報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「日帰り温泉」 3

2022-11-01 20:13:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月15日11:00.天候:晴 宮城県仙台市太白区秋保町 宮城交通『秋保・里センター』バス停→奥州秋保温泉“蘭亭”]

 
(取材時は冬季だったので、積雪があるが、作中は夏季です)

 目的地の最寄りバス停でバスを降りた私達。
 バス停の名前にもなっている『秋保・里センター』とは、要は秋保温泉界隈の観光案内所のような所である。
 実際バス停は、このセンターの敷地内に入ったロータリーにある。
 ここからホテルへの送迎をしてくれることもあるようだ。
 因みにホテルまでは、徒歩7~8分といったところ。
 尚、昭和30代までは長町駅から秋保電鉄という私鉄が通っており、その秋保温泉駅跡の近くだったりもする。
 仮に今も残っていたとするならば、恐らく、富山ライトレールのような感じになっていたか、或いは江ノ電とか箱根登山鉄道のような感じになっていたのではないだろうか。
 廃線跡の一部は、今でもバス専用道路として活用されている。

 愛原:「フロントに行ってくるから、ちょっと待ってて」
 リサ:「きれいなホテル!」
 高橋:「実際泊まったりしたら、高いんだろうな」

 ホテルに着いて、私はフロントに向かった。

 父親:「安いプラン使えば、このくらいの人数、2泊は行けるだろう」
 母親:「そうね」
 高橋:「え……?安いプランでも、ン万円はするんスけど……」

 金銭感覚が、明らかに氷河期世代やゆとり世代と違う団塊世代。
 リサは真っ当な人間生活を送れればバブル世代だったはずだか、送れなかったので、その感覚は無い。

[同日11:30.天候:晴 蘭亭・大浴場]

 高橋:「不肖の弟子、高橋正義が、先生方のお背中を流して差し上げます!!」
 愛原の父親:「……彼はいつも、こんな調子なのか?」
 愛原:「お、温泉に来た時だけだよ。家では、こんな感じじゃないよ!……おい、高橋。まずは父さんの背中から流してやれ」
 高橋:「了解でヤンス!」

 しかし参ったなぁ……。
 高橋だけでも話しておきたいのに、父親がいるのでは、なかなか話せないなぁ……。

 父親:「この日帰り入浴は、何時までなんだ?」
 愛原:「15時までだよ」
 父親:「なるほど。15時で今日の宿泊客と入れ替わるというわけか」

 因みに休憩所としては、宴会場の個室が充てられる。
 客室はさすがに日帰りプランでは、使わせてもらえないようだ。
 尚、昼食もその個室で取ることになる。

 父親:「なかなか上手だね?」
 高橋:「あざーっす!これも、先生の為です!」
 父親:「何か、凄いのに惚れられたね?」
 愛原:「時々、俺自身がBOWなのでは?と思うことがあるよ」
 高橋:「え……?」

 高橋の表情が凍り付き、手がピタッと止まった。

 愛原:「あ、いや!俺が勝手にそう思うことがあるという話だよ!?実際は人間だろうさ!」
 高橋:「……そ、そうですよね」

 まあ、リサからは多少なりともGウィルスを送り込まれているのだろうが、それに関しては高橋も同じだろうからな。
 Gウィルスと特異菌はどちらが強いのかが気になるところだが、そのような実験が行われたという話は聞かない。
 どちらも制御不能になったらヤバい代物なので、怖くて実験できないのかもしれない。

[同日12:00.天候:晴 蘭亭1F宴会場]

 温泉で汗を流した後は、再び個室に戻り、そこで昼食を取る。
 昼食の内容は、日帰りプランやホテルによっても千差万別のようだ。
 食事処で適当に取ってくれというホテルもあれば、宿泊客の夕食並みに立派な御膳を出す所もある。
 このホテルの私達のプランでは、松花堂弁当が出た。
 日帰りプランでも比較的高いのを予約したので、弁当の内容もギッシリである。

 リサ:「おー!」
 高橋:「先生、ビールをどうぞ!」
 愛原:「ありがとう」
 父親:「食べ終わったら、時間があるなぁ……」
 愛原:「俺達、プールに入って来るよ」
 父親:「ハハハ、若いっていいねぇ……」
 母親:「私はマッサージでも受けようかしら?」
 父親:「なるほど。それもいいな。マッサージチェアだけじゃ、どうしても腰の痛みがなぁ……」
 母親:「せっかく来たんだものね」
 愛原:「じゃあ、俺達はプールに行くよ」

 よし。
 これで私達だけで別行動できそうだな。

[同日13:00.天候:晴 蘭亭・屋外プール]

 リサは黒いスポブラとビキニショーツという水着で、プールに出た。
 一方、高橋はオレンジ色のサーフパンツ。
 私は麦わら帽子に赤いアロハシャツに、下はベージュのハーフパンツにサングラスを掛けてみた。
 明らかに、プールに入らない気満々である。

 リサ:「いや、先生入ろうよ!」
 高橋:「一応、リサの監視も俺達の仕事ですよ?」
 リサ:「そうだよ。入ってくれないと、プールの中に寄生虫放っちゃうよ?」
 愛原:「やめなさい!……それより、話があるんだ」
 リサ:「え?」

 私はプールサイドにあるパラソルの下に、2人を誘った。
 リサと高橋はプールに入った後なので、体が濡れている。
 パラソルの下には白いプラスチック製のテーブルと椅子が置かれているので、そこに座った。

 愛原:「実はな……」

 私は善場主任からの電話の内容を話した。

 高橋:「マジっすか!?」

 因みにあの後、LINEで続報も入ったので、その話もした。

 リサ:「鬼斬り先輩の家族が、わたしを斬りに来たの?」

 リサは中等部代替修学旅行の時、会津の物産館で偶然、栗原蓮華の祖父と遭遇した時の事を思い出した。
 すぐに自分を『鬼』と見破ってきたのだ。
 蓮華の祖父は仕込み杖を持っていて、それが鬼の首を斬る武器になっていたようだ。

 愛原:「警察が止めに入っている最中なんだけど、危ないから、明日にした方がいいらしい」
 高橋:「マジっすか。リサの方はともかく、そんなんで先生に迷惑掛けないで欲しいっスね」
 愛原:「一応、蓮華さんから謝罪のLINEが来たよ」
 リサ:「この、『先生への謝罪の為なら、体を張ります』ってどういう意味?」
 高橋:「そりゃあ、アレだろ。『お詫びに肉便器になります』って意味だろ」
 愛原:「そんな謝罪、求めてないって!」
 リサ:「わたしの血肉になるという意味なら許す」
 愛原:「BSAAからも蜂の巣にされるからやめとこうな?」
 高橋:「それで、どこのホテルに泊まれと?」
 愛原:「まだ、連絡が来てないんだ。ここだといいがな」
 高橋:「あー、それは楽っスね」

 だが、そんなに世の中は甘くないのである。
 尚、プールから戻ると、スマホに善場主任からのLINEが入っていた。
 それによると仙台空港近くのホテルを取ったらしく、明日の航空券も大至急、そこのホテルに届くようにしたという。

 愛原:「凄いな、デイライトさんは」
 高橋:「さすがはバックに、国家機関が付いているだけのことはありますね」
 愛原:「それにしても、栗原家の暴走だけで、ここまでやるものかね?」
 高橋:「あー、まあ確かにそうっスね。サツを動かせる力があるんだから、そのままタイーホしちゃえばそれでOKっスよね?」
 愛原:「他にも何かトラブルが発生しているのかもしれないな」

 とはいうものの、今の私達にできることは、デイライトさんの指示に従うことだけである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「日帰り温泉」 2

2022-11-01 15:11:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月15日09:21.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台市地下鉄仙台駅→仙台駅西口バスプール]

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 私達を乗せた電車が、仙台駅に到着する。

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 ここで下車する乗客は多い。
 仙台市地下鉄2路線が交差するターミナル駅であるから、当然と言えば当然だ。
 もちろん、他にもJR線などが合流しているからというのもあるだろう。

 愛原:「それじゃ、ここからバスに乗り換えるからね」
 高橋:「はい」
 父親:「宮城交通か」
 愛原:「そう。まだ少し時間があるから、トイレに行きたかったら今のうちにな」
 リサ:「じゃあわたし、行っとく」
 父親:「ここから秋保までは時間が掛かるから、俺も行っておくか」
 愛原:「そうするといいよ」

 西口バスプールにはトイレは無いが、地下鉄駅のトイレが使える。
 東口の場合は、JRバスの待合所のトイレが使える。

 愛原:「ん?」

 その時、私のスマホに着信があった。
 LINEやメールの着信ではなく、通話の着信だ。
 画面を見ると、善場主任からだった。

 愛原:「ちょっとゴメン」

 私は少し離れて電話に出た。

 愛原:「もしもし?愛原です」
 善場:「愛原所長、おはようございます。申し訳ありません。急に」
 愛原:「いいえ。報告書でしたら、先ほど郵便局に出したので、明日には届くかと思いますが」
 善場:「ありがとうございます。ただ、今はこの件ではありません」
 愛原:「と、仰いますと?」
 善場:「帰りの交通手段、新幹線になさるおつもりですね?」
 愛原:「あ、はい。まあ、その予定ですけど……」
 善場:「急きょで申し訳ありませんが、変更して頂きます」
 愛原:「は?と、仰いますと?」
 善場:「今夜はホテルに宿泊し、明日の飛行機で帰京してください。ホテルと飛行機は、こちらで手配します」
 愛原:「え?え?え?どういうことですか?何かあったんですか?」
 善場:「そうです。詳細はまだお話しできません。それにつきましては、追って連絡します」
 愛原:「飛行機って……」
 善場:「本日は日帰り温泉に行かれるのでしたね?」
 愛原:「あ、はい。私から両親への親孝行のつもりで……。まあ、高橋とリサも一緒ですけど」
 善場:「それにつきましては、通常通りで結構です。その方が宜しいです」
 愛原:「は、はあ……」

 何かあったのは間違いないようだ。
 今夕の新幹線で帰京しようとすると、何かマズいのかもしれない。

 善場:「油断はなさらないように、お願いします」

 そう言って、善場主任は電話を切った。
 おいおいおい。
 やっと日常に戻れるかと思ったのに、何かヤバそうだぞ?
 これは、高橋とリサにも言っておいた方がいいな。
 両親に聞かれると……マズいか?
 多分、仕事の事だからな……。

[同日10:03.天候:晴 仙台駅西口バスプール→宮城交通秋保線バス車内]

 バスプールでバスを待っていると、秋保温泉行きのバスがやってきた。
 車種は先日、作並温泉から乗った市営バスと同種のノンステップバスだった。
 もちろんバス会社が違うので、塗装も内装も違う。
 やや長距離を走るからなのか、座席の多いワンロマ仕様車であった。
 尚、この路線に使用される路線車は共通運用なので、同じ便でも日によってワンステップバスやワンロマ仕様ではなく、一般仕様のバスが充てられることもある。
 県庁市役所前が始発の為か、既に車内には2~3人ほどの先客が乗っていた。
 私達は乗り込むと、中扉から後ろの2人席に座った。
 引率者の私は、2人席に1人で座る。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスは乗客を乗せ終えると、すぐに発車した。
 私達と同じように、温泉地に向かうと思われる乗客は他にもいて、それで座席がほぼ埋まったようなものだ。

〔ピンポーン♪ いつも宮城交通をご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは舟丁、西多賀市民センター、秋保・里センター経由、秋保森林スポーツ公園前行きです。次はJR東日本前、JR東日本前でございます。……〕
〔ピンポーン♪ 日蓮正宗仏眼寺へは、愛宕橋駅でお降りになると便利です〕

 このバスは国道286号線の旧道を進む。
 地元で笹谷街道と言えば、この旧道のことを指す。

 雲羽:「尚、顕正会仙台会館はニーパーロクより南側にある為、ニーパーロクより北側にある旧道を行くバスでは紹介させませんw」
 多摩:「少なくとも、交通の便に関しても、仙台では顕正会、日蓮正宗に負けてんなーw」

 愛原:(一体、何が起こってるんだろう?)

 この時点では、まだ私は何も知る由は無かった。

[同日同時刻 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場:「直ちに警察にも連絡して、現場を封鎖させて!」
 部下:「既に手配済みです!」

 事務所の中は慌ただしかった。
 その中に、1人の少女がいた。
 栗原蓮華だった。

 蓮華:「本当に申し訳ありません。私が口を滑らせたばかりに……」
 善場:「いいですか?日本版リサ・トレヴァーの存在は極秘なのです。あなたは成り行き上、それを知ってしまいました。組織や団体次第では、それだけで消されるほどなのです。分かりますか?」
 蓮華:「は、はい……」
 部下:「主任、報告します!現場に、機動隊の配備が完了したとのことです!」
 善場:「ありがとう」
 蓮華:「うちの親族、数人ほど過激な考えのがいまして……」

 鬼斬りの家系である栗原家。
 蓮華がリサの存在を喋ってしまった為、鬼退治に燃える数人の親族が手持ちの日本刀を持って飛び出して行ったという。

 善場:「あなたへの処分は追って考えます。それにしても、正義感丸出しで現場に行ったのに、何故か警察が待ち構えていたとしたら、どう思いますかね?」
 蓮華:「驚くと思います。まさか、『警察が鬼の味方をするなんて』って思うと思います」
 善場:「確かに他のリサ・トレヴァーなら、遠慮なく斬首して頂いて結構なのですが、『2番』のあのコは違います。それに……あなた達の言う事を真に受けるとするならば、『0番』たる私も斬首の対象になると思いますが?」
 蓮華:「そ、そうかもしれません」
 善場:「あなたで止められないのなら、国家権力を持って止める他無さそうですね」
 蓮華:「本当に申し訳ありません……」

 警察の機動隊が出動するほどの騒ぎである。
 当然、マスコミが動かないわけが無かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「日帰り温泉」 1

2022-11-01 11:22:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月15日09:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区木ノ下 薬師堂郵便局→同区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 私は先に家を出ると、その足で近所の郵便局に出掛けた。
 護衛としてはリサと一緒。
 郵便窓口が開く時間と共に、そこでレターパックを購入した。
 大事な書類を送るので、赤い方である。
 それを購入すると、持参した報告書を封入した。
 それから住所やら名前やらを記入する。

 愛原:「じゃあ、すいません。これ、お願いします」
 局員:「はい、お預かりします」

 料金は既に購入時に払っているので、窓口に差し出す場合は、控えをもらうだけ。
 レターパックはエクスパックの頃の名残で、速達郵便のラインに入るので、定形外普通郵便として送るよりも早く届く。
 赤い方は配達時に、受取人の受領印を必要とするので、確実に届きやすいということだ。
 あとは善場主任に、その旨をLINEで報告すれば良い。
 因みにレターパックの品名には、『書類(業務報告書)』と書いておいた。
 郵便局的には、それでOKである。
 あとは駅に行って、両親達を待てば良い。

 愛原:「先に両親のキップを買っておこう」

 私は券売機で、仙台駅までのキップを2枚購入した。

 リサ:「先生、わたしのPasmo、そろそろ残額不足」
 愛原:「しょうがないな。チャージしといてやるよ」
 リサ:「おー!」

 しばらくして、両親と高橋がやってくる。

 高橋:「お待たせしました、先生」
 愛原:「おう。じゃあ、これ、キップね」
 父親:「わざわざスマンな」
 愛原:「それじゃ早速、行こうか」
 高橋:「あ、待ってください。俺もチャージします」
 愛原:「オマエもかーい!先に行ってるぞ」
 高橋:「ま、待ってください!」

 私が手持ちのSuicaを自動改札機に当てた時だった。

〔ピンポーン♪ チャージしてください〕

 高橋:「……先生?」
 リサ:「先生?」
 愛原:「おっと!こりゃ失敬!」

 私もだったーっ!
 御覧の通り、オートチャージ式のSuicaは導入していない我々だった。

 父親:「何やってるんだか……」
 母親:「ねー?」

 そんなトラブルがあってから、地下ホームに下りる。
 幸い、電車に乗り遅れるというようなことはなかった。

〔1番線、2番線に、電車が参ります〕

 愛原:「ふぅーっ!別の汗かいちゃったー!」
 父親:「……温泉で一緒に汗流そうな」
 愛原:「はい……」

 そして、いつもの電車が入線してくる。
 乗り込むと、殆どの席が埋まっていたので、優先席に団塊世代の両親に座ってもらい、私達はその横に立った。

〔1番線、2番線の電車が、発車します〕

 電車のドアとホームドアが閉まる。
 車内はどちらかというと、菊の花束を持った乗客が多い。
 今日は終戦記念日であると同時に、お盆でもあるからだ。
 愛原家では親戚一同が集まりやすいよう、土日にしている。
 親戚の中には官公庁に勤めていたりして、カレンダー通りの休みしか取れない人もいるので。
 また、お寺さんも、お盆本番日よりも少しずらした方が御経の予約が取りやすいというメリットもある。

〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕

 次の連坊駅で下車する乗客が多いのではないだろうか。
 名前の通り、お寺さんの多い地区であるから。

 高橋:「ところで先生」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「お盆の時に飾る、ナスとかキュウリとかの乗り物なんスけど……」
 愛原:「ああ。ナスを牛、キュウリを馬に見立てる奴な。御先祖様がそれに乗ってあの世とこの世を行き来されるという風習だよ」
 高橋:「愛原家では、ガチの乗り物飾るんスね?」
 愛原:「山形県などでは、ミニカーなどを飾る風習があるんだよ。昔、山形県出身で、一族で最も力のある人がいてね。その人が、『山形県ではこうやる』と言って、ミニカーを置く風習に変えさせたんだ」
 高橋:「それで今でも、バスを飾ってるんですね?」
 愛原:「愛原家は御先祖様が多いみたいでね。普通の車じゃ定員オーバーになるからと、今ではバスが何台だ?……えー、初出の庄内交通に、山形交通の山交バス、宮城交通に仙台市営……。それに、俺が買って来たJRバスも含めて5台編成だな」
 高橋:「多いっスね!……俺んちも来年からそれで行こうかな……」
 愛原:「バイクと車か?」
 高橋:「そうっスね!」
 愛原:「バイクは?」
 高橋:「やっぱツアラーっスね。俺が大得意の」
 愛原:「車は?」
 高橋:「チェイサーかランエボ辺りで行こうかと。もちろん、がっつりカスタムします」
 愛原:「他には?」
 高橋:「親父が長距離トラックの運ちゃんだったんで、トラックも飾りますか」
 愛原:「デコトラ風に?」
 高橋:「デコトラ風に!」
 リサ:「ねえ、先生」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「飾るのは車でないとダメなの?」
 愛原:「ん?」
 リサ:「わたし、映画と小説で見たんだけど、今はあの世とこの世を結ぶ鉄道があるんだって。冥界鉄道公社っていうの?その鉄道会社が三途の川に橋を架けて、今はそれで渡るんだって」
 愛原:「映画の話か。まあ、“ゲゲゲの鬼太郎”だって、三途の川を幽霊電車で渡る話があったな」
 リサ:「だから、電車を飾るというのはどう?」
 愛原:「鉄道模型は高いからなぁ……。因みにオマエは何を飾るんだ?」
 リサ:「むふー!」

 リサが得意気に見せてくれたスマホの画面には、都営新宿線の電車とそれに乗り入れて来る京王電車の写真があった。

 愛原:「冥界鉄道公社の三途の川線って、軌間1372mmだったっけ?」
 高橋:「い、いや、俺に聞かれても……」
 愛原:「多分、狭軌の1067mmのような気がするんだが……」

 京王線沿線が舞台の“ゲゲゲの鬼太郎”では、古めかしい京王電車が幽霊電車となって三途の川を渡っているから、軌間1372mmで合っているのだろうが……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする