報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「稲生勇太は日蓮正宗を正式に離檀しているわけではないということについて」

2017-10-27 19:32:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月21日11:00.天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷エントランスホール]

 『3時の魔道師』に半壊させられた屋敷の修復も既に済んでから約1ヶ月が経った。

 エレーナ:「お届け物でーす!」
 稲生:「はーい、はいはい。はーい」

 エレーナの“魔女の宅急便”は通常営業中。

 稲生:「こんな雨の中でも配達とは……大変だね」
 エレーナ:「某宮崎アニメの主人公は、魔法も使わずずぶ濡れになって風邪を引くというドジをやらかしたみたいだけど、こっちは違うから」

 確かにエレーナのローブと帽子は濡れているものの、中まで濡れている感じはしなかった。

 稲生:「キミは案外、魔法使いモノの作品のチェックを欠かさないねー」
 エレーナ:「映画の中にも、新しい魔法のヒントが隔されているものよ」
 稲生:(ポーリン組は魔法そのものというより、魔法薬を開発するジャンルだったと思うけど……)
 エレーナ:「殆どがイリーナ先生宛なんだけど、ほい」
 稲生:「ん?」
 エレーナ:「1通だけ稲生氏宛だよ。それも書留」
 稲生:「マジか?誰からだろう?」
 エレーナ:「Amazonだと、100パー稲生氏宛なんだけどね。郵便物で稲生氏宛は珍しい」
 稲生:「まあ、確かに」

 稲生は郵便物の裏を見た。

 稲生:「……日蓮正宗正証寺からだ」
 エレーナ:「ついに除名通知来た?」
 稲生:「……かもね」
 エレーナ:「んじゃ、そういうことで」
 稲生:「ああ、ご苦労さま」

 何気に注意報が出るほどの風雨をホウキで飛ぶのは難しそうだが、案外、エレーナも“魔女宅”のキキもやってのけている。
 尚、ホウキに跨る際、柄の部分ではなく、ホウキのふさの付け根辺りにすると股が楽とのこと。

[同日12:00.天候:雨 マリアの屋敷 大食堂]

 イリーナ:「ユウタ君のお寺で、支部総登山?」
 稲生:「そうなんです。来月の初めです。藤谷班長が送ってくれました」
 イリーナ:「いいじゃない。行って来たら?」
 稲生:「しかし、魔道師が信仰なんて……」
 イリーナ:「仏教徒は魔女狩りなんてしないから大丈夫よ。そもそもユウタ君の魔力が上がっていたのは、その仏教のおかげじゃない」

 元々が強い霊力を持ち合わせていた稲生。
 顕正会仏法でそれが暴走的に右肩上がりとなり、威吹や悪い妖怪に狙われるハメとなった。
 法華講に所属してからは右肩上がりの霊力増強はナリを潜め、むしろ下降した。
 それを嘆いた威吹だったが、おかげで悪い妖怪に目を付けられることも無くなり、それが御加護ということになった。

 稲生:「そんなものですかね……」
 イリーナ:「それにユウタ君はまだまだ隠居さんって歳でも無いんだから、どんどん世間の付き合いはして行けばいいと思うよ」
 稲生:「先生にとって、信心活動は世間付き合いの一環なんですね」
 イリーナ:「どんな行程なの?」
 稲生:「バスを借り切って向かう班と、自分の車で行ったり、電車で行ったりする方法とバラバラですね。僕も威吹と一緒に新幹線やバスで行ったものです」
 イリーナ:「行程表見せて」
 稲生:「こんな感じなんですけど……」

 稲生はテーブルの向こう側に座るイリーナに、行程表を渡した。
 イリーナも身を乗り出してそれを受け取る。
 プルンとした豊かな胸が目の前で揺れるのを目の当たりにしたマリアは、

 マリア:「くっ……!」

 と、何故か悔しそうな顔をしたのだった。

 イリーナ:「何だか楽しそうな旅行ねぇ。あれ?日帰り?前は泊まり掛けで行ってなかった?」
 稲生:「参加人数の誓願が減ってる……!これ、“フェイク”が喜びそうなネタだなぁ……」
 イリーナ:「いいから、ユウタ君も行ってきな」
 稲生:「はあ……」
 イリーナ:「藤谷さんには“魔の者”との戦いでお世話になったんだし、少しは顔を立ててあげなきゃ」
 マリア:「師匠が特に、ですね」
 イリーナ:「ええ。あの時の藤谷さん、カッコ良かったわよー。私があと500年若かったら、魔法使って傀儡にしたのに……。うふんうふん
 稲生&マリア:「愛の告白とか考えないんだ」

[同日13:00.天候:曇 マリアの屋敷 エントランス]

 稲生:「何とか、雨止んだみたいだな……。じゃあ、すいません。ちょっと、出掛けてきます」
 イリーナ:「例の行事に参加する準備かい?」
 稲生:「ええ」
 イリーナ:「それじゃ、はい」

 イリーナ、稲生に手持ちのカードを渡した。

 稲生:「えっ?これは僕が個人的に行くだけですよ?」
 イリーナ:「だからぁ、私もついでに旅行したいって行ってるのよ。その代わり、交通費くらいは持つよ」
 マリア:「どこの世界に、弟子の仏道修行に付き合う魔道師の師匠がいますか」
 イリーナ:「おいおい、その手の旅行ガイドブックはどうしたい?」
 マリア:「わ、私はその……せっかくだから、お土産でも買って来てもらおうかなと……」
 イリーナ:「んもう、素直じゃないわねぇ。ユウタ君が何日間か留守にするから、寂しいんでしょお?」
 マリア:「〜〜〜〜〜〜〜っ……!」
 稲生:「まあまあ。つまり、先生達も富士宮市までは御一緒ってことですね。分かりました分かりました。ちょっと、作戦練り直して来ますので、また後で」
 イリーナ:「どんなルートで行こうとしてたの???」
 マリア:「物凄くマニアックなルートで行こうとしていたんでしょうね」

[同日14:00.天候:曇 マリアの屋敷2F西側 応接室]

 イリーナ:「東アジア魔道団の不穏な動きが?」
 アナスタシア:「そう。時の権力者に諂うところはあいつららしいけど、日本を拠点にしているあなた達が目障りみたいだから、今後とも気をつけることね」
 イリーナ:「ナスターシャ、あなた……」
 アナスタシア:「なに?」
 イリーナ:「要所要所でアタシの前に現れるという時点で、あなた達も日本を拠点にしている疑惑が浮上してるんだけど?」
 アナスタシア:「こっ、ここは単なる中継地点よ!東欧をシェアしている私達にとって、ここはほんの中継地点に過ぎないの。だいたいイリーナだって昔、『こんなちっぽけな島国に行く予知なんてぜーんぜん!』って言ってたじゃない」
 イリーナ:「そりゃ、第一次世界大戦前の話だよね!?」

 ロシア語が飛び交う応接間に、直属の弟子として紅茶を運んできたマリア。

 マリア:「こりゃダメだ……」

 それはイギリス人のマリアにとって、自動翻訳魔法を解除すると師匠達が何を喋っているのか分からない件と、応接室のドアの前で立哨しているアナスタシア直属の弟子が、部屋に入れさせてくれないような気がしたからである。

 アンナ:「ほら、マリアンナが中に入れなくて困ってるでしょ。どいてあげて」
 男弟子:「サーセン」

 どうやらアンナの後輩らしく、大柄な男弟子はペコッと頭を下げると、すごすごとドアの前から離れたのである。

 アンナ:「ところで、稲生君はいないの?」
 マリア:「買い物に出かけたよ」
 アンナ:「……!!」
 マリア:「コラコラコラ、どこへ行く」

 尚、稲生が帰って来た頃にはアナスタシア組も引き上げていたという。
コメント (5)
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