[8月10日22:30.天候:曇 東京都江東区東雲 都営バス深川車庫前バス停→都営バス東16系統]
さっきまで雨が降っていた中、敷島とエミリーはバス停でバスを待っていた。
敷島:「やっと雨が止んで良かったな」
エミリー:「ええ。これから夜行バスに乗ろうという時に、雨の中では大変ですから」
敷島:「そうだな」
エミリー:「それにしても珍しいですね。社長が移動に夜行バスを使うなんて」
敷島:「何言ってるんだ。昔はよくそれで移動してたじゃないか。懐かしいなぁ。最初はミクを連れて乗ったし、あとはお前と一緒に乗ったこともあっただろう?」
エミリー:「そうですね」
敷島:「北陸自動車道でバスを襲って来たバージョン4.0と戦って、お前の圧勝だ」
まだアリスが敷島達の敵として、その姿を露わにする前の話である。
敷島達を養祖父を殺し、シンディも壊した仇敵として憎悪の対象にしていた。
バージョン4.0を遠隔操作し、敷島達を散発的に襲撃させていた。
エミリー:「圧勝という程のものではないんですけどね」
話をしているうちにバスがやってきた。
東16系統の東京駅行きとしては最終便である。
これ以降の便は深夜14系統となり、運賃が倍になる深夜バスとなる。
敷島:「KR団との戦いが終わった今、少しは思い出に浸らせてくれよ」
エミリー:「思い出?」
敷島:「東京決戦の……」
敷島達は前扉から車内に入った。
上りの最終便ということもあってか、車内は空いていた。
もちろん、途中から乗客が多くなるというオチだろう。
車椅子の乗客が乗り込んで来たらそのスペースとなる折り畳み式の座席に腰掛ける。
大きな荷物はエミリーが持っており、その位置なら荷物が置きやすい。
外は蒸し暑かったが、車内は冷房が効いていて涼しかった。
エミリーも進んでその風に当たろうとする。
如何にマルチタイプとて、やはりそこは精密機械。
熱は油断大敵なのである。
〔発車します。お掴まりください〕
発車の時間になり、前扉のグライドスライドドアが閉まってバスが発車した。
それにしてもこのドア、引き戸と開き戸のいいとこ取りをしたものだが、最初に発明した人は凄いと思う。
上から見た図が折り戸に似ていなくもないので、恐らく折り戸をヒントにしたのではないかと思うが……。
〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは豊洲駅前、月島駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は東雲一丁目、東雲一丁目。……〕
因みにロイドは人間側の指示が無いと傘を差さない。
かといってレインコートを着るわけでもなく、雨に濡れるままなのである。
これについてエミリーは、
「護衛が自分の為に傘を差すと、いざという時に動きにくくなるからです」
と答え、初音ミクは、
「わたし達も精密機械ですから、濡れて冷えた方がコンディションがいいんです」
と、答えていた。
シンディなんかはもっとざっくばらんで、
「“鉄腕アトム”ってヤツ、平気で雨の中でも飛んでるんでしょう?心配無いって」
というもの。
しかし、片足の脛の収納スペースには折り畳み傘が入っていて、いざという時そこから傘を出して渡すのである。
シンディは大型ナイフを入れていたが、東京決戦で敗北した後は姉を見習って傘を入れている。
[同日22:35.天候:曇 豊洲駅前バスプール]
バスは順調に運行を続け、豊洲駅前のバスプールに進入した。
敷島エージェンシーの最寄りでもある。
〔「豊洲駅前です。ご乗車ありがとうございました」〕
乗降客がいる為、前扉と中扉の両方が開く。
かつての都営バスは中扉もグライドスライドドアという車両があったが、今は見受けられず、引き戸タイプになっている。
で、そこからの乗客の中には……。
初音ミク:「たかお社長、お疲れさまです」
敷島:「よっ、お疲れさん」
ミクが乗って来た。
もちろん今は有名アイドルになっている為、変装している。
シンボルでもあるツインテールを下ろし、帽子を被って眼鏡を掛ければ、まあ分からなくはなる。
頭に着けていた、これまたよく目立つ赤に近いピンク色の髪留めについては両腕に嵌めている。
〔発車します。お掴まりください〕
ミクは着席せず、エミリーもまた少し混んで来たので席を立った。
初音ミク:「バスで行くのはわたし達だけですか?」
敷島:「後でMEIKOが東京駅からやってくるよ。相変わらず、ホテルのディナーショーに呼ばれることが多い」
〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは月島駅前、リバーシティ21経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は豊洲二丁目、豊洲二丁目。……〕
[同日23:00.天候:曇 JR東京駅八重洲南口]
終点の東京駅八重洲口には、だいたいダイヤ通りに着けたものと思われる。
ここはJRバスなどの高速バスが発車するターミナルの一部でもあり、そこから乗るのであればとても便利だ。
しかし敷島達が乗ろうとするバスは、ここからではない。
ここに来たのには、理由があった。
MEIKO:「社長!……それと、エミリーとミク!」
社長:「よお、お疲れさん」
MEIKO:「どうしたの?直接乗り場で待ち合わせじゃなかった?」
社長:「どうせ都営バスがそこに着くんだし、だったらここで合流して乗り場まで一緒に行こうと思ったんだ」
MEIKO:「へえ……」
社長:「まあ、ちょっとまだ時間があるから、少し時間調整するけどな」
敷島はニヤッと笑った。
[同日23:30〜23:40.天候:曇 東京駅八重洲通り→東北急行バス“ニュースター”号車内]
(写真拝借:“バスターミナルなブログ”様「東北急行バス スイート号」より。尚、写真は“スイート”号です)
バスの乗り場に向かうと、1台のバスが停車していた。
敷島:「久しぶりに夜行バスに乗るなぁ……。こっちの方が旅って感じだ」
エミリー:「そうですね」
エミリーは大の男でも両手で持つようなスーツケースをバスの荷物室に預けた。
両手で持っていたのは、別にエミリーにとって重いからではなく、バランスを支える為である。
乗車券を手に車内に乗り込む。
高速バスでは珍しいスーパーハイデッカーであるが、窓のカーテンは全部引かれている。
独立3列シートが並ぶが、席が確保されていたのは敷島が前から3列目のトイレの前、エミリーがその隣、ミクが敷島の前、MEIKOがミクの隣という感じであった。
MEIKO:「お、充電コンセントある。社長、これって充電していいの?」
敷島:「ああ。交流100V用のコンセント使えよ」
MEIKO:「もちろん」
ミク:「わたしも充電します」
MEIKO:「エミリーはいいの?何か、あんたが充電したらバスのバッテリー上がりそうな気がするけど……」
エミリー:「私は家を出る前に、バッテリーを交換してきたから大丈夫だ」
これだけなら、他の乗客達はスマホやタブレットなどの充電の話と思うだろう。
もちろん実際はそうではなく、ボカロ自身のバッテリーのことである。
彼女らはダンスも行う為、軽量化の観点からバッテリーを今現在は1つしか搭載していない。
これは正・副・予備の3つのバッテリーを搭載しているマルチタイプとは大きな違いだ。
もちろん、緊急の為に交換用のバッテリーは持ち歩いている。
敷島:「じゃ、後ろ倒しまーす」
MEIKO:「社長の後ろ誰もいないって」
敷島:「おっと!俺としたことがとんだボケを……。真ん中にトイレって、ちょっと違和感あるよなぁ……」
スーパーハイデッカーという車体の構造のせいだろうか。
MEIKO:「じゃ、私も倒すわね」
エミリー:「ちょっと待て。お前は倒す必要無いだろう」
MEIKO:「ちっ……」
敷島:「別にいいだろう、エミリー。カタいこと言わなくても。ていうか、お前が前に座っていた方がいいんじゃないのか?」
エミリー:「いえ。私はあくまでも、社長の護衛が第一ですので」
MEIKO:「衝突事故くらい、私達は平気だからね。バージョン達が襲って来た時くらいは助けてよ」
エミリー:「歌でも歌えば回避できるのではないか?」
敷島:「バージョンが出てくる度に歌を歌ってたんじゃキリが無いだろ」
夏休みということもあってか、バスは満席状態で出発した。
敷島:「毛布もあるし、プライバシーカーテンもある。消灯したら、先に寝かせてもらうよ」
エミリー:「はい」
敷島:「ていうかお前達も、カーテン閉めておけよ。電源ランプ」
ミク:「ああ……」
MEIKO:「確かに」
明るい所では分からないが、暗い所だと彼女達の目などに仕掛けられた電源ランプなどが淡く光って見えるので、そこでメカバレしてしまうからである。
さっきまで雨が降っていた中、敷島とエミリーはバス停でバスを待っていた。
敷島:「やっと雨が止んで良かったな」
エミリー:「ええ。これから夜行バスに乗ろうという時に、雨の中では大変ですから」
敷島:「そうだな」
エミリー:「それにしても珍しいですね。社長が移動に夜行バスを使うなんて」
敷島:「何言ってるんだ。昔はよくそれで移動してたじゃないか。懐かしいなぁ。最初はミクを連れて乗ったし、あとはお前と一緒に乗ったこともあっただろう?」
エミリー:「そうですね」
敷島:「北陸自動車道でバスを襲って来たバージョン4.0と戦って、お前の圧勝だ」
まだアリスが敷島達の敵として、その姿を露わにする前の話である。
敷島達を養祖父を殺し、シンディも壊した仇敵として憎悪の対象にしていた。
バージョン4.0を遠隔操作し、敷島達を散発的に襲撃させていた。
エミリー:「圧勝という程のものではないんですけどね」
話をしているうちにバスがやってきた。
東16系統の東京駅行きとしては最終便である。
これ以降の便は深夜14系統となり、運賃が倍になる深夜バスとなる。
敷島:「KR団との戦いが終わった今、少しは思い出に浸らせてくれよ」
エミリー:「思い出?」
敷島:「東京決戦の……」
敷島達は前扉から車内に入った。
上りの最終便ということもあってか、車内は空いていた。
もちろん、途中から乗客が多くなるというオチだろう。
車椅子の乗客が乗り込んで来たらそのスペースとなる折り畳み式の座席に腰掛ける。
大きな荷物はエミリーが持っており、その位置なら荷物が置きやすい。
外は蒸し暑かったが、車内は冷房が効いていて涼しかった。
エミリーも進んでその風に当たろうとする。
如何にマルチタイプとて、やはりそこは精密機械。
熱は油断大敵なのである。
〔発車します。お掴まりください〕
発車の時間になり、前扉のグライドスライドドアが閉まってバスが発車した。
それにしてもこのドア、引き戸と開き戸のいいとこ取りをしたものだが、最初に発明した人は凄いと思う。
上から見た図が折り戸に似ていなくもないので、恐らく折り戸をヒントにしたのではないかと思うが……。
〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは豊洲駅前、月島駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は東雲一丁目、東雲一丁目。……〕
因みにロイドは人間側の指示が無いと傘を差さない。
かといってレインコートを着るわけでもなく、雨に濡れるままなのである。
これについてエミリーは、
「護衛が自分の為に傘を差すと、いざという時に動きにくくなるからです」
と答え、初音ミクは、
「わたし達も精密機械ですから、濡れて冷えた方がコンディションがいいんです」
と、答えていた。
シンディなんかはもっとざっくばらんで、
「“鉄腕アトム”ってヤツ、平気で雨の中でも飛んでるんでしょう?心配無いって」
というもの。
しかし、片足の脛の収納スペースには折り畳み傘が入っていて、いざという時そこから傘を出して渡すのである。
シンディは大型ナイフを入れていたが、東京決戦で敗北した後は姉を見習って傘を入れている。
[同日22:35.天候:曇 豊洲駅前バスプール]
バスは順調に運行を続け、豊洲駅前のバスプールに進入した。
敷島エージェンシーの最寄りでもある。
〔「豊洲駅前です。ご乗車ありがとうございました」〕
乗降客がいる為、前扉と中扉の両方が開く。
かつての都営バスは中扉もグライドスライドドアという車両があったが、今は見受けられず、引き戸タイプになっている。
で、そこからの乗客の中には……。
初音ミク:「たかお社長、お疲れさまです」
敷島:「よっ、お疲れさん」
ミクが乗って来た。
もちろん今は有名アイドルになっている為、変装している。
シンボルでもあるツインテールを下ろし、帽子を被って眼鏡を掛ければ、まあ分からなくはなる。
頭に着けていた、これまたよく目立つ赤に近いピンク色の髪留めについては両腕に嵌めている。
〔発車します。お掴まりください〕
ミクは着席せず、エミリーもまた少し混んで来たので席を立った。
初音ミク:「バスで行くのはわたし達だけですか?」
敷島:「後でMEIKOが東京駅からやってくるよ。相変わらず、ホテルのディナーショーに呼ばれることが多い」
〔毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは月島駅前、リバーシティ21経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は豊洲二丁目、豊洲二丁目。……〕
[同日23:00.天候:曇 JR東京駅八重洲南口]
終点の東京駅八重洲口には、だいたいダイヤ通りに着けたものと思われる。
ここはJRバスなどの高速バスが発車するターミナルの一部でもあり、そこから乗るのであればとても便利だ。
しかし敷島達が乗ろうとするバスは、ここからではない。
ここに来たのには、理由があった。
MEIKO:「社長!……それと、エミリーとミク!」
社長:「よお、お疲れさん」
MEIKO:「どうしたの?直接乗り場で待ち合わせじゃなかった?」
社長:「どうせ都営バスがそこに着くんだし、だったらここで合流して乗り場まで一緒に行こうと思ったんだ」
MEIKO:「へえ……」
社長:「まあ、ちょっとまだ時間があるから、少し時間調整するけどな」
敷島はニヤッと笑った。
[同日23:30〜23:40.天候:曇 東京駅八重洲通り→東北急行バス“ニュースター”号車内]
(写真拝借:“バスターミナルなブログ”様「東北急行バス スイート号」より。尚、写真は“スイート”号です)
バスの乗り場に向かうと、1台のバスが停車していた。
敷島:「久しぶりに夜行バスに乗るなぁ……。こっちの方が旅って感じだ」
エミリー:「そうですね」
エミリーは大の男でも両手で持つようなスーツケースをバスの荷物室に預けた。
両手で持っていたのは、別にエミリーにとって重いからではなく、バランスを支える為である。
乗車券を手に車内に乗り込む。
高速バスでは珍しいスーパーハイデッカーであるが、窓のカーテンは全部引かれている。
独立3列シートが並ぶが、席が確保されていたのは敷島が前から3列目のトイレの前、エミリーがその隣、ミクが敷島の前、MEIKOがミクの隣という感じであった。
MEIKO:「お、充電コンセントある。社長、これって充電していいの?」
敷島:「ああ。交流100V用のコンセント使えよ」
MEIKO:「もちろん」
ミク:「わたしも充電します」
MEIKO:「エミリーはいいの?何か、あんたが充電したらバスのバッテリー上がりそうな気がするけど……」
エミリー:「私は家を出る前に、バッテリーを交換してきたから大丈夫だ」
これだけなら、他の乗客達はスマホやタブレットなどの充電の話と思うだろう。
もちろん実際はそうではなく、ボカロ自身のバッテリーのことである。
彼女らはダンスも行う為、軽量化の観点からバッテリーを今現在は1つしか搭載していない。
これは正・副・予備の3つのバッテリーを搭載しているマルチタイプとは大きな違いだ。
もちろん、緊急の為に交換用のバッテリーは持ち歩いている。
敷島:「じゃ、後ろ倒しまーす」
MEIKO:「社長の後ろ誰もいないって」
敷島:「おっと!俺としたことがとんだボケを……。真ん中にトイレって、ちょっと違和感あるよなぁ……」
スーパーハイデッカーという車体の構造のせいだろうか。
MEIKO:「じゃ、私も倒すわね」
エミリー:「ちょっと待て。お前は倒す必要無いだろう」
MEIKO:「ちっ……」
敷島:「別にいいだろう、エミリー。カタいこと言わなくても。ていうか、お前が前に座っていた方がいいんじゃないのか?」
エミリー:「いえ。私はあくまでも、社長の護衛が第一ですので」
MEIKO:「衝突事故くらい、私達は平気だからね。バージョン達が襲って来た時くらいは助けてよ」
エミリー:「歌でも歌えば回避できるのではないか?」
敷島:「バージョンが出てくる度に歌を歌ってたんじゃキリが無いだろ」
夏休みということもあってか、バスは満席状態で出発した。
敷島:「毛布もあるし、プライバシーカーテンもある。消灯したら、先に寝かせてもらうよ」
エミリー:「はい」
敷島:「ていうかお前達も、カーテン閉めておけよ。電源ランプ」
ミク:「ああ……」
MEIKO:「確かに」
明るい所では分からないが、暗い所だと彼女達の目などに仕掛けられた電源ランプなどが淡く光って見えるので、そこでメカバレしてしまうからである。
私が以前乗った群馬中央バスの大阪便は4列シートでしたからね。
寝れないのなんのって・・・
初心者にはきつかったですね。
おしぼりサービスもないし、運転手の態度も冷たかったし・・・。
私がまだ学生の頃は東北急行バスに3列シートが無かったのですが、それ以外は豪華な設備で、バス旅にハマる原因になりましたね。
東日本大震災直後まで運行されていた日本中央バスの“ミリオンライナー”号夜行便は3列シートで、乗務員の態度も良かったんですけどね。
同じ群馬県でも、バス会社でだいぶ違うんですね。