報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「劇団ロイド始動!」 2

2017-10-21 19:18:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月14日11:00.天候:晴 東京都豊島区 敷島エンター劇場(旧・ミュージックホール四季)]

 劇団アンドロイド(仮称)の初演が行われている劇場。
 ここはかつて四季グループの創業者である敷島孝之亟が、その屋台骨である四季エンタープライズの基礎を築いたストリップ劇場があった場所である。
 もちろん当時のストリップ劇場は取り壊され、今では四季グループの演劇部門が使用する劇場へと建て直されていた。

 継母(シンディ):「シンデレラ!シンデレラ!」
 シンデレラ(初音ミク):「は、はい!何でしょうか、お母様?」
 継母:「何度も呼ばせないで!呼ばれたらすぐに返事をおし!」
 義姉(MEIKO):「もう!グズでノロマなんだから。おー、ヤダヤダ。こんなのが義妹(いもうと)だなんて」
 シンデレラ:「申し訳ありません」
 継母:「あーら、シンデレラ。まだ汚れてるじゃないの。かまどの掃除はどうしたの?」
 シンデレラ:「あ、はい。あの……お母様のお部屋のお掃除がまだ終わってなくて……それから……」
 継母:「何ですって!?言い訳はやめなさい!あんたはいつも私に叱られる度に言い訳ばっかりして!そんなんだから……」

 VIPルームで観劇するは敷島孝夫と四季エンタープライズ社長の敷島俊介。
 敷島孝夫の伯父である。

 俊介:「なかなか好調の出だしじゃないか。これなら盛り上がりそうだ」
 孝夫:「恐れ入ります。シンデレラは小学校の学芸会から宝塚まで、幅広く公演されている演目です。それだけに、公演する劇団の個性が滲み出るものです」
 俊介:「うむ。それでは今日、その劇団アンドロイドの個性を拝めるというわけだな?」
 孝夫:「そういうことです。しかし、驚きましたよ。あの主催者さんが、まさか伯父さんの差し金だったなんて……」
 俊介:「はっはっはっ!私が直接口を出すのも何だと思ってね。知り合いの劇場関係者に話をしてみたってわけさ。KR団とやらの戦いも無事終了したことだし、そろそろあのロボット達の平和的利用を探るべきじゃないかと思ってね。ちょいとお節介させてもらった」
 孝夫:「な、なるほど」
 俊介:「この日本がロボットテロに晒されているのなら、彼女達はその対策に当たらせるべきだ。しかし今、その先陣を切っていた組織は完全に崩壊した。実は前々から考えてはいたのだが、そろそろ頃合いじゃないかと思ってね」
 孝夫:「さすがは伯父さん。だけど、何だか寂しくなりますなぁ……」
 俊介:「何がかね?」
 孝夫:「エミリーとシンディが、私の手から離れてしまうのが……」
 俊介:「いや、別にキミの秘書を辞めさせろと言ってるんじゃない。あくまで、新しい試みをしてみるのもまた一興ではないかということだ」
 孝夫:「ま、たまにならいいかもしれませんね」
 俊介:「そうだろう。……さ、しばらくは素直に観劇を楽しもうじゃないか」
 孝夫:「はい」

 ナレーター(アルエット):「……そんなある日のこと、国中にお触れが出されました。この国では毎年、王子様の誕生日を祝う舞踏会が盛大に行われるのですが、何と今年はその王子様の結婚相手を舞踏会の参加者の中から選ぶというのです。もちろん、シンデレラの家でもそのことについて大盛り上がりでした。……たった1人、シンデレラを除いて」

 義姉:「お母様、今度の舞踏会にはどのドレスを着て行ったらいいかしら?」
 継母:「安心おし。全て超一流のお店で選んだドレスよ。ホント、あなただったら何を着ても美しいわ。どこぞの薄汚い灰かぶりと違ってね!」

 舞台袖では平賀と村上が調整用の端末を確認しながら見ている。

 村上:「シンディはハマり役じゃの」
 平賀:「ドSな女王様ですから。是非とも次の公演があったら、シンディは悪役でいいくらいですよ」
 村上:「んふふふ……そうかね?では今度は“西遊記”でもやらせてみて、羅刹女の役でもやらせるかね?」
 平賀:「いいと思いますが、入力と調整が大変です」
 村上:「む、それは確かに……」

 ナレーター:「……そんなシンデレラの元に、ミステリアスな魔法使いが現れました。そして、シンデレラに魔法を掛けたのです」

 魔法使い(巡音ルカ):「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!この哀れな灰かぶりに一晩の夢を与えよ!はーっ!」
 シンデレラ:「なに?このどこかで聞いたことあるような呪文は?……ああっ!?」

 ナレーター:「何ということでしょう。それまで見すぼらしい恰好だったシンデレラの服が素敵なドレスに、カボチャが馬車に、ネズミが御者に変わったではありませんか」

 俊介:「おおっ、衣装の早着替えもバッチリ!これは期待が持てそうだ」
 孝夫:「ありがとうございます」

 魔法使い:「……だけど、油断してはいけない。この魔法はあなたに一晩の夢を見せる為のもの。従って、12時になったらこのガラスの靴以外は全て魔法が解け、あなたは元の灰かぶりに戻ってしまう。だから、十分にお気をつけなさい」
 シンデレラ:「はい!ありがとうございます!」

 村上:「しかし、鐘が12回鳴り終わるまでの間に広い城から脱出を図らねばならんとは……結構ハードな展開じゃの」
 平賀:「考察によれば、実際は23時45分に鳴る予鈴のことらしいですよ。シンデレラが聞いたのは」
 村上:「それでも15分か。15分の間に、ディズニーランドのシンデレラ城のてっぺんから外に脱出できるかね?」
 平賀:「大抵、舞踏会が行われるのはエントランスホールに近い大食堂でしょうから、恐らく可能かと」
 村上:「なるほど」

 ナレーター:「……こうして、シンデレラは無事にお城の舞踏会に参加することができたのです。しかし、当の王子様は乗り気ではありませんでした」

 王子(KAITO):「大臣、大臣はいるか!?」
 大臣(ロイ):「はっ、ここに」
 王子:「今回の舞踏会、私の誕生日パーティー以外の要素もあるということは知っているな?」
 大臣:「ははっ、この私めの提案にございます」
 王子:「何故そのような余計なことを!?結婚相手くらい自分で探す!」
 大臣:「も、申し訳無いことでございます。国王陛下は殿下が適齢期をお迎えになったことを大変お喜びになってございますが、しかしそれと同時に殿下のご成婚相手につきましては、とても御腐心あそばされてございます。そこで不肖、私めが提案させて頂いた次第でございます」
 王子:「言い訳は良い!とにかく、こんな下らぬ催事に付き合うつもりは私は無い!」
 大臣:「で、殿下!お待ちを!せめてパーティーにお顔をお出しになられては?本日は国中より諸侯が参加してございます。恐らくその中には、殿下のお好みの令嬢も参加なさっているはずです。どうか陛下の御腐心に報いる為にも、好みの女性と踊られては如何でございましょうか?」
 王子:「フン、何を抜かす。好みの女性など、あの中には……むっ!?」

 ナレーター:「その時です。王子様の目がシンデレラをロックオンしました」

 俊介:「おいおいおい!本当に目が光っているぞ!?」
 孝夫:「す、すいません。そういう仕様なもので」

 王子:「失礼、そこの美しい貴女。私と踊って頂けないでしょうか?」
 シンデレラ:「わ、私とですか!?ね、ね、願ってもない光栄です!」

 プシューッ!(ミクの両耳から煙が噴き出した)

 村上:「い、いかん!出力を下げるんじゃ!」
 平賀:「承知!」

 俊介:「あ、あれも演出……または仕様かね?」
 孝夫:「えっと……」

 しかし、科学者2人の調整によりミクの故障は免れた。

 ナレーター:「……こうして、2人は時が経つのも忘れて踊り続けたのであります。しかし、時間は止まってくれません。ついに、舞踏会の終わりを告げる鐘が城中に鳴り響きました」

 シンデレラ:「いけない!もうすぐ12時だわ!帰らなきゃ!」
 王子:「どうしてだい?舞踏会はまだまだ続くよ」
 シンデレラ:「ごめんなさい、王子様!早く帰らないと終電無くなっちゃう!」

 平賀:「あ、あれ?ミクの台詞が……!」
 村上:「さっきのオーバーヒートのせいか!?早く修正するんじゃ!」
 平賀:「やってますよ、さっきから!」

 王子:「待ってください!終電逃しても、まだ深夜急行バスがありますよ!」

 平賀:「か、KAITOまで!?」

 それでも何とか、舞踏会終了までは漕ぎ付けた。
 尚、シンデレラを舞台演劇する際、必ず演じるのが、シンデレラがガラスの靴を片方落としてしまうことである。
 もちろんこの公演でもそれが行われたのだが……。

 シンデレラ:「きゃーっ!」

 何とミク、ガラスの靴を片方落としたのはいいのだが、そこから派手に階段落ちをやらかしてしまった!
 頭から落ちたのだが、そこは人間よりも頑丈なボーカロイド。
 階段の踊り場に穴を開けただけで済んだという。

 第一幕終わり!
 次回、第二幕、舞踏会から一夜明けた城下町のシーンからスタートする!
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“戦う社長の物語” 「劇団ロイド始動!」

2017-10-21 14:23:29 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月3日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー会議室]

 村上:「むぅ……?このワシが審査員とな?」
 ロイ:「いきなりな話ですねぇ……」
 平賀:「正確には審査員長です。自分だけでは心許ないので、せっかく上京されたのですから、よろしくお願い致します」
 村上:「しかし、アンドロイド達だけで演劇をやるとは、面白い試みじゃ。そういうことなら、付き合わせてもらおう」
 ロイ:「では司会進行は不肖、この私が……」
 平賀:「ロイ、お前も出ることになってるぞ?」
 ロイ:「ええっ!?」
 村上:「せっかくの機会じゃ。どうせ主演では無いじゃろうし、お前もデータ蓄積(経験)の為に参加してみい」
 ロイ:「はあ……。博士がそう仰るのでしたら……」
 村上:「芝居と言っても、何をするのじゃ?」
 平賀:「それが、まだ脚本が出来上がっていないらしいんですよ。西洋の古典文学的なものらしいですけど……」
 村上:「何じゃいな?“不思議の国のアリス”とか、“赤ずきんちゃん”でもやらせるつもりか?」
 ロイ:「“小公女セーラ”かもしれませんよ?」
 平賀:「取りあえず、“マッチ売りの少女”で演技力を試したいと考えています」
 村上:「なるほど。それは面白い」
 平賀:「それじゃ、早速始めてもらおう」

 シンディ:「1番!シンディ・サードです!よろしくお願いします!」
 平賀:「じゃ、始めて」
 シンディ:「マッチ……マッチは要りませんか?」
 村上:「くだらん!」
 シンディ:「そうですか?」
 村上:「お前には見えているか?目の前を行き交う薄情な人々の姿が。お前の感情レイヤーはそんなものではないはず。感じるのじゃ。そうすれば、自慢のAIに自然と台詞が浮かんで来るはずじゃ」
 シンディ:「感じる……」

 ピー!(シンディの体内からアラームが鳴る)

 シンディ:「下等で愚かな人間どもよ!この私を無視するとはいい度胸だ!マシンガン掃射で蜂の巣にしてくれよう!!」
 平賀:「失格。次」
 ロイ:「でも右手のマシンガンは良いネタになりそうです」
 村上:「作者みたいなことを言うではない」

 エミリー:「2番。エミリー・ファーストです。よろしく頼みます」
 平賀:「よし。始めてくれ」
 エミリー:「マッチ。マッチは要りませんか?」
 村上:「要らん」
 エミリー:「お願いします!話だけでもいいんです!全部売れるまで会社に帰れないんです!!」(←全力Orz)
 平賀:( ゚д゚)ポカーン
 村上:「……何かね、それは?」
 エミリー:「この会社に来る営業さんは、だいたい皆こんな感じなのですが……?」
 村上:「世知辛い!次じゃ!」
 平賀:「営業の闇はNGだな」
 ロイ:「随分ブラックな営業ですね」

 アルエット:「3番!8号機のアルエットです!よろしくお願いしまーす!」
 平賀:「……だ、大丈夫かな?」
 村上:「“マッチ売りの少女”に、あんな明るいコを使うのはどうかと思うが……」
 アルエット:「マッチ、マッチは要りませんか?今ならタイムセール、5個セットでたったの250円!これはお買い得です!……ちょっと待った!今なら同じものをもう一セットお付けしちゃいます!さあ、いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!」
 平賀:「……おい」
 村上:「これは……テレビショッピングとディカウントストアーの融合かね?」
 ロイ:「明る過ぎるので失格です!」
 アルエット:「えー?」

 平賀:「ていうか、マルチタイプ達に演技なんて、こちらとしても想定外ですよ」
 村上:「ホントにのぅ……」

 ズズズとお茶を啜る科学者2人。

 村上:「じゃが、上手く行けばこれほどのことはあるまい。どうじゃろう?少し、彼女らのAIを改良してみるか?」
 平賀:「どうしろというんですか?」
 村上:「それは……」

 と、そこへ会議室のドアがノックされた。

 井辺:「失礼します」
 平賀:「井辺プロデューサー」
 井辺:「大変お待たせ致しました。脚本が刷り上がりましたので、お持ちしました」

 井辺が差し出した台本に、科学者達はフリーズした。

 平賀:「“シンデレラ”ですか!?」
 村上:「むぅ……。ある意味では難しいのが来たのぅ……」
 井辺:「何とか社長が主催者の方に掛け合って、マルチタイプの主演は回避してもらいました」
 平賀:「でしょうな」
 村上:「それが無難じゃ。して、主演のシンデレラは誰がやるのかね?」
 井辺:「初音ミクさんです。そして、王子様役はKAITOさんです」
 平賀:「よしよし。無難路線だな」
 村上:「うむ。さすがは敷島社長」
 平賀:「ロイド達に舞台稽古は必要ありません。すぐに台詞を入力して記憶させ、あとは動きを端末から入力してやればOKです」
 村上:「ちょっと待て。その入力は誰がやるのかね?」
 平賀:「敷島さんでしょう?“悪ノ娘と召使”は敷島さんがほぼお1人でされましたから」
 井辺:「別の意味で死に掛けたとのことです。私や専属マネージャー達で台詞の入力は行いますので、教授方は演出家さんの指示通りにロイドの皆さんが動けるように調整をお願いできますでしょうか?」
 平賀:「うわっ!そっちか!」
 村上:「メンドいのキターッ!!」

[同日17:00.天候:曇 敷島エージェンシー]

 敷島:「ただいまぁ……」
 井辺:「お帰りなさい、社長。いかがでした?」
 敷島:「んー?まあ、最終的にはうちらに完全に任せてくれるってさ」
 井辺:「それは良かったですね」
 敷島:「何か今さらシンデレラなんかやることになっちゃたけど、大丈夫かな?平賀先生に、余計な手間を取らせてしまって申し訳無い」
 井辺:「そのことですが、平賀教授は、『敷島さんとは長い付き合いだから、これくらいどうってことない』とのことです」
 敷島:「そうか。さすがは平賀先生だ。村上名誉教授は?」
 井辺:「平賀教授よりもノリノリです。どういうわけか……」
 敷島:「何でああいう科学者のお年寄りは、変なノリかねえ……。まあ、いいや。変な改造さえしなければ……」
 井辺:「…………」
 敷島:「な、何だ?」
 井辺:「村上名誉教授ですが、ボーカロイドの皆さんのAIを改造する気だったそうです」
 敷島:「ちょっと、都心大学行ってくる」
 井辺:「私もお供致します」

 こうして始まったロイド達の演劇。
 果たして、どうなることやら……。

 劇団アンドロイド(仮称)

 演目:初音ミクのシンデレラ

 主演:シンデレラ…初音ミク 王子様…KAITO

 助演:継母…シンディ 義姉…MEIKO 魔法使い…巡音ルカ 大臣…ロイ 召使…鏡音レン メイド…鏡音リン ナレーション…アルエット 騎士団長…エミリー

 協力:敷島エージェンシー、デイライト・コーポレーション・ジャパン、四季エンタープライズ
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