[8月16日14:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
昼食が終わった後、私達は善場主任と仙台であったことの報告と、今後の動きについて話し合った。
仙台の奥新川の研究施設で保護された少女達は、しばらく動くことはできないだろうということだ。
また、一部は既に死亡していたコもいたらしい。
リサと違うのは、全員の身元が判明できたことだが……。
善場:「リサの出自についても、調べを進めて行きます。上野達夫氏は、元・日本アンブレラの主任研究員です。白井伝三郎とは同期であったと思われます」
愛原:「既に死亡しているわけですね?」
善場:「はい。恐らく日本のUSSあるいはUBCSみたいな連中にでしょう」
愛原:「UBCS。USSがアンブレラ直営の警備会社で、表向き警備業務に勤しんでいたのに対し、UBCSはそんなUSSですら手に負えない汚れ役を引き受ける裏組織ですな」
USSとは『Umbrella Security Service』の略である。
まんま、警備会社の名前だろう。
尚、日本の場合は日本アンブレラ100%出資の完全子会社としての警備会社であり、他の警備会社がその業務を請け負える余地など無かった。
私がかつて勤めていた警備会社は、業界でも大手の企業ではあったが、それでも日本アンブレラの仕事など全く回ってこなかったくらいだ。
警備会社委託とは名ばかりの、守衛制度と言って良かっただろう。
それに対して、UBCSは……。
愛原:「ん……?」
善場:「どうされました?」
愛原:「あ、いや……」
何だろう?
今、頭だけが重力が変わったかのような感覚を覚えた。
しかし、それは一瞬だけだった。
えーと……何を話していたんだったけな……?
高橋:「先生。霧生市の時、でっかい寺に行ったじゃないですか」
私が思い出そうとしていると、高橋が割り込むように話し掛けて来た。
愛原:「ああ。大山寺だったっけな。それがどうした?」
高橋:「憶えてませんか?あそこにUBCSの奴らの死体が転がってて、唯一の生き残りと会ったじゃないですか」
愛原:「ああ、そうだった。日系アメリカ人だったかな。名前が……」
高橋:「ジョージですよ、ジョージ。最初、在日米軍とウソついてたヤツです」
愛原:「そういえばいたな!」
高橋:「そいつも結局、UBCSの隊員だって分かりましたよね」
愛原:「そうだそうだ!」
善場:「アメリカのアンブレラ本社では、USSも会社にとって都合の悪い人物の暗殺などをやっていたそうですが、UBCSもそれをやることがあったらしいですね。で、日本ではUSSは完全にただの警備会社ですから、UBCSが裏の仕事を一手に引き受けていたようです」
愛原:「日本でもUBCSがいたなんて、驚きでしたねぇ」
霧生市の事件でUBCSはほぼ壊滅したそうだが、生き残りは生き残りで、BSAAに捕縛されたもようである。
善場:「上野達夫氏の一家を襲撃したのは、このUBCSであろうと我々は見ています」
愛原:「そうでしたか。命令したのは……」
善場:「社長の立場としての五十嵐皓貴でしょう。もっとも、副社長の息子か、或いは研究部門統括部長だった白井かもしれませんが」
愛原:「ふむふむ。この辺の調べについては?」
善場:「それはこちらでやります。私共が引き続きお願いしたいのは、所長方が調査を遂行した上で知り得た内容については内密にして頂きたいのです」
愛原:「それは当然です。我々探偵業者には、守秘義務があります」
善場:「よろしくお願いします。リサ、あなたもですよ?」
リサ:「大丈夫。先生の命令は絶対」
愛原:「他にも何かお手伝いできることはありますか?」
善場:「いくつかあるのですが、1つはリサにお願いしたいことです」
リサ:「わたしに?」
善場:「もっとも、リサにお願いすることです。それは学校での事になりますが、夏休み終了後になってからでしょうね」
リサ:「あー、本当に学校のことだ」
愛原:「一体、何ですか?一応、私もPTA会長代行なのですが……」
あくまで、正式な会長が就任するまでの仮の役目というつもりである。
私の場合、会長に就任できる規定を満たしていないからだ。
会長職が何らかの理由で空席になってしまい、副会長だけではPTA活動に支障を来す恐れがあると認め得る場合にのみ、特例で規定に達していなくても会長代行者を選任することができるとされている。
副会長が会長を兼任することは認められていない為。
御多分に漏れず、PTA役員というのは人気が無いもので、他の役員で会長職に就任できる条件を満たしている役員がいるにも関わらず、誰も会長になりたがらないのである。
その為、来年からは規定を撤廃し、私が正式に会長職にという声もあるくらいだ。
規定というのは私立校ならではなもので、『寄付金の額が最も多い保護者』である。
やはり、それだけ裕福な家庭の保護者がPTA役員、そして会長になるべきという考えからだろう。
公立校には無い考え方だ。
善場:「白井伝三郎が東京中央学園上野高校の卒業生で、尚且つ90年代は化学の教師をしていたのは御存知ですね?」
愛原:「あ、はい。斉藤元社長もあそこの卒業生で、現役生だった頃、白井が引き起こした謎の現象に巻き込まれたと……」
それで私と高橋で調査したところ、白井が専用の研究室として使用していた科学準備室の倉庫の地下に秘密の通路があって、そこを辿って行くと日本アンブレラの営業所に繋がっていたというのを突き止めた。
もちろん、突き止めた時点で既に日本アンブレラは潰れていたから、空き事務所となっていたが。
それで、白井が既にあの時点で日本アンブレラと関わりがあったことを突き止めたんだっけ。
善場:「今度は違う着眼点で、調査して頂きたいのです」
愛原:「違う着眼点?」
善場:「はい。前回は斉藤元社長の肝煎りで調査されましたよね?」
愛原:「ええ」
善場:「しかし斉藤元社長も、結局は日本アンブレラの息の掛かっていた人間でした。それが所長に白井との関係を調査させたというのは、明らかに不自然です」
愛原:「そういえばそうですね」
どうして斉藤元社長は、ややもすれば、自分の首を絞めかねないことをさせたのだろう?
いや、待てよ……。
愛原:「日本アンブレラの営業所跡は見つかりましたけど、でもそこで終わってしまいました。そもそも営業所跡くらい、調べればわかることです。営業所は研究所と違って、秘密の施設でも何でも無いんですから」
善場:「そうですね。斉藤元社長が、所長方の目を逸らす為に、あえて見当違いの調査をさせたのかもしれません。他に、白井と関係のありそうな所を調べて頂ければと思います」
愛原:「白井と関係ありそうな所ねぇ……。リサ、心当たりあるか?」
リサ:「うーん……“トイレの花子さん”……旧校舎?」
愛原:「旧校舎。今は教育資料館として使用されている建物だな。俺達も入ったことがある」
リサ:「白井が現役生だった時、まだ今の校舎は無くて旧校舎だけだったから、そこで授業を受けていた。関係があるとしたら、そこ」
愛原:「調査を頼めるか?」
リサ:「うん、分かった。でも、先生もPTA会長代行として協力して」
愛原:「ん?」
リサ:「あそこの教育資料館、普段は立入禁止だから」
愛原:「あー、なるほど」
生徒の立入が普段は禁止されているわけだから、それを生徒のリサが面と向かって立入を申請しても却下されること請け合いである。
そこを、PTA会長代行の私が……ということか。
まあ、それでも面と向かって申請したところで却下されるだろうが、そこはいい方法を考えよう。
愛原:「もう1つ、何かありませんでしたっけ?」
善場:「調査依頼ではないのですが……。夏休み最後の週末、所長方を御招待したい所があります。話はその時に」
愛原:「?」
それは一体、何だろう?
昼食が終わった後、私達は善場主任と仙台であったことの報告と、今後の動きについて話し合った。
仙台の奥新川の研究施設で保護された少女達は、しばらく動くことはできないだろうということだ。
また、一部は既に死亡していたコもいたらしい。
リサと違うのは、全員の身元が判明できたことだが……。
善場:「リサの出自についても、調べを進めて行きます。上野達夫氏は、元・日本アンブレラの主任研究員です。白井伝三郎とは同期であったと思われます」
愛原:「既に死亡しているわけですね?」
善場:「はい。恐らく日本のUSSあるいはUBCSみたいな連中にでしょう」
愛原:「UBCS。USSがアンブレラ直営の警備会社で、表向き警備業務に勤しんでいたのに対し、UBCSはそんなUSSですら手に負えない汚れ役を引き受ける裏組織ですな」
USSとは『Umbrella Security Service』の略である。
まんま、警備会社の名前だろう。
尚、日本の場合は日本アンブレラ100%出資の完全子会社としての警備会社であり、他の警備会社がその業務を請け負える余地など無かった。
私がかつて勤めていた警備会社は、業界でも大手の企業ではあったが、それでも日本アンブレラの仕事など全く回ってこなかったくらいだ。
警備会社委託とは名ばかりの、守衛制度と言って良かっただろう。
それに対して、UBCSは……。
愛原:「ん……?」
善場:「どうされました?」
愛原:「あ、いや……」
何だろう?
今、頭だけが重力が変わったかのような感覚を覚えた。
しかし、それは一瞬だけだった。
えーと……何を話していたんだったけな……?
高橋:「先生。霧生市の時、でっかい寺に行ったじゃないですか」
私が思い出そうとしていると、高橋が割り込むように話し掛けて来た。
愛原:「ああ。大山寺だったっけな。それがどうした?」
高橋:「憶えてませんか?あそこにUBCSの奴らの死体が転がってて、唯一の生き残りと会ったじゃないですか」
愛原:「ああ、そうだった。日系アメリカ人だったかな。名前が……」
高橋:「ジョージですよ、ジョージ。最初、在日米軍とウソついてたヤツです」
愛原:「そういえばいたな!」
高橋:「そいつも結局、UBCSの隊員だって分かりましたよね」
愛原:「そうだそうだ!」
善場:「アメリカのアンブレラ本社では、USSも会社にとって都合の悪い人物の暗殺などをやっていたそうですが、UBCSもそれをやることがあったらしいですね。で、日本ではUSSは完全にただの警備会社ですから、UBCSが裏の仕事を一手に引き受けていたようです」
愛原:「日本でもUBCSがいたなんて、驚きでしたねぇ」
霧生市の事件でUBCSはほぼ壊滅したそうだが、生き残りは生き残りで、BSAAに捕縛されたもようである。
善場:「上野達夫氏の一家を襲撃したのは、このUBCSであろうと我々は見ています」
愛原:「そうでしたか。命令したのは……」
善場:「社長の立場としての五十嵐皓貴でしょう。もっとも、副社長の息子か、或いは研究部門統括部長だった白井かもしれませんが」
愛原:「ふむふむ。この辺の調べについては?」
善場:「それはこちらでやります。私共が引き続きお願いしたいのは、所長方が調査を遂行した上で知り得た内容については内密にして頂きたいのです」
愛原:「それは当然です。我々探偵業者には、守秘義務があります」
善場:「よろしくお願いします。リサ、あなたもですよ?」
リサ:「大丈夫。先生の命令は絶対」
愛原:「他にも何かお手伝いできることはありますか?」
善場:「いくつかあるのですが、1つはリサにお願いしたいことです」
リサ:「わたしに?」
善場:「もっとも、リサにお願いすることです。それは学校での事になりますが、夏休み終了後になってからでしょうね」
リサ:「あー、本当に学校のことだ」
愛原:「一体、何ですか?一応、私もPTA会長代行なのですが……」
あくまで、正式な会長が就任するまでの仮の役目というつもりである。
私の場合、会長に就任できる規定を満たしていないからだ。
会長職が何らかの理由で空席になってしまい、副会長だけではPTA活動に支障を来す恐れがあると認め得る場合にのみ、特例で規定に達していなくても会長代行者を選任することができるとされている。
副会長が会長を兼任することは認められていない為。
御多分に漏れず、PTA役員というのは人気が無いもので、他の役員で会長職に就任できる条件を満たしている役員がいるにも関わらず、誰も会長になりたがらないのである。
その為、来年からは規定を撤廃し、私が正式に会長職にという声もあるくらいだ。
規定というのは私立校ならではなもので、『寄付金の額が最も多い保護者』である。
やはり、それだけ裕福な家庭の保護者がPTA役員、そして会長になるべきという考えからだろう。
公立校には無い考え方だ。
善場:「白井伝三郎が東京中央学園上野高校の卒業生で、尚且つ90年代は化学の教師をしていたのは御存知ですね?」
愛原:「あ、はい。斉藤元社長もあそこの卒業生で、現役生だった頃、白井が引き起こした謎の現象に巻き込まれたと……」
それで私と高橋で調査したところ、白井が専用の研究室として使用していた科学準備室の倉庫の地下に秘密の通路があって、そこを辿って行くと日本アンブレラの営業所に繋がっていたというのを突き止めた。
もちろん、突き止めた時点で既に日本アンブレラは潰れていたから、空き事務所となっていたが。
それで、白井が既にあの時点で日本アンブレラと関わりがあったことを突き止めたんだっけ。
善場:「今度は違う着眼点で、調査して頂きたいのです」
愛原:「違う着眼点?」
善場:「はい。前回は斉藤元社長の肝煎りで調査されましたよね?」
愛原:「ええ」
善場:「しかし斉藤元社長も、結局は日本アンブレラの息の掛かっていた人間でした。それが所長に白井との関係を調査させたというのは、明らかに不自然です」
愛原:「そういえばそうですね」
どうして斉藤元社長は、ややもすれば、自分の首を絞めかねないことをさせたのだろう?
いや、待てよ……。
愛原:「日本アンブレラの営業所跡は見つかりましたけど、でもそこで終わってしまいました。そもそも営業所跡くらい、調べればわかることです。営業所は研究所と違って、秘密の施設でも何でも無いんですから」
善場:「そうですね。斉藤元社長が、所長方の目を逸らす為に、あえて見当違いの調査をさせたのかもしれません。他に、白井と関係のありそうな所を調べて頂ければと思います」
愛原:「白井と関係ありそうな所ねぇ……。リサ、心当たりあるか?」
リサ:「うーん……“トイレの花子さん”……旧校舎?」
愛原:「旧校舎。今は教育資料館として使用されている建物だな。俺達も入ったことがある」
リサ:「白井が現役生だった時、まだ今の校舎は無くて旧校舎だけだったから、そこで授業を受けていた。関係があるとしたら、そこ」
愛原:「調査を頼めるか?」
リサ:「うん、分かった。でも、先生もPTA会長代行として協力して」
愛原:「ん?」
リサ:「あそこの教育資料館、普段は立入禁止だから」
愛原:「あー、なるほど」
生徒の立入が普段は禁止されているわけだから、それを生徒のリサが面と向かって立入を申請しても却下されること請け合いである。
そこを、PTA会長代行の私が……ということか。
まあ、それでも面と向かって申請したところで却下されるだろうが、そこはいい方法を考えよう。
愛原:「もう1つ、何かありませんでしたっけ?」
善場:「調査依頼ではないのですが……。夏休み最後の週末、所長方を御招待したい所があります。話はその時に」
愛原:「?」
それは一体、何だろう?