報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「夏のボカロライブ」 3

2017-08-22 19:30:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日13:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 セキスイハイムスーパーアリーナは命名権導入を機に付けられた名前で、正式名称は宮城県総合運動公園総合体育館という。
 東日本大震災発生後しばらくの間、メインアリーナは遺体安置所として使用され、サブアリーナは支援物資保管庫として使用された過去を持つ。
 だが、今はそんな過去があったことさえ忘れられるような、そんなライブが行われようとしていた。

 スタッフA:「すいません、出演者の皆さん。場当たりしたいと思いますので、ステージまで集合してください」
 初音ミク:「はい!」

 ステージでは巡音ルカが発声していた。

 巡音ルカ:「あーっ♪あーっ♪あーっ♪……すいません、私の声の開始をもう少し低くしてもらえませんか?」
 スタッフB:「了解です。調整します」
 ルカ:「お願いします」

 貴賓室でその様子を見る敷島と平賀。

 平賀:「敷島さん、取りあえずボーカロイド達の整備状況は良好です。いつでも行けますよ」
 敷島:「いつもありがとうございます」
 平賀:「いえいえ」

 と、そこへエミリーが急いでやってきた。

 エミリー:「失礼します!」
 敷島:「どうした?」
 エミリー:「これを見てください!」
 敷島:「手紙?」
 エミリー:「今日、こちらに届いたそうです」

 茶封筒で、日曜・祝日でも配達される簡易書留で送られていた。
 差出人は書いていない。
 エミリーが開けて中を確認した為に開封はされている。
 そこに入っていた手紙には、こう書かれていた。

『人殺しロボットがのうのうと活動することは許されない』

 とだけ。

 敷島:「これは……脅迫状か?何だこれ?」
 平賀:「恐らく、シンディ宛てじゃないですかね」
 エミリー:「私もロシアにいた時は、反乱分子達の粛清に当たったりもしましたが……」
 平賀:「いや、人間の殺傷数はシンディの方が明らかに上だ。しかも、わざわざ日本語で書かれてる。エミリーは日本に来てからは殺人をしていない。シンディならしていた」
 敷島:「前期型ね。後期型の今はしていませんよ」
 平賀:「しかしあまりにもデザインが前期タイプと同じな上、贖罪の為とはいえ、前期型のデータをそのまま受け継がせたということで、被害者を中心とした批判が残っているのもまた事実です」
 敷島:「あれだけマスコミを使って、アピールしたのになぁ……」
 平賀:「どうします、敷島さん?このことは……」
 敷島:「あくまでライブ開催に対する脅迫状ではないわけですから、黙殺します」
 平賀:「それでよろしいんですか?」
 敷島:「もちろん、エミリーやシンディには警備強化と、あとここの施設の管理者の皆さんにも伝えて来ます。手紙の内容が、本当にシンディを指しているかどうかも分かりませんしね」
 平賀:「分かりました」

[同日17:00.天候:雨 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 シンディ:「皆、予定通り開場したわ!お客さん、一杯よ!」
 鏡音リン:「おお〜!」
 MEIKO:「ほんと、ファンってありがたいよね」
 KAITO:「ボク達が初ライブをした時は、本当数えるだけしかお客さん来なかったのにね」
 初音ミク:「わたしの時は、まだ研究所の事務員だった社長が……」
 ルカ:「私のデビューは小さいとはいえライブハウスだったけど……」

 ライブ前から盛り上がるボカロ達。
 その様子を見ていたシンディは少し悲しそうな顔をして、廊下に出た。

 敷島:「どうした、シンディ?」
 シンディ:「せっかく有名になって、こんな立派なアリーナでライブまでできるようになったのに、私のせいで足を引っ張ることになるかと思うと、何だか申し訳無くて……」
 敷島:「あの手紙のことか?まだ、お前のことだと確定したわけじゃない。むしろ、あれじゃないか。今でもどこかでバージョン・シリーズは活動しているだろう?一部はセキュリティロボットとして転用されたりもしているが、世間的にはテロ用ロボットとしてのイメージが物凄く強い。そいつらを一刻も早く何とかとしてくれっていう意味かもしれない。何しろあいつら、警察官のハンドガンじゃ歯が立たないからな」
 シンディ:「まあ、そうですね」
 敷島:「とはいえ、万が一のこともあるから、警戒は怠らないでくれよ」
 シンディ:「かしこまりました」

[同日18:00.天候:雨 同アリーナ]

 シンディ:「皆様、大変長らくお待たせ致しました。『夏休みボーカロイドライブ 2017』を只今より開催させて頂きます。……」

 シンディはヘッドセットにインカムを付けて進行役をやっていた。

 敷島:「よし、行けっ!」

 敷島はミクの背中を押した。
 ボカロ達がステージへ走る。
 まずは全員で歌うのがセオリー。

 井辺:「社長」
 敷島:「おっ、井辺君」
 井辺:「試しに会場の周りを回ってみましたが、怪しい人物などは見かけませんでした」
 敷島:「そうか。だけども、警備員でも警察官でもない井辺君に怪しいとバレる人物なんて、そうそういないだろう」
 井辺:「まあ、そうですね。ただその代わり、これが落ちていたんですが……」

 井辺はある金属片を取り出した。

 敷島:「何かの部品か?」
 井辺:「恐らくは……」
 敷島:「よし。シンディは進行やってるから、エミリーに鑑定させよう」

 敷島と井辺は一旦控え室に戻ることにした。
 平賀が待機している貴賓室に行く。

 敷島:「平賀先生」
 平賀:「おっ、敷島さん。井辺プロデューサーも一緒か」
 敷島:「これが何だか分かりますか?」

 敷島が平賀に金属片を見せた。

 平賀:「いや……?でも、何だかロボットの部品にも見えますね」
 敷島:「やはりそうですか。会場の近くに落ちていたそうです」
 井辺:「私が見つけたのはこれだけです」
 敷島:「今、エミリーを呼び戻していますから、エミリーに鑑定させようと思うんです」
 平賀:「それが確実ですね」

 しばらくしてエミリーが戻って来た。

 エミリー:「何かありましたか?」
 敷島:「エミリー。ちょっとこれを見て欲しいんだ。これが何の部品だか分かるか?」

 エミリーはその部品をスキャンした。

 エミリー:「バージョン4.0の部品です」
 敷島:「なにっ!?」
 エミリー:「右胸に内蔵されている自爆装置の一部だと思われます」
 井辺:「すると、バージョン4.0がこの近くにいたということですね」
 平賀:「それは危険ですね」
 エミリー:「私が探し出して、破壊しましょうか?」
 敷島:「待て待て。その度にデカい音出してたら、いくら何でも騒ぎになるだろう。お前の言う事聞くんだったら、速やかに会場から離れさせるんだ」
 エミリー:「分かりました」
 井辺:「すると社長、先ほどの手紙はシンディさんへの当てつけではなく、バージョン4.0に対する警告だったのでしょうか?」
 敷島:「いや、現時点ではまだ何とも言えない。取りあえずは、バージョン4.0の活動に注意することにしよう」
 井辺:「分かりました」
 平賀:「…………」
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“Gynoid Multitype Sisters” 「東北本線利府支線」 

2017-08-22 12:30:11 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日10:14.天候:晴 JR東北本線岩切駅]

 2両編成の電車が田園地帯の中を駆け抜けて、岩切駅に接近した。
 ここで東北本線の『本線』と『支線』に分岐する。
 敷島達が行くのは支線の方だ。

〔「まもなく岩切、岩切です。1番線に入ります。お出口は、右側です。この電車は、普通、利府行きです。塩釜、松島、小牛田(こごた)方面には参りませんのでご注意ください。乗り換えのご案内です。今度の仙石東北ライン下り、快速、石巻行きは3番線から10時25分。その後、東北本線下り、普通、小牛田行きは同じく3番線から10時52分です。この電車は岩切駅に3分停車致します。発車は10時17分です。新利府、終点利府へお越しのお客様は、発車までしばらくお待ちください。……」〕

 さらっと次の本線電車が約40分後というところが、やはり地方ローカル線である。
 支線であるはずの電車が何故トップナンバーの1番線に入るのかというと、かつては利府方面が本線だったからである。
 今では利府駅で線路がぷっつり切れているが、昔はその先まで続いており、東北本線の品井沼駅で合流していた。
 塩釜、松島方面が支線扱いだったのである。
 利府方面は山線と呼ばれ、当時の蒸気機関車で登るにはキッツイ坂があった。
 列車によっては重連(機関車を2台繋ぐこと)で通行していたほどである。
 そこで当時の鉄道運営側はその手間を省く為、塩釜、松島方面に海線と呼ばれる支線を作った。
 こちらは坂が緩やかだったので、蒸気機関車1台でも難無く通行できたという。
 そうしているうちに観光地も通る松島支線の方が段々と列車本数も多くなり、利府本線の方が衰退していった。
 そしてついに1962年4月20日に利府〜品井沼間が廃止され、それまで支線だった海線が本線となり、本線だった山線が支線となり、今に至る。
 利府駅が廃止にならなかったのは、代替路線が無かった為、利府町民の交通利便を図る為である(尚、新利府駅ができたのは山線廃止の20年後)。
 普段はラッシュ時以外、2両編成の701系が支線内を行ったり来たりするだけだが、今日みたいなセキスイハイムスーパーアリーナでイベントが行われる時は臨時増発も行われるなど、如何に支線化されたとはいえ、今すぐ廃止にされるほど需要が無いわけではない。
 また、それまで1面1線だけだった利府駅のホームも2面2線化され(つまり、1番線しか無かった駅に2番線が追加された)、けして需要が低過ぎるというわけではないことを物語っている。

 敷島:「ん……?」
 シンディ:「起きました?」
 敷島:「ああ……。長閑な所を走っていたものだから、ついついうとうとしてしまった。岩切か?」
 シンディ:「はい」
 敷島:「半分まで来たな」

 駅に到着すると、あちこちからドアチャイムの音が聞こえてくる。
 JR東日本仙台支社管内では、乗降ドアは終日半自動扱いになる。
 その為、ドアボタンを押す度にチャイムが鳴るというわけである。

 敷島:「ん?」

 敷島達は後ろの車両に乗っているのだが、ふと半室構造の乗務員室に目をやると、車掌が荷物をまとめて電車を降りていた。
 別の車掌と交替するのかなと思ったが、交替要因が来る様子が無い。

〔ドアボタンを押して、お乗りください。利府行き、ワンマンカーです〕

 敷島:「はい?」

 車内がガラガラなうちに、停車時間の3分が過ぎた。

〔ピンポーン♪ この電車は東北本線下り、各駅停車の利府行きです。新利府、終点利府の順に止まります。まもなく、発車致します〕

 車掌がいない状態で、空きっ放しのドアがチャイムの後で閉まった。
 そしてVVVFインバータの音を響かせて、電車が走り出す。

〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は東北本線下り、各駅停車の利府行きワンマンカーです。これから先、新利府、終点利府の順に止まります。途中の無人駅では後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。【中略】次は、新利府です〕

 敷島:「ほほぉ……。“最終電車”でもワンマンだったんだよなぁ……」
 シンディ:「社長、これ最終電車じゃないです」
 敷島:「いいか、シンディ!次の駅を通過したら、非常停止スイッチを引くぞ!幸いこの電車、向かって右側がガラ空きだ!バージョン4.0の腹掻っ捌いて、乗務員室の鍵を取る必要は無い!」

 701系電車はワンマン運転対応の為、運転席部分にしか運転室が無い。
 真ん中には運賃箱が置かれ、最近では右側には強化ガラスの仕切り版が設置された車両も存在するものの、やはりワンマン非対応の車両と比べれば解放感がある。

 シンディ:「私はその場所を知らないので、社長が引いてください」
 敷島:「おっと!そうだったな」

[同日10:23.天候:晴 JR利府駅]

〔ピンポーン♪ まもなく終点、利府です。お近くのドアボタンを押して、お降りください。運賃、整理券は駅係員にお渡しください。乗車券、定期券、Suicaは自動改札機をご利用ください。どなた様も、お忘れ物の無いよう、ご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 シンディ:「何事もありませんでしたね」
 敷島:「考え過ぎか……。やっぱり、あれは夢だったのかなぁ……」
 シンディ:「きっとそうですよ」

 電車が県道3号線の踏切を通過すると、すぐにホームに入る。
 最大8両編成まで停車できる有効長を持つが、普段からそんな列車はやってこない。
 改札口に近い前の方まで電車は進み、所定の停止位置で電車は止まった。
 尚、先ほど『1番線しか無かった駅に2番線が追加された』と述べたが、かつてはこっちのルートが本線だった頃は2番線があったので、実際には『1度廃止になった2番線が復活した』と表現する方が正しいだろう。
 尚、2番線を使用する列車で定期便はラッシュ時の1本しかなく、あとは臨時列車用である。
 Suicaに対応した自動改札機が設置されているが、そこから先はベタな地方ローカル駅の法則である。
 但し、町のコミュニティセンターが併設されている所だけが違うか。

 敷島:「どれ、タクシーで移動するか」
 シンディ:「そうですね」

 敷島達は駅前のタクシー乗り場に止まっていたタクシーに乗り込んだ。

 シンディ:「セキスイハイムスーパーアリーナまでお願いします」
 運転手:「はい」
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臨時 「本日の夢日記」

2017-08-22 12:06:30 | 日記
 公休日で何も予定が無い日は、昼近くまで寝るのが最近のセオリー。
 それでも、平日は帰宅が23時というブラッキーな現場に派遣されているのだから仕方が無い。
 最近、“アンドロイドマスター”シリーズを手掛けていることもあってか、そこのキャラクター達が夢に出てきて何かやっていたので、夢日記にしたいと思う。
 “大魔道師の弟子”のイリーナ組も、見た夢は必ず夢日記にするようにという指導がなされている(予知夢が含まれているかもしれない為)。

 とある洋館内部を探索中の敷島孝夫、エミリー、南里志郎。
 懐かしいシリーズ初期の“ボーカロイドマスター”じゃね?と思った。
 洋館内部の美術室らしき部屋(学校の美術室みたいな感じではなく、ミニ美術館といった部屋)を探索中、何故か南里のケータイが鳴る。
 どうやら知り合いからの電話らしい。

 南里:「あー、どうやら私の知り合いがこの屋敷にやってくるらしい。それでだ。玄関のドアの鍵が掛かっておったな?彼が入って来れるよう、鍵を開けて来てくれんか?」
 敷島:「エミリー、メイドだろ?お前が開けて来い」
 エミリー:「イエス」
 雲羽:「お前が開けて来ないのか?」
 敷島:「俺は社長だから……」
 雲羽:「何じゃそりゃ!」

 場面はここで変わる。
 今度は何故かトーク番組に出ている敷島の収録に、私が立ち会っているというもの。

 女性MC:「婚活市場で多くの女性が“普通の人”を希望をしているにも関わらず、なかなかその“普通の人”と出会えないというジレンマが発生しているようですが、これについてどう思われますか?“普通の人”ではない敷島さんの御意見を是非と思います」
 敷島:「これはですね、女性の求める普通の定義が普通以上だからですよ」
 MC:「と、仰いますと?」
 敷島:「年々人間の質が下がっている、つまり“普通”の定義も下がっているんです。それなのに何故か女性の求める“普通”の定義は上がりっぱなし。だからですよ。私は秘書ロイドを2つ抱えていますが、はっきり言って今の“普通の人”は彼女達より劣っています。いや、何も右手からレーザービーム出せとか数万馬力の力を出せとか、そう言っているんじゃないですよ。思考がね、劣っているんですよ。勉強はできても、考え方が幼稚というか……。特に、前期型で暗躍していた方はもう1回暴走したりしたら、『下等で愚かな人間どもよ!』とか言い放ちますよ」
 MC:「ロボットにそんなこと言われるなんて、人間として心外ですね」
 敷島:「仕方が無いんです。それほどまでに我々人間の質が下がって来ているんです。いずれは彼女達の存在無くして我々の繁栄……いや、存在の維持ですら困難な時代がやってくるでしょう」

 というところで目が覚めた。
 まあ、いくら広い屋敷とはいえ、玄関の鍵をロボットに開けさせているようでは、確かに人間の質が落ちてくるわと思った。

 夢日記の戯れ言を書いた後は、すぐに本編を更新します。
 
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