報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 2

2022-11-29 20:27:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日12:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 吉野家→愛原のマンション]

 都営バスを菊川駅前バス停で降り、そこから新大橋通り沿いの吉野家で昼食を取った。
 リサの奴、当たり前のように牛丼特盛を注文した。

 愛原:「オマエ、よく食うなぁ……」
 リサ:「肉を食べないと、頭がおかしくなる」

 BOWだからだろう。
 リサの場合は何とか持ち直した。
 他のBOWやクリーチャーが空腹になると、人間の血肉を求めるのは、偏に栄養価が高いからである。
 あと、味覚にも変化が現れて、通常の食事を受け付けられなくなるからだという。
 日本版リサ・トレヴァーの中では、『1番』が最後まで持ったが、ついに味覚崩壊が起きて、人肉を食らうことになった。
 『2番』のリサも危うくといった所に陥ったことはあったものの、何とか持ち直している。
 どうして他のリサ・トレヴァーと違い、リサは正気と通常の味覚を保ち続けていられるのかは定かではない。
 但し、時折食人衝動に駆られるところがあるのを見ると、けして危険性が無くなっているというわけでもないようだ。
 私は東京中央学園上野高校に、その秘密が隠されているのではないかと思っている。
 食べ終わった後で、会計をする。

 店員:「ポイントカードはお持ちですか?」
 愛原:「あ、はい」

 私はTポイントカードを取り出した。
 高橋のはENEOSのカードだったが、私のはファミマのカードである。
 それで少しでもポイントを溜める上、支払いもそのカードについたクレカにする。
 すると、クレカにもポイントが付くというシステムだ。

 店員:「ありがとうございます。クーポンが出ました」
 愛原:「あ、そう」

 ツタヤのクーポンでも出たか。

 店員:「牛角さんのクーポンです」
 愛原:「ありがとう」

 こういうのも平日限定なので、家の近所か通勤経路にでも無いと、なかなか使用する機会が無い。

 リサ:「ほおほお。焼肉のクーポン……」

 リサの目が一瞬、金色にキラリと光る。

 愛原:「あー、今日はダメだぞ」
 リサ:「有効期限、来月くらいまであるよね?」
 愛原:「あっ、あー……まあな」
 リサ:「しかも通常、10%くらい割引なのに、20%になってるよ!?」
 愛原:「そ、そうなのか。20%はデカいな……」
 リサ:「使わないと損だよ!」

 これ絶対、リサが焼肉食べたいだけだろ!

 リサ:「この前は宴会コースだったんだから、今度は食べ放題コースで!」
 愛原:「あー、また今度な」
 リサ:「今度っていつ!?」
 愛原:「だから、その……このクーポンの期限内……」
 リサ:「忘れちゃダメだよ!?何なら、わたしが預かる!」
 愛原:「いや、いいよ。俺が持っとく」

 こんなことを話ながら、マンションに戻った。

 リサ:「うわ、暑……!」

 防犯の為に締め切っていたとはいえ、室内は灼熱の地獄だ。
 すぐにエアコンの冷房を入れて、部屋を冷やすことにする。

 愛原:「リサ、水着とか洗うから洗濯機に入れてくれ」
 リサ:「分かったー」

 その間、私は本当に今日明日の食料があるのかチェックした。
 何とか食パンと玉子、ベーコンやカット野菜はあった。
 ……うん、まあ、明日の朝までは何とかなるだろう。
 冷凍庫を見ると、確かにタッパに入ったカレーと、既に小判型に成形されたハンバーグがあった。
 これを焼け、と……。

 リサ:「ハンバーグの焼き方なら、お兄ちゃんから教わったから大丈夫だよ」

 いつの間にか、後ろからリサが覗き込んだ。

 愛原:「そ、そうなのか。それじゃ、よろしく頼む」
 リサ:「先生の服も洗うから着替えて」
 愛原:「オマエがやってくれるのか?」
 リサ:「うん!」
 愛原:「そうか。それは助かる」
 リサ:「わたしも着替えて来るから」

 そう言ってリサが着替えて来たのが……。

 愛原:「また体操服とブルマ……」
 リサ:「先生の好みだもんねw」
 愛原:「あんまり大声で言うな」
 リサ:「否定しないんだw」

 東京中央学園でかつて採用されていた緑色のブルマと、体操服だった。
 こちらはサイズがピッタリの為か、ハミパンしたりすることはない。

 愛原:「洗濯の仕方も高橋に?」
 リサ:「うん。これは先生のパンツ~。下着はネットに入れて洗う~」
 愛原:「男の下着なんて、そのまんま洗濯機にブチ込んでいいんだよ。むしろリサの下着をそうしろ」
 リサ:「もうしてる。先生のパンツと一緒に
 愛原:「をい!」

 とにかく、洗濯と夕食はリサに任せ、私は部屋に入った。
 エアコンを入れていたせいか、少しずつ部屋が涼しくなっていく。
 私はPCの電源を入れて、高橋が残したUSBメモリーの中身を確認することにした。

 リサ:「はい、先生。アイスコーヒー」
 愛原:「おっ、気が利くなー!」
 リサ:「エヘヘ……。ナデナデして~」
 愛原:「はい、なでなで」
 リサ:「エヘヘ……」

 アイスコーヒーは冷蔵庫に入っていた、パック入りのものだ。
 ブラック微糖は、私の飲み方なので。
 さすがに無糖は苦くて飲みにくい。
 PCを立ち上げると、早速USBメモリーの中身を確認した。

 リサ:「あっ、お兄ちゃんだ!」

 PCの画面に高橋が映し出された。

 愛原:「何だ、リサ。まだ部屋にいたのか?洗濯は?」
 リサ:「今、洗濯機回してるところ。終わるまで、あと30分ある」
 愛原:「そういうことか」

 高橋はとうやら自分の部屋で、自撮りをしているようだった。

 高橋:「先生、突然サーセン。いや、すいません。俺は今から、自分の正体について話します」
 愛原:「やはり、偽者だったのか……」
 高橋:「俺は本物の高橋正義ではありません。善場の姉ちゃんは、アネゴの事をエイダ・ウォンじゃないかと思っているようですが、俺もまた別の人間をコピーして整形されたものです」
 愛原:「一体、誰だ?」
 高橋:「ジェイク・ミュラーまたの名をジェイク・ウェスカーという男がいました。俺はそのクローンで造られ、顔を高橋正義に整形して入れ替わった者です」
 愛原:「そうか、ジェイクか!2013年に東欧イドニア紛争と、香港のバイオハザードで活躍したっていう……」
 高橋:「本物の高橋正義は、八丈島で入れ替わりました」
 愛原:「あっ、なるほど!あの時か!」

 確かにあの時の高橋、怪しい動きをしていた。
 私達が八丈島に向かったのも、高橋を追ってのことだった。
 あの理由について、高橋は詳しくは話してくれなかったのだが、入れ替わったのなら、そりゃそうだと思う。
 すると、本物の高橋は八丈島にいるということなのか?

 高橋:「本物はどうなったのかは、俺には分かりません。ですが、愛原公一博士なら知っています」
 愛原:「はあ!?」
 高橋:「この前、静岡に行った時、俺の正体に気づいたようです。どうしてあの爺さんが分かったのかは、分かりませんが」
 愛原:「あの爺さん、何なんだろうな」
 高橋:「俺が話せるのはここまでです。あと、いつまで一緒にいられるのかは分かりませんが……」
 愛原:「ちょっと待って、ちょっと待って!」

 だが、映像はここで終わっていた。
 そもそもが、誰がどうして高野君や高橋のコピーを造ってまで、私の事務所に送り込んだのかが分からなかった。

 リサ:「どうするの?」
 愛原:「取りあえず、連絡しよう!」
 リサ:「誰に?」
 愛原:「そりゃもちろん、善場主任と公一伯父さんだ!」
 リサ:「どっちから先に電話する?」
 愛原:「えっ、えーと……」

 ①善場優菜
 ②愛原公一
 ③他の誰か
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」

2022-11-29 17:39:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日10:00.天候:晴 東京都中央区銀座8丁目 銀座グランドホテル]

 私は朝食の後で部屋に戻ると、リサに私が見た夢の話をした。

 リサ:「うーん……。夢の中のわたしが何を言おうとしたのか、分かんないねー」

 リサは腕組みをして、首を傾げた。
 白いTシャツの下に隠れた、成長段階の胸が少し浮いたように見えた。

 愛原:「だろ?まあ、俺がBOW設定で、リサが人間設定だったら、分かる内容かな」
 リサ:「先生がBOW?」
 愛原:「そう。それなら、皆が俺に銃を向ける理由も納得行くだろ?そしてリサは人間だから、向こう側ってことだ」
 リサ:「どうしてそんな夢を?」
 愛原:「俺が聞きたいよ」
 リサ:「先生こんなに頑張ってるのに、撃つなんてねぇ……」
 愛原:「もしかしたら夢の中の俺は、人食いをしたのかもしれないな。それだったら分かる」
 リサ:「うえ……。だったら、わたしも人間に戻らないから、一緒にBOWになろうよお?」

 リサはGウィルスまみれの寄生虫を口から出そうとした。

 愛原:「なにさり気なく感染させようとしてんだw」
 リサ:「お兄ちゃん、どこに行ったんだろう?」
 愛原:「まさか、高野君と同じ“青いアンブレラ”のメンバーだったりしてな」
 リサ:「ええっ?」

 国によっては“青いアンブレラ”の存在や活動は合法である。
 だが、自衛隊以外の軍事組織の存在を認めない日本政府は、“青いアンブレラ”を非合法組織とした。
 BSAAは国連組織の1つなので、国連軍の一派という見方である為、国連加盟国である日本も、その国内活動を認めざるを得なかった(時の政権が弱腰外交で有名であった為、他の先進国の圧力に屈して批准した)。

 愛原:「参ったなぁ……」
 リサ:「ご、御飯くらいならわたしが作るから、心配要らないよ。お兄ちゃんに、色々教わったから」
 愛原:「ああ、それは助かる」

 今日の昼くらいまでなら外食で何とかなるだろうが、その後は……。

 リサ:「確かお兄ちゃん、ハンバーグを冷凍してたはずだから」
 愛原:「そ、そうなのか」

[同日10:59.天候:晴 東京都港区新橋 東京都交通局『新橋』バス停→都営バス業10系統車内]

 ホテルをチェックアウトした後はデイライトの事務所に寄らず、最寄りのバス停に行って、バスに乗ることにした。
 やってきたバスは、全国的にある普通のノンステップバス。
 折り戸式の前扉が開くと、バスに乗り込んだ。

 愛原:「大人2人」
 運転手:「大人2人ですね。はい、どうぞ」

 運賃は私のSuicaで払っておいた。

 リサ:「いいの?」
 愛原:「ああ」
 リサ:「ありがとう」

 バスに乗り込むと、後ろの2人席に座った。
 高橋がいないので、3人横並びに座る為、1番後ろの席に座る必要は、必ずしもない。
 むしろ2人席の方が狭い分、リサと密着する感じになる。
 リサが2人席を希望したのは、そこに理由があるのかもしれない。
 日曜日ということもあり、勤め人の姿は殆ど無かったが、代わりに観光客らしいのが見受けられた。
 もんじゃ焼きで有名な月島地区を通り、豊洲市場で有名な豊洲地区を通り、東京都現代美術館前を通り、終点が東京スカイツリーの前だからだろう。
 その為、この系統は本数が多い路線となる。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは前扉を閉めて、発車した。
 車内はクーラーの風が強く吹く音が響いている。
 窓はUVカットのシートが貼られているが、それでも換気の為に開けられた上部の小窓からは、日差しが入り込んで熱風も入り込んでいる。
 それを補う為に、冷房の風が強く吹いているのだろう。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗常泉寺と本行寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前で、お降りください。次は、銀座西六丁目でございます〕

 リサ:「そういえば今日、リンとリコが戻って来る」
 愛原:「おー、そうか。やっぱり夏休みギリギリまでいたか」

 白井伝三郎の実験によって、本当に人食い鬼と化した母親の上野利恵から生まれた2人の娘。
 父親は人間である為、この2人の娘は半分人間の血が入っていることになる。
 尚、実験内容と投与されたウィルスはリサと全く違う為、BOW(生物兵器)のカテゴリーには入っていない。
 ハーフである為、殆ど変化はできず、その代わりに、『半化け』状態となっている(具体的には牙が短く生えていたり、耳の先端がやや尖ったり、頭に短い角が生える程度。ほぼ誤魔化しは可能)。

 リサ:「夜に帰って来るんだって」
 愛原:「寮の門限、大丈夫なのか?」
 リサ:「うん。許可は取ってあるみたい」
 愛原:「そうか。それならまあいいか。ところで、今日の昼は途中で食べて行こう」
 リサ:「おー!」
 愛原:「どうせこのバスで行けば、菊川に着く頃には昼だし」
 リサ:「確かに」
 愛原:「で、夜は高橋が作ってくれたハンバーグとか、あるんだっけ?」
 リサ:「うん。あと、冷凍していたものにカレーとかもあったよ」
 愛原:「カレーか。……うん、そういえば高橋、作ってたな……」

 今夜はハンバーグカレーで決まりだな。
 あと、明日の朝が……。

 愛原:「明日の朝、どうしよう……?」
 リサ:「今夜の分、食べたら、何も無くなるね」
 愛原:「マジか……」
 リサ:「朝はパンとかでいいんじゃない?」
 愛原:「そ、それもそうだな……。まあ、何とかしよう」

 取りあえず帰って、今家にある食料の状況から確認しなければ……。
 いかに高橋に任せっきりにしていて、それがいなくなったら大変なことになるか思い知らされた。
 これはやはり……昔みたいに、事務所と住居を統合させた方がいいのかもしれない……。
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