報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「バスの旅」 2

2017-08-17 20:27:31 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日01:00.天候:晴 東北自動車道下り・羽生PA]

 敷島達を乗せた東北急行バス“ニュースター”号が東北自動車道最南端のパーキングエリアに入る。
 ここは1つ手前の、東北自動車道で最南端のサービスエリアである蓮田と比べても規模が大きい。
 どうしても蓮田サービスエリアが混雑する傾向があるので、その緩和の為というのもあるらしい。
 おかげでここは週末の行楽時期であっても、駐車場が満車になることはあまり無いそうだ。
 その為、混雑を嫌う高速バスの休憩箇所としてもよく利用されている。
 バスが大型車用駐車スペースに止まる。
 隣には、キャブ全体にカーテンを引いて仮眠を取っている大型トラックが止まっていた。

 敷島:「ん……?」

 敷島はバスが停車したことで、却って起きてしまった。

 敷島:(休憩か……)

 車内にトイレは付いているのだが、あえて降りてみようと思った敷島だった。
 尚、これがJRバス東北の夜行便だと乗客は降りられない。
 運転席と客室の間にはカーテンが引かれていたが、それが少し開けられていた。

 敷島:「夜風が気持ちいい……」

 敷島は真夜中のサービスエリアで降りた。

 初音ミク:「そうですね」
 敷島:「おわっ!?」

 いつの間にか後ろにミクがいた。

 敷島:「びっくりした」
 ミク:「驚かせてごめんなさい」
 敷島:「いや、いいよ」
 ミク:「お手洗いですか?」
 敷島:「ああ。気分転換がてらな。……あっ、休憩何分だっけ?」
 ミク:「15分だそうです。1時15分に出発するそうです」
 敷島:「そうか。悪いな」

 エミリーまで降りてきやしないかと思ったが、降りて来たのはミクだけだった。

 敷島:「他の2人は充電中なのに、ミクはもういいのか?」
 ミク:「はい。わたしの充電は終わりました」
 敷島:「ふーん……。もうKR団も滅んだことだし、俺の護衛はしなくてもいいんだぞ」
 ミク:「いえ、それはエミリーさんのお仕事ですから」
 敷島:「それもそうか。ちょっと俺はトイレに行ってくる」
 ミク:「行ってらっしゃい」

 駐車場が広ければトイレも広い羽生パーキングエリア。
 ずらっと小便器が並んだトイレが満員になることは無さそうだ。
 トイレから外に出ると……。

 敷島:「あれ?バスに戻って無かったのか?」
 ミク:「やっぱり、エミリーさんの代わりに護衛です。もっとも、わたしは回避しかできませんけど」
 敷島:「回避か。いや、いいんだよ。覚えてるか?俺とお前が会った頃。フィールドテストで、抜き打ち訓練があったよな」
 ミク:「覚えています。エミリーさんが『追跡者』になったんですよね」

 南里がマッドサイエンティストに再び目覚め、ミクを兵器に使おうとした。
 すぐにミクを戻すよう敷島に伝えたが、ミクのボーカロイドとしての機能の素晴らしさに気づいた敷島はミクの兵器使用を拒否。
 しかし南里はエミリーを派遣して、ミクの捕獲に当たらせた。
 もちろんこれは、南里と平賀が仕組んだ抜き打ち訓練であった。
 それとは知らずに敷島は仙台から東京、そして千葉へと逃亡し、千葉から再び仙台に戻る夜行バスに乗り込んだ。
 成田空港交通“ポーラスター”号である。
 エミリーの交通情報の中にバスが無かった為(もちろんウソ)、高速バスで舞い戻るという裏をかいた作戦であった。

 敷島:「今ならエミリーを撒けるか?」
 ミク:「エミリーさんは撒けても、後でシンディさんに捕まって酷く怒られそうです」
 敷島:「シンディの方が高性能だって?」
 ミク:「いえ、違います。シンディさんから逃げようと思えば逃げられると思いますが、エミリーさんに捕まると思います」
 敷島:「なるほど。あいつら姉妹だけあって、連携プレーすることも……あるか?」
 ミク:「連係プレーさせたら強いと思いますよ。今は社長達の都合で、単独行動が多いですが……」
 敷島:「お前もよく見てるな」

 敷島は売店で缶ビールを買い求めた。

 ミク:「飲まれるんですか?」
 敷島:「寝酒だよ、寝酒。量は少ない」

 敷島がアリスと飲む時は500mlの缶が多いのだが、自分1人で飲む時は350mlらしい。

 ミク:「わたしが代わりに買っといても良かったんですよ」
 敷島:「ミクだと見た目年齢でバレて買えないよ」
 ミク:「あ……」

 ミクの設定年齢は16歳。メーカー公式である。

 ミク:「ごめんなさい。お役に立てなくて……」
 敷島:「いいよいいよ。ビールくらい自分で買うよ」
 店員:「お車は運転されますか?」
 敷島:「いえ、バスの乗客です」
 店員:「ありがとうございました」

 売店を出てバスに向かう。

 敷島:「そういえばバスに乗る前、アイスクリームなんか買ってきてくれたよな」
 ミク:「はい。あのバスは途中休憩が無かったので」

 ポーラスター号もまたトイレ付きということもあってか、乗客が降りられる途中休憩は無い。

 敷島:「俺はこうして途中休憩がある方がいいな」

 そうしてバスに戻る。
 階段の段数が多いのは、スーパーハイデッカー(日野自動車・セレガR)だからだろう。
 先に出発した某・元ツアーバスのヒュンダイ・ユニバースと比べても車高が高い。

 ミク:「それでは、たかお社長」
 敷島:「ああ。一応、充電コードは繋いでおけよ」

 敷島は自分の席に戻ると、少しリクライニングを戻してテーブルを出した。
 プライバシーカーテンが引いてあるだが、それが無い真ん中のB席。
 エミリーは目を閉じてはいたが、やはり両耳の穴から機器のランプが漏れていた。
 それが交互に点滅している。
 もちろん故障ではなく、スリープ状態であっても稼働している機器があることの表示ランプなのだが。
 その前に座るMEIKOも、爪が淡く赤く光っている。
 どうしてもメカバレしてしまう要素が残るガイノイド達である。
 もっとも、こんな真っ暗な中を移動させるということを想定していないということなのだが。

 敷島:(まあ、いいか)

 敷島がプシュッと缶ビールの蓋を開けるのと、運転手が人数確認に来るのは同時だった。
 そしてそれが終わると、バスは再び暗闇の下り本線へと躍り出た。

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