報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」

2022-11-29 17:39:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日10:00.天候:晴 東京都中央区銀座8丁目 銀座グランドホテル]

 私は朝食の後で部屋に戻ると、リサに私が見た夢の話をした。

 リサ:「うーん……。夢の中のわたしが何を言おうとしたのか、分かんないねー」

 リサは腕組みをして、首を傾げた。
 白いTシャツの下に隠れた、成長段階の胸が少し浮いたように見えた。

 愛原:「だろ?まあ、俺がBOW設定で、リサが人間設定だったら、分かる内容かな」
 リサ:「先生がBOW?」
 愛原:「そう。それなら、皆が俺に銃を向ける理由も納得行くだろ?そしてリサは人間だから、向こう側ってことだ」
 リサ:「どうしてそんな夢を?」
 愛原:「俺が聞きたいよ」
 リサ:「先生こんなに頑張ってるのに、撃つなんてねぇ……」
 愛原:「もしかしたら夢の中の俺は、人食いをしたのかもしれないな。それだったら分かる」
 リサ:「うえ……。だったら、わたしも人間に戻らないから、一緒にBOWになろうよお?」

 リサはGウィルスまみれの寄生虫を口から出そうとした。

 愛原:「なにさり気なく感染させようとしてんだw」
 リサ:「お兄ちゃん、どこに行ったんだろう?」
 愛原:「まさか、高野君と同じ“青いアンブレラ”のメンバーだったりしてな」
 リサ:「ええっ?」

 国によっては“青いアンブレラ”の存在や活動は合法である。
 だが、自衛隊以外の軍事組織の存在を認めない日本政府は、“青いアンブレラ”を非合法組織とした。
 BSAAは国連組織の1つなので、国連軍の一派という見方である為、国連加盟国である日本も、その国内活動を認めざるを得なかった(時の政権が弱腰外交で有名であった為、他の先進国の圧力に屈して批准した)。

 愛原:「参ったなぁ……」
 リサ:「ご、御飯くらいならわたしが作るから、心配要らないよ。お兄ちゃんに、色々教わったから」
 愛原:「ああ、それは助かる」

 今日の昼くらいまでなら外食で何とかなるだろうが、その後は……。

 リサ:「確かお兄ちゃん、ハンバーグを冷凍してたはずだから」
 愛原:「そ、そうなのか」

[同日10:59.天候:晴 東京都港区新橋 東京都交通局『新橋』バス停→都営バス業10系統車内]

 ホテルをチェックアウトした後はデイライトの事務所に寄らず、最寄りのバス停に行って、バスに乗ることにした。
 やってきたバスは、全国的にある普通のノンステップバス。
 折り戸式の前扉が開くと、バスに乗り込んだ。

 愛原:「大人2人」
 運転手:「大人2人ですね。はい、どうぞ」

 運賃は私のSuicaで払っておいた。

 リサ:「いいの?」
 愛原:「ああ」
 リサ:「ありがとう」

 バスに乗り込むと、後ろの2人席に座った。
 高橋がいないので、3人横並びに座る為、1番後ろの席に座る必要は、必ずしもない。
 むしろ2人席の方が狭い分、リサと密着する感じになる。
 リサが2人席を希望したのは、そこに理由があるのかもしれない。
 日曜日ということもあり、勤め人の姿は殆ど無かったが、代わりに観光客らしいのが見受けられた。
 もんじゃ焼きで有名な月島地区を通り、豊洲市場で有名な豊洲地区を通り、東京都現代美術館前を通り、終点が東京スカイツリーの前だからだろう。
 その為、この系統は本数が多い路線となる。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは前扉を閉めて、発車した。
 車内はクーラーの風が強く吹く音が響いている。
 窓はUVカットのシートが貼られているが、それでも換気の為に開けられた上部の小窓からは、日差しが入り込んで熱風も入り込んでいる。
 それを補う為に、冷房の風が強く吹いているのだろう。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗常泉寺と本行寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前で、お降りください。次は、銀座西六丁目でございます〕

 リサ:「そういえば今日、リンとリコが戻って来る」
 愛原:「おー、そうか。やっぱり夏休みギリギリまでいたか」

 白井伝三郎の実験によって、本当に人食い鬼と化した母親の上野利恵から生まれた2人の娘。
 父親は人間である為、この2人の娘は半分人間の血が入っていることになる。
 尚、実験内容と投与されたウィルスはリサと全く違う為、BOW(生物兵器)のカテゴリーには入っていない。
 ハーフである為、殆ど変化はできず、その代わりに、『半化け』状態となっている(具体的には牙が短く生えていたり、耳の先端がやや尖ったり、頭に短い角が生える程度。ほぼ誤魔化しは可能)。

 リサ:「夜に帰って来るんだって」
 愛原:「寮の門限、大丈夫なのか?」
 リサ:「うん。許可は取ってあるみたい」
 愛原:「そうか。それならまあいいか。ところで、今日の昼は途中で食べて行こう」
 リサ:「おー!」
 愛原:「どうせこのバスで行けば、菊川に着く頃には昼だし」
 リサ:「確かに」
 愛原:「で、夜は高橋が作ってくれたハンバーグとか、あるんだっけ?」
 リサ:「うん。あと、冷凍していたものにカレーとかもあったよ」
 愛原:「カレーか。……うん、そういえば高橋、作ってたな……」

 今夜はハンバーグカレーで決まりだな。
 あと、明日の朝が……。

 愛原:「明日の朝、どうしよう……?」
 リサ:「今夜の分、食べたら、何も無くなるね」
 愛原:「マジか……」
 リサ:「朝はパンとかでいいんじゃない?」
 愛原:「そ、それもそうだな……。まあ、何とかしよう」

 取りあえず帰って、今家にある食料の状況から確認しなければ……。
 いかに高橋に任せっきりにしていて、それがいなくなったら大変なことになるか思い知らされた。
 これはやはり……昔みたいに、事務所と住居を統合させた方がいいのかもしれない……。

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