報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「犯人は誰だ?」

2017-10-11 19:29:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月16日08:50.天候:晴 JR大宮駅]

 西口のタクシー乗り場に稲生達を乗せたタクシーが止まる。
 そこから降りた3人、駅構内へと向かった。

 稲生:「いよいよ今日は、『3時の魔道師』と会えるんですね」
 イリーナ:「ええ、今日の午後……。私達が先に着くか、それとも向こうが先に到着するか……」
 稲生:「こんなことなら、もっと早く到着する電車にしておけば良かったな……」
 イリーナ:「スターオーシャン号に乗ると、ほんとロクなことに巻き込まれないわね」
 稲生:「それ、関係あるんですか?」
 イリーナ:「だってそうでしょ。あの船に乗らなきゃ、そもそも『3時の魔道師』の情報なんか手に入らなかったもの」
 稲生:「うーん……」
 イリーナ:「魔女がどうして森の奥から出ないのか。それは迫害を恐れるよりも、やっぱり運が悪いからなのよ。それも、周囲を巻き込むほどのね」
 稲生:「作者の運気みたいですね」

 顕正会時代、『私の不運は周囲をも巻き込むのです。一緒に罪障消滅しましょう』という指導を班員にしていたことがある。
 後日、支隊副長に、『(電車が止まって帰れなくなった)俺は巻き添えかい!』と言われたw
 バスルートで脱出したけどね。
 運の悪い人間はどこにでもいるものだ。
 そして、その運気そのものは仏法でも解決できないことは私が証明済み。
 そういう人間は、二重三重の策を講じていれば、まあ何とかなる。
 自ずと自分教の出来上がりというわけだ。

 稲生:「埼京線各駅停車、新宿行き……」
 イリーナ:「大丈夫だよ。霊気は全く感じない」
 稲生:「わ、分かりました」
 マリア:「というか、こんな賑わっている駅で魔界行きが走っているとは思えないが……」
 稲生:「それもそうですね」

 階段をぞろぞろ上がって来る乗客達。

 稲生:「うん、これなら大丈夫」
 イリーナ:「心配無いって」

 副線の22番線に停車しているE233系7000番台、これは埼京線を走行している車両の中で最も新しい車両である。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、9時3分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 稲生:「先生の仰る通りのようです」
 イリーナ:「そうでしょう、そうでしょう」
 マリア:(というか師匠がいる時点で、向こうはほとんど手出しができないように見えるんだけど……)

〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕

 車内放送が聞こえてくる中、先頭車に乗り込む。

 稲生:「あの時、ずんぐりむっくりの変なロボットが出て来た時にはびっくりしましたよ」
 イリーナ:「異世界の存在だろうね。冥鉄が走行する亜空間トンネルは、色々な世界と繋がってるから」

[同日09:03.天候:晴 JR埼京線918K電車10号車内]

 発車メロディがホームに鳴り響く。
 高い確率で再開閉を行うのが埼京線。
 現在のところ、まだ埼京線にはホームドアが設置されていない。
 東日本のホームドアは電車のドアから先に閉まり、それからホームドアが閉まる。
 ところが、西日本ではホームドアの方から先に閉まるのだという。
 これは東日本がただ単に乗客の転落防止だけを目的としているのに対し、西日本では駆け込み乗車防止も含めているからだとされる。
 いずれにせよ、埼京線は電車のドアが閉まればそのまま発車する。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です。……〕

 稲生:「ん?」

 ドアの上にはモニタが2つある。
 1つは主に次駅停車案内や、その電車の路線図、運行情報を表示するものだ。
 もう1つは主に広告やニュース、天気予報を流している。
 で、たまたま今はニュースを流しているのだったが、それによると、どうも成田空港からヨーロッパに向かっていた飛行機がエンジントラブルで引き返したというよくあるニュースを流していたのだった。
 よくあることなのだが、どうにも稲生は気になった。

 イリーナ:「気がついた?あれは『3時の魔道師』が逃亡を図ったということよ」
 稲生:「何ですって!?」
 イリーナ:「でも、私が取り引きした魔道師の方が力が強かったみたいね。飛行機を止めて阻止してくれたみたい」
 稲生:「逃亡するなんて……!」
 イリーナ:「これで、犯人が誰かもっと絞られて来たんじゃないかしら。瞬間移動魔法が使えないヒヨッ子ってことね」

 稲生達も電車で帰ろうとしているが、これは魔力の節約とイリーナの気紛れによるものである。
 日本の鉄道は使い勝手が良いので、移動魔法の節約になるとのこと。

 マリア:「そ、そう言えば、昨日からエレーナと連絡が取れない」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「夜に連絡しようと思ったんだが、まあ、あいつは夜、ホテルの仕事があるから、それで連絡が付かないだけかと思っていたんだけど……」
 稲生:「そ、そういえばエレーナも、今年度からローマスターになったばかりだ!」
 マリア:「『3時の魔道師』ったって、真夜中にフロント業務が忙しいわけ無いもんな。夜中の3時なら、ちょっと抜け出して……ってことが可能だ」
 稲生:「エレーナだったのかぁ……」
 イリーナ:「まだまだ。予断は禁物よ。マスターになったばかりコは他の組にもいるし、例えばアナスタシア組のアンナなんかも同じタイミングでミドルマスターになってるからね」
 マリア:「アンナですか。……うん、よく考えてみればアンナの方が怪しいかも」
 稲生:「そうなんですか?」
 マリア:「アンナは呪術を得意とする。自分の話す内容を聞き手に侵食させて、内容の登場人物の末路の後追いをさせるというものだ」
 稲生:「知っています」
 イリーナ:「はてさて。一体、誰が犯人だったんだろうね。もっとも、あなた達の全然知らないコかもしれないしね」
 稲生:「エレーナかなぁ……?」
 マリア:「いや、アンナだろう」

 1:ポーリン組のエレーナ
 2:アナスタシア組のアンナ
 3:それ以外の誰か
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“大魔道師の弟子” 「9月15日」

2017-10-11 12:15:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月15日10:00.天候:晴 東京都豊島区 日蓮正宗・正証寺]

 マリア:「ユウタ、ここは……?」
 稲生:「僕が所属していた寺院ですよ」

 稲生は何故か黒いスーツに黒ネクタイを着用していた。
 マリアも黒いローブを羽織っている。
 元が魔女だけに、あまり違和感は無い。

 マリア:「ユウタの後輩の葬儀って……ここ!?」
 稲生:「そうですよ。正証寺には客殿もありますから」
 藤谷:「おいおい、稲生君。キミの離檀願はまだ正式に受理されていないと言っただろうが。キミはまだ現在進行形で所属しているんだよ」
 稲生:「班長、お久しぶりです」
 藤谷:「しかし、大変なことになったな。青年部の菅原君が誰かに突き飛ばされて、電車に轢かれたんだろ?しかも、その犯人が分からないって言うじゃないか。こりゃ、昔の北海道での騒ぎ以来だぞ」
 稲生:「そうですね」

 稲生にはもうとっくに犯人は分かっているのだが。

 藤谷:「せっかくこの前の御講で、体験発表したばかりだったのになぁ……」
 稲生:「間接的に仏力法力が働く仏法より、直接魔力を行使する方が強いということでしょう。でも、そんなのは幸せになる為の手段じゃないです。間接的な方だって、場合によっては自分が幸せになる為に他人を犠牲にしているようなものなのに……」
 マリア:「あの……単なる参列者の私はどうすればいい?魔女の私が御経を唱えるわけにもいかないが……」
 稲生:「マリアさんは後ろの椅子席に座って見ててください」
 藤谷:「稲生君、そろそろ始まるぞ」

 マリアは後ろの席で針の筵だったという。
 別にマリアが悪いわけではない。
 だが、『3時の魔道師』が同門の誰かであることは明らかである。
 これで稲生がどうしてあれだけ憤っていたのかも分かった。
 単なる学校の後輩だからというだけでなく、そもそも信仰関係の後輩でもあったからである。

 マリア:(『3時の魔道師』が誰かはまだ分からないけど……。これは死を覚悟してもらった方がいいかもしれんよ……)

 その後で昼食会もあったのだが、稲生とマリアはそれぞれ別々の意味で食事があまり進まなかったという。

[同日17:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 イリーナ:「そうかぁ……。ユウタ君の後輩って、お寺の後輩でもあったのかぁ……。そりゃ怒るよねぇ……」
 マリア:「師匠、他人事じゃないですよ。何か、イメージが悪くなっちゃって……」
 イリーナ:「でもその『3時の魔道師』は、明日にでも引っ張って来てくれることになってる。その時、煮るなり焼くなりすればいいのよ」
 マリア:「師匠はもしかして、犯人が誰か知ってるんじゃないですか?」
 イリーナ:「知っているというか、目星が付いているといったところかな。まあ、私も1000年以上生きているからね」
 マリア:「一体、誰が?」
 イリーナ:「いいじゃない。それが明日分かるんだから。明日のお楽しみってことで」
 マリア:「しかし……」
 イリーナ:「分かった分かった。じゃあ、ヒントをあげましょう。まず、『3時の魔道師』はダンテ一門の誰か。それは100%当たりでしょう。そして階級は……ローマスターかミドルマスター」
 マリア:「ハイマスターとかグランドマスターじゃないんですか?」
 イリーナ:「私と同じ階級くらいってこと?それは無いね。私くらいになると、あんなセコい契約は受けないし、そもそもあなた達に足の付くようなやり方はしないよ」
 マリア:「それもそうか」
 イリーナ:「ましてや、同門の仲間を間違って殺そうとしたなんて大ミス……。ありゃ、かなり不慣れなヤツがやってると見た。かといって、ユウタ君みたいなインターン(見習い)でもない。インターンは契約を受けられないからね。となると、最近契約を受けるようになったばかりのローマスターが怪しいってことになる」
 マリア:「さすがは師匠。でも今さっき、ミドルマスターとも言いましたけど?」
 イリーナ:「ミドルマスターになるには、別に契約をこなすこととは関係無いからね。ハイマスターになるには、それも点数になるけど」
 マリア:「そうなんですか」
 イリーナ:「元々は契約をこなす為のアシスタントとして、弟子を取るようになったのが始まりだからね。ハイマスターから弟子を取れる、というのはそれが理由なの」
 マリア:「そうでしたか」
 イリーナ:「ここ最近、ローマスターまたはミドルマスターになったばかりのコは誰か?それを当ててみて」
 マリア:「分かりました」
 イリーナ:「意外と世間って狭いものね。キャシーちゃんが調査に赴いていたくらいだもんねぇ……」
 マリア:「キャシーちゃん?」
 イリーナ:「ほら、エレーナのホテルのレストランの……」
 マリア:「ああ、キャサリン師ですか」

 元はポーリン組に所属していたが、ハイマスターに昇格したのを機に独立。
 但し、まだ正式な弟子は取っていない。
 “飴玉婆さん”として、東京中央学園の裏門前に現れていたのが噂されていた。

 イリーナ:「どうしてキャシーちゃんが、あんなことをしていたのか聞いてる?」
 マリア:「いや、聞いて無いですね。……調査ですか?」
 イリーナ:「そう。あの学校が魔界の入口の上にどうして建っていたのかを調査していたのよ。やっぱり世界的に見てもレアケースだもんね」
 マリア:「それもそうですね」
 イリーナ:「そこは魔女だから、やっぱり調査しているうちに、自分もまた人間達から怖い話扱いされたみたいね」
 マリア:「はははは……。飴玉を配っていたのは?」
 イリーナ:「自作の魔法薬の実験台かな。これ、ユウタ君には内緒ね」
 マリア:「食べた人間は幸せになったという話ですから、別にいいのでは?」
 イリーナ:「ううん。ユウタ君が知らないだけで、失敗作も渡ってしまって、後で大変なことになったという話もあるみたいだから」
 マリア:「……そりゃマズいですね」

 因みにその時キャサリンの調査では、魔界の穴が自然に開いたものだったのか、故意に開けられたものだったのかまでは判別できなかったそうである。
 
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