報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵達の帰京」

2022-11-06 20:14:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日09:25.天候:晴 千葉県成田市古込 成田国際空港第2ターミナル]

 私達を乗せた飛行機は、途中で何回か大きく揺れた。
 もちろんそれは気流の影響によるものであり、その揺れ方は走行中の電車がポイントを通過した程度のものであったが、やっぱりいきなり揺れられるとビックリするものだ。
 横揺れは走行中の電車のような揺れ方、縦揺れに関しては震度3の地震くらいといったところか。
 いずれにせよフライトには影響の無いものであるが、その時の反応で、この乗客が飛行機に乗り慣れているか否かが判断できると思う。
 予定通り飛行機は、成田空港第2ターミナルに着陸した。
 ここはANAの航空機が離着陸するターミナルである。

 愛原:「さあ、着いた着いた」

 降機の準備ができたということで、乗客達が前方のドアに向かって歩き出す。
 私達もハットラックから荷物を取り出すと、他の乗客達に続いて前に進んだ。

 高橋:「飛行機だとあっという間っスね」
 愛原:「ああ。だが、ここから都内までが少し距離があるのだよ」
 高橋:「確かに」
 リサ:「機内食食べたかったー」
 愛原:「国内線には無ェよ」

 もっとも、国内線でも比較的長距離路線の、それもクラスJとかプレミアムクラスとかだと、軽食のサービスとかはあるんだったか。

 愛原:「オマエにはパスポートは発給されない。つまり、外国に行くことはできないんだ」
 リサ:「えー……」
 愛原:「善場主任と同じ仕事に就けば、大丈夫だと思うがな」
 リサ:「うーん……」

 リサは首を傾げた。
 とにかく、無事に飛行機を降りることができた。

 高橋:「ここからはどうするんスか?」
 愛原:「善場主任が、話があるから事務所に来て欲しいってことで、直接行くことになる」
 高橋:「新橋っスか。えーっと……」
 愛原:「JRで行けば、実は1本で行ける」
 高橋:「あっ……」
 愛原:「ただ、今は本数が少ないから、ちょっと待つことにはなるがな」
 高橋:「なるほど。そうでしたか」
 愛原:「だから、ゆっくりタバコ吸ってきていいぞ」
 高橋:「へへっ!それじゃ、ちょっと行ってきます」

 高橋は小走りに、喫煙所に走って行った。
 私はスマホで善場主任に、成田空港に到着した旨の連絡をした。
 ここからJRで向かうことも付け加えておく。
 因みに乗るのは快速電車であり、中間車のグリーン車に乗っても良いか聞いてみると、OKとなった。
 そもそもどうしてリサが電車に乗る時、必ず先頭車か最後尾でないといけないのかというと、いざ暴走した時、長編成の列車だと、BSAAが外から狙い撃ちしにくいからだという。
 そういう時、『1番前』か『1番後ろ』に乗っていてくれた方が、攻撃目標として分かりやすいのだと。
 それが理由なのであれば、首都圏の中距離電車に乗る時、むしろ2階建てグリーン車に乗ってくれた方が却って目標にしやすいのではないか。
 善場主任は、そういう考えのようである。
 高橋が喫煙所から戻って来ると、私達は駅に向かった。

[同日10:02.天候:晴 同地区 JR空港第2ビル駅→成田線3938F列車5号車内]

 空港第2ビル駅のJRホームは1面1線の単式ホームである。
 このホームに、上下列車が種別を問わずに停車するわけである。
 その為か、ホームの上にはLED式の乗車位置案内が付いていた。

〔まもなく、快速、逗子行きが15両編成で参ります。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください〕

 1番線しか無いからか、あえて接近放送でホーム番線は言わない。
 やってきた電車は、旧型のE217系であった。
 本当なら新型のE235系への置き換えが進んでいるはずなのだが、それは遅々として進まないようだ。
 その理由は、昨今の半導体不足によるものだという。
 11両の基本編成に付属の4両編成を連結した15両編成であった。
 しかし、隣の成田空港駅から来たはずの電車だが、先客はそんなに乗っていなかった。
 グリーン車にあっても、数えるほどである。
 まだまだコロナ禍の影響が出ているということだ。
 それに、今は東京方面に格安の高速バスが多数運転されるようになって、そちらに客を取られている感もある。
 私も下車駅が新橋でなく、東京駅だったら、バスへの乗り換えも選択肢に入れていただろう。

 愛原:「荷物もあるから、平屋席でいいか?」
 高橋:「いいっスよ」
 リサ:「うん」

 5号車に乗り込んで、誰も乗っていない平屋席に向かった。
 この普通列車のグリーン車の特徴は、1階席と2階席は天井が低い為に荷棚が無いことである。
 もしも荷物があって、荷棚を使いたい場合は車端部の平屋席の方が良い。

〔……ドアが閉まりますから、ご注意ください〕

 因みにこの駅、ホームドアが面白いことになっている。
 ホームドアがロープになっているのである。
 普段はロープが張られた状態になっているが、電車が来ると、ロープを吊っている柱が上がって、ロープが上に折り畳まれる。
 電車のドアが閉まると、柱が下がって、折り畳まれていたロープがまた張られるという状態になるのだ。
 こうすることで、ドア数の違う特急や快速などでも、気にせずに設置できるというわけである。
 電車のドアが閉まって、地下トンネル内を走り出す。

〔この電車は総武本線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。停車駅は都賀までの各駅と千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、錦糸町から先の各駅です。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、成田です〕

 因みに私達は、駅の券売機で紙のグリーン券を買っていた。
 そうなると、グリーンアテンダントが検札にやってくるのである。

 愛原:「リサ、約束だ。このグリーン車には、車内販売がある。そこでおやつを売っているから、きれいなお姉さんから買ってあげるよ」
 リサ:「何か、ムカつく言い方……」
 高橋:「先生、カンベンしてくださいよ~」

 と、そこへ……。

 グリーンアテンダント:「失礼致します」

 背後から中性的な声が聞こえて来た。
 ボーイッシュなアルト声のお姉さんかな?
 そう思って振り向いてみると……。

 グリーンアテンダント():「失礼致します。グリーン券はお持ちではございませんか?」
 愛原:「…………」
 グリーンアテンダント:「お客様?どうなさいました?」
 高橋:「あ、いや、何でも無ェよ。ほら、キップ」
 リサ:「はい、キップ」
 グリーンアテンダント:「あ、ありがとうございます」
 リサ:「お菓子とジュース売ってる?」
 グリーンアテンダント:「車内販売ですね?すぐ、お持ちします」
 高橋:「先生、ライフ0になった特異菌クリーチャーじゃあるまいし、石灰化しないでくださいよ」
 リサ:「先生、いつのまに特異菌に感染してた?」
 高橋:「知らねーよ」

(高橋、愛原のポケットからグリーン券を取り出す)

 高橋:「ほら、先生の分」
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます」

 ……グリーンアテンダントは一旦、乗務員室に引き返すと、商品の入ったバッグを持って来た。
 2階建てグリーン車である為、ワゴンは使えない。
 その為、バッグに入れて車内販売を行うのである。

 高橋:「俺が立て替えといてやるよ」
 リサ:「おー!それじゃ、オレンジジュースとポッキー」
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます」

 ……愛原は次の成田駅まで、石灰化していたのであった。
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“私立探偵 愛原学” 「帰京の道のり」

2022-11-06 15:32:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日08:00.天候:晴 宮城県名取市・岩沼市 仙台国際空港]

 電車で仙台空港に到着した私達は、早速送られて来た航空チケットを手に、保安検査場を通過した。

 愛原:「善場主任にお土産を買って行くか」

 国内線搭乗待合室内にも売店はある。

 リサ:「空弁もある……!」
 愛原:「あー、それはダメだぞ。朝、あんなにガッツリ食べたんだからな」
 高橋:「そうだぜ。先生の言う事は絶対だ」
 愛原:「やっぱり仙台の土産は“萩の月”だろうな」
 高橋:「定番ですね」
 リサ:「おやつならいい?」
 愛原:「しょうがない奴だな。勝手にしろ」
 リサ:「おー!勝手にするー!」

 リサが買ったのはソフトクリームと……ビーフジャーキー。
 ソフトクリームはともかく、ビーフジャーキーは機内で食べるらしい。

 高橋:「おま、それはビールのつまみだぞ?」
 リサ:「わたしにとってはおやつ」

 リサはニッと牙を覗かせて笑った。

 高橋:「先生、こいつには犬用のビーフジャーキーでもいいんじゃないスか?」
 愛原:「まあまあ」

 でも、本当にそれも食べそうではある。

[同日08:30.天候:晴 仙台空港→全日本空輸3232便機内]

 搭乗案内の放送が流れ、私達はゲートに向かった。
 今日日のチケットは自動改札機に通して半券をもらうのではなく、QRコードを読み取らせて通過するタイプのようである。
 そこを通過して飛行機に向かうと、客待ちしているのは737系800番台……ではなく、ボーイング737-800のようだ。
 ジェット機の中では小型の部類に入り、プレミアムクラスにおいては2人席が通路を挟んで両側に並んでいるのに対し、普通席は3人席が両側に並んでいるという形だった。
 大型機だったら、もっと横に広いだろう。
 要は、フル規格の新幹線車両の横幅が、座席1つ分大きくなったくらいだということだ。

 愛原:「えーと……ここだな」

 比較的後ろの席だった。
 そこにリサが窓側、私が真ん中、高橋が通路側といった感じに腰かける。
 機内はそんなに混んでいない。
 行き先が行き先なだけに、成田空港で乗り換える客が殆どのようだ。
 他にも、千葉県北西部に住んでいる人とかに需要があるのだろうか?

 高橋:「先生、これを……」
 愛原:「ん?」

 高橋が自分のスマホの画面を私に見せる。
 それはニュースサイトで、とあるニュースが映っていた。
 何でも昨夜、東北新幹線の沿線でBSAAが出動した騒ぎで、始発から運転を見合わせているという。
 BSAAが出動するということは、バイオテロ絡みだということだ。
 場所は福島だというから……。

 愛原:「飯坂温泉の廃ホテルのことか?」
 高橋:「あの建物、詳しくは調査しませんでしたからね。もしかしたら、BOWとか潜んでいたのかもしれません」
 愛原:「金庫を開けるのに夢中だったからな」

 特に施設の探索とかは、あの福島の施設においては依頼されていなかったので。

 愛原:「善場主任はこれを予想して、俺達に『飛行機で戻れ』って言ったのかな?」
 高橋:「どうっスかねぇ……」
 CA:「お客様、離陸に入りますので、スマートフォンのご使用はお控えください」
 高橋:「おっ!?」
 愛原:「ああ、こりゃすいません」

 飛行機が動き出し、滑走路に向かう。
 この間、機内では安全講習ビデオが流れるわけだ。
 リサはビーフジャーキーを齧りながら、機内備え付けのヘッドフォンを着けていたが、そこからもその音声が入って来るわけである。

 リサ:「先生、『BOWが襲撃してきたら?』の案内が無いよ?」
 愛原:「まあ、そうだろうな」
 高橋:「オメェが暴れなきゃ大丈夫だよ」
 愛原:「ハハハ、そりゃそうだ」

 とはいうものの、2013年に起きた事件では、実際に旅客機内でバイオハザードが発生している。
 アメリカから香港行きのチャーター便内であったが、何故かパイロットがCウィルスに感染しており、Cウィルスをばら撒く化け物へと変貌した。
 そのせいで機内の乗員乗客は、ほぼ全員がゾンビ化。
 搭乗していたアメリカ政府のエージェント2人が臨時に操縦したものの、香港市郊外の工業地帯に不時着したという事件である。
 そしてその直後、香港市内でもCウィルスによるバイオハザードが発生することになる。
 とはいえ、あの巨大都市で散発的に起こったことである為、都市壊滅という最悪の事態は避けられたが。

 愛原:「この離陸時の重圧が、まだ慣れないな」
 高橋:「車でも、なかなか体験できないっスね」

 離陸直前の急加速、そして離陸。
 リサはその間でも、むしゃむしゃビーフジャーキーを齧っていた。
 そして水平飛行になると、ポーン♪というチャイムと共にシートベルト着用サインが消える。
 その後で、CAがドリンクのサービスに来るというわけだ。

 スッチーCA:「お客様、お飲み物は何になさいますか?」
 愛原:「ほえ~
 リサ:「アップルジュース」
 高橋:「俺はアイスコーヒーで。……先生は何にされますか?」
 愛原:「キミの熱いハートを一杯」
 CA:「は?」
 高橋:「先生!」
 リサ:「……わたしもTウィルスばら撒こうかなぁ……
 高橋:「先生、落ち着いてください!俺達が飛行機操縦することになってしまいます!」
 愛原:「……はっ、しまった!」

 ここで正気に戻る私。

 愛原:「私はホットコーヒーを1つ」
 CA:「か、かしこまりました」
 リサ:「先生……?」

 ジト目で私を見据えるリサ。
 心なしか、瞳の色が金色に光ったように見えた。

 愛原:「着陸したら、またおやつ買ってやる!」
 リサ:「! おー!」

 どうにか、リサの機嫌を直すことに成功した。
 そして……。

 リサ:「先生、この飛行機、Wi-Fi入る」
 愛原:「ああ。今時は、そういうサービスかあるんだ」
 リサ:「今は使っていいんでしょ?」
 愛原:「ああ。離着陸の時以外はな」

 私がそう言うと、今度は高橋が……。

 高橋:「せ、先生。何か、事態がヤバいみたいなんスけど……」
 愛原:「え?」

 私が高橋のスマホ画面を見ると、ニュースサイトの続報で、『東北新幹線車内でバイオハザード発生!』『トイレの中から、BOW現る!』『BSAA緊急出動!!』とか見出しがあった。

 愛原:「こ、これは……!?」

 やはりデイライトは何らかの情報を掴んでいて、それで私達に新幹線を使わず、飛行機で帰るように言ったのだと分かった。
 どこのテロ組織がやったのかは分からないが、さすがに航空便はマークしてなかったというわけか。
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“私立探偵 愛原学” 「帰京日の朝」 2

2022-11-06 11:41:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日06:30.天候:晴 宮城県名取市美田園 スーパーホテル美田園・仙台空港1F]

 朝の支度が終わった後、私達は朝食会場に向かった。
 御多分に漏れず、このホテルでも朝食はカフェテリア方式である。

 高橋:「お、こっちのホテルは種類が多いなー」
 リサ:「むふー!」
 愛原:「焼きたてパンもあるし、御飯もある。どっちにしようかな……」
 リサ:「全種類コンプする!」
 愛原:「い、いや、オマ……」

 そういえば朝食がパンとゆで卵とドリンクしか無いホテルだと、リサの機嫌が悪くなるんだった。
 つまり、このホテルはリサから合格点をもらったようなもの。
 ただ、その代償として……。

 宿泊客:「あれ?ちょっと、パンが無いんだけど?」
 スタッフ:「すぐ御用意します!」

 リサがごっそり食べてしまうのである。

〔「……宮城県仙台市で見つかりました、日本アンブレラの秘密研究施設で、行方不明の少女達が監禁されていた事件で、また新たに1人の身元が判明しました。……」〕

 朝食会場にはテレビがあって、それでNHKニュースが流れている。
 私はあのカプセルの中に入っていた少女達は、既に死んでいるものだと思っていた。
 だが、不思議なことに、いわゆる仮死状態で、医療機関にて蘇生していったという。
 これはつまり、あのカプセルそのものは機能していたということだ。
 もっと言えば……あの中に、リサと同じ種類のBOWがいるのかもしれない。
 そうなると、脅威である。
 素直にリサのように言う事を聞いてくれればいいが、そうでない場合は……。

〔「……BSAAの発表によりますと、カプセルは○×県霧生市にありました日本アンブレラの研究施設の物とほぼ同型と見られ……」〕

 日本版リサ・トレヴァー第2世代の誕生かなぁ……。
 リサは気にせず、目の前の朝食を平らげることに夢中であったが。
 後にリサはTwitterで、『たまに旅行に連れて行ってくれる上に、ホテルの料理は食べ放題。優しい保護者の先生がいて、面白いお兄ちゃんがいる。そんな私は、BOWの中で世界一の幸せ者』と、ツイートしている。
 だが、辛辣な性格も表れているもので、『失敗作な上に、自分のやり方がマズくて自滅したエブリンは哀れ哀れw』とも呟いている。

[同日07:27.天候:晴 同地区 仙台空港アクセス鉄道美田園駅→仙台空港アクセス線1308M列車先頭車内]

 ホテルをチェックアウトして、美田園駅に向かう。
 平日の朝ということもあってか、駅前は賑わっていた。
 もちろん、首都圏のそれと比べてはいけないが。
 駅前には高校がある為、リサと同じような年ごろの高校生達がチラホラ見える。
 大勢ではなく、チラホラなのは夏休みだからだろう。
 それでもチラホラいるのは部活動とか、あるいは登校日とか、そういうのかもしれない。

 リサ:「3年生になると、学校では夏期講習をやってるの」

 と、リサが言った。
 東京中央学園では、そうしているのだろう。
 もちろん、全員参加というわけではない。
 東京中央学園では、大学進学を希望する者で、尚且つ特定の学習塾や予備校に通っていない者がその夏期講習を受けるのだという。
 リサの場合は大学進学希望で、同じ学校法人の東京中央学園大学であるが、その場合は……?

 愛原:「そうなのか」

〔「1番線、ご注意ください。仙台空港行きが参ります」〕

 朝のラッシュだからか、ホームに駅員がいる。
 仙台空港アクセス線は終日ワンマン運転なので、こういう朝のラッシュ時に駅員がホームに立つこともあるのだろう。
 ……と思ったら、車椅子の客がいたので、これの乗降介助の為か?
 既に2番線には仙台行きの4両編成が止まっていて、こちらは既に満席になっていた。
 仙台空港から乗って来たと思しき客は少なく、この駅から乗車した客達が大半であるようだ。
 美田園駅周辺は開発が着々と行われており、仙台のベッドタウンとしての機能が充実しつつあるという。
 その為、この駅の利用者数も年々増加傾向にあるのだとか。
 そうなると本数を増やすか、車両を増やすしか無いのだが、6両編成にしてワンマン運転を行っても大丈夫なのかという懸念や、そもそも車両が足りないという問題があるらしい。
 仙台空港行きも4両編成の電車がやってきた。
 こちらもだいぶ乗っているように思われたが、ドアが開くと、ぞろぞろと降りて来たのは高校生達。
 どうやら、今日は登校日か何かであったようだ。
 で、車内はそれで空くが、あくまでも立ち客が殆どいなくなったというだけで、座席がほぼ埋まっていることに変わりは無い。
 私達は乗り込むと、反対側のドアの前に立った。
 どうせ、一駅だけだ。

〔「業務連絡、1番、お客様案内中」〕

 やはり車椅子の乗客が乗るようだ。
 この電車には車椅子スペースがあるので、そこを活用すれば良いか。

〔「1番、案内終了」〕

 車外スピーカーから、首都圏でも聴ける汎用の発車メロディが数秒だけ流れた。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ドアチャイムが鳴って、開いているドアが閉まった。
 そして、電車が走り出す。

〔次は終点、仙台空港です〕
〔The next station is Sendai Airport,terminal.〕

 朝日を浴びて進む電車。
 ドアの窓にはUVカットフィルムが貼られていない為、その直射日光が眩しくて暑い。
 そうこうしているうちに、電車は高架線から下降し、地下トンネルの中に入った。
 滑走路の下を潜って、回り込み、そしてまた高架駅の仙台空港駅に到着するコースである。

[同日07:31.天候:晴 名取市下増田字南原 SAT仙台空港駅→仙台空港ターミナル]

 仙台空港下の地下トンネル内には信号機がある。
 遠方信号機と言って、仙台空港駅手前の場内信号機に対する予告信号機(従属信号機)である。
 トンネル内はカーブしており、しかも仙台空港駅自体は高架にある為、駅の手前はとても見通しが悪い。
 その為、ようやっと場内信号機が見えて来て、そこが停止信号(赤信号)であったとよう。
 それで気づいてブレーキを掛けても、間に合わないことがあるかもしれない。
 そこで、こういう遠方信号機を設置して、運転士に場内信号機の状態がどうなっているのかを予告しておくのである。
 通過時の現示は青と黄色、『減速』であった。
 これは場内信号機が『警戒』(黄色が2つ)または『注意』(黄色が1つ)であることを示している。
 仙台空港アクセス線は、『警戒』信号は無いので、この場合は『注意』信号ということになる。

〔まもなく終点、仙台空港、仙台空港。お出口は、左側です。今日も仙台空港アクセス線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔The next station is Sendai Airport,terminal.The doors on the left side will open...〕

 仙台空港駅は行き止まりの頭端式。
 つまり、その先に線路は無く、当然信号機も無い。
 その為、進入してくる電車には当然その速度には注意しなくてはならない。
 よって、こういう終点駅では、場内信号機は青色の『進行』は無いのである。
 駅の手前にはポイントがあって、その制限速度は25キロ。
 更にホーム進入時には時速20キロ制限となっていて……。
 ホームの途中で時速10キロの制限があり……。
 最後に菱形の停止位置目標(停目)の所で停車すると到着である。

 愛原:「リサ、ドアボタン押してくれ」
 リサ:「ポチッとな」

 こうして私達は、無事に仙台空港に着いたのである。

〔「おはようございます。ご乗車ありがとうございました。仙台空港、仙台空港、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。2番線に到着の電車は、折り返し、7時38分発、普通列車の仙台行きとなります」〕

 仙台空港駅から仙台空港ターミナルまでは、ほぼフラットであり、距離も近い。
 この辺は上手くバリアフリーとなっていると思う。
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