報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「経路変更の愛原達」

2022-11-03 20:03:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月15日16:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR東北本線(仙台空港アクセス線)1362M列車最後尾車内]

 発車時刻になり、ホームに発車メロディが鳴り渡る。
 オリジナルのもので、MONKEY MAJICの“Around The World”という曲である。

〔3番線から、普通、仙台空港行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

 録り鉄泣かせなのが、発車メロディに被せるようにして発車放送が流れることである。
 但し、ワンコーラスは必ず流れるようになっている。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 仙台空港アクセス線は2両編成はもちろん、4両編成であってもワンマン運転である。
 だからか、戸閉の際に車内にもその旨、自動放送が流れる。
 また、ツーマン運転の列車では半自動ドアをやめているが、仙台空港アクセス線においてはそれを続けている。
 ワンマン運転だからだろう。
 但し、仙台~仙台空港間においては無人駅は無い為、車内に運賃箱は存在しない(地下鉄と同じ、都市型ワンマン)。
 それなら、半自動ドアをやめても良いのではと思うが、システム上、それはできないのだろう。

〔今日も、仙台空港アクセス線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙台空港アクセス線、普通、仙台空港行きです。次は長町、長町。お出口は、右側です。仙台市地下鉄南北線は、お乗り換えです。……〕

 私はリサの前、つまり逆向き席に座っているが、最後尾の乗務員室に車掌がいないということもあり、後ろ展望を案外楽しめたりする。

 リサ:「エレンに『明日飛行機に乗る』ってLINEしたら、『沖縄に来て!』だって」
 愛原:「仙台~那覇間は……あ、飛んでるか」

 LCCのピーチ航空がフライト中。

 高橋:「行くかボケェ、って返しとけ」
 愛原:「こらこら。何つーことを……」
 高橋:「俺達が乗るのは、どこの航空会社ですか?」
 愛原:「ANAらしいな」
 高橋:「LCCで行き帰りしたあのレズガキと違って、キャリア航空ですね」
 愛原:「何を張り合ってるんだか……」

 そもそも明日乗る成田行きは、私がチケット代を出すわけじゃないからな。

[同日16:49.天候:晴 宮城県名取市美田園 SAT美田園駅→スーパーホテル美田園・仙台エアポート]

〔まもなく美田園、美田園。お出口は、右側です〕
〔The next station is Mitazono.The doors on the right side will open.〕

 私達を乗せた電車は、ダイヤ通りに美田園駅に到着した。
 車内は名取駅までは、後ろの車両が混んでいたが、そこを過ぎると今度は前の車両から混んで来る。
 仙台駅発車時、階段は列車の後ろ側にあるからであり、仙台空港駅は頭端式で、1番前に改札口があるからである。

 愛原:「リサ、ボタン押してくれ」
 リサ:「ポチッとな」

 半自動ドアなので、ボタンを押してドアを開ける。

〔「美田園、美田園です。上り電車との待ち合わせの為、4分ほど停車致します」〕

 沿線は宅地開発が進んでいるということもあり、下車客は私達のような旅行客よりも、地元民の方が多い。
 また、隣の杜せきのした駅は副線用地だけは確保されているものの、実際にはまだ線路は敷かれていない。
 その為、上下列車の離合はこの美田園駅で行われる(仙台空港アクセス線は単線である)。
 高架駅である為、改札口に向かうのに階段を使う。

 愛原:「スーパーホテルがこの近くにあって、そこを予約してるってさ」
 高橋:「そうなんですか」

 駅を出て、県道127号線との交差点に出る。
 そこを渡ると、途中にコンビニとパチンコ屋がある。
 ここまで来ると、ホテルが見えて来た。
 まだ真新しいホテルである。
 ここが、現時点において最も仙台空港に近いホテルである。

 愛原:「着いた着いた」

 エントランスから中に入る。
 スーパーホテルにはどこの店舗にも自動チェックイン機があるが、多分私達の場合は通常の予約と違うだろうと思い、まずはフロントで尋ねてみることにした。

 愛原:「こんにちは。今日から一泊の予定で予約が入っていると思うんですが、愛原と申します。予約者は善場優菜となっているかと思いますが……」
 スタッフ:「はい。愛原様でございますね?愛原様他2名様でご利用ですね?」
 愛原:「あ、はい、そうです」

 どうやら予約はちゃんとされているようだった。
 宿泊料金は立替だろうと思っていたのだが、どうやら既に払い込まれているようである。

 フロント係:「それと、こちら、善場様からのお荷物となってございます」
 愛原:「あ、ありがとう」

 封筒であった。
 伝票を見ると、バイク便の会社になっている。
 まさか、都内からバイク便でここまで配達したのだろうか?
 いや、そうではない。
 確か、バイク便の会社の中には、新幹線などを利用して直接配達しに行くサービスがあったはずだ。
 恐らくそれを利用したのだろう。
 配達料以外に、そういった新幹線代などの実費が掛かるので、料金はかなり高くなるはずだが、それを利用してでも、私達の帰りの行程を変えさせる必要があったようだ。
 チェックインの手続きを済ませると、私達はナイトウェアを手に、エレベーターに乗った。

 高橋:「枕もありましたね?」
 愛原:「そうだな。もちろん、部屋には既に枕がある。要は、それとは別の枕を使いたい人用ってことだな」
 高橋:「なるほど。そういうことでしたか」

 エレベーターが、私達の宿泊するフロアに止まる。
 スーパーホテルの客室の鍵は、暗証番号式である。
 暗証番号はもちろん、宿泊客が変わる毎に変更される。

 高橋:「先生、リサには暗証番号を内緒にしとかないと。夜中、侵入されますよ?」
 愛原:「そんなことしなくても大丈夫だって」
 高橋:「ええっ?」

 私はフロントで教えられた暗証番号でロックを解錠し、ドアを開けた。
 部屋はスーパールームというツインルームだが、他のホテルと違うのは、2段ベッドになっていることである。
 下段はダブルベッドだが、上段はシングルベッドになっている。
 で、特徴的なものが……。

 愛原:「コネクティングルームなんだ、これ」
 高橋:「ええっ!?」

 部屋の中にはもう1つドアが付いており、そこから隣の部屋と行き来できるのである。
 もちろん、鍵はこちら側と向こう側とであり、片方でも鍵が掛かっていれば開けられない。
 また、ドアノブが着脱式になっているので、コネクティングルームとしての利用が無ければ、ドアノブを外しておくのだろう。

 リサ:「おー!これで、いつでも遊びに行けるね!」
 高橋:「オマエなぁ……。あ、先生は下で寝てください。俺は上で寝ますんで」
 愛原:「そうかい?悪いね」
 リサ:「じゃあ、わたしは先生の隣―!」

 リサは下段ベッドにダイブした。
 黒いミニスカートが捲れて、下の白いショーツが見えてしまうが、リサは気にしていない。

 高橋:「オマエは隣の部屋だろうが!」
 リサ:「えー……」
 高橋:「さっさと荷物、置いて来い!」
 リサ:「はーい……」

 リサは部屋の中のドアから、隣の部屋に戻った。
 すると高橋、バタンとコネクティングのドアを閉めて鍵を掛けた。

 高橋:「これでBOWは、入って来れません」

 しかし、ドアをドンドンドン!と強く叩く音がした。

 リサ:「うがぁァァッ!!」
 愛原:「やめなさい。ドアが壊れたら、弁償だよ?」

 私は鍵を開けてやった。
 ドアを開けると、既に第1形態に戻ったリサがいた。

 リサ:「ウゥウ……!!」
 愛原:「鍵は開けとくから、気にしないで荷物を整理しておけ」
 リサ:「うぅ……」

 リサは第0形態に戻りながら、自分の部屋に戻った。
 で、また高橋はドアを閉めて、鍵をガチャリ。

 リサ:「ウガァァァァッ!!」

 ドンドンドンドンドン!!

 高橋:「ターッハハハハハハッハーッ!!」

 高橋、大爆笑。

 愛原:「遊んでる場合じゃないんだよ」

 私は呆れながら鍵を開けた。

 リサ:「ウゥゥ……!!」

 今度のリサは第2形態(オリジナルのリサ・トレヴァーに近い形態)まで変化していた。
 次の第3形態にまで変化したら、暴走したと見做され、BSAAが出動して来てしまう。

 愛原:「高橋、フザけるんじゃないよ」
 高橋:「ハハハッ!サーセン!」
 愛原:「荷物を整理したら、夕飯食いに行くぞ」
 リサ:「おー!」

 リサは第1形態まで戻りながら応えた。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原達の予定変更」

2022-11-03 16:00:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月15日15:07.天候:晴 宮城県仙台市太白区秋保町 タケヤ交通『蘭亭前』バス停→“秋保・川崎西部ライナー”車内]

 日帰り温泉プランを終えた私達は、引き上げることになった。
 で、帰りはホテルの前から出ている路線バスに乗ることにした。
 帰りに関しては、こちらの方が時間的にも便利だったからである。

 父親:「帰りは楽だな」
 愛原:「そうだね」

 路線バスである以上、例えホテルの敷地内であってもバス停のポールは立っているが、バスを待つ場所はポールの前や横ではなく、車寄せのベンチのある所だという。
 父親がそのベンチにどっかり座って、バスを待っている。
 しばらくすると、薄紫色に塗装された大型バスが敷地内に入って来た。
 すぐにそれが路線バスだと分かったのは、車種が一般路線用のそれであったのと、何よりフロントガラスの上に大きなLED表示器で『仙台駅』と書かれていたからである。
 停車すると、大きなエアー音がして前扉の折り戸が開いた。

 運転手:「はい、仙台駅前行きでーす」

 一般路線用の車種ではあったが、扉は前扉しか無い。
 新規参入のバス会社ではあるが、こちらもICカードが使える。
 車内は所謂ワンロマ仕様になっていて、座席はリクライニングシートではないものの、背もたれの高いハイバックシートになっている。
 このバス停が始発ではない為、既に先客が乗っている。

 愛原:「まあ、適当に座って」

 と言っても、私は空いている2人席の窓側に座るし、高橋達もその近くに座ろうとするだろう。
 バスは私達を乗せると、前扉を閉めて発車した。

〔次は緑水亭前、緑水亭前でございます〕

 バスはホテルの敷地を出て、県道160号線に出る。
 路線図を見ると、この秋保温泉街の大きなホテルの前に止まって行くようだ。
 川崎町方面からの乗客で、どれだけ秋保温泉に宿泊する客がいるのかは不明だが、むしろ私達のような日帰り温泉客をピックアップするのが目的か。

 リサ:「お、Wi-Fi入る」

 どうやらバスの中で、Wi-Fiが使用できるようである。
 一般の路線バスでは、かなり珍しいのではないか。
 私は他に、都営バスくらいしか知らない。

 父親:「このまま帰るのか?」
 愛原:「そ、そうだね」
 母親:「駅まで見送ろうか?」
 愛原:「い、いや、ちょっと寄る所があるからいいよ。気にしないで」
 母親:「そう?」

 予定通り新幹線で帰るのならそうしてもらっても良いのだが、急な予定変更で、新幹線ではなく、在来線に乗ることになったりすると怪しまれるだろう。
 善場主任からは、何故かLINEではなく、メールが来た。
 何でも、セキュリティの関係の為、私達が帰京するまで、通話以外のやり取りはLINEではなく、メールでということだった。
 それによると、仙台空港近くのホテルを取ったので、今夜はそこに宿泊して欲しいということだった。
 明日乗る飛行機のチケットも、そのホテルに届けるとのこと。
 恐らく東北新幹線とか、東京駅で何かがあるのだと思うが、今のところはネットニュースにも、運行情報にもその辺りで何か異常があったというものは無い。

[同日15:57.天候:晴 仙台市青葉区中央 タケヤ交通『仙台駅前』バス停→JR仙台駅]

 バスは往路の宮城交通と違い、国道48号線(仙台西道路)経由であった為、比較的所要時間は短かった。
 そして、青葉通の63番乗り場に到着した。
 バスを降りると、地下鉄仙台駅は目の前である。
 ここまで来て地下鉄に乗せるのはアレなので、両親はタクシーで帰らせることにした。
 まずは地下鉄乗り場に行き、涼しい地下道を通って、JR仙台駅のタクシー乗り場に向かう。

 父親:「それじゃ、気をつけてな」
 愛原:「うん。また来るよ」

 タクシーに乗って行った両親を見送り、私達はJR仙台駅構内に入って行った。
 まずやることは、新幹線の払い戻し。
 3階の“みどりの窓口”に向かう。

 愛原:「キャンセル料が勿体ない」
 高橋:「それも姉ちゃんに請求したらどうっスか?」
 愛原:「まあ、しょうがない」

 払い戻した後は2階に移動して、在来線改札口を通った。

 愛原:「今度の仙台空港行きは3番線か……」

 3番線は切り欠きホームとなっている。
 仙台空港アクセス線開通時に増設した為で、それでホーム番線か整理された。
 もしも1番線ホームを切り欠いて増設したのなら、0番線ができていたかもしれないが、旧2番線の半分を切り欠いて3番線とし、それ以降の番号をずらしている。
 それまでは欠番のあった仙台駅だが、これで欠番が無くなった。
 1番線から10番線が在来線、11番線から14番線が新幹線といった風に。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の3番線の列車は、16時30分発、仙台空港アクセス線直通、普通、仙台空港行きです。この列車は、4両です〕

 駅構内でも運行情報は流れるが、この時点においても、まだ東北新幹線や東京駅で何か異常があったという情報は無い。
 もっと、別の理由で私達にルート変更を言ってきたのだろうか。

〔まもなく3番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は折り返し、16時30分発、普通、仙台空港行きとなります。この列車は、4両です〕

 暑い中、電車を待っていると、接近放送が流れて来た。
 声優と言い回しが首都圏のJRそのものなので、暑さも相まって、東北地方にいるという感覚が薄れてしまう。
 しばらくすると、2両編成の電車を2編成繋いだ4両編成の電車がやってきた。
 どの車両も立ち席客が出るほどの盛況ぶりである。
 但し、仙台空港から乗って来た客よりも、途中駅で乗って来た地元客の方が多い感じだった。
 仙台~名取間は仙台空港アクセス線が開通したことで、その分本数が増え、利便性も増したことであろう。
 私達は最後尾の車両に乗り込んだ。
 で、ボックスシートに向かい合って座る。
 車両はE721系とSAT721系が共通運用されている。
 前者はJR東日本の車両で、後者は仙台空港アクセス鉄道の車両である。

 
(愛原達が乗車した仙台空港鉄道所属のSAT721系。写真では2両編成単独編成だが、作中では前方にE721系500番台2両を併結している)

 
(SAT721系の車内。E721系のシートモケットが粉雪“光のページェント”をモチーフにしているのに対し、こちらはツツジをモチーフにしている。……そこ、京王電車と被るとか言わない!)

 塗装や座席の柄はJRの車両と異なるとはいえ、基本的な仕様は共通化されていることもあり、トイレはあるし、ボックスシートのシートピッチも広く、また窓の下にはドリンクホルダー的なテーブルもある。
 リサがホームの自販機で購入した飲み物を置くと、ちょうど窪みがピッタリである。

〔この電車は仙台空港アクセス線、普通、仙台空港行きです〕

 車内放送も首都圏の物と同じ。
 私達は水分補給をしながら、発車を待った。
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