報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「警視庁からの帰還」

2017-08-14 20:18:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月5日17:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 井辺:「……はあ、そうですか。いえ、そういうことでしたらしょうがないです。……ええ。私は事務処理がありますので、もう少し残っています。……いえ、とんでもない。それでは失礼します」

 井辺は事務室の電話を切った。

 鏡音リン:「IP君!なになに?社長から?」
 井辺:「はい。実は本社の帰り道、警察に……」
 リン:「ええっ!?社長が警察に捕まった!?」
 井辺:「いえ、そういうことでは……」
 鏡音レン:「社長のことだから、きっと過剰防衛か何かでしょう。ど、どうしよう……」
 井辺:「いえ、ですから……」
 MEIKO:「そんなもの、シンディに頼めば簡単に牢獄破りさせてくれるわよ」
 KAITO:「いや、ダメだろう。シンディは2度と人を殺めないという不殺(ころさず)の誓いが……」
 巡音ルカ:「エミリーも一緒なんでしょ?そう簡単に捕まるとは思えないけど……」
 井辺:「あ、いや、あの、ですから皆さん……」
 初音ミク:「わたしの歌でバージョンの皆さんに助けを求めれば……」
 リン:「おおっ!その手があった!汚いことは全部バージョン達に任せちゃおうYo!」
 MEIKO:「あんたも腹黒くなっちゃったねぃ……。いい?あんたは敷島エージェンシーのJC担当なんだから、もっと心清く……」
 井辺:「あの、ちょっと聞いてもらえますか?」
 リン:「なに!?IP君でいい作戦立てたの?」
 レン:「分かった!萌に脱獄の手引きをしてもらうんですね!さすがです!」
 ルカ:「もっと現実的なことを考えなさいよ。四季グループの顧問弁護士を立ててくれたのでしょう」
 井辺:「社長はたまたま電車内で鷲田警視達に……」
 リン:「捕まったの!?」
 井辺:「いえ、ですから、北海道決戦の時の話を聞きたいということで、警視庁に寄ったそうです。少し話が長引いたので、今から帰りになるとのことです」
 MEIKO:「何だ、逮捕じゃなかったのね」
 井辺:「違いますよ。あくまで、警察への捜査協力です」
 KAITO:「ですよね。社長なら当然だと思います」
 MEIKO:「だいたい、リンが早とちりするからよ。これ、エミリーが聞いたらゲンコツものだよ」
 リン:「ぅあっと!?」
 井辺:「エミリーさんには内密にしておきますから、ご安心ください」

 だが……。

 シンディ:「姉さんの代わりにゲンコーツ!」

 ゴッ!

 リン:「いたっ!(>_<)」
 井辺:「シンディさん?どうしてここへ?」
 シンディ:「姉さんと交替に来ただけよ。今日は土曜日でしょう?」
 井辺:「そうでした」
 リン:「なになに?土曜日がどうしたの?」
 レン:「世の中何かと物騒だから、ボク達を守ってくれる誰かを置くことになったんだって」
 井辺:「敷島家の守りはシンディさん、敷島エージェンシーの守りはエミリーさんということです」
 ルカ:「お気持ちはありがたいですけど、KR団も完全崩壊した今、今さらじゃないですか?」

 表の総帥であるエリオットは井辺達との戦いにより自滅し、死亡した。
 その後から北海道までの戦いは、エリオットとはまた違った派閥による残党との戦いだったわけだ。
 KR団も一枚岩ではなかったということ。

 井辺:「確かに今さら的な所はあります。しかし、社長の見立ててではKR団ほどとまでは行かなくても、あなた達を狙う犯罪組織が現れる確率は高いとのこと。あなた達の価値は、もはや高級車1台、2台がミニカーに見えてしまうほどです。それを守る為には、マルチタイプの力が必要とのことです」
 リン:「だったらアルるんは?」
 井辺:「アルエットさんは、特に戦闘能力を重視して造られたタイプではないので……」

 どちらかというと前期型のシンディに近いタイプ。
 自らは手を汚さず、配下のロボット軍団を操って総攻撃を仕掛けるタイプだ。
 もっとも、自分1人の身なら守れる程度の力は持っているが。
 誰かを守りながら戦う術は持ち合わせていない。
 前期型シンディの場合、自分1人なら守れる力を悪用して暗殺を行っていたわけである。
 現行の後期型はエミリーの能力に合わせてカスタマイズされている。

[同日18:00.天候:晴 敷島エージェンシー]

 敷島:「あー、えらい目に遭った」
 井辺:「お帰りなさい。お疲れさまです。本社の方は?」
 敷島:「ああ。そっちは問題無い。叔父さん……俊介社長からは、俺達の自由にやっていいということだ」
 井辺:「社長には本社から細かい指示を与えるより、そちらの方が良い収益を与えてくれるという判断ですね」
 敷島:「まあ、そういうことになるのかな」
 井辺:「警察の方は?」
 敷島:「俺じゃなくて、エミリーの方に用事があったみたいだ」
 井辺:「は?」
 敷島:「最後までマザーブレインの相手をしていたのはエミリー。だから、その時の様子を根掘り葉掘り聞かれたよ」
 井辺:「しかし、当のマザーブレインの頭部をエミリーさんが確保して警察に引き渡したはずでは?メモリーが残っていなかったというのでしょうか?」
 敷島:「そんなこと俺は知らねーよ。今も昔も、お役人の考えることなんざ、俺達民間人には計り知れないってもんだ」
 井辺:「取りあえず、その辺の聴取は終わったわけですね」
 敷島:「一応な」
 エミリー:「マザーはメモリーを捏造していたようです」
 井辺:「捏造?」
 エミリー:「はい。人間は『妄想』と言いますか?真実のメモリーは消去こそされませんでしたが、出鱈目なメモリーも数多く入っていたそうです。その為、マザーに記憶された犯罪組織の本部とされる場所を警察が行ってみたら幼稚園だったということが多々あったそうです。冤罪による誤認逮捕が最近増えているのもそのせいだそうで」
 敷島:「それで、そもそもエミリーとの出会い自体が本当かどうかから調べるってさ。大変なことだ」
 井辺:「エミリーさんもメモリーを捏造できるのですか?」
 敷島:「いや、少ない情報から色々とその先を考えることはできるが、妄想はできんよ。さすがにそれは余計な機能だ。そこはアリスにも平賀先生にも確認した。だからエミリーのメモリーについては、信用していいとは言っておいたんだが……」
 井辺:「記憶(メモリー)を捏造できるなんて、妄想癖の人間みたいですね」
 敷島:「ああ。まるでどこかの河童さんだよ。人間により近づくのは大いに結構だが、そんな所まで似せる必要は無いさ」
 井辺:「そうですね。私もそう思います」

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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2017-08-15 18:48:09
さいたま新都心で夕飯がてらビールで一杯。
仕事帰りの一杯は最高である。
都内はメチャクチャな雨だったが、まあ何とか無事に仕事が終わった。
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