)の役割が大きい。
 もちろんマルチタイプは、メイドの仕事全てこなせるハウスキーパーなのだが。
 因みにハウスキーパーは全てのメイドを統括する家政婦長のことであるが、自身はメイドではないことに留意する必要がある。
 “アルプスの少女ハイジ”に出てくるクララの家のロッテンマイヤーがその例である。
 つまり、エミリーとシンディの立場はロッテンマイヤーと同等なのである。
 とはいえ、そこはマルチタイプ。
 主人の求めに応じて、そこは臨機応変に対応できる。

 敷島:「いきなりそんな成金趣味したくないからなぁ……。大日本電機時代は大宮から京浜東北線に乗って、東京駅まで50分掛けて通勤したもんだ。因みにのその時の車両、まだ209系だったぞ」
 アリス:「そんなマニアックな話されても、読者の大半は付いて行けないから」

 今はE233系1000番台で統一されている京浜東北線。
 209系とはその一世代前の車両、6ドア車が連結されていた頃の電車である。

 敷島:「明日の夜、そのまま仙台入りするよ」
 アリス:「本当に3連休は休みが無いのね」
 敷島:「イベンターが連休に休んじゃイカンよ。なあ、トニー?」
 トニー:「パーパ。えみりぃ、だっこだっこ」
 エミリー:「はい、抱っこでございますね」

 エミリーは敷島とアリスの長男である幼子トニーを抱き抱えた。

 トニー:「むにむに♪むにゅむにゅ♪」

 トニーはエミリーの巨乳(93センチ)を小さな両手で持ち上げる仕草をした。

 エミリー:「お父様に似て、お目利き奇特にございますね」
 敷島:「何で俺なんだよ?」
 アリス:「いや、100パーあんた似だと思う」
 敷島:「俺はあんなこと教えてねーぞ」

 エミリーはピーンと来た。

 エミリー:(御夫婦の夜の営業の際、確か敷島さんがアリス博士のオッパイの重さを手で測っていたような……?)
 アリス:「アンタ、同じことしてたじゃない」
 敷島:「それとこれとは関係無いって」
 エミリー:「関係、大ありでございます」
 アリス:「ほらぁ!」
 敷島:「エミリー、そこは俺の味方してくれよ。俺がマスターなんだろ?」
 エミリー:「このエミリー・ファースト、嘘をつく能力は持ち合わせてございません」
 敷島:「くそ……」
 トニー:「ふたみ、おっぱいおっぱい」
 二海:「はい、少々お待ちください」
 敷島:「それにしても……」

 敷島はビールの入ったグラスを空けた。

 敷島:「マルチタイプにしろメイドロイドにしろ、どうしてこいつらのオッパイは皆揃ってデカいんだ?」
 アリス:「メイドロイドの場合は平賀教授の趣味でしょ?」
 敷島:「平賀先生、貧乳の赤月……もとい、平賀奈津子先生と結婚してからに……」

 当初、ボーカロイド達の間では敷島と奈津子が結婚するものとばかり思われていた。
 エミリーもその確率を高めに算出していた。
 だが、蓋を開けてみたらどんでん返しが待っていた。

 敷島:「お前らは?南里所長から聞いてないんだ」
 エミリー:「私達のモデルになった女性が巨乳だったからと聞いています」
 敷島:「そういうことか。皆してスケベ野郎だな」
 アリス:「アンタも人の事言えないでしょ」

 南里志郎、十条伝助、ウィリアム・フォレスト。
 トリオ・ザ・マッドサイエンティストだのマッドサイエンティスト版スリーアミーゴスだの呼ばれた3人組。
 そんな3人組の心を掴んで離さなかった女性研究者がいた。
 南里はエミリーを、ウィリアムはシンディをそれぞれ彼女に似せて設計したという。
 同型の姉妹機とはいえ、双子のようにそっくりなのはそこに理由がある。
 ただ、さすがに製作費用を出した出資元(旧ソ連政府)は見分けを付けるように注文を付け、髪の色と髪型、瞳の色を変えることで対応した。
 エミリーが緑眼である。

[1時間後]

 アリス:「だーかーらぁ!私は執事は初老派なの!ロイとかキールみたいなのは論外ッ!」
 敷島:「いやいやいや!昨今の鬼畜系美形執事には、なかなかの人気があるもんだ!これは売れるぞ!!」
 二海:「お2人とも盛り上がってますね、エミリー様」
 エミリー:「酒の力とはいえ夫婦円満だ」

 エミリーは大きく頷いた。

 エミリー:(この勢いでお2人目を作って頂ければ、私とシンディの相続先が……)

 うんうんと頷くエミリー。

 アリス:「おい、エミリー!……ヒック」
 エミリー:「な、何でしょう?」
 アリス:「ブハァー……!」(酒臭い息を吐くアリス)
 エミリー:「あの……?」
 アリス:「マルチタイプが勝手にアタシら未来予想図描くなぁーっ!」
 エミリー:「よ、読まれてる?!」
 アリス:「だいたい、あんたのそのメイド服はなに?あんたメイドなめてんの?髪は結ってキャップの中に入れてくれよフレンチはもうお腹一杯だよそれもうコスプレ!」
 エミリー:「あ、アリス博士!?それ以上の飲酒はお体に障りますので……」
 敷島:「てか、エミリーのその服、メイド服だったのか?」
 エミリー:「いえ、そういうつもりでは……」

 シンディとは色違いである。
 シンディがもっと青っぽい色合いなのに対し、エミリーは黒に近い紺色である。
 タートルネックにノースリーブの上半身に、下はスリットの深いロングスカートである。
 だがこの上に、メイドが着けているあのフリル付きの白エプロンを着けたらどうなるか。

 アリス:「おい、タカオぉ!せっかくこれからレベル高いメイド談義しよってんだからトークしろよ、ああ!?」
 敷島:「お前、そんな悪酔いするタイプだったっけ?」

 敷島はアリスが飲んでいるビールの瓶を見た。

 敷島:「なにこれ?輸入ビール?……ん?アメリカ合衆国ニューヨーク産“サブウェイアタック”?地下鉄特攻?……アルコール50パーって!?ビールじゃねーだろ、これ!?どう見ても!」
 アリス:「あっぱれジャパン♪春夏秋冬〜♪四季の〜色♪染めあ〜げて♪ヒャッハー!空は日本晴れ〜♪」
 敷島:「うわっ!?いきなり某有名パチ台確変テーマソング歌い出した!?アリス、しっかりしろ!」
 アリス:「めでためーでたーの♪祭りの夜♪キミと2人きり〜♪ヒャッハー!」
 敷島:「今度は別バージョンだぞ!?お前、俺に浮気するなっつっといて、自分はパチか!」
 アリス:「めでた♪め〜でた〜の♪……ヒック」

 完全に酔い潰れたアリスだった。

 エミリー:「……奥様をベッドに連れて行きます」
 敷島:「よろしく頼む。俺も別の意味で頭痛くなってきた」

 尚、アリスは後に、今回のことは敷島の自主的な単身赴任が終了するという嬉しさからついつい痛飲してしまったと述べている。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「警視庁からの帰還」

2017-08-14 20:18:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月5日17:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 井辺:「……はあ、そうですか。いえ、そういうことでしたらしょうがないです。……ええ。私は事務処理がありますので、もう少し残っています。……いえ、とんでもない。それでは失礼します」

 井辺は事務室の電話を切った。

 鏡音リン:「IP君!なになに?社長から?」
 井辺:「はい。実は本社の帰り道、警察に……」
 リン:「ええっ!?社長が警察に捕まった!?」
 井辺:「いえ、そういうことでは……」
 鏡音レン:「社長のことだから、きっと過剰防衛か何かでしょう。ど、どうしよう……」
 井辺:「いえ、ですから……」
 MEIKO:「そんなもの、シンディに頼めば簡単に牢獄破りさせてくれるわよ」
 KAITO:「いや、ダメだろう。シンディは2度と人を殺めないという不殺(ころさず)の誓いが……」
 巡音ルカ:「エミリーも一緒なんでしょ?そう簡単に捕まるとは思えないけど……」
 井辺:「あ、いや、あの、ですから皆さん……」
 初音ミク:「わたしの歌でバージョンの皆さんに助けを求めれば……」
 リン:「おおっ!その手があった!汚いことは全部バージョン達に任せちゃおうYo!」
 MEIKO:「あんたも腹黒くなっちゃったねぃ……。いい?あんたは敷島エージェンシーのJC担当なんだから、もっと心清く……」
 井辺:「あの、ちょっと聞いてもらえますか?」
 リン:「なに!?IP君でいい作戦立てたの?」
 レン:「分かった!萌に脱獄の手引きをしてもらうんですね!さすがです!」
 ルカ:「もっと現実的なことを考えなさいよ。四季グループの顧問弁護士を立ててくれたのでしょう」
 井辺:「社長はたまたま電車内で鷲田警視達に……」
 リン:「捕まったの!?」
 井辺:「いえ、ですから、北海道決戦の時の話を聞きたいということで、警視庁に寄ったそうです。少し話が長引いたので、今から帰りになるとのことです」
 MEIKO:「何だ、逮捕じゃなかったのね」
 井辺:「違いますよ。あくまで、警察への捜査協力です」
 KAITO:「ですよね。社長なら当然だと思います」
 MEIKO:「だいたい、リンが早とちりするからよ。これ、エミリーが聞いたらゲンコツものだよ」
 リン:「ぅあっと!?」
 井辺:「エミリーさんには内密にしておきますから、ご安心ください」

 だが……。

 シンディ:「姉さんの代わりにゲンコーツ!」

 ゴッ!

 リン:「いたっ!(>_<)」
 井辺:「シンディさん?どうしてここへ?」
 シンディ:「姉さんと交替に来ただけよ。今日は土曜日でしょう?」
 井辺:「そうでした」
 リン:「なになに?土曜日がどうしたの?」
 レン:「世の中何かと物騒だから、ボク達を守ってくれる誰かを置くことになったんだって」
 井辺:「敷島家の守りはシンディさん、敷島エージェンシーの守りはエミリーさんということです」
 ルカ:「お気持ちはありがたいですけど、KR団も完全崩壊した今、今さらじゃないですか?」

 表の総帥であるエリオットは井辺達との戦いにより自滅し、死亡した。
 その後から北海道までの戦いは、エリオットとはまた違った派閥による残党との戦いだったわけだ。
 KR団も一枚岩ではなかったということ。

 井辺:「確かに今さら的な所はあります。しかし、社長の見立ててではKR団ほどとまでは行かなくても、あなた達を狙う犯罪組織が現れる確率は高いとのこと。あなた達の価値は、もはや高級車1台、2台がミニカーに見えてしまうほどです。それを守る為には、マルチタイプの力が必要とのことです」
 リン:「だったらアルるんは?」
 井辺:「アルエットさんは、特に戦闘能力を重視して造られたタイプではないので……」

 どちらかというと前期型のシンディに近いタイプ。
 自らは手を汚さず、配下のロボット軍団を操って総攻撃を仕掛けるタイプだ。
 もっとも、自分1人の身なら守れる程度の力は持っているが。
 誰かを守りながら戦う術は持ち合わせていない。
 前期型シンディの場合、自分1人なら守れる力を悪用して暗殺を行っていたわけである。
 現行の後期型はエミリーの能力に合わせてカスタマイズされている。

[同日18:00.天候:晴 敷島エージェンシー]

 敷島:「あー、えらい目に遭った」
 井辺:「お帰りなさい。お疲れさまです。本社の方は?」
 敷島:「ああ。そっちは問題無い。叔父さん……俊介社長からは、俺達の自由にやっていいということだ」
 井辺:「社長には本社から細かい指示を与えるより、そちらの方が良い収益を与えてくれるという判断ですね」
 敷島:「まあ、そういうことになるのかな」
 井辺:「警察の方は?」
 敷島:「俺じゃなくて、エミリーの方に用事があったみたいだ」
 井辺:「は?」
 敷島:「最後までマザーブレインの相手をしていたのはエミリー。だから、その時の様子を根掘り葉掘り聞かれたよ」
 井辺:「しかし、当のマザーブレインの頭部をエミリーさんが確保して警察に引き渡したはずでは?メモリーが残っていなかったというのでしょうか?」
 敷島:「そんなこと俺は知らねーよ。今も昔も、お役人の考えることなんざ、俺達民間人には計り知れないってもんだ」
 井辺:「取りあえず、その辺の聴取は終わったわけですね」
 敷島:「一応な」
 エミリー:「マザーはメモリーを捏造していたようです」
 井辺:「捏造?」
 エミリー:「はい。人間は『妄想』と言いますか?真実のメモリーは消去こそされませんでしたが、出鱈目なメモリーも数多く入っていたそうです。その為、マザーに記憶された犯罪組織の本部とされる場所を警察が行ってみたら幼稚園だったということが多々あったそうです。冤罪による誤認逮捕が最近増えているのもそのせいだそうで」
 敷島:「それで、そもそもエミリーとの出会い自体が本当かどうかから調べるってさ。大変なことだ」
 井辺:「エミリーさんもメモリーを捏造できるのですか?」
 敷島:「いや、少ない情報から色々とその先を考えることはできるが、妄想はできんよ。さすがにそれは余計な機能だ。そこはアリスにも平賀先生にも確認した。だからエミリーのメモリーについては、信用していいとは言っておいたんだが……」
 井辺:「記憶(メモリー)を捏造できるなんて、妄想癖の人間みたいですね」
 敷島:「ああ。まるでどこかの河童さんだよ。人間により近づくのは大いに結構だが、そんな所まで似せる必要は無いさ」
 井辺:「そうですね。私もそう思います」
コメント (1)
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