報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサの登校日」

2022-11-10 20:16:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月17日08:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 久しぶりに学校に登校したリサ。
 クラスメイトは、日焼けしている者も散見された。

 淀橋:「魔王様、おはよーございます!」
 リサ:「リサでいいって。ヨドバシ、日に焼けたね!?」
 小島:「リサは焼けてないね?」
 リサ:「回復力が強いから、日に焼けてもすぐ元に戻っちゃう」
 淀橋:「魔王様の自動回復力、パねぇ!」
 小島:「よっ、回復薬要らず!」
 リサ:「それ、褒められてんの?」
 淀橋:「魔王様!」
 小島:「ラスボス!」

 坂上修一:「あいつら、またやってるなぁ……」

 担任の坂上は、呆れたようにリサ達を見た。

[同日10:00.天候:曇 同高校・教育資料館(旧校舎)]

 新校舎の裏手にある、ポツンと佇んだ旧校舎。
 木造2階建てで、これが東京中央学園の元祖である。
 今から50年ほど前、まだ新校舎が無かった頃、白井伝三郎はこの校舎に通っていた。
 そして、“トイレの花子さん”事件が発生する。
 後に“トイレの花子さん”として化けて出ることになる女子生徒は、居残り補習させられた上、それを先生に忘れられた腹いせに、周囲の生徒から執拗なイジメを受けていたという。
 白井が現役生時代、ここでどんな学園生活を送っていたのかは知られていない。
 知られていないということは、特段目立ったことはしていないということになる。
 昼間とはいえ、空はどんよりと曇っている。
 今にも、雨が降りそうだ。
 “花子さん”がいた頃は怪現象多発地帯だった旧校舎も、今は静かなものとなっている。
 セキュリティが強化されたことで、侵入する生徒もいなくなったからかもしれない。
 リサは教育資料館と称する旧校舎の周りを歩いてみた。

 栗原蓮華:「やっぱりここにいたんだ」
 リサ:「! 鬼斬りセンパイ……」
 蓮華:「ここにいたって、入ることはできないよ?」
 リサ:「分かってるよ」
 蓮華:「それより、新聞部のコに、90年代のデータを見せてもらう許可を取ったよ」
 リサ:「本当!?」
 蓮華:「良かったら、部室に行く?」
 リサ:「行く!」

 2人は新聞部の部室に向かった。

[同日10:30.天候:曇 同学園新校舎1F 新聞部部室]

 昔の学校新聞は、データ化されてPCに保存されていた。
 90年代はオカルトブームだったこともあり、それに呼応するような形で、新旧問わず、この学園では怪奇現象が多発していたようである。
 おかしいのは、夏場に多発し、冬場は殆どナリを潜めていること。
 冬場に起きた怪奇現象は、95年の2月に起きた一般入試日での出来事である。
 在校生ではなく、受験生が怪奇現象に巻き込まれた稀有な事例であった。
 しかしこれは新校舎で起きた事件であり、しかも白井の影も形も無い。
 そして白井が出て来る話では、どうしても新校舎の科学準備室にある倉庫が舞台になってしまうのだ。
 しかし、そこは愛原達が散々っぱら調べ尽くしている。
 リサは、“トイレの花子さん”について調べた。
 白井伝三郎と同級生だった“花子さん”は、天長会信者だった白井の初恋の人であり、天長会への入信を促されていたという。
 それならどうしてイジメから助けてあげなかったのかというと、『俺の勧誘を断った罰!』として放置していたとされる。
 結果的に彼女は自殺することになり、“トイレの花子さん”として化けて出て来ることになるのだが。
 他に旧校舎が舞台の話はいくつもあるが、どれも白井とは関係の無い話ばかりであった。

 リサ:「戦時中の話が多いね?」
 新聞部員:「東京大空襲で、多数の死傷者が出た場所ですから、それに因んだ話も多数あるようです」

 しかし、白井は戦後生まれなので、関係無さそうに思える。

 リサ:「やっぱり、当てが外れてるかなぁ……」
 蓮華:「実際、旧校舎の中を見てみないとダメかもね」
 リサ:「見たところで、当てが無いと、何も見つからない」
 蓮華:「旧校舎にだって、科学室とかはあっただろうから、そういう所に秘密は無いかな?白井が勝手に改造とか……」
 リサ:「うーん……」

 日本アンブレラに入社後の白井ならともかく、ただの高校生だった頃の白井にそんなことができるとは思えない。

 リサ:「いくつかデータをコピーさせてもらってもいいですか?」
 新聞部員:「どうぞどうぞ。その代わり、来年も『七不思議』の集まりに参加してくださいよ?」
 リサ:「うん、分かった」
 蓮華:「また来年もやるの……。懲りないね」
 新聞部員:「栗原さんも、宜しかったら是非」
 蓮華:「いや、卒業だって」
 新聞部員:「部長が、『OBやOGの参加も認めようか』なんて言ってるんで」
 蓮華:「要はネタが無くなったってことでしょ?だったら、無理しないで打ち切りにすればいいのに……」
 新聞部員:「いやいや……」
 リサ:「ん?」

 その時、リサはふと気が付いた。

 リサ:「この学校の先生って、この学校の卒業生とかいるでしょ?」
 蓮華:「いるね。てか、あんたの所の担任と副担任もそうでしょ?」
 リサ:「うん、そう!」
 蓮華:「まさか、先生の参加もOKにするの?」
 新聞部員:「ワンチャン、それもアリかなーって……」
 蓮華:「節操無いねー」
 リサ:「坂上先生、確か96年の回の時に旧校舎に行ったって聞いた。その時の話を聞いてみよう」
 蓮華:「その中に白井が出て来るの?」
 リサ:「分かんない」

 リサは96年の回のデータを見てみた。
 すると、6話目の時に“トイレの花子さん”について話した生徒がおり、臨場感を持たせる為に会場を新聞部室から旧校舎へと移動している。
 そして、7話目を黒木源三という体育教師が話をしたことになっている。
 その黒木という教師によると、戦時中に旧校舎で起こった悲劇が怪奇現象となって、自分に襲い掛かって来た話をしてくれたそうだ。

 リサ:「この黒木先生の話を詳しく聞かせてもらおう」

 黒木という教師は、もうこの学校にはいない。
 なので、現役生だった時にこの黒木から話を聞いた担任の坂上に話を聞こうと思った。
 リサと蓮華は、新聞部室をあとにすると、職員室に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「まだ続く夏休み」

2022-11-10 15:35:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日15:03.天候:晴 東京都港区新橋 東京都交通局『新橋』停留所→都営バス業10系統車内]

 善場主任との話が終わった後、私達はデイライトの事務所最寄りのバス停にいた。
 ここから都営バスに乗れば、菊川まで乗り換え無しで行ける。
 都営バスには他に『新橋駅前』というバス停はあるが、このバス停はそこから少し離れているので、単に『新橋』という名前になっているのである。
 それなら、『新橋駅入口』とか、『新橋駅西』とか、そういう名前でも良いとは思うが、都電だった頃の名残だろうか。
 業10系統は、元は都電のルートだったという話を聞いたことがある。

〔お待たせ致しました。このバスは業10系統、銀座四丁目、勝どき橋南詰、晴海一丁目経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます〕

 バスがやって来る。
 車種は仙台で、作並温泉から仙台駅に向かう時に乗ったものと同じノンステップであった。
 但し、乗り方が違う上、内装も違うものになっている。

 愛原:「大人3人で」
 運転手:「……はい、どうぞ」

 バスの運賃は、私が全部持った。

 高橋:「あ、いいんスか?」
 愛原:「いいよ」
 高橋:「あざっス」

 バスに乗り込むと、1番後ろの席に3人で座った。
 外は茹だるような暑さだが、バスの中は冷房がガンガンに入っていた。
 コロナ対策の為、それでも上部の小さな窓を開けているのだから、尚更冷房は強めに設定されているのだろう。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗客を乗せ終えると、すぐに発車した。
 本数の多い路線である為、乗客数も多い。
 まだ、混むほどの時間帯ではないが。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、晴海一丁目経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗本行寺と常泉寺へおいでの方は、とうきょうスカイツリー駅前でお降りください。次は、銀座西六丁目でございます〕

 リサ:「明日は学校に行く」
 愛原:「登校日か?」
 リサ:「そう。ついでに、旧校舎も見て来るよ」
 愛原:「ムリはするなよ?立入禁止の所に勝手に入るのは……」
 リサ:「大丈夫。ちょっと調査するだけ。怒られるようなことはしないから」

 本当に大丈夫だろうか。
 私の為に動いてくれるのは嬉しいが、リサもやり過ぎることはあるからなぁ……。

[同日15:06.天候:晴 東京都中央区銀座4丁目 都営バス『銀座四丁目』停留所]

 バスが東京・銀座の中心地に止まる。
 ここからも、乗客が乗って来た。
 と、ここで、ある人物達と再会することになる。

 栗原蓮華:「愛原先生!?」
 愛原:「おおっ!?」
 リサ:「げ……!」

 栗原蓮華と愛理の姉妹だった。
 手には三越の袋を持っている。
 私は少し緊張した。
 確か、栗原家は一部がリサを討伐に動こうとして、警察が動く騒ぎを起こしたはずだ。

 蓮華:「ご、ご安心ください!私達はただ、銀座に買い物に来ただけです!あの、怖い親戚達はもう引き上げましたので……!」
 愛原:「そ、そうなのか」
 蓮華:「う、うちの親戚達が、どうも御迷惑をおかけしました……」
 高橋:「オメーが口滑らしたんだろ、あぁっ!?」
 愛原:「高橋、やめろ!」
 高橋:「は、はあ……」
 愛原:「もう、大丈夫なんだな?」
 蓮華:「はい。怖い親戚達は、京都に帰って行きましたので……」
 愛原:「京都から来てたの?」
 蓮華:「は、はい。そこの席、いいでしょうか?」
 愛原:「いいよ」

 後ろには5人座れる。
 2人の姉妹は残りの2人分の席に座った。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは立ち客を出すほどの賑わいぶりで、銀座の中心地を出発した。

〔ピンポーン♪ 次は築地、築地。歌舞伎座前でございます。都営地下鉄浅草線と東京メトロ日比谷線をご利用のお客様は、お乗り換えです。次は、築地でございます〕

 愛原:「明日は登校日らしいな?」
 蓮華:「2年生は、ですね」
 愛原:「そうなのか」
 蓮華:「学年ごとに登校日は違うんですが、私も登校します」
 愛原:「それは部活か何か?」
 蓮華:「そうですね」
 愛原:「キミの所は怖い親戚、もう東京に来たりはしないだろうな?」
 蓮華:「しばらくは来ませんね。鬼斬りには乗り気だった祖父も、警察が出動してきて近所迷惑になったことで、さすがに京都の人達の協力は得るべきじゃないと考えたようですから」
 愛原:「そうか。……確かキミも、『学校であった怖い話』の企画に参加したことがあったんだったな?」
 蓮華:「新聞部のあれですね。ええ。まさか、本当に首無し亡霊が現れるとは思いませんでしたけど」
 愛原:「ふむ……。旧校舎については?」
 蓮華:「教育資料館ですか?」
 愛原:「キミは最上級生の3年生だが、キミの力であそこに入ることは?」
 蓮華:「いえ、無理ですよ。あそこは授業の一環とか、学園祭の時とかに開放されることがあるだけですから」
 愛原:「何だ、そうか……」
 蓮華:「あそこに何か?」
 愛原:「実際に何かあるのかは分からない。ただ、白井伝三郎が関わっていた場所として、何か無いのかを調査したいんだ」
 蓮華:「それこそ、愛原先生がPTA会長として、何かできそうですけどね?」
 愛原:「生徒のキミやリサが頼むのでは却下されるが、PTA会長代行の私が頼めば何とかなる……が、それにしたってちゃんとした理由が必要だ」
 蓮華:「要は、デイライトさんの仕事の依頼で、調査したいわけですよね?白井某が出て来るってことは……」
 愛原:「そうなんだ」
 蓮華:「素直に、その名前を出すというのは?」
 愛原:「秘密裏の調査になるんだ。あんまり、表立った動きはしたくないんだよ」
 高橋:「だいたい、姉ちゃんとこの組織の名前を出してできるようだったら、姉ちゃん達が直接動いてるよ」
 蓮華:「それもそうか……」
 愛原:「確か、白井の存在もまた、90年代の回では、『学校の七不思議』の1つとしてカウントされてたんだよな?」
 蓮華:「そう聞いてます」
 愛原:「その時の記録とか、そういうのは無いのかね?」
 蓮華:「過去の新聞のデータでしたら、新聞部が取っていると思いますが……」
 愛原:「新聞部に知り合いは?」
 蓮華:「うちのクラスにいます。……分かりました。私から頼んでみます。幸い明日、夏期講習で登校してくるはずなので」
 愛原:「分かったよ。よろしく頼むね。上手く行ったら、報酬は出すから」
 蓮華:「ありがとうございます」
 リサ:「むー……」

 リサよりも蓮華の方が役に立ちそうだが、このままではリサがむくれっ面になってしまう。

 愛原:「旧校舎の中については、リサに任せるよ。“トイレの花子さん”の知り合いだった名残でさ」
 リサ:「うん、分かった!」

 役割を与えられたリサは、膨らませた頬を元に戻したのだった。
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