報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 5

2022-11-30 20:24:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日18:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 学校から戻ると、リサはまた体操服と緑ブルマに着替えた。
 もはや部屋着同然である。
 夕食を作る時も、その上からエプロンをした。

 愛原:「おお、上手く焼けてるな」
 リサ:「でしょ?お兄ちゃんに教わったんだー」

 高橋、そこは役に立ったな。
 いや、教えたのはジェイク・コピーの偽高橋か?
 私も手伝ったが、手伝いと言えることなのか……。
 リサがハンバーグを焼いている間、私は冷凍のカレーを温め直したり、カット野菜を袋から出して分けたり、即席コンソメスープを入れたりするくらいだった。

 リサ:「あっ、お米炊いてない!」
 愛原:「いいんだ、リサ。明日の朝の為に、ちょっと考えていることがある。悪いが、今日は“サトーのごはん”でよろしく」
 リサ:「えっ?」

 お米は無洗米があるのだが、非常食としてパック飯も買い置きしてある。
 元々そろそろ賞味期限も迫ってきていることだし、明日、そのパックを使う目的があるので、あえて今夜使用しようと思う。

 愛原:「リサは2人分くらい食うよな?」
 リサ:「う、うん。まあね」

 私は私で大盛り(300g)を1パック分といったところだが、リサは【お察しください】。
 まあ、賞味期限まもなくのパックは何個もあるから、リサが消費してくれるのはいい。
 因みに新しいパックは、通販で注文しておいた。

 リサ:「あとはデミグラスソースを温めて……」
 愛原:「カレーの方は、もうすぐできるぞ」
 リサ:「分かったー」

 こうして、夕食のビーフカレーとハンバーグ(デミグラスソース)、野菜サラダとコンソメスープが出来た。

 愛原:「パックは洗って、明日また使う」
 リサ:「ふーん……?」

[同日21:00.天候:晴 同マンション]

 ゲリラ豪雨も止み、再び蒸し暑い熱帯夜がやってきた。
 私は自分の部屋で、事務所で使う書類作りをしていた。
 役所へ提出する何とか申請やら、自営業は色々と大変だ。
 と、その時、私のスマホに電話が掛かって来た。
 画面を見ると、善場主任だった。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「愛原所長、夜分に申し訳ありません」
 愛原:「いえいえ。どうしました?」
 善場:「何ぶん、人命が掛かっている緊急事態です。今から動けますか?」
 愛原:「えっ、今からですか!?」
 善場:「はい。しかも、リサも一緒にです。というか、恐らくリサが一緒でないとダメな案件です」
 愛原:「そ、そうなんですか!?でも、明日は、リサは学校ですが……」
 善場:「学校には行けるように調整します。もしかしたら、現地に泊まって頂くことになるかもしれないので、リサには制服と学校に行く準備をして来るように言ってください」
 愛原:「わ、分かりました」

 私が電話を切ると、ちょうどリサが風呂から出て来る所だった。
 今度は白い丸首Tシャツに紺色の縁が入ったものを着用し、下は紺色のブルマを穿いている。

 リサ:「先生、お風呂上がったよー」
 愛原:「リサ、申し訳ない!急に仕事が入った。しかも、オマエも一緒に来てもらわないといけない事案だそうだ!」
 リサ:「ええーっ!?明日、学校だよ!?」
 愛原:「分かってる!だから、学校に行く準備をして来るようにとのことだ。もう制服に着替えてさ……」
 リサ:「わ、分かった……。先生、お風呂は?」
 愛原:「入っているヒマは無いだろうな。仕事が終わったら入るよ」
 リサ:「分かったよ。着替えて来る」

 リサはそう言うと、自分の部屋に入って行った。
 すると、私も一泊の準備をしなきゃいけないということだな。

[同日22:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家]

 愛原:「あっ、そこです!そこで降ろしてください」
 運転手:「分かりました」

 あれから準備をした後、迎えに来たのはタクシーだった。
 料金については、既にデイライトの方に請求が行くようになっているという。
 高速代についても、同じだった。
 で、それで現地に向かうと、斉藤家の前にはパトカーなどが停車していた。
 警察関係者達が慌ただしく出入りしている。

 善場:「愛原所長、いきなりで申し訳ありません!」
 愛原:「人命が掛かっているんだから、しょうがないです。その人命とは、本物の高橋ですね?」
 善場:「その可能性が大いにあります」
 愛原:「分かりました。本物の高橋が助け出せるのなら、いくらでも協力します。な、リサ?」
 リサ:「もちろん」
 善場:「ありがとうございます。それでは、中へ……」

 善場主任が、警察が張った規制線の中に入ろうとした時だった。

 警察官A:「はい、ちょっと通してー!」
 警察官B:「ちょっと道を開けてくださーい!」

 家の中から警察官達が出て来た。
 間に、1人の女性を挟んで。
 それはつまり、その女性に手錠を掛けて、連行するところであった。
 その女性というのが……。

 愛原:「パール!」

 パールこと、霧崎真珠であった。
 高橋とは結婚の誓いまでしていたが、私が保証人になるのを渋っていた。
 そのパールは斉藤家のメイドをしていたが、空き家となった現在、何をしているのかは不明だったが……。
 まさか、まだメイドをやっていたのだろうか?
 しかし、服装はメイド服ではなく、上半身は迷彩柄のタンクトップ。
 下半身はくすんだ緑色のズボンであった。

 愛原:「オマエ、何をしたんだ!?」

 するとパールは私の方を向いて、ニイッと笑った。
 それは第1形態のリサの笑みよりも不気味に見えた。

 パール:「先生が悪いんだよ。先生が、いつまで経っても、ボク達の結婚を認めてくれなかったから……」
 愛原:「な、何だって!?」
 警察官A:「すいません。お話は、後で」

 パールは警察官達に連行されると、停車していたパトカーのリアシートに乗せられた。

 愛原:「主任、パールは何の罪で逮捕されたんですか?」
 善場:「その、高橋助手に対する監禁の疑いです」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「しかし、本人は『ボクじゃ助けられない。愛原先生とリサお嬢様を呼ばないと』の一点張りで……」
 愛原:「でも、私達がどうしろと言うのでしょうか?」
 善場:「多分、こういうことだと思います。口で説明するよりも、実際に現地に行って、見ながら説明した方が早いと思います。一緒に来てください。警察には許可を取っています」
 愛原:「分かりました」

 実際、善場主任は規制線の向こう側から来たわけだし、善場主任と一緒だからか、規制線の前に立っていた警察官からは何も言われなかった。
 こんな所に本物の高橋がいるのか?
 そして、私とリサが、どう役に立つというのだろう?
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 4

2022-11-30 15:03:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日15:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私とリサは突然、善場主任に呼ばれて東京中央学園に向かった。
 さすがのリサも、体操服は着替えている。
 但し、スカートの下にブルマは穿いているようだ。
 それはそれとして……。

 愛原:「あ、そこでお願いします」
 運転手:「はい」

 私達はタクシーに飛び乗って、学園に向かった。
 相変わらず警察車両が見えるが、通用門の所には既に善場主任がいた。
 私がタクシーチケットで料金を払い、後からタクシーを降りると……。

 善場:「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原:「善場主任こそ、お疲れさまです。こんな日曜日に……」
 善場:「人命が掛かってますからね、そんなことは言ってられません」
 愛原:「もしかして、本当に高橋が見つかったのですか?」
 善場:「いえ、まだです。ですが、愛原公一氏の関係者として、所長にも協力して頂きたいと思いました」
 愛原:「なるほど。あの年寄りは、おどけているように見えて、無意味なことは喋らないタイプです。それがああして、わざわざ大掛かりなことをしてきたわけですから、やはり意味のある内容なんだと思います。因みに、これが件のUSBメモリーです」

 私は高橋が残して行ったUSBメモリーと、公一伯父さんが送って寄越したUSBメモリーを渡した。

 善場:「お預かりします。内容は、こちらでも精査致します」
 愛原:「お願いします」

 学校の敷地内に入り、教育資料館へと向かう。
 そこは警察官が立っていて、完全に立入禁止となっていた。
 爆弾が爆発した所のトイレには、ブルーシートが掛かっている。

 愛原:「BSAAが防空壕跡を調べた時、何も無かったんですよね?」
 善場:「そうです。公一氏は、明らかに旧校舎だと言ったのですね?新校舎にも地下室はありますが、そこではないと?」

 確かに、新校舎の地下室も怪しい。
 何しろ、白井伝三郎がここの講師だった時に使用していた科学準備室があるのだから。

 愛原:「ええ。『古い校舎』と言ってましたから、旧校舎のことだと思います」
 善場:「分かりました。それでは、これを着用してください」

 主任は防護服を渡してきた。
 夏場にこんなものを着けるのは、正直しんどい。

 リサ:「わたしも着なきゃダメ?」
 善場:「これ以上、化け物になりたくなかったらね」
 リサ:「むー……」

 防護服を着用し、私達は旧校舎内に入った。

 愛原:「何か、霧が立ち込めている」
 善場:「これが特異菌の胞子ですよ。入った瞬間に感染して、それが怪奇現象を見せるわけです」
 リサ:「すると、旧校舎の怪談話の正体は特異菌!?」
 善場:「……による幻覚ですね」
 リサ:「新校舎でも怪談話はあるけど……」
 善場:「それは旧校舎に入って感染した人達が見た幻覚ではないでしょうか?」
 リサ:「なるほど……」
 愛原:「すると、“トイレの花子さん”も幻覚だったというわけか……。とんでもない話だ」
 善場:「そうですよ。だから、特異菌はトンデモナイのです」

 私達は件の壁まで向かった。
 尚、隣の男子トイレにはブルーシートが張られている。
 防護マスク越しに見ると、確かに壁から定期的に胞子の煙が出ていることが分かった。

 リサ:「やっぱり、この壁を壊さないことには何も分からないのかもしれない」
 善場:「分かりました。リサ、あなたがやりなさい」
 リサ:「え?」
 善場:「あなたの力なら、この壁を破壊できるでしょ?早くやりなさい」
 リサ:「って、言われても……」
 愛原:「リサ。オマエが発情した時、俺がこの壁の向こうにいると思えばいいんだよ」
 リサ:「おーっ!」

 するとリサ、第1形態に戻ると、壁に体当たり。
 壁には大きなヒビが入った。
 そして、ブワッと飛び出る特異菌の胞子。
 なるほど。
 これを吸い込んだ暁には、怪奇現象の幻覚を見せられて、錯乱するというわけか。
 尚、私達はBSAAで開発された対特異菌用の防護服と防護マスクを着用している為、感染する危険は無い。

 リサ:「ガァァァッ!!」

 リサは第2形態まで変化すると、壁にパンチを食らわせた。
 バラバラと崩れて穴を開ける壁。

 善場:「人、1人通れる分の穴で十分ですからね」

 そして実際、リサがそれくらいの穴を開けると、善場主任は手持ちのマグライトで中を照らした。

 善場:「おっと!」

 と、善場主任が後ろへ飛び退く。
 中からは……。

 モールデッド:「ギャアアッ!!」

 黒カビに覆われた2足歩行のクリーチャーが現れた。
 確か特異菌に感染して、適応できなかった人間の成れの果てだと聞く。

 愛原:「このっ!」

 私は手持ちのハンドガンを向けて、モールデッドに発砲した。
 それは善場主任も同じ。

 リサ:「ガァァァッ!!」

 しかし、リサの方が圧倒的に強かった。
 身長2メートルくらいあるモールデッドに飛び蹴りを食らわせて転倒させた後、首を掴んで捩じり切ってしまったのだ。
 さすがのモールデッドも、首を千切られれば死ぬ。
 モールデッドは真っ黒な血を噴き出して絶命した。

 愛原:「リサ、よくやった!」
 リサ:「エヘヘ……」

 映画では、オリジナルのリサ・トレヴァーがリッカーの首を捩じり切って倒すシーンがある。
 そのウィルスを受け継いでいる日本版リサ・トレヴァーも、こういう倒し方を好むのかもしれない。

 善場:「……うん。今のところ、モールデッドはこの一匹だけのようですね。見てください。BSAAは騙されたようです」
 愛原:「えっ?」

 私も壁の中を覗くと、奥行きは2メートルも無かった。
 しかし、黒カビに覆われており、これならモールデッドがいてもおかしくはない。
 ……そう、2メートルしかない。
 つまり、この壁の向こうは、例の防空壕がある教室なのだろう。
 BSAAは、この狭い空間に気づけなかったのだ。
 では、この小部屋みたいな空間には何があるのかというと……。

 善場:「やっぱり!ここにも下への扉があるようです!」

 床には跳ね上げ式の扉があった。
 鍵は掛かっておらず、それを開けると、下に下りる梯子があった。
 明らかに防空壕とは、違う所へ繋がっていそうな感じだった。

 愛原:「どうします?」
 善場:「もちろん、下りてみます。もしもモールデッドの巣窟だったら、引き上げましょう」

 数匹程度なら私達のハンドガンや、リサの攻撃で何とかなるかもしれないが、更に多いとキツいかもしれない。

 リサ:「私が先に下りようか?」
 善場:「お願いします」

 リサが先に梯子を下りて行った。
 その後に私、そして主任と続く。
 下りてみると、防空壕跡のような素掘りの空間が広がっていた。
 いや、防空壕だったのかもしれない。
 学校は当時から避難場所になっていたから、防空壕が1つだけということは無かっただろう。
 学校によっては、複数用意していた所もあったのかもしれない。
 しかし、特に何も無かった。

 リサ:「……あそこ!」

 夜目の利くリサが、目ざとく何かを見つけた。
 それは、卒業証書とかを入れる筒である。
 私がそれを拾って、中を開けた。
 すると、中には鍵が1つと、紙が入っていた。

 愛原:「住所が書いてあります。埼玉県さいたま市中央区……って、これ!斉藤社長の家の住所じゃ!?」
 善場:「この鍵は何だと思いますか?」

 家の鍵にしては小さい。
 あとは……。

 愛原:「金庫の鍵とか、キーボックスの鍵とかに似てますね」

 斉藤家なら金庫くらいあるかもしれない。
 本物の高橋を捜しにここに来たのに、何かミスリードされてないか?
 本当にこれで大丈夫なのか?
 最後に私達は、この地下空間を調べ、再び梯子を上って小部屋を確認したが、やっぱり他には何も無かった。
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 3

2022-11-30 10:59:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[同日13:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私は咄嗟に電話を取ると、すぐに公一伯父さんのケータイに電話を掛けた。
 だが……。

〔お掛けになった番号は、電源が入っていないか、電波が届かない為、掛かりません〕

 愛原:「くそ!」

 それならと、今度は伯母さんの所に掛けてみることにした。

 伯母:「お電話ありがとうございます。旅館さのやです」
 愛原:「あっ、伯母さん!東京の愛原学です」

 静岡で民宿を営んでいる伯母さんの所に掛けた。

 伯母:「あら、学~。この前はありがとね~」
 愛原:「いえいえ。また連休があったら、お願いしますよ」
 伯母:「ええ、ええ。いつでも来てちょうだいね~」
 愛原:「ところで、公一伯父さん、います?」

 すると伯母さん、声のトーンを少し落として言った。

 伯母:「ああ、あのヤドロクね。まだ夏休み期間中でクソ忙しいってのに、『農業の研究に行って来る』っていう書置きを残して、どこかに旅立って行ったのよ。夜中にコッソリとね。そりゃもう、まるで夜逃げみたいで……」
 愛原:「やっぱりか!クソッ!!」

 私が地団太踏んでいると、部屋のインターホンが鳴った。

 リサ:「はい、愛原です」
 配達員:「郵便です。書留です」
 リサ:「はい、どうぞー」

 リビングにいたリサが応対に当たる。
 てか、体操服にブルマのまま応対しちゃダメだろー。

 伯母:「やっぱりって何!?学は何か知ってるの!?」
 愛原:「いや、どこに行ったかまでは知らないけど、どうも公一伯父さん、何か怪しいみたいで……」
 伯母:「ええっ!?」
 愛原:「と、とにかく、何か分かったら連絡するし、伯母さんも何か分かったら教えてよ」
 伯母:「分かったわ。お願いね」

 私は電話を切った。

 愛原:「おい、リサ!」
 リサ:「はい。先生宛て」

 リサは相変わらず緑色の縁の入った丸首体操服と、緑色のブルマを穿いた状態であった。
 多分、配達員もびっくりしただろうな。

 愛原:「ありがとう。オマエなぁ……」
 リサ:「ん?外に出る時は着替えるよ?」
 愛原:「ああ……まあ、いいや」

 リサが気にしないのではあれば……。

 愛原:「って、これ……!」

 今の郵便局は、普通郵便の土休日配達はしない。
 しかし、書留に関しては引き続き土休日も配達してくれる。
 だから、それ自体は特に怪しい所は無い。
 私が反応したのは、差出人の所であった。
 『静岡県富士宮市【中略】 旅館さのや一従業員』とある。
 一従業員って、明らかに公一伯父さんしかいないじゃないか。
 しかも封筒を触ってみると、内側にプチプチの緩衝材が入っているのが分かる。
 開けてみると、そのプチプチに挟まれる形で、USBメモリーが入っていた。

 愛原:「またUSBメモリーだ」

 私は早速、USBメモリーをPCに差した。
 高橋のと同様、何か動画が保存されているようだった。

〔「めでた♪め~でぇた~の♪祭りの夜♪キミと2人きり♪ハイッ!」〕

 愛原:「な、何だこりゃ!?」

 何故か“さのや”の大広間が映し出され、そこで宴会を楽しむ公一伯父さん達の姿があった。
 他の人達は……地元の町内会の人達か何かか?

 愛原:「あれ?他の動画か?あれ?」

 私は違う動画を開いてしまったのかと思い、もう1度確認する。
 しかし、どうしてもこのメモリーに入っているのは、この宴会動画だけのようだ。
 ん?この宴会動画が何だというのだ?
 ……宴会動画は1時間ほど入っていた。
 だが結局、それだけだった。

 愛原:「……いや、待て待て待て」

 私は伯父さんが意味も無く、こんなことをするとは思えなかった。
 そこで、もう1度、宴会動画を観てみることにした。

 愛原:「……これは……?」

 すると、ふと、たまに公一伯父さんが変なことを言うのが分かった。
 他の宴会参加者と談笑しているのだが、たまに噛み合わないことを言っては、他の参加者がツッコまれている。
 その度に公一伯父さんはおどけて、『酔っ払ったかの?』とか、『ボケがきたわい』とか言って誤魔化しているのだが……。
 それすらも違う?

 愛原:「……ん?」

 その時、伯父さん達が子供の頃の話を始めた。
 最初に振ったのは、伯父さんだが……。
 この団塊世代達が小学生だった頃、地方で木造校舎というのも珍しくはなかっただろう。

〔「東京の方では、鉄筋コンクリートも珍しくは無かったそうじゃよ」「おいおい、愛原さん。今、東京の話はしてないぞ?」〕

 愛原:「東京の……」

〔「中央じゃろ?グラウンドの中央」「おいおい、愛原さん。普通、校庭の演台は校舎の前とかだろ?」〕

 愛原:「中央……」

〔「ワシらの学園では……」「学園って、あれ?愛原さん、私立の小学校だったの?」「おっと!」〕

 愛原:「学園……」

〔「しかし、あれは古い校舎じゃった。木造だもんなー」「昔の田舎の小学校は、皆そうだったよ」〕

 愛原:「古い校舎……旧校舎!」

〔「あそこの地下室が物凄く不気味でな!あれは行きたくなかったのー」「愛原さんの所は、地下室があったのかい?」〕

 愛原:「地下室……」

〔「ワシの古い友人に高橋という者がおってな。そいつが肝試しと称して、地下室に忍び込んだんじゃよ」〕

 愛原:「高橋……」

〔「するとな、そこにおったんじゃよ」「何が?何が?」「お化けか!?」〕

 そこで、宴会の映像は切れた。
 まとめると、こうなる。
 『東京中央学園上野高校の旧校舎の地下室に、高橋はいる』と。
 こ、こうしてはおれん!
 私は善場主任に電話を掛けた。

 善場:「愛原所長、どうかなさいましたか?」
 愛原:「た、大変なんです!」

 私は高橋のUSBメモリーが見つかったことから話した。
 もちろん、ホテルで見つけたのではなく、家で見つけたことにした。

 善場:「『本物の』高橋助手は、東京中央学園上野高校の地下にいるということなのですね?」
 愛原:「そうです!」
 善場:「しかし、地下室というのは、あの壁の向こうの封鎖された教室の地下の防空壕跡と思われますが、BSAAが調べたのに、何も見つからなかったそうですよ」
 愛原:「もしかしたら、他にもあるのかもしれません!」
 善場:「! なるほど。これは思いつきませんでした。こちらでも調査しますが、リサの方が詳しいかもしれませんね」
 愛原:「リサにも聞いてみます!」

 私は電話を切った。

 愛原:「リサ!」
 リサ:「なぁに?」
 愛原:「東京中央学園の旧校舎の地下、あの防空壕跡以外にあるか?」
 リサ:「そんなの知らないよ」

 ……現実は甘くなかった。
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