報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「謎と闇の東京中央学園」 2

2022-11-15 20:11:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月21日10:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・講堂]

 この日、保護者説明会が行われた。
 私もリサの保護者であるし、PTA会長代行ということもあり、この日の説明会に参加した。

 保護者A:「どうなってるの、この学校は!?」
 保護者B:「韓国の軍隊が勝手に入ってくるなんて、この学校は韓国の学校なのか!?」
 保護者C:「子供を安心して通わせられない!」

 という怒号が飛び交った。

 副校長:「えー、保護者の皆様のお怒り、そして大いなる不安。これにつきましては、当校と致しましても、非常に深く受け止めておりまして……」 

 あまり、学校側に誠意が見られない。
 まあ、生徒のイジメ自殺とかだったら、もっと当事者面しろと思うところだが、今回にあっては学園側も被害者のようなものだからな。
 しかし、火のない所に煙は立たぬという。
 火の気を感じた韓国BSAAが、勝手に出動し、そして『何者』かに返り討ちを食らって自滅しただけに過ぎない。

 保護者D:「そもそもあの教育資料館は、1995年に取り壊す予定だったと聞きました。あれを取り壊して、第2体育館を建てるのだと。それが実際は現在ある体育館の増改築に留め、旧校舎を保存する方向になってしまいました。私はここの卒業生なのですが、このような計画変更された理由が説明されていません。せっかくの場なのですから、それについて説明して頂けないでしょうか?」

 ほう?
 あの旧校舎は、本来取り壊す予定だったのか。
 私はPTA会長代行として、進行役側の席に座っているが、隣にはリサの担任の坂上先生も座っている。
 私は小声で聞いた。

 愛原:「坂上先生、今のDさんが仰ったことは本当なんですか?」
 坂上:「本当です。1995年に新聞部で始まった、『学校の七不思議特集』も、本当はその旧校舎取り壊しに因んで行われたものなんですよ」
 愛原:「でも、取り壊されなかった?」
 坂上:「そうなんです」

 教頭:「……えー、というわけでありまして、当時の生徒の焼身事件がきっかけで、まずは計画が延期されたのです。それから警察からの現場保存の依頼が延期に延期されましたが、そうしているうちに更に老朽化が進んでしまい、また、阪神淡路大震災が発生したこともあり、当校では旧校舎の補強工事をしなくてはならなかったのです。それに際しまして、当時の校長が、『学園の長い歴史を今に伝える生き証人であるから、このまま取り壊すのは惜しい。何とか保存して、未来の生徒達への教育に活用できないか』と申しまして、それで保存することに相成ったのであります」

 リサの言っていた6話目の語り部が、謎の焼死体となって発見された。
 彼の証言から、死の直前まで旧校舎にいた可能性は高い。
 だから警察も、旧校舎を調べたのだろう。
 だが、殺された痕跡は見つからなかった。
 が、一応遺品は見つかったらしい。
 それは、電動ノコギリ。
 どうやら6話目の語り部は、電動ノコギリを持って、壁を壊そうとしたようである。
 使われた形跡は無かったが。
 とにかく、旧校舎が怪しいと思った警察は学園側に現場保存を依頼し、そのせいで夏休み中に取り壊す計画が延期になった。
 そうこうしているうちに、校長の代替わりが起き、旧校舎保存計画を打ち立てたようである。
 その校長も、今は学園を去っている。
 ……何だろう?何か、仕組まれているような気がする。
 あの旧校舎を取り壊されると、何か困る勢力があって、そうしようとすると、当事者を焼死体にしてしまう何かが働くようになっているのではないか?
 白井伝三郎を気を取られ過ぎて、何かを見落としているのかもしれない。

 副校長:「学園としては、BSAAに断固として抗議します」

 尚、焼死体5人の中にパク・ヨンヒはいなかった。
 とはいえ、全身火傷の半死半生で、韓国に帰国したという。

 愛原:「ん?待てよ……」

 2時間くらいしたお昼頃、保護者説明会は終わった。

 高橋:「先生、お疲れ様です」
 リサ:「先生、お帰りー」

 高橋が車で迎えに来た。

 愛原:「ああ、待たせたな」

 私は助手席に乗った。
 リアシートに座っているリサは……。

 リサ:「先生、こっちに乗ってよー」
 愛原:「悪いな。高橋と相談があるんだ」
 高橋:「そういうこった」
 リサ:「ぶー……」
 高橋:「先生、マンションに戻りますか?」
 愛原:「ああ、そうしてくれ」
 高橋:「分かりました」

 高橋がエンジンを掛けて、車を出した。

 愛原:「なあ。BSAAって、ボディカメラを着けてるんだったよな?」
 高橋:「らしいですね。まるで、アクションゲームのFPSみたいな感じだそうですよ」
 愛原:「BSAAの発表では、カメラや中のメモリーごと燃やされたんで、解析不能ということなっている」
 高橋:「そう言ってましたね」
 愛原:「……リサ、お願いがある」
 リサ:「なーに!?」
 愛原:「家に帰ったら、ちょっとゲームをやってくれないか?」
 リサ:「何のゲーム?」
 愛原:「“バイオハザードシリーズ”で、BSAAが出て来る奴だ」
 リサ:「う、うん。分かった……」

[同日13:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 マンションに戻った後、昼食を取った私達。
 その後私は、リサのゲームプレイの様子を見た。
 ゲームも好きなリサは、慣れた様子でBSAAのクリス・レッドフィールド大佐を操作しながら、クリーチャーを倒していく。

 高橋:「BOWに操作されるBSAA……を、通してリサの仲間が倒されるw」
 リサ:「仲間じゃないし!」

 このゲームはFPS画面になっている。
 つまり、プレイヤーキャラの視点で画面が動くというものだ。
 一人称視点ともいう。
 そして、ゲームの中のクリスが、無線で仲間と交信を始める。
 その後で、HQとの無線交信があった。

 愛原:「やっぱりだ……!」
 高橋:「何がっスか?」
 愛原:「もしも現実のBSAAがこのゲームの通りなら、HQにも映像が送られているはずだ。つまり、隊員が持っているカメラやメモリーは壊されても、HQ側でその映像が録画されているはずなんだ」
 高橋:「あ……!」
 愛原:「だから、解析できないなんてウソだ。そこをデイライトさんに突いてもらおう」

 私は立ち上がると、自分のスマホを手に取り、それで善場主任にLINEを送った。
 今日は日曜日だが、韓国BSAAがゴタゴタを起こしてくれたせいで、休日返上だという。
 すぐに通話しなかったのは、忙しいかもしれないと思ったからだ。
 しかし、通話できる余裕はあったようだ。
 すぐに主任から掛かって来た。

 愛原:「あ、もしもし?」
 善場:「善場です。愛原所長、お疲れさまです」
 愛原:「お疲れ様です」
 善場:「LINEを拝読致しました。ご指摘の件につきましては、こちらも把握しております」
 愛原:「あ、そうだったんですか。これは失礼しました」
 善場:「いいえ。韓国BSAAは、それでも『機密事項である』と、回答してくれません」
 愛原:「何ですか、それ……」
 善場:「欧州本部ではなく、北米支部に訴えてみようと思います」
 愛原:「北米支部?」
 善場:「今でこそBSAAは欧州に本部がありますが、そもそも創立メンバー(オリジナル・イレブン)の殆どはアメリカ人ということもあり、本来の創立の地は北米支部だと言われています。実際、極東支部設立の際の現地指導員の殆どは、北米支部から派遣されたほどですから」
 愛原:「なるほど……」
 善場:「上手く行く保証はありませんが、賭けてみる価値はあるかしれません」
 愛原:「承知しました」
 善場:「所長方は来週の予定に備えておいて頂き、東京中央学園の動きに注意してください」
 愛原:「かしこまりました」

 やはりデイライトも、学園の動きが気になるようである。
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“私立探偵 愛原学” 「謎と闇の東京中央学園」

2022-11-15 15:40:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月18日11:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 この時間、事務所に善場主任がいらっしゃった。

 善場:「お疲れさまです。愛原所長」
 愛原:「お疲れ様です。善場主任」

 私はすぐに善場主任を、応接室にご案内した。
 デイライトさんの所と違って狭く、ソファもくたびれた物で申し訳ないとは思う。

 善場:「リサもいいですか?彼女からも話を聞きたいので」
 愛原:「分かりました」

 私はリサを呼び寄せた。
 さすがにリサは体操服ではなく、普通の私服を着ている。
 話というのは、やはり東京中央学園で起きたこと。
 未だに調べが行われているのは、BSAA隊員達が誰にやられたのかが分からないからであった。
 こんな時の為に、隊員達はボディカメラを着用している。
 ところが、そのボディカメラが中のメモリーごと黒焦げになっていて、解析できないのだという。
 そして……。

 善場:「現場はとても綺麗なものだったそうです。BSAAが突入する際に、セキュリティセンサーやカメラのコードを切ったり、電源を落としたりしたにも関わらずです」
 愛原:「あいつら、そんなことしたのか……」
 善場:「日本の地区本部隊はおろか、警察にも通達していない……まあ、緊急を要する場合は事後報告でも良いことになっていますが、どうもそうではなかったようなので、明らかな協定違反ですね」
 高橋:「現場が綺麗だったというのは、どういうことなんでしょうか?」
 善場:「彼らが黒焦げになった場所の特定が困難なほどに、何故か現場が綺麗に片付けられていたからですよ。まるで、最初から突入などしていないかのように」
 愛原:「ええっ!?」
 リサ:「同じだ。あの時の語り部さんみたいに……」
 善場:「その話を詳しく聞かせてもらいたいのだけれど、いいかしら?」
 リサ:「わたしも又聞きだから……。わたしの担任の坂上先生が、まだ現役生だった頃の話なの。あの頃も、新聞部の『学校の七不思議』特集をされていて……」

 6話目の語り部が、臨場感をより出す為にと、その時から既に立入禁止となっている旧校舎に入って話をしようとしたこと。
 それは“トイレの花子さん”にまつわる話であったものの、それをいざ確認しようとしたら、宿直教師だった黒木源三に見つかったこと。
 そして彼は“トイレの花子さん”の話を全否定した後、『もっと怖くて、面白い話がある』として、参加者全員を例の壁の前に連れて行ったこと。
 話が終わって解散し、1度帰宅した坂上だったが、夜中に6話目の語り部から電話を受けたこと。
 語り部は興奮冷めやらぬ様子で、あの壁の向こうを確認しようと言ってきたこと。
 しかし坂上は断り、仕方なく語り部が1人で実行に移そうとしたこと。
 そして翌朝、6話目の語り部は焼死体で発見されたこと。
 しかしながら、燃えた場所が分からず、結局事件は迷宮入りしていることをリサは話した。

 善場:「黒木源三は、宿直室の地下や旧校舎の便槽で見つかった白骨死体達を食人していた疑いがあります。もしかしすると、黒木が何か知っているのかもしれません」
 愛原:「しかし、もういないわけですね。韓国BSAAも、あの壁の向こうを確認しようとしていたのでしょうか?」
 善場:「それは分かりません。『機密事項だから』と、話してくれないんですよ」
 愛原:「人様の国で勝手な事をして、『機密事項』も何も無いもんだ!」
 善場:「BSAA極東支部や欧州本部にも働きかけていますが、欧州本部はトラブルが発生していて、対応できないようです。極東支部に動いてもらうのが良いのですが、支部長も現任者は韓国地区本部長から選出された人ですので、ちょっと難しいかもしれません」
 愛原:「何か、BSAAも落ち目ですな」
 善場:「そう思います。何しろ肝心要の本部が、大きなトラブルを抱えているのですから」
 リサ:「見た目は普通の古い壁なんだけどね」
 善場:「私も見てみたいです。その壁」
 愛原:「でも、今は……」
 善場:「はい。もちろん、BSAAや警察の捜査が終わった後になりますが……」
 愛原:「それにしても、七不思議の癖に、95年から今までよくこの企画が続いてるな?」

 こりゃもう、百不思議……いや、『東京中央学園百物語』でいいじゃんと思った。

 リサ:「中には途中でネタ切れした回もあったらしいよ」
 愛原:「それにしてもなぁ……」
 リサ:「ねぇ、善場さん」
 善場:「何ですか?」
 リサ:「ヨンヒが疑ってたの。あの学園は怪しいって」
 善場:「ヨンヒとは、BSAA極東支部韓国地区本部の養成学校から留学してきた工作員ですね」
 愛原:「工作員認定ですか」
 善場:「あの作戦に参加していた以上、その認定で良いかと思います。そもそも本来、養成学校生は作戦に参加できないはずなので」
 愛原:「なるほど……」
 善場:「高野芽衣子……私はエイダ・ウォンのコピーだと思っていますが、あれと同じで、BSAAに対してもスパイ活動をしていたのかもしれませんね」
 愛原:「高野君が……」
 リサ:「ねぇ、善場さん。わたしを東京中央学園に入れたのは、ただの偶然じゃないんでしょ?ヨンヒが言ってた」
 善場:「……確かに、我々はあなたをあの学園に入学させるのが適切だと判断したもので、適当に選んだわけではありません」
 愛原:「今から思うと、随分と日本アンブレラとの関わりが強い学園です。それを調べる口実を作る為に、リサを入学させたとか?」
 善場:「それはお答えできません」

 否定しない場合は肯定するのと同じ、というから……。

 愛原:「リサ、怒るなよ?」
 リサ:「別に怒ってないよ。学校に行きたいって言ったのは、わたしなんだし……」
 愛原:「善場主任、デイライトさんの方でも、色々とあの学園について調査されたのでは?」
 善場:「まあ、そうです。今は日本アンブレラとの関係性について特化していますが、それを抜きにしても、色々とキナ臭い噂があるようです」
 リサ:「何も無いのに、七不思議の企画が毎年できるだけの怪奇現象なんて有り得ないもんね」
 善場:「そうですね」

 中にはお化けや幽霊が一切登場せず、奇人・変人だけで一話が構成された怪談も多々あるという。
 もっとも、それは白井伝三郎の話もそうである。
 だが、幽霊の話はくだらないと片付けられないのもまた、東京中央学園の怖い所である。
 実際、“トイレの花子さん”という幽霊が私達に襲い掛かってきたのだから。

 善場:「第2次世界大戦中、あの学園に起きた悲劇が、端を発している。そんな気がします」
 愛原:「あの壁にまつわる話は、確かに東京大空襲中の悲劇でしたね」

 そんな時代に日本アンブレラは存在しない。
 そもそも、アンブレラ・コーポレーションの創業者たるオズウェル・E・スペンサーも、まだ起業しておらず、学生であった。
 スペンサーはルーマニアでの『留学』経験から、母国アメリカでアンブレラを創業したというが……。

 善場:「当時は空襲を受けた都市なら、どこでも起こり得た悲劇の一幕だったのでしょう。しかし、何故かそれが時を超えて、現代においても『何か』を引き起こす『モノ』となって、あの学園に巣くっているのです。それこそ、リサですら歯牙にも掛けないほどに……」
 リサ:「わ、わたしですら、相手にされない?」
 善場:「ええ。あなたは学園の中でも、異質の『モノ』であるはず。実際に、亡霊の“トイレの花子さん”と仲良くしたり、あなたも捕食者として女子生徒達の老廃物や血液を吸収したりして、あなた自身が怪談話の主人公になったほどですね?」
 リサ:「う、うん……」
 善場:「それだけ目立てば、人間などいとも簡単に焼死体化させ、その現場の痕跡すら消してしまうほどの力を持った『モノ』に目を付けられてもおかしくはないはず。しかし、そんなことは無い。それは、あなたを狙うまでも無いという自信から来ているのでしょう。つまり、あなたがケンカを吹っ掛けてきたとしても、焼死体化させる自信があるということです」
 リサ:「わたしを焼死体化?そんなことできると思ってるの?」
 善場:「あなたを火炎放射器で焼いたとしても、すぐに回復して、事実上無敵であることは知っています。あの『モノ』はそれを知らないか、或いは知っていて自信を持っているのかも……」
 愛原:「あとは、『来ない者関わらず』という可能性もありますね。リサ自身のことは知っていても、その『モノ』に関わろうとしなければ、『モノ』側も関わろうとしないという……」
 善場:「それも有り得ますね。いずれにせよ、あの壁については調べる必要があると思います」

 まさかとは思うが、今度は善場主任が焼死体化しないだろうかと不安になった。
 いや、善場主任も『0番』であり、ただの人間ではない。
 もしかすると……。
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“私立探偵 愛原学” 「BSAAの敗北」

2022-11-15 11:54:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月18日05:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 リサ:「先生!先生!大変!起きて起きて!」
 愛原:「うーん……」

 今朝5時頃、私はリサに叩き起こされた。
 リサは相変わらず、体操服に緑のブルマーを穿いていたが……って、あれ?……そうか、どうやら私は昨夜、マッサージの最中に眠ってしまったらしい。
 目覚まし時計を見ると、朝5時ってことは、私が眠ったから起こしに来たわけではないようだ。

 愛原:「な、何だよ?まだ、5時じゃないか」

 起床時間は7時にしている。

 リサ:「学校で大変なことが起きたの!こっちに来て!」
 愛原:「んー?」

 私は起き上がると、リサに手を引かれてリビングに向かった。

 高橋:「あ、先生。おはようございます」
 愛原:「おー。何かあったのか?」
 高橋:「俺もリサが騒いでやがったので、起こされたんですよ。まあ、ちょっと観てください」

 高橋はリビングのテレビを指さした。
 この時間帯だとNHKはニュース、民放だと情報番組をやっているか。
 で、どのチャンネルも……。

〔「……はい、こちら、東京中央学園上野高校の前に来ています。本日未明、『学校から爆発音が聞こえた』との通報が、近所の住民から警察に通報がありました。警察が駆け付けると、校内に複数の焼死体が発見されたとのことです」〕

 愛原:「複数の焼死体!?」
 高橋:「どこかのアホが学校に忍び込んで、ガスパンやって爆発させたんスかね?」
 愛原:「今時、シンナーやるヤンキーなんているのか?」

 しかもヤンキーがやる程度のシンナーで、それが爆発したとしても、焼死体が数人なんてことはあるのだろうか?
 せめて、重軽傷の火傷が関の山じゃないか?

〔「えー、現場からのレポートの途中ですが、ここで新たな情報が入りました。焼死体の数は5名。全員がBSAA極東支部韓国地区本部の隊員とのことです。繰り返し、お伝えします。東京中央学園上野高校の敷地内で発見されました焼死体の数は5名。全員がBSAA極東支部韓国地区本部の隊員とのことです」〕

 愛原:「BSAAだって!?」
 高橋:「しかも韓国!?人様の国で、なに勝手なことをしてやがるんだ!?」
 愛原:「いや、BSAAの活動を承認している国では、たまにあることだよ」
 高橋:「そ、そうなんですか?」
 愛原:「例えば日本でバイオハザードが発生した時に、真っ先に駆け付けたのが韓国BSAAで、韓国人だけというのも有り得る話ではある」
 高橋:「と、ということは?」
 愛原:「東京中央学園でバイオハザードの臭いを嗅ぎ付けた韓国BSAAが、ホイホイ乗り込んでみたら、そこにいたモノに返り討ちされたってことだろう」
 リサ:「よ、ヨンヒは大丈夫なのかな?」
 愛原:「でも、パクさんは、あくまでも養成学校の生徒で、たまたまこちらに留学って……ああっ!」
 高橋:「養成学校生でも後方支援はできますし、奴のタレコミで動いたんじゃないスかね?」
 リサ:「そういうことか!」

 リサは先日、新聞部の部室から出て来るヨンヒの姿を思い出したという。
 もしかしたら、ヨンヒはヨンヒで何か見つけたのかもしれない。
 そしてそれを自分が所属している韓国BSAAに報告したら、出動したということか。
 ……BSAAの活動にかこつければ、外国内でのスパイ活動もできる事が問題点として挙げられているというのも頷けるな。

 高橋:「ど、どうするんです?」
 愛原:「取りあえず今日、善場主任に聞いてみよう」
 リサ:「……ヨンヒにLINEしてみたけど、既読も付かない」
 高橋:「あの5人の焼死体のうちの1人じゃね?」

〔「……BSAA極東支部日本地区本部によりますと、韓国地区本部隊の国内活動についての連絡は無いとのことで……」〕

 高橋:「おいおい!無断活動かよ!?こりゃ、『謝罪と賠償を要求するニダ』レベルですね!?」
 愛原:「いや、『緊急を要する場合においては、事後報告でも可能とする』というのがある。ただ、今回の彼らの出動が、『緊急を要する』に値するレベルだったのかは議論されるだろうがな」

 私は別のチャンネルに変えてみた。
 すると、ヘリコプターが学園上空から撮影している所があった。

〔「……はい、こちら東京中央学園上野高校の上空に来ています。本日午前1時頃、近所の住民から……」〕

 愛原:「……どこが爆発した?」
 高橋:「えーっと……」
 リサ:「…………」

 上空からの映像を見る限り、焼死体5人も出した大きな爆発が起きた場所が分からない。
 新校舎も体育館もプールも、そして教育資料館もきれいなままだった。

 リサ:「も、もしかして……」
 愛原:「どうした?」
 リサ:「昔、『学校の七不思議』の集まりの後で、焼死体になった語り部さんがいたの。旧校舎の壁の謎を明かそうとした語り部さんがいたんだけど、翌朝、焼死体で発見されたんだって。だけど、どこで焼死体になったのか分からなかったんだって。学校のどこにも、燃やした跡なんて無かったから」
 愛原:「マジかよ……」
 高橋:「高校生1人を謎の焼死体にしただけじゃなく、大の軍人5人を謎の焼死体にしてしまう案件ですよ?」
 愛原:「う、うん……」

 も、もしかしすると、昔の語り部1人を焼死体にしたモノと、現在5人の軍人を焼死体にしたモノが同じだとして、それはリサよりも手強いのではと思ってしまった。

[同日09:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]

 事務所に移動した私は、まずは善場主任に連絡した。
 善場主任は、やはり私が電話してくるのを予想していたらしい。

 善場:「はい。こちらとしても、現在BSAAに確認を取っています。今現在、校内は警察や消防、BSAAが現場検証に入っているので、我々はまだ入ることができません」
 愛原:「実はリサには、何か心当たりがあるようなんですよ。それにつきましては、如何致しますか?」
 善場:「後ほど、詳しいお話を伺わせて頂きます」
 愛原:「週末の我々の行動につきましては?」
 善場:「それは予定通りでお願いします。あくまでも今回の事件は、たまたま東京中央学園が現場になっただけの、BSAA内での事故ですから」
 愛原:「分かりました」

 幸いなのは、まだ学校が夏休みであることだろう。
 ただ、保護者説明会とかはしなくてはならないだろうな。
 もっとも、BSAAが介入しているので、すぐには無理だろう。
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