報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「上りの旅」 Final

2017-08-10 19:30:54 | アンドロイドマスターシリーズ
 敷島達を乗せた“はやぶさ”38号は順調に運転を続けている。
 新函館北斗発が18時36分で、下車駅の大宮着は22時38分という約4時間の新幹線旅である。
 その間、車中では何も無いので、それまでに出て来た用語を少し解説したいと思う。

 四季グループ:

 グループの持ち株会社である(株)四季ホールディングスを頂点に、数十もの関連企業を持つ総合芸能企業。
 本社は東京都豊島区池袋。
 名前は創業者一族である敷島家の“敷”→“四季”としたもの。
 因みに言っておくが、JR東日本の“四季島”もまた日本の古い国名“敷島”の敷を四季に置き換えたものであるが、こちらのネタの方が先であるので誤解の無いように!
 映画制作会社もグループの屋台骨として存在する大企業である。
 ホールディングスの会長に敷島孝夫の伯父である敷島峰雄、社長に叔父の敷島俊介がいる。
 他にも大叔父などが役員名簿に名前を載せていたりするのだが、顧問とか相談役などに就いており、あまり顔は出していないもよう。
 グループ内でも一、二を争う四季エンタープライズはアイドル事業部門においての売り上げが高い。
 創業者は敷島孝之亟。
 元々はストリップ劇場を運営する会社から始まった。
 尚、グループ会社の中には元々単立だったり、他の企業グループに所属していたものが四季グループに吸収したり、合流したりしたものもある。
 敷島俊介の後押しを受けて設立された敷島エージェンシーも、このようなグループ企業の1つである。
 敷島エージェンシーの経営状態によっては、四季エンタープライズに吸収し、ボーカロイド部門として活動させることも視野に入れられている。
 他に存在が確認されているグループ企業には、(株)敷島不動産がある。
 恐らく、グループ企業の不動産管理を一手に引き受けている企業と思われる。

 “オホーツク旅情歌”:

 初音ミクの持ち歌の1つであるバラード。
 作曲は彩木雅夫氏、作詞は鈴木宗敏氏、編曲はHIROMU氏。
 作中ではストーリーの進行上、歌詞の中に重大なものが隠されているという設定だった。
 本来はアルバム“彩木雅夫 feat.初音ミク 手紙 -Letter-”の中に収録されている曲の1つ。
 彩木雅夫氏は“長崎は今日も雨だった”などの作曲者でもあるが、近年はボーカロイド(特に初音ミク)の持ち歌も作っているもよう。
 その為、先述のアルバムに収録されている曲の殆どが昭和の歌謡曲風のものである。
 MEIKOが歌う“モーニング・ブルース”もあるが、当作品でもディナーショーの時によく歌うという設定で使用させて頂いている。
 作中では、オホーツク海に向かっては初音ミクが海中投棄された場所、内陸に向かってはマザーブレインが眠っている場所を指した歌だとされた。

 ※歌謡曲繋がりで、“森ヶ崎海岸”を使わせて頂こうかなと思ったのだが、後でんっ?さんに怒られそうだったので辞めた。
「“森ヶ崎海岸”を歌謡曲とは何事だ!」
 と怒られそうだったので。
 いや、でも何度聴いても、あれ歌謡曲にしか聴こえないんだよなぁ……。
 実際、学会の合唱団でも1人ずつソロで歌うことがあるみたいだし。
 

 バージョン4.0の5.0改造機:

 KR団のアジトの大爆発から敷島を守り抜いたバージョン4.0の一種。
 見た目は5.0のようにスマートなものだが、4.0の部品をほぼ流用していることから、純粋な5.0とは認められていない。
 4.0は確認されているだけで、500〜600機ほど製造されたということなので、型番に1000を足すようになっている。
 敷島を助けた機種は333号機であった為、ボディにはそれに1000を足した1333号機とされた。
 在来機種と違って知能は高く、5.0のように滑らかな口調で言葉を喋る。
 1333号機が敷島を助けたのは、かつて普通の4.0だった頃、エミリーに命を助けてもらったから。
 エミリーとしては早く敷島と合流したかった為、たかだかザコロボットには目をくれなかっただけと思われるが、それが数年後、敷島を助けることになる。
 現在は北海道の農家に引き取られ、農作業ロボットとして稼働しているもよう。

 マザーブレイン:

 マルチタイプの試作機とされたロイド。
 しかし、エミリーやシンディには家族意識が無かった。
 マザーの実験データを基に量産機であるエミリー達が作られたことから、マルチタイプの母ということでマザーと呼ばれた。
 最終的にはアジトの自爆装置が働き、大爆発に巻き込まれたことで大損傷。
 エミリーに頭部だけ回収された。
 現在、内部の解析が行われているもよう。

 電気鞭:

 元々はシンディが部下のバージョン・シリーズを従える為に使用していたもの。
 普段は腰のベルト代わりに巻いている。
 電力の出力は調整可能のようで、ロイドであっても放電状態の鞭で叩かれれば感電してしばらくの間、動きが取れなくなる。
 ロボットサーカス団の団長も似たような鞭を使用していたことから、ロボットに携わる関係の所に流通しているようである。
 マルチタイプにおいては銃火器の使用が禁止された為、飛び道具としては光線銃に切り換えられ、近接戦用として電気鞭ということにするようである。

[同日22:38.天候:晴 JR東北新幹線“はやぶさ”38号9号車内→JR大宮駅]

 南下を続けていた列車だったが、左手にもう一本の線路が並行してくる。
 上越・北陸新幹線用の線路だ。
 更にその高架橋の外側に“ニューシャトル”の軌道が並行してくると、大宮到着はもうすぐである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。大宮の次は、上野に止まります〕

 深夜ともなると、乗換案内をしなくなる自動放送。
 この時点で、もう北陸新幹線の終電は終わっているからというのもある。

〔「大宮でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。14番線到着、お出口は左側です。大宮からのお乗り換えをご案内致します。北陸新幹線は、本日の運転を終了しております。上越新幹線下り、Max“たにがわ”417号、越後湯沢行きは18番線から、22時54分。……」〕

 エミリー:「シンディ、そろそろお2人を起こせ」
 シンディ:「はいはい」

 通路を挟んだ隣の席に座る敷島夫妻は、すっかり寝落ちしていた。

 シンディ:「博士、社長。もうすぐ到着ですよ」
 アリス:「Mmm……」
 敷島:「おっ、つい寝落ちしてしまった」

 敷島とアリスは大きく伸びをした。

 敷島:「本当に1日掛かりだったなぁ……」
 エミリー:「そうですね」
 シンディ:「博士、大丈夫ですか?」
 アリス:「腰が痛ェ……(>_<)」
 敷島:「何だい、まだ20代なのにだらしないな」
 アリス:「うるさいわね」

 車窓に大栄橋と『カニトップ』の看板が見えて来たら、そろそろデッキに移動した方が良い。
 列車はホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 敷島:「久しぶりに帰ってきたなぁ……」

 ホームの中を湿った風が吹き抜ける。

 アリス:「なに感傷に浸ってるのよ。早く帰って、トニーの顔でも見なさいよ」
 敷島:「おっ、そうだった」
 エミリー:「タクシー乗り場はあちらです」
 敷島:「ああ」

 敷島達は改札に向かう階段を降り始めた。

 敷島:「! あれは何だ!?」

 敷島は下り方向を指さした。
 中央の臨時ホームから出発していった下り列車だと思われるが、後ろ姿が200系!?

 アリス:「何よ、いきなり……」
 シンディ:「何も見えませんが?」
 エミリー:「何かありましたか?」
 敷島:「気のせいか?」
 エミリー:「旅の疲れと眠気で、幻をご覧になったのでは?」
 敷島:「そ、そうかな……。(そういえば北陸新幹線の終電が終わったって言ってたな……)」
 アリス:「早く帰ろう。私も疲れたよ」
 敷島:「ああ」

 『最終電車』の運転はまだ終わっていない。
コメント (4)
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“Gynoid Multitype Sisters” 「最終電車」 北海道新幹線

2017-08-10 15:47:06 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月31日18:30.天候:晴 JR新函館北斗駅・北海道新幹線ホーム]

 上りの東京行き最終列車“はやぶさ”38号が11番線に停車している。
 敷島はホームに降りて、自分のスマホで会社に電話していた。
 バックボーンである事務職は既に就業時間は過ぎているのだが、ボーカロイド達は『倉庫』に保管しているからだ。

 鏡音リン:「ハイ、お掛けになった電話番号は現在使われてませんYo〜!」
 敷島:「そうか。そいつは残念だ。また後で掛けるとしよう」
 リン:「どわわーっ!?社長!?」
 敷島:「仕事は終わったのか?」
 リン:「うん!あのねあのね、リン頑張ってるYo!今日はねぇ、新しいCDジャケの撮影したんだYo!リンも夏真っ盛りのきわどいビキニ着たからね!」
 敷島:「(白と黄色のチューブブラに、せいぜいデニムのショートパンツを上にはいてるってとこか……)そうか、そりゃ感心だなぁ。後で頭を撫でてやろう」
 リン:「エヘヘ……」
 敷島:「事務所には他に誰もいないのか?井辺君とかは?」
 リン:「IP君(リンの井辺に対する新しいニックルネーム。Inobe Producerから)ね、めーりん(MEIKO)とりりん(Lily)の仕事に立ち会ってるよ」
 敷島:「そうか。新しいユニットを組んだって聞いたな。それまでの枠に囚われない、新しい流れか。四季エンタープライズのノリだが、悪くは無いのか」
 リン:「そうだね!……おっと!ちょっとちょっと……」
 敷島:「ん?どうした?」

 電話の向こうで何かあったようだ。
 そこへ、こちらも12番線に下り列車が到着したことで、急に賑やかさが増す。

 初音ミク:「あ、あのっ、たかおさん……!」
 敷島:「おっ、ミクか。北海道では色々ありがとうな」
 ミク:「いえ。今、帰ってらっしゃるところなんですか?」
 敷島:「ああ。今、新函館北斗駅だ。これから新幹線に乗って帰るよ。といっても、終電だから着くのは夜になるからな。取りあえず今日は家に帰るから、明日そっちに顔出すよ」
 ミク:「はい。お待ちしてます……」
 敷島:「じゃあな」

 敷島はピッと電話を切った。
 下り列車の乗客達が在来線乗り換え改札口へと殺到する為、それと直結している11番線ホームも賑やかになる。

 敷島:「増えたなー、メイドロイド」

 メイドロイドの多くは、メイド服を着ているのですぐに分かる。
 敷島がグリーン車の9号車に戻ると、既に隣に座っているアリスが弁当を食べていた。

 敷島:「もう食ってるのか」
 アリス:「お腹空いたんだもん」
 敷島:「食ってる割には、太らないのが助かるけどな」
 アリス:「科学館の地下に、フィットネスルームができたの。それで運動もしてるしね」
 敷島:「金持ってんなぁ、DCJ……」

 エミリーとシンディは、通路を挟んで隣の席に座っている。
 座席のコンセントにコードを繋いで充電をしていた。

 敷島:「まあいいや。俺も食うか」

 敷島はホタテやイクラなどの海産物をふんだんに使った駅弁の蓋を開けた。

 敷島:「あー、そうか」
 アリス:「なに?」
 敷島:「この前、アメリカに行った時さ……。せっかくだから、向こうの列車に乗ってみても良かったな」
 アリス:「アムトラック?」
 敷島:「そう、それ。駅弁はやっぱりデッカいステーキでも入ってるヤツとか……」
 アリス:「え?そんなの聞いたことないよ」
 敷島:「ん?」
 アリス:「いや、だからアメリカじゃ、こういうの売ってないって」
 敷島:「そうなのか!」
 アリス:「駅弁が無い代わりに、向こうはダイニングカー(食堂車)があるけどね」

 日本では食堂車が廃止された代わりに、駅弁が充実化した。
 大陸などの長距離列車は本当に乗車時間が長い為、2食以上分の食料は確保しなくてはならない。
 その為、一食分だけの駅弁だけでは却って効率が悪い。
 そういう場合、食堂車の方が良かったりする。

 そういうことを話しているうちに、当日最終の東京行きが発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR北海道をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は北海道新幹線、“はやぶさ”号、東京行きです。次は、木古内(きこない)に止まります。……〕

 敷島:「いいか?次の木古内駅をよしんば通過したら、まずは最後尾の乗務員室を目指すぞ」
 アリス:「また夢の話?いい加減にしてよ」
 シンディ:「大丈夫ですよ、社長。今回は私達がいますから。いざとなったら、私達が何とかしますわ」
 敷島:「そうだな。お前達がいれば、ドアもこじ開けられるし、列車も強制停車させられるだろう」
 シンディ:「はい、お任せください」
 アリス:「エマージェンシーの時だけにしてよ、それは」

 駅弁を食べ終わったアリスは、ペットボトル入りの紅茶を飲んだ。
 偏見かもしれないが、コーラより紅茶を飲みたがる辺りから、やはりアリスはイギリス出身ではないかと思う敷島だった。

[同日18:49.天候:晴 JR北海道新幹線“はやぶさ”38号9号車内]

 外はだいぶ暗くなってきた。
 いかに夏とはいえ、さすがにもう暗くなる時間だろう。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、木古内です。道南いさりび鉄道線は、お乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。木古内の次は、奥津軽いまべつに止まります〕

 列車が速度を落として行く。
 東京行き最終列車ということもあり、北海道新幹線内は各駅に止まる列車である。

 敷島:「通過したらお前達の出番だぞ」
 エミリー:「はい!」
 シンディ:「お任せください!」
 アリス:「タカオの精神世界では、クルーもアナウンスも無いミステリートレインだったわけでしょう?これは違うわよ」

 アリスは呆れた顔をした。
 因みに先ほど、ちゃんと車掌が巡回に来たし、新函館駅で乗り込む際にアテンダントの姿も見えた。
 尚、昔はグリーン車にもシートサービスがあったのだが、今はグランクラスのみとなっている。

 で、ちゃんと列車は木古内駅に停車した。

 アリス:「ほら、見なさい。ちゃんと止まったでしょ?」
 敷島:「いや、これはほんの序の口だ。大宮駅を通過したら……」
 アリス:「シンディ、ちょっと頭に電気ショックが必要かもよ、こいつ」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「こらこらこら!」

 楽しい上りの旅を満喫しているようである。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「上りの旅」 3

2017-08-10 12:39:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[月日不明 時刻不明 天候不明 東京都江東区東雲 マンスリーマンション]

 敷島:「お?今日はシンディが俺の当番か」
 シンディ:「はい。姉さんがオーバーホールに入りましたので、私が代理です」
 敷島:「まあ、以前はお前がメインだったんだがな。それにしても珍しいな。お前がゲームやってるなんて。リンとレンはよくやってるけど」
 シンディ:「ええ。そのリンから借りてきました」
 敷島:「で、何のゲーム?」
 シンディ:「“スーパーロボットハンター”です」
 敷島:「自虐か!」
 シンディ:「いや、別にそこは所詮ゲームですから」
 敷島:「お、気持ちいいくらいにスッパリだな」
 シンディ:「割り切りは現代社会に必要なアイテムです。姉さんもそのように言ってましたし」
 敷島:「さすがは同型の姉妹機だな。設定された性格は違うものの、思考は同じか」
 シンディ:「それに、プレイヤーの名前を社長にしていますので、ダメージを与える度に私を攻めて下さっているような気がして……」
 敷島:「高度なマゾプレイだな!……てかお前、本来は完璧なドSだろ?本当ならプレイヤーの名前はお前自身にして、あのザコロボット達をブッ壊して行くのがセオリーだろうが。……あっと、そこでボス戦か。ボスは何だ?……あー、人間型のロイド。……うーむ、金髪ロングに碧眼の所がお前そっくりか……」
 シンディ:「そうなんですよ!セーブしてやり直しして、何度もヤッてるんです!」
 敷島:「無限ループか!」
 シンディ:「な、何とも言えない快感が……」

 と、プレイヤーキャラ、ボスの女ロイドから顔面に銃撃を受ける。

 シンディ:「下等で愚かなロボットよ!社長の顔に傷を付けるとはいい度胸だ!その罪、鉄塊と化して償うがいい!!」

 シンディ、両目をギラリと鋭く光らせる。

 敷島:「おい!いきなりキャラ変えるな!……つか、俺じゃねーし!」
 シンディ:「何でしたら現実に嬲って頂いても構いません。いや、むしろお願いします。さあ、この電気鞭で私を引っ叩いて!」
 敷島:「だが断る!」
 エミリー:「ちょっと待った!」

 エミリー、玄関のドアを蹴破って入って来る。

 エミリー:「社長、シンディは所詮私の代理!今しがた研究所で、私用の電気鞭を作ってもらいました!私から先にこれで引っ叩いてください!」
 シンディ:「ダメ!私が先よ!」
 エミリー:「社長!これで私を!」
 シンディ:「私にはローソクを垂らして頂いても構いませんわ!」
 エミリー:「ならば私は亀甲縛りを!」
 シンディ:「さあさあ!」
 エミリー:「さあさあ!」
 シンディ:「さあさあ!」
 エミリー:「さあさあ!」
 敷島:「わーっ!」

[7月31日18:05.天候:晴 JR函館本線特急“スーパー北斗”16号3号車内→JR新函館北斗駅]

 敷島:「わっ!」

 そこで目が覚める敷島。

 アリス:「びっくりした。なに?どうかした?」

 隣の席に座るアリスが目を丸くして敷島を見た。

 敷島:「戦ってる夢を見た。丸腰なのに、クソ化け物のように強いロボット2機に追い詰められて……」
 アリス:「もうKR団は完全に崩壊したわ。KR団と手を組んでいた極左ゲリラとか、国際テロ組織も次々摘発されてる。だからもう何も心配することも無いのよ」
 敷島:「あ、ああ。そうだな」

〔♪♪♪♪。まもなく新函館北斗、新函館北斗に到着致します。北海道新幹線は、お乗り換えです。新函館北斗の次は、五稜郭に止まります〕

 アリス:「ちょうどそろそろ駅に着く頃ね。良かったわね。シンディに起こされなくて」
 敷島:「なに?」
 シンディ:「社長、奥様が私に、『普通に起こして起きなかったら、電気ショックで起こせ』との御命令でした」
 敷島:「殺す気か!」

 エミリーは荷棚に置いたキャリーバッグを軽々と下ろした。
 その際、左手からギギギと金属の擦れる音がする。

 敷島:「エミリー、左腕どうした?」
 エミリー:「中の部品が……」
 アリス:「動き自体は悪くないみたいね。分かった。明日、診てみましょう」
 エミリー:「お手数お掛けします」
 敷島:「それじゃ、しょうがないから、明日はシンディが代わりに俺と来てもらおう」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「あくまでエミリーの代理だから……あれ?」
 シンディ:「どうされました?」
 敷島:「いや……」

 一瞬、敷島の頭の中で、先ほどの夢がフラッシュバックで蘇った。
 列車が在来線ホームに滑り込む。

〔「ご乗車ありがとうございました。新函館北斗、新函館北斗です。北海道新幹線ご利用のお客様は、乗り換え改札口をご利用ください。東京行きの最終列車に接続しております。お乗り換えのお客様は、お乗り遅れの無いようお気をつけください。……」〕

 ここで降りる乗客は多い。
 もちろん、目当ては北海道新幹線だ。

 アリス:「ここで途中下車はしないの?」
 敷島:「しねーよ」
 アリス:「でも、お腹空いたんだけど」
 敷島:「車内で弁当のサービスが……ああっと!グリーン車は無いのか。グランクラスだけだ」
 エミリー:「シンディ、だから言っただろう?こういう所で差が出るんだ」
 シンディ:「でも、あまり予算を使うと本社から……」

 お金の計算はシンディの方がシビアらしい。
 エミリーの場合は必要とあらばと判断すれば、どんどん計上するのだが。
 その為、南里研究所時代は常に敷島が調整しなくてはならなかった。

 敷島:「まあまあ。それに、グランクラスの弁当は軽食サービスなわけだから、アリスは腹一杯にならんだろう」
 エミリー:「まあ、そうでしょうね」
 敷島:「あそこに弁当屋があるだろ。あれを買ってきてくれ」
 シンディ:「かしこまりました。何がいいですか?」
 敷島:「昼はジンギスカン食ったからな、今度は海鮮系で」
 アリス:「肉」
 シンディ:「かしこまりました」

 敷島は財布の中からシンディに紙幣を渡して買いに行かせた。

 敷島:「俺の今の指示、昔の七海だったら間違えただろうな」
 アリス:「なに?」
 敷島:「駅弁屋ごと買おうとする」
 アリス:「まさか、そんなことが……」
 エミリー:「いえ。昔の七海でしたら、その確率が高いです」
 アリス:「そうなの」

 そして、そこはマルチタイプ。
 ちゃんと敷島とアリスの希望通りの物を購入してきたのである。

 シンディ:「お飲み物までは購入しませんでしたが……」
 敷島:「あ、いや、それはいい。向こうの自販機で買うさ」

 4人は最北の新幹線ホームへと足を進めた。
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