[8月12日11:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 勾当台公園]
初音ミク:「仙台の皆さーん、こんにちはーっ!初音ミクでーす!」
鏡音リン:「ボーカロイドのセクシィ美少女担当、鏡音リンでーっす!」
鏡音レン:「鏡音レンです。今日はボク達の野外ミニライブに来て下さって、本当にありがとうございます」
野外ステージでミクとリン、レンがマイクを取る。
リン:「そんじゃ早速、始めちゃうYo!リン達、ボーカロイドの基本曲!せーの……」
ミク・リン・レン:「“千本桜 Sendai Version”!」
ステージ裏では……。
敷島:「よし。出だしはOKだな」
スタッフ:「敷島エージェンシーさん、ちょっといいですか?」
敷島:「はい、何でしょう?」
スタッフ:「MC後の捌けの動きなんですけど……」
敷島:「はいはい」
今回敷島についているのはエミリー。
エミリーに寄せられたファンレターには概ね好意的なことが書かれていたが、シンディにあっては、未だに前期型の反省を求める声が多く寄せられていた。
これについて、敷島はマスコミの取材にこう答えたことがある。
敷島:「例えばあなたが車を飲酒運転していたところ、歩行者を轢き殺してしまいました。その車は人の血を吸った曰く付きの車ということになり、廃車になりました。しかしあなたは刑務所を出所後、再び免許を取って同じ車種の車を買いました。その車は悪いですか?」
というもの。
敷島:「車は悪くないでしょう?悪いのは飲酒運転したドライバーですね。後期型のシンディを憎むというのは、飲酒運転したドライバーではなく、事故後に買われた新車を憎むようなものです。シンディを使って殺人テロを起こしていたウィリーは、奇しくもその車に轢き殺される(暴走した前期型シンディに惨殺される)という大罰が下りました。それでも被害者の皆さんの鎮魂の為、当時のJARA財団は前期型シンディを捕らえ、スクラップ工場に送って『死刑』を執行しました。後期型のシンディって悪いですか?」
と、続けた。
エミリー:「あの、社長」
敷島:「どうした?」
エミリー:「シンディの件なんですが……」
敷島:「シンディがどうした?」
エミリー:「昨日のライブの時の手紙と、未だに非難の手紙が来ることを気にしているようです」
敷島:「そうか。人間の中でも、感情でしか動けないヤツがそんなことしてくるんだよな。もっとも、その感情に訴えてファンを獲得する俺達が言える権利は無い。シンディには申し訳無いが、それで苦しむのも贖罪の1つだと思ってもらいたい。何故俺が、あえて前期型のメモリーやデータをそのまま移すことを訴えたのかというと、それも大きな理由の1つなんだ」
エミリー:「はい」
ミク:「ありがとうございましたー!」
リン:「イェーイ!皆、乗ってるぅ〜?」
レン:「リン、真面目にやろうよ!……すいません、姉がフザけて……」
しかし、観客からは笑いが起こる。
リン:「夏なのに季節外れの歌、歌っちゃったねぃ!んじゃ、今度はみくみくが夏ならではの歌、皆に送っちゃうYo!」
レン:「ノリやすい曲だと思うので、皆さん楽しんで聴いてください。それでは……」
リン・レン:「“Earth Day”!」
リンとレンが下手に捌け、代わりにミクが上手からやってくる。
ミク:「天文学と理論思考♪瞑想中の頭ん中♪」
ミクの歌に合わせて、最前列のファン達がヲタ芸を始めるほど。
敷島:「よしっ、2人ともお疲れさん」
ステージ裏に戻ってきた鏡音姉弟を迎える敷島達。
これが人間のアイドルなら汗拭きタオルでも持ってくるところだが、ボーカロイドにはそんなものは不要である。
ただその代わり……。
エミリー:「早く体冷やして!」
アイスノンの保冷剤や氷の入った袋を持ってくる。
ボーカロイドもアンドロイド。
他の精密機械と同じく、熱は大敵なのである。
レン:「はいはい」
リン:「ふぅーっ、氷冷たーい!てか、水浴びしたーい」
敷島:「水浴びなぁ……」
レン:「リン、水浴びならプールで水着グラビアの仕事してるじゃないか?」
リン:「えーっ?だってあれお仕事だもん!」
敷島:「エミリー、ホテルにフィットネスでプールとか無かったか?」
エミリー:「確か、ホテルメトロポリタン仙台にそれは無かったと思います」
敷島:「そうか。そこらの市民プールじゃ、さすがに目立つもんなぁ……」
リン:「海は?昔、一緒に行ったじゃん!」
敷島:「あの時は今ほど売れて無かっただろ?だからまだ良かったんだけど、あとはあれ、表向きはボーカロイドの海水耐用実験ってのもあったし」
[同日12:00.天候:晴 勾当台公園]
ミク:「ありがとうございましたー!」
リン:「ありがとうございましたー!」
レン:「ありがとうございました!」
そこでリンが一歩前に出る。
リン:「みんなーっ!」
敷島:「ん?」
エミリー:「あいつ、また何か……」
エミリーが眉を潜めた。
リン:「リン、私……すっごく、楽しぃーっ!!」
リンの最後の言葉に、大勢のファンから歓声が上がった。
そして、ステージ裏へ。
ミク:「リン、最後の凄く良かったよ!」
レン:「何か、1番美味しい所、リンに持って行かれた気がするなぁ」
リン:「しょ、しょうがないでしょ。自然と口から出ちゃったんだから」
敷島:「皆、よくやったぞ」
リン:「んっふっふ〜。グッズの売り上げは順調でしたかな〜?」
レン:「そういうメタ発言はやめようよ」
敷島:「ははは……。何だろ。さっきのリンのセリフには驚かされたけど、むしろ今のメタ発言の方がしっくり来るのは……」
ミク:「それより、次の現場がありますよね?」
敷島:「ああ。ミクは……」
敷島達はミク達の次の現場を確認した。
リン:「次の現場も来てくれるの?」
敷島:「悪い。今度はエミリー達も仕事が入ってるんだ。科学館で、『マルチタイプの演奏会』」
リン:「おおっ!」
レン:「秘書に護衛にメイドに演奏と、マルチタイプの方が大変だね」
エミリー:「マルチタイプの宿命だ。マスターに求められることは何でもする」
リン:「だから高いんだね。リン達は10億円くらいだけど」
レン:「だからそういうメタ発言……」
エミリー:「バッテリーを交換したら、次の所へ行け。社長の昼食の時間が無くなる」
敷島:「おっ、それは困るな」
エミリー:「私は引き続き護衛をさせて頂きますので」
敷島:「あー、そいつは助かるよ。(国分町はすぐそこなのに……)」
初音ミク:「仙台の皆さーん、こんにちはーっ!初音ミクでーす!」
鏡音リン:「ボーカロイドのセクシィ美少女担当、鏡音リンでーっす!」
鏡音レン:「鏡音レンです。今日はボク達の野外ミニライブに来て下さって、本当にありがとうございます」
野外ステージでミクとリン、レンがマイクを取る。
リン:「そんじゃ早速、始めちゃうYo!リン達、ボーカロイドの基本曲!せーの……」
ミク・リン・レン:「“千本桜 Sendai Version”!」
ステージ裏では……。
敷島:「よし。出だしはOKだな」
スタッフ:「敷島エージェンシーさん、ちょっといいですか?」
敷島:「はい、何でしょう?」
スタッフ:「MC後の捌けの動きなんですけど……」
敷島:「はいはい」
今回敷島についているのはエミリー。
エミリーに寄せられたファンレターには概ね好意的なことが書かれていたが、シンディにあっては、未だに前期型の反省を求める声が多く寄せられていた。
これについて、敷島はマスコミの取材にこう答えたことがある。
敷島:「例えばあなたが車を飲酒運転していたところ、歩行者を轢き殺してしまいました。その車は人の血を吸った曰く付きの車ということになり、廃車になりました。しかしあなたは刑務所を出所後、再び免許を取って同じ車種の車を買いました。その車は悪いですか?」
というもの。
敷島:「車は悪くないでしょう?悪いのは飲酒運転したドライバーですね。後期型のシンディを憎むというのは、飲酒運転したドライバーではなく、事故後に買われた新車を憎むようなものです。シンディを使って殺人テロを起こしていたウィリーは、奇しくもその車に轢き殺される(暴走した前期型シンディに惨殺される)という大罰が下りました。それでも被害者の皆さんの鎮魂の為、当時のJARA財団は前期型シンディを捕らえ、スクラップ工場に送って『死刑』を執行しました。後期型のシンディって悪いですか?」
と、続けた。
エミリー:「あの、社長」
敷島:「どうした?」
エミリー:「シンディの件なんですが……」
敷島:「シンディがどうした?」
エミリー:「昨日のライブの時の手紙と、未だに非難の手紙が来ることを気にしているようです」
敷島:「そうか。人間の中でも、感情でしか動けないヤツがそんなことしてくるんだよな。もっとも、その感情に訴えてファンを獲得する俺達が言える権利は無い。シンディには申し訳無いが、それで苦しむのも贖罪の1つだと思ってもらいたい。何故俺が、あえて前期型のメモリーやデータをそのまま移すことを訴えたのかというと、それも大きな理由の1つなんだ」
エミリー:「はい」
ミク:「ありがとうございましたー!」
リン:「イェーイ!皆、乗ってるぅ〜?」
レン:「リン、真面目にやろうよ!……すいません、姉がフザけて……」
しかし、観客からは笑いが起こる。
リン:「夏なのに季節外れの歌、歌っちゃったねぃ!んじゃ、今度はみくみくが夏ならではの歌、皆に送っちゃうYo!」
レン:「ノリやすい曲だと思うので、皆さん楽しんで聴いてください。それでは……」
リン・レン:「“Earth Day”!」
リンとレンが下手に捌け、代わりにミクが上手からやってくる。
ミク:「天文学と理論思考♪瞑想中の頭ん中♪」
ミクの歌に合わせて、最前列のファン達がヲタ芸を始めるほど。
敷島:「よしっ、2人ともお疲れさん」
ステージ裏に戻ってきた鏡音姉弟を迎える敷島達。
これが人間のアイドルなら汗拭きタオルでも持ってくるところだが、ボーカロイドにはそんなものは不要である。
ただその代わり……。
エミリー:「早く体冷やして!」
アイスノンの保冷剤や氷の入った袋を持ってくる。
ボーカロイドもアンドロイド。
他の精密機械と同じく、熱は大敵なのである。
レン:「はいはい」
リン:「ふぅーっ、氷冷たーい!てか、水浴びしたーい」
敷島:「水浴びなぁ……」
レン:「リン、水浴びならプールで水着グラビアの仕事してるじゃないか?」
リン:「えーっ?だってあれお仕事だもん!」
敷島:「エミリー、ホテルにフィットネスでプールとか無かったか?」
エミリー:「確か、ホテルメトロポリタン仙台にそれは無かったと思います」
敷島:「そうか。そこらの市民プールじゃ、さすがに目立つもんなぁ……」
リン:「海は?昔、一緒に行ったじゃん!」
敷島:「あの時は今ほど売れて無かっただろ?だからまだ良かったんだけど、あとはあれ、表向きはボーカロイドの海水耐用実験ってのもあったし」
[同日12:00.天候:晴 勾当台公園]
ミク:「ありがとうございましたー!」
リン:「ありがとうございましたー!」
レン:「ありがとうございました!」
そこでリンが一歩前に出る。
リン:「みんなーっ!」
敷島:「ん?」
エミリー:「あいつ、また何か……」
エミリーが眉を潜めた。
リン:「リン、私……すっごく、楽しぃーっ!!」
リンの最後の言葉に、大勢のファンから歓声が上がった。
そして、ステージ裏へ。
ミク:「リン、最後の凄く良かったよ!」
レン:「何か、1番美味しい所、リンに持って行かれた気がするなぁ」
リン:「しょ、しょうがないでしょ。自然と口から出ちゃったんだから」
敷島:「皆、よくやったぞ」
リン:「んっふっふ〜。グッズの売り上げは順調でしたかな〜?」
レン:「そういうメタ発言はやめようよ」
敷島:「ははは……。何だろ。さっきのリンのセリフには驚かされたけど、むしろ今のメタ発言の方がしっくり来るのは……」
ミク:「それより、次の現場がありますよね?」
敷島:「ああ。ミクは……」
敷島達はミク達の次の現場を確認した。
リン:「次の現場も来てくれるの?」
敷島:「悪い。今度はエミリー達も仕事が入ってるんだ。科学館で、『マルチタイプの演奏会』」
リン:「おおっ!」
レン:「秘書に護衛にメイドに演奏と、マルチタイプの方が大変だね」
エミリー:「マルチタイプの宿命だ。マスターに求められることは何でもする」
リン:「だから高いんだね。リン達は10億円くらいだけど」
レン:「だからそういうメタ発言……」
エミリー:「バッテリーを交換したら、次の所へ行け。社長の昼食の時間が無くなる」
敷島:「おっ、それは困るな」
エミリー:「私は引き続き護衛をさせて頂きますので」
敷島:「あー、そいつは助かるよ。(国分町はすぐそこなのに……)」