[ある日の午前中 天候:晴 東京都千代田区霞ヶ関 某合同庁舎]
官僚:「どうも、お待たせしました」
敷島:「本日はお忙しいところ、お時間を頂き、ありがとうございます。私、(株)敷島エージェンシー代表取締役を務めさせて頂いております敷島孝夫と申します」
敷島、立ち上がって挨拶と名刺を渡す。
官僚:「ああ、なるほど。あなたが彼の有名な敷島さんですか。確か、警視庁や公安関係辺りから『テロリストを泣かせる男』の異名をお持ちだとか……」
敷島:「いえ。私は私なりのテロ対策をしてきたまでです。それで本日お伺いしたのは、是非ともうちの自慢のアンドロイドをご覧頂きたいと思いまして」
エミリー:「マルチタイプ1号機のエミリーと申します。よろしくお願い致します」
深々と頭を下げるエミリー。
官僚:「これはこれは……。つい、人間かと思いましたよ。本当にロボットなんですか?いや、実によくできてますなぁ……」
敷島:「恐れ入ります」
敷島が官僚と商談をしている間、終始腰を曲げていたエミリーであった。
[また別の日の午後 天候:曇 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
DCJ専務取締役:「どうも、お待たせしました」
敷島:「いつもお世話になっております。私、(株)敷島エージェンシー代表取締役を務めさせて頂いております敷島孝夫と申します」
敷島、立ち上がって挨拶と名刺を渡す。
敷島:「いつもうちのアンドロイド達の面倒を見て頂いて、ありがとうございます」
専務:「いえいえ。こちらこそ、世界的科学者達の遺作の整備を任せてもらえて大変鼻が高いです」
敷島:「こちらがその……専務が直接ご覧になりたいと仰っていたシンディです」
シンディ:「マルチタイプ3号機のシンディと申します。よろしくお願い致します」
深々と頭を下げるシンディ。
専務:「おお〜!何十年も前から稼働しているアンドロイドとは思えぬ緻密さですね」
敷島:「実際には後期タイプのボディを使用していますので、稼働期間は凡そ数年ちょっとです」
専務:「見事に体を交換することにより、実質的に何十年も稼働していることになるわけでしょ?凄いテクノロジーだ。平賀教授のメイドロイドだけでも凄いのに、こういう人間そっくりの……それも見た目だけではなく、その細部に至るまで人間同様とは……」
敷島と専務が打ち合わせをしている間、終始腰を曲げていたシンディだった。
[またまた別の日の午後 天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
敷島:「どうもどうも、お待たせです。勝っちゃん……いや、勝又先生」
勝又都議:「いやいや、別にいいよ。勝っちゃんで」
敷島と若手都議会議員の勝又とは、大学時代の同級生である。
勝又:「『東京ロボットショー』の詳細が決まったんで、そのお知らせに来ただけだから」
敷島:「だったら、呼んでくれれば俺から出向いたのに……」
勝又:「いやいや。何しろ、目玉となるキミの秘書さん達に出てもらうんだから当然だよ。実行委員会理事として」
敷島:「できれば、うちのボーカロイドをメインで出させて欲しかったな」
勝又:「メンゴメンゴ。どうしても、理事長が【某有名演歌歌手】に出て欲しいってゴネやがってさぁ……」
敷島:「文春砲ぶっ放してもらうかい?」
勝又:「ハハハハ!いつものことだから、勘弁してやってよ。じゃあ、その時はよろしくね?エミリーさん」
エミリー:「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します。……あ、紅茶のお代わりお持ちしますね」
[更に別の日の午後 天候:雨 東京都23区内某所 都心大学研究棟]
村上:「さっきから気になっておるんじゃが……」
敷島:「何ですか?」
村上:「もしかしてキミの秘書君、腰が曲がっておらんかね?」
敷島:「ええっ!?」
敷島、パッとシンディを見る。
今回はエミリーが都心大学で整備を受けている為、シンディが代わりに敷島の秘書を務めていた。
シンディ:「べ、別に大丈夫ですわよ?」
シンディ、ピンと背筋を伸ばした。
村上:「そうかの?ここに来てから、ずっと腰を曲げておったみたいじゃが……」
シンディ:「私にとって、村上博士は目上の御方ですから、腰を低くしないと失礼に値するかと思いまして」
村上:「ん?別に、ワシに遠慮することはないぞ。特にキミの場合、ワシと本来の接点は無いのじゃから」
ロイ:「シンディさん。どうかボクと付き合って頂けませんか?」
ロイ、花束を持って馳せ参じてきた。
シンディ:「あのねぇ、こう見えても私、任務中だから。空気読んで」
シンディは呆れて右手を腰にやり、左手でシッシッとやった。
敷島:「おっ、ロイ。どうやら少しは脈があるみたいだぞ?男嫌いのシンディが、ただ単にシッシッとやっただけだ。普通だったら、ぶっ壊しに来るぞ」
ロイ:「な、なるほど」
シンディ:「社長、私を何だと……。まあ、いいですわ。それより、そろそろ会社に戻る時間です」
敷島:「おっ、そうだった。じゃあ教授、エミリーをお願いします」
村上:「うむ。すまんの。ワシの知的好奇心に付き合わせてしまって」
最初はエミリーに惚れているのかと思った敷島だったが、実際にロイが好きになったのはシンディの方だったらしい。
敷島:「じゃあ、帰るとするか」
シンディ:「はい」
敷島達、研究棟を出ようとした。
村上:「おいおい、おかしいぞ。やっぱり、腰が曲がっておる。ついでにキミも診ようか?」
シンディ:「あ、いえ。そういうことじゃないんです」
村上:「じゃ、どういうことじゃい?」
敷島:「シンディ。今日はもうお偉いさんに会う予定は無いだろう?別に、普段から腰を低くしている必要は無いぞ?」
シンディ:「ち、違うんです。姉さんに言われて……」
敷島:「ん?そう言えば、エミリーもここ最近、ずっと腰を低くしていたなぁ……」
シンディ:「姉さんに、『社長と行動を共にする時は、常に腰を低くしておくこと。でないと、失礼に当たる』と言われたんですよ」
敷島:「何だそりゃ?俺とは長い付き合いなんだから、そんなにペコペコする必要は無いぞ?」
シンディ:「多分、社長をアンドロイドマスターに認定したのと関連性があるものと思われますが……。私も、同じロイドで姉さんにだけは頭が上がらないので……」
敷島:「ふーん……?」
研究棟の外に出る。
敷島:「じゃあ、ロイ。見送りありがとさん」
ロイ:「いえ。どうぞ、お気をつけて」
敷島:「シンディのことは諦めるな。きっと、お前に振り向いてくれる日が来る」
ロイ:「はい。ありがとうございます」
シンディ:「ちょっと、社長」
ロイ:「比較的強い雨が降っています。どうぞお気をつけて」
敷島:「ああ」
シンディ、バッと傘を開き、敷島と相合傘を行った。
その際、曲げていた腰をピンと立てる。
ロイ:「あ、あの、失礼します」
敷島:「何だ?」
ロイ:「もしかして……シンディさんやエミリーさんが、社長の前では腰を曲げていらっしゃる理由って……。社長よりシンディさんとエミリーさんの方が、身長が高いからというわけではないです……よね?」
敷島:「な、何だってー!?」
シンディ:「……姉さんが言うには、『社長より上からの目線で見下ろすのは失礼に当たる』ということで……」
敷島:「エミリーのヤツ、何考えてんだ。いいよいいよ。気にするなよ。ていうかさ、俺は別にこれはこれでステータスだと思っているんだよ」
シンディ:「ステータス?」
敷島:「そう。何しろ、こんなしがない芸能事務所の経営者がだよ?モデルみたいな女を2人も連れて歩いているなんて、これほどのステータスはあるまい、と。だからいいんだよ。俺から後でエミリーに言っておくから、お前も気にするな」
シンディ:「分かりました。社長がそう仰るなら」
敷島:「それに、お前達の方が身長が高いわけだから、相合傘の際、お前達に傘を持ってもらえる」
ロイ:「あっ、それはいいですね。でも、シンディさんより私の方が背は高いので、シンディさんとの相合傘の際は私が……」
シンディ:「さっ、社長。急がないと、本社の会議に遅れます」
ロイの言葉を完全にスルーするシンディだった。
敷島の身長は175cm、エミリーとシンディは177cmである。
因みにロイは185cmと、執事ロイドにしては高身長に設計されている。
官僚:「どうも、お待たせしました」
敷島:「本日はお忙しいところ、お時間を頂き、ありがとうございます。私、(株)敷島エージェンシー代表取締役を務めさせて頂いております敷島孝夫と申します」
敷島、立ち上がって挨拶と名刺を渡す。
官僚:「ああ、なるほど。あなたが彼の有名な敷島さんですか。確か、警視庁や公安関係辺りから『テロリストを泣かせる男』の異名をお持ちだとか……」
敷島:「いえ。私は私なりのテロ対策をしてきたまでです。それで本日お伺いしたのは、是非ともうちの自慢のアンドロイドをご覧頂きたいと思いまして」
エミリー:「マルチタイプ1号機のエミリーと申します。よろしくお願い致します」
深々と頭を下げるエミリー。
官僚:「これはこれは……。つい、人間かと思いましたよ。本当にロボットなんですか?いや、実によくできてますなぁ……」
敷島:「恐れ入ります」
敷島が官僚と商談をしている間、終始腰を曲げていたエミリーであった。
[また別の日の午後 天候:曇 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
DCJ専務取締役:「どうも、お待たせしました」
敷島:「いつもお世話になっております。私、(株)敷島エージェンシー代表取締役を務めさせて頂いております敷島孝夫と申します」
敷島、立ち上がって挨拶と名刺を渡す。
敷島:「いつもうちのアンドロイド達の面倒を見て頂いて、ありがとうございます」
専務:「いえいえ。こちらこそ、世界的科学者達の遺作の整備を任せてもらえて大変鼻が高いです」
敷島:「こちらがその……専務が直接ご覧になりたいと仰っていたシンディです」
シンディ:「マルチタイプ3号機のシンディと申します。よろしくお願い致します」
深々と頭を下げるシンディ。
専務:「おお〜!何十年も前から稼働しているアンドロイドとは思えぬ緻密さですね」
敷島:「実際には後期タイプのボディを使用していますので、稼働期間は凡そ数年ちょっとです」
専務:「見事に体を交換することにより、実質的に何十年も稼働していることになるわけでしょ?凄いテクノロジーだ。平賀教授のメイドロイドだけでも凄いのに、こういう人間そっくりの……それも見た目だけではなく、その細部に至るまで人間同様とは……」
敷島と専務が打ち合わせをしている間、終始腰を曲げていたシンディだった。
[またまた別の日の午後 天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
敷島:「どうもどうも、お待たせです。勝っちゃん……いや、勝又先生」
勝又都議:「いやいや、別にいいよ。勝っちゃんで」
敷島と若手都議会議員の勝又とは、大学時代の同級生である。
勝又:「『東京ロボットショー』の詳細が決まったんで、そのお知らせに来ただけだから」
敷島:「だったら、呼んでくれれば俺から出向いたのに……」
勝又:「いやいや。何しろ、目玉となるキミの秘書さん達に出てもらうんだから当然だよ。実行委員会理事として」
敷島:「できれば、うちのボーカロイドをメインで出させて欲しかったな」
勝又:「メンゴメンゴ。どうしても、理事長が【某有名演歌歌手】に出て欲しいってゴネやがってさぁ……」
敷島:「文春砲ぶっ放してもらうかい?」
勝又:「ハハハハ!いつものことだから、勘弁してやってよ。じゃあ、その時はよろしくね?エミリーさん」
エミリー:「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します。……あ、紅茶のお代わりお持ちしますね」
[更に別の日の午後 天候:雨 東京都23区内某所 都心大学研究棟]
村上:「さっきから気になっておるんじゃが……」
敷島:「何ですか?」
村上:「もしかしてキミの秘書君、腰が曲がっておらんかね?」
敷島:「ええっ!?」
敷島、パッとシンディを見る。
今回はエミリーが都心大学で整備を受けている為、シンディが代わりに敷島の秘書を務めていた。
シンディ:「べ、別に大丈夫ですわよ?」
シンディ、ピンと背筋を伸ばした。
村上:「そうかの?ここに来てから、ずっと腰を曲げておったみたいじゃが……」
シンディ:「私にとって、村上博士は目上の御方ですから、腰を低くしないと失礼に値するかと思いまして」
村上:「ん?別に、ワシに遠慮することはないぞ。特にキミの場合、ワシと本来の接点は無いのじゃから」
ロイ:「シンディさん。どうかボクと付き合って頂けませんか?」
ロイ、花束を持って馳せ参じてきた。
シンディ:「あのねぇ、こう見えても私、任務中だから。空気読んで」
シンディは呆れて右手を腰にやり、左手でシッシッとやった。
敷島:「おっ、ロイ。どうやら少しは脈があるみたいだぞ?男嫌いのシンディが、ただ単にシッシッとやっただけだ。普通だったら、ぶっ壊しに来るぞ」
ロイ:「な、なるほど」
シンディ:「社長、私を何だと……。まあ、いいですわ。それより、そろそろ会社に戻る時間です」
敷島:「おっ、そうだった。じゃあ教授、エミリーをお願いします」
村上:「うむ。すまんの。ワシの知的好奇心に付き合わせてしまって」
最初はエミリーに惚れているのかと思った敷島だったが、実際にロイが好きになったのはシンディの方だったらしい。
敷島:「じゃあ、帰るとするか」
シンディ:「はい」
敷島達、研究棟を出ようとした。
村上:「おいおい、おかしいぞ。やっぱり、腰が曲がっておる。ついでにキミも診ようか?」
シンディ:「あ、いえ。そういうことじゃないんです」
村上:「じゃ、どういうことじゃい?」
敷島:「シンディ。今日はもうお偉いさんに会う予定は無いだろう?別に、普段から腰を低くしている必要は無いぞ?」
シンディ:「ち、違うんです。姉さんに言われて……」
敷島:「ん?そう言えば、エミリーもここ最近、ずっと腰を低くしていたなぁ……」
シンディ:「姉さんに、『社長と行動を共にする時は、常に腰を低くしておくこと。でないと、失礼に当たる』と言われたんですよ」
敷島:「何だそりゃ?俺とは長い付き合いなんだから、そんなにペコペコする必要は無いぞ?」
シンディ:「多分、社長をアンドロイドマスターに認定したのと関連性があるものと思われますが……。私も、同じロイドで姉さんにだけは頭が上がらないので……」
敷島:「ふーん……?」
研究棟の外に出る。
敷島:「じゃあ、ロイ。見送りありがとさん」
ロイ:「いえ。どうぞ、お気をつけて」
敷島:「シンディのことは諦めるな。きっと、お前に振り向いてくれる日が来る」
ロイ:「はい。ありがとうございます」
シンディ:「ちょっと、社長」
ロイ:「比較的強い雨が降っています。どうぞお気をつけて」
敷島:「ああ」
シンディ、バッと傘を開き、敷島と相合傘を行った。
その際、曲げていた腰をピンと立てる。
ロイ:「あ、あの、失礼します」
敷島:「何だ?」
ロイ:「もしかして……シンディさんやエミリーさんが、社長の前では腰を曲げていらっしゃる理由って……。社長よりシンディさんとエミリーさんの方が、身長が高いからというわけではないです……よね?」
敷島:「な、何だってー!?」
シンディ:「……姉さんが言うには、『社長より上からの目線で見下ろすのは失礼に当たる』ということで……」
敷島:「エミリーのヤツ、何考えてんだ。いいよいいよ。気にするなよ。ていうかさ、俺は別にこれはこれでステータスだと思っているんだよ」
シンディ:「ステータス?」
敷島:「そう。何しろ、こんなしがない芸能事務所の経営者がだよ?モデルみたいな女を2人も連れて歩いているなんて、これほどのステータスはあるまい、と。だからいいんだよ。俺から後でエミリーに言っておくから、お前も気にするな」
シンディ:「分かりました。社長がそう仰るなら」
敷島:「それに、お前達の方が身長が高いわけだから、相合傘の際、お前達に傘を持ってもらえる」
ロイ:「あっ、それはいいですね。でも、シンディさんより私の方が背は高いので、シンディさんとの相合傘の際は私が……」
シンディ:「さっ、社長。急がないと、本社の会議に遅れます」
ロイの言葉を完全にスルーするシンディだった。
敷島の身長は175cm、エミリーとシンディは177cmである。
因みにロイは185cmと、執事ロイドにしては高身長に設計されている。