報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「7月8日」 夜

2017-08-02 19:27:37 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月8日21:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家→タクシー車内]

 稲生:「よし。出発の準備はいいな」

 稲生は荷物を持って、2階の自室から1階に下りた。

 稲生:「失礼します。準備はいいですか?」
 マリア:「私は大丈夫」
 イリーナ:「私も」
 稲生:「それじゃ行きましょう。タクシーが来たみたいですし」
 イリーナ:「ういっす」

 両親に見送られながら、稲生達は家の前に止まっていたタクシーに乗り込んだ。

 稲生:「大宮駅までお願いします」
 運転手:「はい、大宮駅ですね」

 助手席に乗り込んだ稲生が、横にいる運転手に行き先を告げた。
 タクシーが走り出す。

〔「……今日午後4時頃、埼玉県さいたま市のJR大宮駅東口交番で、拳銃を持った男2人が銃刀法違反の現行犯で逮捕されました。逮捕されたのは、埼玉極道会の構成員【中略。どうせ通名だろう】で、不審な男2人がいるという通報から、警察官が駆け付けて職務質問したところ、男のうちの1人から拳銃が発見され、現行犯逮捕されたものです。この事件を受けて、組本部では【中略】。尚、容疑者達は拳銃の所持については認めているものの、『ロシアン・マフィアを警戒していた』『不良外国人の監視に当たっていた』と供述しているということで、埼玉県警大宮警察署では、埼玉極道会が海外マフィアとの取り引きに何らかの関わりがあるのではないかと見て、慎重に調べを進めています」〕

 タクシーのラジオではニュースが流れていて、たまたま稲生達が居合わせた逮捕劇が報道されていた。

 マリア:「師匠。ロシアン・マフィアですって」
 イリーナ:「ナスっちが、何か変な誤解でもされたかねぇ……」
 稲生:「まあ、見た目は確かにマフィアっぽいですもんね」
 マリア:「私よりも見た目ずっと年下の弟子がいるんですから、そういうのを見ればマフィアとは違うと分かりそうなものですが……」
 イリーナ:「いやあ、あんな不良外国人がぞろぞろいたら、日本人は警戒してジロジロ見たりしないんじゃない?」
 稲生:「確かに……」

 と、その時、稲生のスマホにメール着信があった。

 稲生:「ありゃ?アンナからのメールだ。なになに?……先生、今のアナスタシア先生が聞いてて、『誰が不良外国人だ!?ナスっち言うな!』と怒っているそうです」
 イリーナ:「あらあら。スルーでいいからね」
 マリア:「アンナから……? ちょっとユウタ、スマホ貸して」
 稲生:「あ、いや、でも……」
 マリア:「早く!」
 稲生:「は、はい」

 マリアは稲生からスマホを受け取ると、アンナの番号からメアドから全部消去した。

 マリア:「はい。2度とあいつのは登録しないでよ?
 稲生:「は、はい……」
 イリーナ:「ん〜!ユウタ君、モテ期来たねぇ……」
 マリア:「それは困ります」

[同日21:40.天候:晴 JR大宮駅]

 タクシーは大宮駅西口の車寄せに到着した。

 稲生:「あ、先生。カードは結構です」
 イリーナ:「いいの?」
 稲生:「父からタクシーチケットもらいましたので。……これで払います」
 運転手:「はい、どうぞ」
 イリーナ:「じゃあ、お言葉に甘えようかねぇ……」

 稲生は運転手から借りたボールペンで、チケットにメーターの額を記入した。
 チケットに額を記入するのは、乗客と決まっている。

 運転手:「ありがとうございました」

 タクシーを降りて、2階に上がるエスカレーターに乗る。

 稲生:「荷物を忘れずに取りませんとね」
 イリーナ:「おー、そうだった」
 マリア:「師匠、忘れてたんですか?」
 イリーナ:「い、いや、そんなことは無いよ」

 Suica式コインロッカーなので、稲生のSuicaを当てればすぐにロックが解除される。

 イリーナ:「よーし。早速これを荷物に詰めよう」
 稲生:「はい」
 マリア:「といっても、殆ど私の服とか靴とかばっかりだな。悪い、手伝ってもらって」
 稲生:「いえ、別にいいんですよ」

 イオンの袋の中には、昼間に買ったマリアのビキニが入っている。
 マリアの屋敷の地下にはプールがある。
 元々は魔法の実験場だったものだが、稲生の弟子入りに当たって、急いで改築された。
 その為、時々ダンテ一門の魔女達が避暑目的で泳ぎに来る。
 で、その度に稲生はシャットアウトされる(泳ぎに来たのがアンナやリリアンヌ、エレーナの時は除く)。

 稲生:「こんな所ですかね」
 マリア:「ありがとう」

 稲生がマリアのバッグに荷物を入れ終わった。

 イリーナ:「それじゃ、行くとしようか」
 稲生:「はい」

 ゴロゴロとキャリーバッグを引くマリア。
 その上には、ミク人形とハク人形が箱乗りしていた。

 イリーナ:「ん?」
 稲生:「はい?」

 改札口を通ってコンコース内。

 イリーナ:「埼京線で行かないの?」
 稲生:「いやあ、また冥鉄電車に乗せられると思うと……」
 イリーナ:「そんなこと無いって。だいたい、まだ最終電車の時間じゃないでしょ」
 マリア:「最終電車の時間であっても、あんな電車が走っていること自体がおかしいことですが……」
 イリーナ:「ユウタ君はどうするつもりなの?」
 稲生:「湘南新宿ラインを使おうかと……。今日は土曜日ですし、大船止まりの電車ならそんなに混んでないかなぁと……」
 イリーナ:「アタシもいるんだから、もうあんな勝手なことはさせないよ。もし乗せようものなら、電車ごと廃車決定の全損処分よ」
 マリア:「師匠なら本当にやりかねませんね」
 イリーナ:「それに、あの時はたまたま埼京線が狙われただけであって、他の路線が絶対安全とは限らないのよ?」
 稲生:「まあ、それはそうですが……」

 さあ、どうする?
 目的地はバスタ新宿。
 そこへ行く為にはどうしたらいい?

 ①イリーナに任せて埼京線に乗る
 ➁稲生の警戒を信じて湘南新宿ライン

(※この期に及んで、バッドエンドありの二者択一です)
コメント (3)
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“大魔道師の弟子” 「7月8日」 夕方

2017-08-02 12:11:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月8日15:20.天候:曇 JR大宮駅東口バスプール]

 稲生:「何だか曇って来ましたねぇ……」
 マリア:「ゲリラ豪雨ってヤツか」
 稲生:「そうです。傘、持ってないんですよ」
 イリーナ:「このローブは防水性もあるから、着ていれば濡れないよ」
 稲生:「ほんと便利なローブですね」

 稲生の家の近くまで行くバスの停留所に向かう。
 そこには既に、別の行き先の他のバス会社のバスが止まっていた。

 稲生:「このバスの後に出ますから」
 イリーナ:「ああ!確か、ユウタ君が電車の事故に巻き込まれた時に担ぎ込まれた病院へ行くバスだね」
 稲生:「そうです」

 
(稲生を病院送りにした電車。何気にこれも最終電車だったりする。京浜東北線の場合は、“魔の者”からの揺さぶりが原因だった)

 稲生達がバスを待っている間、その様子を見ていたのは……。

 サブ:「見つけたぞ!アネさんを泣かしやがった不良外人!殺す!」

 ジャキッとハンドガンをスーツのポケットから……。

 タツ:「待て待て!すぐそこにポリが居んだろが!」

 大宮駅東口交番のこと。

 タツ:「昔と違って、そうバンバン撃てるかよ」
 サブ:「アニキ!」
 タツ:「あいつらがどこに向かうのか確認してからだ。分かったか!?」
 サブ:「う、うス!」

 と、そこへ黒塗りの車が3台ほどバスの後ろに並んだ。
 本来、一般車がバス・タクシープールに乗り入れるのは禁止である。
 やってきたのは黒塗りのゼロ・クラウン、アルファード、そしてエルグランドだった。
 真ん中のゼロ・クラウンから降りて来たのは……。

 イリーナ:「あーっ!ナスターシャ!」
 稲生:「アナスタシア先生!?」
 マリア:「マジか!」

 アナスタシア組の面々だった。

 アナスタシア:「あら?また変な所で会ったわね」
 イリーナ:「変な所で偶然再会する。魔道師の宿命よ」
 稲生:(確か、PRGでもそんな流れだったよなぁ……)
 マリア:「まだ慰安旅行の続きですか?」

 アナスタシア組の指定色は黒。
 だから組専用車も黒で統一されているし、服装も黒で統一されている。
 アナスタシア自身が黒のドレスコートだし、成人弟子は男女共に黒のスーツ、未成年弟子にあっては黒のブレザーである。
 黒の帽子を被っている者やサングラスを掛けている者もいた。

 サブ:「何スか、あれ!?どこの組っスか!?」
 タツ:「し、知らん。まさかのロシアン・マフィアか?こんな街中に堂々と!?」

 2人の下級構成員は浮足立った。

 イリーナ:「ここでナスターシャが新幹線に乗り換えるってことは、他の弟子達は車で都内へ戻るって寸法でしょ?」
 アナスタシア:「それはそうだけど……」
 イリーナ:「だったらついでに、アタシ達をユウタ君の家まで乗せてってよ」
 アナスタシア:「そうねぇ……」
 アンナ:「〜〜〜〜
 マリア:「はっ!?」

 車の中から稲生に熱い視線を送る魔女が1人。
 アンナはアナスタシア組の所属である。

 アナスタシア:「アタシと1番、2番弟子が降りるだけだから、車の定員が……」
 マリア:「そ、そうですよね!」
 イリーナ:「随分と大名旅行だったのね。いっそのこと、観光バスでもチャーターしたら良かったのに」
 アナスタシア:「うるさいわね」
 マリア:「師匠!予定を変更してはなりません!交通手段はユウタに任せるって言ったじゃないですか!」
 イリーナ:「確かにね。ユウタ君、これから乗るバスの運賃はいくら?」
 稲生:「あ、はい。通常運賃は180円だったかと」
 イリーナ:「ナスターシャだとその10倍は請求されるもんね」
 アナスタシア:「当たり前でしょ。こんな高級車に乗せてあげるんだから」
 稲生:(これよりグレードの低いクラウン・コンフォートの方がまだ安い)

 稲生はチラッとタクシー乗り場の方を見た。

 1番弟子:「先生、そろそろ新幹線の時間が迫っていますので……」
 アナスタシア:「ああ、そうだったわね」
 イリーナ:「そんじゃまあ、今回は諦めてバスにするよ」
 アナスタシア:「まあ、元々定員に余裕が無いからね。悪いね。じゃあ、代わりに。アンナ、あれ持って来て」
 アンナ:「はーい……」

 アンナは残念そうに車の中から化粧箱を持って来た。

 アナシタシア:「ほら、あんたが欲しかったヤツ。こっちで調達できたよ」
 イリーナ:「おおっ!ナスっち!持つべきモノは友達だわ!」
 アナスタシア:「ナスっち、言うな!」
 イリーナ:「じゃ、アタシからも……」

 イリーナはローブの中から、別の箱を渡した。

 イリーナ:「日本の物もなかなかモノは良くってよ」
 アナスタシア:「なるほど」

 その様子を遠くから見ていたサブとタツ。

 サブ:「アニキ!何か取引してますぜ!きっと中身は……!」
 タツ:「うーむ……。アネさんは、きっとどこかの強力な組織の女だとお見立てだったが、やっぱりそうか。あいつら、ロシアン・マフィアだ」
 サブ:「ど、どうします?ここは1つ、特攻……!」

 ジャキッとハンドガンを出すサブ。

 タツ:「アホか!あいつら、もっと強いチャカ持ってんぜ!そんなオモチャで……!」
 警察官A:「ちょっとキミ!」
 サブ:「はうっ!?」
 警察官B:「その右手で掴んでいる物は何か、見せてもらえるかな?」
 タツ:「こ、これはライターだぜ!?」
 警察官A:「それを確かめさせてもらう為に、ちょっと交番まで来てもらえるかな?」
 サブ:「い、いや、だからただのオモチャだって」
 警察官B:「じゃ、別に何も疚しいことは無いじゃない。何をそんなに驚いてるの?」
 タツ:「オマワリさん!あのロシアン・マフィアの方が怪しいって!俺達なんかよりあいつら捕まえろよ!」
 サブ:「そうそう!こんなベレッタより、向こうはトカレフとかアサルトライフルとか!」
 警察官A:「ほお、それはベレッタなのか」
 警察官B:「だったら尚更来てもらおうか!」
 サブ:「勘弁してくれー!」

〔「15時30分発、大宮市内循環です」〕

 さっきのバスが出発すると、すぐに稲生達が乗る予定のバスがやってくる。
 この時には既に3台の黒い車は立ち去っていた。

 稲生:「後ろの広い席に行きましょう」
 マリア:「うん」
 イリーナ:「何だか向こうが騒がしいわね」
 稲生:「交番ですか?まあ、駅前ですから、色々と忙しいんじゃないですか」
 マリア:「大捕り物って感じだな」
 イリーナ:「おっ、新しい日本語覚えたねぇ」

 バスは稲生達を乗せると、すぐに出発した。

〔大変、お待たせ致しました。ご乗車、ありがとうございます。このバスは住宅前、中並木、上小町経由、大宮駅西口行きです。次は仲町、仲町。……〕

 バスは冷房がガンガン入ったので、稲生は窓を閉めた。
 バスはロータリーの中を回ってから公道に出るのだが、その時、交番の方から……。

 サブ:「わーっ!わーっ!ロシアン・マフィアがあのバスにーっ!」
 タツ:「早いとこ捕まえてくれーっ!」

 警察官に捕まれつつ、バスの方を指さしながら叫んだチンピラ2人の声が空しく響いていた。
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