報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「夏のボカロライブ」 2

2017-08-20 19:47:23 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日09:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 四季エンタープライズ仙台支社・支社長室]

 敷島:「……というわけで、予定通りにセキスイハイムスーパーアリーナでライブを行いますので、よろしくお願い致します」
 内野支社長:「あ、ああ。さすがは『不死身の敷島』ですな……ハハ……」

 内野は今年度から支社長に就任した者である。
 元々は四季エンタープライズ本社の総務部長をしていたが、定期異動で支社長となった。
 四季エンタープライズでは、支社長ともなれば取締役の地位も与えられる。

 敷島:「この3連休の予定ですが、件のアリーナでライブを一発ブチかました後は、それぞれ仙台市内の色々なイベントに顔を出させるつもりです。詳細は先日送らせて頂いた資料に全て記載しております」
 内野:「え、ええ。拝見しましたよ。とても素晴らしい内容で、こちらの出る幕なんぞ無さそうな感じで……」

 内野は何故か冷や汗をかいていた。
 そして、敷島の傍らに控えるシンディをとても気にしている。
 シンディは内野の視線を感じると、ニコッと笑った。

 敷島:「お褒めに預かり、大変光栄です。何かご質問はありますか?」
 内野:「えー……あー……その……」

 グループ企業の社長と親会社の地方支社長とでは、やはり後者の方が地位が上である。
 そんな敷島が堂々としており、何故か支社長の方がいっぱいいっぱいの様子だった。

 内野:「こ、このライブなどとは関係無いのだがね……」
 敷島:「いいですよ。何でも聞いて下さい」
 内野:「こ、このロボット……もとい、キミの秘書は危険ではないのかね?」
 敷島:「と、仰いますと?」
 内野:「も、もういい!キミに今回のことは任せる!だから、私に近づけさせないでくれっ!」
 敷島:「全幅の信頼、ありがとうございます。必ずや、成果をご覧に入れます」

 シンディに恐怖している?何故だろう?

[200×年秋(東京決戦の日)15:30. 東京都中央区某所]

 内野:「ひいいっ!た、助けてくれーっ!」

 内野はバージョン2.0と3.0に取り囲まれていた。

 シンディ(前期型):「へえ……。敷島孝夫の関係者を捕まえたって?どこだ?」
 2.0:「キュルキュルキュルキュル。(こちらでございます)」

 バージョン2.0は喋ることができない。

 内野:「ち、違う!私は敷島孝夫なんて知らない!」
 3.0:「嘘ヲツクナ!サッキ電話デ、『敷島孝夫は社長の甥です』ト言ッテイタデハナイカ!」
 内野:「か、かか会社でのことだ!直接は知らない!」
 3.0:「シンディ様!コイツハ敷島孝夫ノ居場所ヲ知ッテイマス!」
 シンディ:「ほお?どこだい?」
 2.0:「キュキュキュキュ!」

 バチィッ!(内野に電気が流される)

 内野:「はぐわっ!」
 シンディ:「あー、こいつはバカロボットでねぇ!状況判断ができないのさ。アタシの知りたいことに素直に答えないと、今度は電流上げるかもねぇ!」
 2.0:「キュキュキュキュ!」

 2.0、両腕を交差させる。
 そこから電流が発生しているのが分かる。

 内野:「お、大手町だ!大手町にいる!これでいいだろう!」
 3.0:「シンディ様!」
 シンディ:「大手町か。財団もバカばっかじゃないのね。それとも、ドクター十条の頭がいいのかしら?」
 内野:「す、素直に喋ったんだ!助けてくれ!……助けてください!」

 内野、這いずって懇願するようにシンディのロングスカートの裾を掴む。
 シンディ、ギラッと両目を光らせた。

 シンディ:「下等で愚かな人間よ!この我に不遜な行為をするとはいい度胸だ!」

 そして、右手をマシンガンに変形させる。

 シンディ:「蜂の巣にしてくれるわ!!」

 と、どこからともなく歌が聞こえて来た。

 シンディ:「こ、この歌は?」
 3.0:「ウウ……ア、頭ガ……!」
 シンディ:「初音ミクの歌!?……しまった!この歌は電気信号を!おのれ!歌うだけの人形の分際で!!」

 シンディの引き連れているバージョン2.0と3.0の軍団が、次々と強制的に電源を落とされていった。

 内野:「お、お助けーっ!」

 内野、慌てて逃げ出す。

 シンディ:「これで許してやるよ!」
 内野:「あぎゃーっ!!!」

 シンディ、マシンガンからハンドガンに切り換えて内野の肩に一発打ち込んだ。

 シンディ:「くそっ!南里研究所の連中め!1度、日比谷公園で立て直しだ!」
 内野:「ううう……」

[2017年8月11日10:00. 天候:晴 JR仙台駅・在来線ホーム]

 シンディ(後期型):「内野支社長、東京決戦の時は、前期型の私が申し訳ありませんでした。深くお詫び申し上げます」

 シンディは深々と頭を下げた。

 敷島:「支社長、何度も申し上げましたが、あなたを傷つけた方のシンディは、後で財団が捕らえて『死刑執行』しました。ここにいるシンディは似て非なる者です。……贖罪の為に、前期型時代のデータをそのまま引き継がせていますが」

 東京多摩地区にあるスクラップ工場に連行された前期型シンディは、そのままスクラップされて死刑執行された。

 内野:「本当に、大丈夫なんだね?」
 敷島:「私の目の黒いうちは、私が保証しますよ。彼女の活躍ぶりは、あなたも知っているでしょう」
 内野:「むむ……」

 ということがあった後、敷島達は仙台駅に移動した。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の列車は、10時5分発、普通、利府行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 かつては寝台特急“北斗星”や“カシオペア”が発車していたホーム。
 その長大編成に対応した長い有効長を抱えるホームだが、今ではたった2両編成の701系が停車しているだけだった。

 敷島:「内野支社長に直接謝れて良かったな」
 シンディ:「でも、あまり納得されている様子ではありませんでした。土下座した方が良かったでしょうか?」
 敷島:「却って見苦しいだけだし、それに前期型と後期型は違うという意味も示したかったしな」

 シンディはホームの自動販売機で買った缶コーヒーを敷島に渡した。

 敷島:「ああ、ありがとう。贖罪は、まだ終わらないということさ」
 シンディ:「はい」

 敷島はロングシートしか無い電車のドア横に座った。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“Gynoid Multitype Sisters” 「夏のボカロライブ」

2017-08-20 12:40:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日08:10.天候:晴 仙台市地下鉄泉中央駅]

 駅前のバスプールに地元の路線バスが到着する。
 東京でも当たり前のノンステップバスで、前扉の大きなグライドスライドドアが両側に開いた。

〔「泉中央駅です。ご乗車ありがとうございました」〕

 運賃距離制なので、前扉から運賃を払って降りるタイプ。

 敷島:「大人4人で」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 バスを降りた後でエミリーが言った。

 エミリー:「これは経費で落としますか?」
 敷島:「いや、いいよ。路線バスの運賃くらい。領収証が出るタクシーだけにしといてくれ」
 MEIKO:「領収証切れるヤツは経費にするのね」
 敷島:「……っ、悪かったな」
 ミク:「電車代もですか?」
 敷島:「通勤電車の運賃くらい俺が出すよ」
 MEIKO:「領収書切れないから?」
 敷島:「そう。……って、コラっ!」
 MEIKO:「ハハハ、自白した。いいから行きましょう。KAITO達、もう仙台駅に着いたみたいよ」
 敷島:「おっ、さすが新幹線の始発は早いな」

 エミリーはそう話している間に、4人分の乗車券を購入していた。

 エミリー:「どうぞ」
 敷島:「おっ、ありがとう」

 乗車券を手に、来た道を引き返す。
 ホームに降りると、次の電車が発車を待っていた。

〔お知らせします。この電車は、富沢行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 エミリー:「井辺プロデューサーに連絡しておきました。レンタカーの手配があるので、ゆっくり来てくださいとのことです」
 敷島:「まあ、そうだろうな」

 こう聞くと、今からレンタカーの手配をしているように聞こえるが、実際はちゃんと予約している。
 要は先ほど新幹線で着いて、これからレンタカー屋に向かっているということだ。

〔「ご案内致します。この電車は8時18分発、各駅停車の富沢行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
〔2番線から、富沢行きが発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ホームドアのチャイムが札幌市地下鉄と同じというトリビア。
 恐らく、メーカーが同じなのだろう。

 敷島:「あ、俺、朝飯食ってねぇ」
 エミリー:「支社長と面会まで少し時間がありますから、先に朝食を取っては?」
 敷島:「うん、そうするか。どうせ向こうも、先に朝礼するだろうし」

〔この先、ポイント通過の為、電車が大きく揺れますのでご注意ください。次は八乙女、八乙女です。バスご利用の方は、バスプール方面出口をご利用願います〕
〔The next stop is Yaotome station.〕
〔日蓮正宗妙遍寺へは、次でお降りください。また、日浄寺へは北仙台、仏眼寺へは愛宕橋、冨士大石寺顕正会仙台会館へは、終点富沢駅でお降りください〕

 ↑宗門や顕正会も、せめてこれくらいのPRやろうよ。街頭折伏よりもさ。法道院もせっかく三門前に都営バスと西武バスの停留所があるってのに、広告の1つも出さねーで……。広告費なら、全額はムリだが御供養するよ。因みに創価学会では、会館の名前をバス停名にしているくらいである。創価学会でもやってるんだから、これくらいやんないと。広宣流布なんか無理だよ。

[同日08:45.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 某レンタカーショップ]

 電車が到着して敷島達は急いでレンタカーショップに向かった。
 場所はエミリーが知っている。
 シンディがそこにいる為、互いの位置情報を把握している為だ。

 鏡音リン:「あっ、社長!遅いよ!」
 敷島:「悪い悪い!」
 井辺:「社長、おはようございます」

 井辺が挨拶すると、最初に文句を言っていたリンも含め、ピッと背筋を伸ばして、
「おはようございます!」
 と、挨拶した。

 敷島:「無事に仙台入りできたな。といっても、会場は市外なんだが。車は用意できた?」
 井辺:「はい。ハイエース1台で間に合いました」
 敷島:「ありがとう」

 一番定員の多いコミュータータイプだ。

 井辺:「衣装などは既に、業者委託で会場に送ってあります」
 敷島:「よし、分かった」
 井辺:「いつでも出発できますので、どうぞお乗りに……」
 敷島:「あ、いや。悪いが、先に出発しててくれ。俺は後で行く」
 井辺:「と、仰いますと?」
 敷島:「東北を拠点にしている四季エンタープライズの仙台支社長に挨拶してくるさ。同族企業とはいえ、下請けが仕事させてもらうんだからさ」
 井辺:「なるほど。そういうことですか。しかし、既に内野支社長とは話が付いているはずでは?」
 敷島:「だから、改めて挨拶に出向くんだよ。グループ内でも、ボーカロイドのライブに疑問を持つ人はいるからさ」
 井辺:「分かりました。どこかで待ち合わせしますか?」
 敷島:「いや、そのまま会場へ向かってくれ。俺も電車とタクシーで向かうからさ」
 井辺:「分かりました」
 敷島:「まあ、もうKR団もいなくなったことだから、後は事故にだけ気を付ければいいと思うけどな」
 シンディ:「私はこのまま一緒に乗って行けばいいですか?」
 敷島:「そうだな。……いや、ちょっと待て」

 敷島はニヤッと笑った。

 敷島:「ここでエミリーとチェンジだ。エミリー、お前は井辺君達に付いて行ってやってくれ」
 エミリー:「は?……はい、かしこまりました」
 敷島:「シンディ、お前は俺と来い。一緒に挨拶しに行くんだ」
 シンディ:「は?……はい、かしこまりました」
 敷島:「よし、これで準備OKだ!皆、俺も後から行くから気をつけて行けよ。くれぐれも関係者の人達に失礼なことするなよー?特に、リン!」
 リン:「ふぁい!?」
 鏡音レン:「だ、大丈夫です。リンのことは、ボクが見てますから!」
 井辺:「では、お先に失礼します」

 エミリーが助手席に乗り、運転手役の井辺が車を走らせた。

 シンディ:「社長?どういうことですか?」
 敷島:「リンに『イタズラはやめろ』と言っておきながら何なんだけど、ちょっとした悪さを思いついた」

 敷島は相変わらず笑みを浮かべたままだ。

 シンディ:「私に何かさせるつもりですか?……まあ、汚れ役ならいつでも引き受けますけど」
 敷島:「いや、そうじゃない。お前はあくまで、俺の秘書として振る舞ってくれればいい。いつも通りにな」
 シンディ:「はあ……」
 敷島:「よし。ちょっとまだ時間がある。俺はまだ朝飯食ってないから、先に食べてから行くぞ」
 シンディ:「はいはい。えー、この近くにモーニングの取れるお店は……」

 一体、敷島はシンディに何をさせるつもりなのだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする