報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「3日目の朝」

2017-08-29 19:09:22 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月13日07:00.天候:晴 ホテルメトロポリタン仙台・客室]

 シンディ:「社長、朝ですよ。起きてください」

 シンディは敷島を起こしに来た。
 エミリーは平賀に付いていたので、今夜の同衾護衛はシンディである。

 敷島:「……あと5分」
 シンディ:「ダメですよ。早く起きて頂きませんと、七海式強制起床法発動しますよ?」
 敷島:「おおっと!そいつァ危険だ!起きよう起きよう」
 シンディ:「おはようございます」

 因みに七海式強制起床法とは、平賀の試作したメイドロイド七海が稼働実験中にやらかした平賀への起床法である。
 具体的には平賀を起こす際、寝起きの悪い平賀の口をこじ開け、醤油を流し込むというもの。
 誰かに教えてもらったわけでもないのに、どうして七海がこの起床法を思いついたのか未だ不明である。
 さすがのエミリーやシンディも、そのポンコツぶりには呆れた。
 今ではだいぶ学習能力も向上し、日本初のメイドロイドとして、量産機の後輩達からハウスキーパー扱いされるほどになっているとか。

 尚、七海式強制起床法がメイドロイド達の間に流行したことがあり、平賀達が火消しに走ったこともある。
 これは平賀が七海を連れてメイドロイドのプレゼンを行った際、七海式強制起床法の話でユーザー達が大ウケしたことにより、メイドロイド達が大いなる誤解をした為だということになっている。
 ユーザー達は単なる笑い話としてウケただけなのだが、メイドロイド達は「そうすることで御主人様達が喜ぶ」と誤解した為。

 敷島:「……ってか、ホテルの客室に醤油は無いだろ」
 シンディ:「その通りです。さ、早く朝のお支度を」
 敷島:「全く……」

 敷島はバスルームに入った。
 その間、シンディは敷島の寝ていたベッドを整える。
 ホテルなのだから別にそこまでしなくてもと思うだろうが、それが彼女達の習慣なのである。

[同日07:30.天候:晴 同ホテル2F]

 井辺:「社長、おはようございます」
 敷島:「ああ、おはよう。一緒に食べるか。今日は和食にしようと思ってるんだけども」
 井辺:「はい。御相伴に預かります」

 敷島と平賀はテーブル席に向かい合って座った。

 井辺:「エミリーさんは戻らなかったようですね」
 敷島:「そうなのか。メイドロイドを簡素化したものとはいえ、それが暴走したってんだから大変だろうな」
 井辺:「その暴走ロイドは見つかったのでしょうか?」
 敷島:「いや、まだだろうな。テレビでもやってなかったし、何よりGPSを搭載していないもんだから捜しようがない」
 井辺:「KAITOさんは無事でしたか?」
 敷島:「何かあったらすぐにSOSを発信するように言っておいた。で、来る時に様子を見たけど、何にも無い」
 井辺:「何も無いというのも、それはそれで少し不安ですね」
 敷島:「いや、全く」
 井辺:「今日はどのようにしますか?」
 敷島:「じゃあ、今度は俺がMEIKOとLilyに付こう。Lilyのヤツ、MEGAbyteとしてのユニットよりMEIKOとのユニットの方が活き活きしてるな」
 井辺:「はい。正直言ってMEGAbyteとしての活動よりも、あの2人ユニットの方がいいような気がします。元々LilyさんはMEGAbyteとしてのユニットに乗り気では無かったので」
 敷島:「そうだな。……ん?あの、おもしろ博士はどこにいるんだ?」
 井辺:「おもしろ博士?」
 敷島:「村上教授とポンコツ執事のロイ」
 井辺:「私は存じ上げませんが……。あ、因みに私は今日、鏡音さん達に付こうと思います」
 敷島:「分かった。よろしく」

[同日08:00. 天候:晴 宮城県仙台市太白区 天守閣自然公園(オートキャンプ場)]

 キャンプ場の炊事場で朝食を作るのはロイと、もう1人。

 有泉:「ロイ君、キミは料理も上手いね」

 村上の助手で20代の男、有泉である。

 ロイ:「メイドロイドでもキッチンメイドがいるのです。コックは男ですよ」
 有泉:「キッチンメイドは本来、料理はやらないんだけどね」
 ロイ:「さあ、できました。ベーコンエッグにグリーンサラダ、ご飯と味噌汁です」
 有泉:「和洋折衷だね。よし、早速教授に持って行こう」

 キャンピングカーの中にはキッチンもあるのだが、あえてオートキャンプ場に泊まって、共同炊事場を使う。

 有泉:「教授、おはようございます」
 村上:「うむ。清々しい朝じゃの」

 昨日の自爆行為はどこへやら。
 そんなこと無かったかのように、にこやかに朝を迎える村上だった。

 村上:「今日は東北工科大学で、ワシの講演会がある。この車ごと乗り込むぞ」
 有泉:「はい」

 運転は有泉がやっていたようだ。
 村上は車内のオーディオを入れた。

〔「ハァ〜♪ドバッと出たもんだ〜♪……」〕

 年齢柄、演歌を流すのは理解できる。
 できるが……。

 有泉:(何故、ミッチーの“ゴエモン音頭”!?)
 村上:「おっ、そう言えば敷島社長の所の……」
 ロイ:「敷島エージェンシーさんが、どうかなさいましたか?」

 村上が食事を2〜3口運んでから言った。

 村上:「何と言ったかな……。最年少でありながら、こぶしの効いた歌い方のできる……」
 ロイ:「鏡音リンですね。ソフトウェアが同じの鏡音レンも、そういう歌い方ができるはずですよ」

 その為、鏡音リン・レンには演歌のリリースもあったりする。

 村上:「ふむ。是非とも、あのコ達の演歌が聴いてみたいものだ」
 ロイ:「今度、お願いしてみましょう。食後のお飲み物は何になさいますか?」
 村上:「渋みの効いた緑茶で頼む」
 ロイ:「かしこまりました」
 村上:「それにしても、昨日のロボット、一体どこに行ったんだろうなぁ……」
 ロイ:「あのマルチタイプ様ですら捜索不能では、私のような一介の執事ではお手上げです」
 村上:「うむ、そうだな」

 と、そこへ……。

 バージョン4.0A:「ワッショイワッショイワッショイ」
 バージョン4.0B:「ワッショイワッショイワッショイ」
 バージョン4.0C:「ワッショイワッショイワッショイ」

 ザッザッザッとテロ用途ロボットがキャンプ場の前の通りを通過して行った。
 しかも、何かを持ち上げながら移動している。

 ロイ:「教授、バージョン達がお祭りゴッコやってますよ(っ´∀`c)」
 有泉:「何かを担いでいるようですね」
 村上:「問題無い。別に、テロを起こすようでなければ放っておいても。それとも爆弾でも抱えているのかね?」
 ロイ:「スキャンした結果、別のロボットを抱えているようですね」
 村上:「ほお……」
 有泉:「故障した仲間のロボットですかね?どこへ運んで行くのやら……」
 村上:「どこへ運んで行くんじゃろうなぁ……?」
 ロイ:「ズームして見ましたが、ただのロボットじゃなく、ガイノイドのようですね」
 村上:「そうなのか。ロイ、ちょっと事情を聞いて来んか?もし故障して困ってるのなら、ワシの気紛れで修理してやろう」
 ロイ:「かしこまりました」

 ロイは靴を履き替えた。
 ブースター付きのブーツである。

 ロイ:「では、行って参ります」
 村上:「うむ。もし奴らが発砲してきたら、遠慮なく逃げるのじゃぞ」
 ロイ:「はい。自爆して来たらどうしますか?」
 村上:「縁起でも無いこと言うな!」
コメント (10)
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