報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「旧校舎の謎」 2

2022-11-11 20:14:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月17日12:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・教育資料館(旧校舎)1F男子トイレ]

 リサは戦時中、死体置き場として使われていたという教室跡の隣にあるトイレを覗いてみた。
 トイレは旧校舎が閉鎖されるまで、普通に使用されていたという。
 死体置き場のすぐ隣にあるのは、男子トイレである。

 蓮華:「リサ、そっちは男子トイレだよ?」
 リサ:「知ってる。だからこそ、だよ」

 リサは男子トイレの中に入った。
 教育資料館として再生する前の旧校舎は廃墟同然で、電気も切られている状態だったが、今は通電している。
 トイレの中に至っては、今だに白熱電球が2個灯るだけであった。
 まあ、ワット数は大きいのだろうが……。

 リサ:「!……無い!」

 リサは天井を見て目を丸くした。

 蓮華:「何が?」
 リサ:「ダクトが無い!新校舎にはあるのに……」
 坂上:「そりゃ、これだけ古い建物だ。そんなもの、あるわけないさ」
 リサ:「うぅ……」
 坂上:「おいおい。もしかして、ダクトを通って、死体置き場に行こうと思ったのか?」
 リサ:「そのまさか、です」
 坂上:「侵入経路なんか無いさ。最初は一応、ドアはあったらしいぞ」
 リサ:「えっ!?」
 坂上:「そもそも、どうして壁ができたと思う?戦後、あの死体置き場から死体が片付けられて、ようやくそこは本来の教室としての機能を回復することができたんだ。ところが、いざ蓋を開けてみたら、毎日が幽霊騒ぎだ。それも、放課後とか真夜中に現れたってのならともかく、真昼の授業中にも現れたっていうんだから、こりゃダメだってことになってな。教室自体を閉鎖したんだ。ところが、閉鎖しただけでは、幽霊騒ぎは収まらなかった。そこで、壁で塗り込んだってわけさ」
 リサ:「でも、ドアはあった?」
 坂上:「そう。教室として使うのが無理なら、倉庫として使うのはどうだってことになってな。だけどな、幽霊を目撃したのが生徒だけならまだしも、教職員も目撃してしまってるんだ。誰もそんな所、使おうとは思わなかった。そうこうしているうちに、ドアがいつの間にか開いていることがあるって噂が立ってな。ドアが開いているのを目撃した生徒は、その中に引き込まれ、2度と出て来れなくなるなんて噂が立ったそうだ。……そして、悲劇は起きた」
 蓮華:「本当に行方不明者が出たんですか?」
 坂上:「そう。結局、倉庫として使用するのもダメになり、今度はドアの上から塗り込んで、完全な壁にしてしまったというわけさ」
 リサ:「うーむ……」

 リサは考え込んだ。
 どう見ても、この壁の中が怪しい。

 リサ:「“花子さん”に聞けば、この壁のことが分かるかもしれない。だけど、彼女はもういない……」
 坂上:「さ、もうこれで十分だろ。雨も降ってきたことだし、今日はもう帰れ」

 リサと蓮華は、旧校舎をあとにした。

 蓮華:「何だか消化不良だねぇ……」

 急いで新校舎に戻り、傘と鞄を取って来る。

 蓮華:「確か、教育資料館、前にもガッツリ調べたんだって?」
 リサ:「そう。エブリンの影があったからね。そして旧校舎には、同じく壁で塗り込められたトイレ跡があって、そこから便槽に至って、死体を発見した」
 蓮華:「で、今回は教室の死体置き場か。どうなんだろうね?」
 リサ:「あの壁……、何十年も前に塗り込んだんだよね?」
 蓮華:「坂上先生の話ならね。それがどうしたの?」
 リサ:「少し、新しい感じがしない?」
 蓮華:「そう?気のせいじゃない?」
 リサ:「前に見た、トイレを塗り込んだ壁より明るくてきれいだった。何か、数十年前というよりは、数年前に造ったって感じ」
 蓮華:「でも、新聞部のデータにもあるからねぇ……」
 リサ:「何だか、裏があるかもしれない感じ……」
 蓮華:「そうだねぇ……」

 鞄と傘を取りに行くと、リサはもう1度新聞部に立ち寄ってみることにした。

 パク・ヨンヒ:「ありがとうございます」

 すると、新聞部の部室から、BSAA韓国地区本部の養成学校から留学してきたパク・ヨンヒが出て来た。

 ヨンヒ:「あら、BOW(生物兵器)のリサ」
 リサ:「新聞部にでも入るの?」
 ヨンヒ:「まさか。この学校の秘密を調べるのに、打ってつけの部だからね」
 リサ:「この学校の秘密?」
 ヨンヒ:「あんたはBOWでの目線でしか分からないけど、BSAAの目線からしたら、この学校も相当怪しいものよ」
 リサ:「そうなの?」
 ヨンヒ:「日本人はお気楽ね。それとも、BOWだからかしら?」
 リサ:「何それ」
 ヨンヒ:「日本アンブレラの重鎮になる白井伝三郎がOBというだけでなく、教員として在籍していたこともあって、PTA会長は日本アンブレラと繋がっていて……そして、しれっとBOWのあなたが在籍している。こんな怪しい学校、他に無いでしょ?」
 リサ:「な、なるほど……。だけど……」
 ヨンヒ:「じゃ、私はこれで。……せいぜい、BSAAの邪魔をしないことね?いくらあなたでも、ロケットランチャーの攻撃には耐えられないでしょ?」
 リサ:「ぐぬぬ……!」

 とはいうものの……。

 リサ:(わたしを編入させたのは、デイライトなんだけどなぁ……)

 リサは首を傾げた。

 蓮華:「お待たせ。帰りに、お昼食べてく?ファーストフードで良かったら、奢るよ」
 リサ:「いいの!?」
 蓮華:「私のせいで、愛原先生達に迷惑掛けたしね」

[同日14:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサ:「……ということが、ありました」
 愛原:「さすがはリサ、色々調べてくれたんだな。なるほど。あの旧校舎、トイレだけじゃなかったんだな」
 高橋:「この、反対側に、あの壁に隠されたトイレがあったんでしたね。で、トイレの反対側は死体置き場と……。凄い学校っスね」
 愛原:「まあ、戦時中は何でもアリだっただろうが……。よし、善場主任に報告書を作って、明日報告に行こう。デイライトさんなら、国家権力を使って、その壁の中を見ることなど、造作も無いだろう」
 高橋:「エグい権力っスね」
 愛原:「まあ、国家権力なんて、そういうものだよ」

 愛原はリサの報告を素に、報告書を作り始めた。
 あいにくとリサは写真を撮っていなかったが、幸い教育資料館の図面は持っていたので、それを添付すれば大丈夫そうだ。
 ところが、事態は思わぬ方向に舵を切ろうとしていたのである。
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“愛原リサの日常” 「旧校舎の謎」

2022-11-11 16:44:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月17日11:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校新校舎1F職員室]

 リサと蓮華が職員室に行くと、担任の坂上修一はいた。

 リサ:「坂上先生」
 坂上:「ん?何だ、愛原。まだいたのか。夏休みの登校日ってのは、ホームルームしか無いんだから、用事が無かったら早く帰れ」
 リサ:「用事があるから残っているんです」
 坂上:「何だそれは?」
 リサ:「先生の、現役生だった頃の話を聞きたくて」
 坂上:「俺が現役生だった頃の話?“トイレの花子さん”の話なら、嫌というほどしただろ?それどころか、本物が出て来る有り様で……」
 リサ:「今回は、“トイレの花子さん”は関係無いです」
 坂上:「どういうことだ?」
 栗原蓮華:「坂上先生は『七不思議』の集まりは、3年連続参加されたそうですね?副担任の倉田先生もそうですし、私のクラスの担任の田口先生もです」
 坂上:「そうなんだ。よく知ってるな?」
 リサ:「新聞部の過去のデータを見たら、坂上先生、毎年出てた」
 坂上:「ははは!本当は1年生の時だけで、お腹いっぱいだったんだがな。でも、どうしても気になる事とかもあったんで、結局卒業するまで毎年参加しちまった」
 リサ:「気になること?」
 坂上:「まあ、色々な。結局分からずじまいのまま卒業することになって、こうして教師になって戻っては来たものの、今もまだ分からないということだ。今のところ分かったのは、“トイレの花子さん”の正体と黒木先生の闇くらいだな」
 リサ:「その黒木先生の話を聞きたいんです。坂上先生は2年生の時、旧校舎に行って、最後の7話目を黒木先生から聞いたそうですね?」
 坂上:「ああ、そうだったな」
 リサ:「その時の話を聞きたいんです」
 坂上:「そうなのか?だけど、どんな内容かくらい、新聞部のデータで分かるだろう?」
 蓮華:「その話を、当事者だった先生から伺いたいんですよ。本当は黒木先生から聞きたいんですけど、もうこの学校にいないですし」
 坂上:「ふーん……。だが、その話はやめとけ」
 リサ:「どうして!?……ですか?」
 蓮華:「……死人が出たから、ですね?」
 坂上:「そうだ。俺は1年生の回の時、“トイレの花子さん”に会った。その時だけでも6人の語り部が行方不明になったというのに、2年生の回の時にまたあの旧校舎へ行く流れになってしまってな。“トイレの花子さん”はとても有名な話だったから、それをしたがる人がいたんだ。俺は昨年のことを持ち出して、何度も止めたんだがな」
 リサ:「そして6話目の話が終わったところで、黒木先生が現れたんですね?」
 坂上:「そうだ。ちょうど、宿直の日で、旧校舎の見回りをしている時に俺達を見つけたってな。今は宿直も警備会社に委託しているが、当時は教師が直接やっていたからさ」
 蓮華:「そして黒木先生は、戦時中に起きた悲劇と、黒木先生が現役生だった頃に遭った話をしてくれたわけですね?」
 坂上:「そうなんだ。そうなんだよ……」

 その時、坂上が何かを思い出したのか、顔が青ざめてしまった。

 坂上:「あの時も、好奇心旺盛な語り部の1人が死んでしまってな。俺の時だけ、ずっとバッドエンドだよ」
 リサ:「生き残れただけ、グッドエンドだと思いますが?」
 蓮華:「あのね……」
 坂上:「で、その黒木先生の話がどうした?」
 リサ:「戦時中、死体置き場になっていたという教室を見てみたいんです」
 坂上:「それは無理だ」
 蓮華:「立入禁止ですもんね」
 坂上:「それもあるが、それは大した問題じゃない。……って、教師の俺が言うのも変か。まあ、俺も現役生だった頃は何度も立入禁止の旧校舎に忍び込んでいたクチだから、あんまり叱れる権利は無いんだ。まあ、それはそれとして……。死体置き場になっていたという教室は、壁で塗り込められてるんだ。入れないぞ」
 リサ:「そこがどこか、というだけでも……」
 坂上:「ふーむ……。まあ、いいだろう」
 蓮華:「いいんですか!?」
 坂上:「但し、ただ見に行くだけではダメだ。来月、防災訓練があるだろ?教育資料館も学園の施設である以上、消防設備点検はしないといけないんだ。一応、俺も防火管理者の資格保持者ということで、点検に行かないといけないんだよ。その手伝いという形で良ければ、連れて行ってやるよ」
 リサ:「おー!」
 蓮華:「ありがとうございます!」
 坂上:「愛原は恐らく保護者の方の仕事の関係とかだろうが、栗原はどうして行きたいんだ?」
 蓮華:「私も、あの集まりで酷い目に遭った人間ですから。私の家系は魑魅魍魎を一刀両断するのを生業にしてきました。もしも未だに旧校舎でも、そのようなモノが存在しているのなら、この刀でと……」
 坂上:「そうか。まあ、オマエならやれそうだが、今回はやめた方がいいぞ?」
 蓮華:「どうしてですか?」
 坂上:「旧校舎に着いたら話してやる」

[同日11:30.天候:曇 同学園教育資料館(旧校舎)]

 空はますます曇って来た。
 今にも、ゲリラ豪雨が降り出してきそうだ。

 坂上:「いっつもこうなんだ。七不思議の集まりの時、いっつもこうして天候が悪くなる。今回も、何かが起きないといいが……」
 蓮華:「いざとなったら、この刀で斬ります」
 リサ:「いざとなったら、爪で引き裂く」
 坂上:「オマエ達の存在が、効くといいよ」

 坂上は旧校舎正面入口の鍵を開けた。

 坂上:「さっきの話なんだがな。黒木先生の話が終わった後で、解散したわけだよ。ところがあの後、俺の家に電話があってな」
 リサ:「電話?」
 坂上:「出てみると、それは6話目を話した先輩だったんだ。臨場感を出す為にと、旧校舎に語り部達を連れて来た本人さ。当時、黒木先生は3年生の体育を受け持っていたらしいから、それで知っていたんだろうな」
 蓮華:「それで、2人してまた旧校舎に来たんですか?」
 坂上:「いや、俺は断った」
 リサ:「えっ?」
 坂上:「今から思えば、断って正解だったと思ってる。あの先輩、事も有ろうか、壁をブチ破って、中を確認すると言い出したんだ」
 蓮華:「ええっ!?」
 坂上:「さすがに俺も、それはやめた方がいいと言ったんだが、本人は取りつかれたかのように、『どうしても今やるべきだ!』と息巻いていてな。俺も嫌な予感がして、断ったよ。そしたら次の日……」
 蓮華:「死んだ先輩というのは、その人だったんですね?」
 坂上:「そうだ。しかも、黒焦げの死体だったらしい」
 リサ:「黒焦げ!……ウェルダンは好きじゃないなぁ……。やっぱりレアくらい……」
 蓮華:「犯人、アンタの仲間とかじゃないの?」
 リサ:「……そうかもしれない」
 蓮華:「は?心当たりあるの?」
 リサ:「あるかもしれないし、無いかもしれない。それを確認したい」
 蓮華:「まさか、アンタも壁ブチ抜くつもり?」
 リサ:「できれば」
 坂上:「おいおい、それはやめてくれよ?愛原は無期限停学、それを止められなかった栗原も数ヶ月は停学の上に、俺も停職処分だ」
 蓮華:「そ、それは困ります!卒業できなくなっちゃう!」
 坂上:「そういうことだ。分かったな、愛原?」
 リサ「はぁーい……」
 蓮華:「それでその……壁の中を見てみたいと言った先輩は、黒焦げの死体だったんですよね?」
 坂上:「そうだ。だけどな、どこで燃えたのかが分からなかったんだよ。人間1人丸焼けにするには、それなりの強い火力が必要だ。でも、旧校舎の中はもちろん、外でもそんな人間を燃やした形跡は全く見当たらなかったんだ」
 リサ:「“トイレの花子さん”は、その頃からいたはず。1年生の頃の坂上先生の前では成仏したように見せかけて、実はしていなかったわけだし」
 坂上:「オマエ、“トイレの花子さん”と知り合いなんだろ?知人のオマエから見て、“トイレの花子さん”は、人間1人燃やせる力を持っていそうか?」
 リサ:「多分無いと思います。……多分」

 もしも彼女にそのような力があったのだとしたら、とっくにリサの前で見せていただろう。

 蓮華:「壁は開けられていたんですか?」
 坂上:「いや、壁はきれいなままだったそうだよ。えーと……確か、この辺だったかな……あ、ここだ」

 坂上は歩みを止めた。
 それは日の差さない所であり、昼間でも薄暗い所だった。
 ましてや今は、外はどんよりと曇っている。
 今は廊下の電気を点けているが、昭和時代の木造校舎の照明だ。
 大して明るいわけではない。
 何しろ、今時、電球の照明なのだから。
 教室の中は辛うじて蛍光灯に換えられているが、廊下は電球のままである。
 さすがに旧式の電球ではなく、電球型の蛍光灯に換えられているが。

 坂上:「うん、ここだよ。ここの壁の一角だけ、他の壁より少し新しいように見えるだろ?この壁の向こうに、死体置き場として使われていた教室があったんだよ」
 蓮華:「不自然に壁が続いていますけど、教室があったとしたなら納得ですね」
 リサ:(ここの場所、覚えておこう)

 リサは持って来た図面に印を入れた。
 旧校舎の図面も新聞部にあって、それをコピーさせてもらったものだ。

 リサ:「この死体置き場の隣は、トイレですか?」
 坂上:「ああ、そうだが。1階のトイレは、“花子さん”とは関係無いだろう?」
 リサ:「いえ、ちょっとだけ見せてください」
 蓮華:「?」
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