報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「劇団ロイド始動?」

2017-10-19 18:49:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月2日15:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー?会議室]

 初音ミク:「ええっ!?私達にお芝居ですか?!」
 MEIKO:「何を今さら驚いてんのよ。それまでにも映画やドラマに出たことあるじゃん」
 鏡音リン:「でも、昔の“悪ノ娘と召使”を思い出すねー」
 鏡音レン:「今度は何をやるんですか、プロデューサー?」
 井辺:「まだ脚本は出来上がっていません。ですが、古典的なものをやるようです」
 KAITO:「それは面白そうですね」
 井辺:「ただ、問題が1つ」
 ミク:「問題ですか?」
 井辺:「社長がゴーサインを出されないのです」
 リン:「ええっ、何で何で!?」
 井辺:「あなた達は本来、『歌って踊るアンドロイド』です。お芝居は本来、用途外なんです」
 MEIKO:「何を今さら……。だったら、歌番組以外のテレビ出演やらラジオ出演やらグラビア撮影やら色々やってきたけど、全部用途外じゃない」
 KAITO:「そうだね。何か、他方からクレームでも来たのですか?『ボーカロイドを用途外に使うな』と」
 井辺:「いえ。それに関しては、特に……。私は聞いていません」
 巡音ルカ:「確かに、“悪ノ娘と召使”はミュージカルだったから、お芝居といっても、歌って踊るのがメインみたいなものだった。その後に続いたシリーズもそうだったし……」
 リン:「ルカ姉主演の“円尾坂の仕立て屋”(http://dic.nicovideo.jp/v/sm9032932)も盛り上がったよね!」
 ルカ:「ありがとう」
 KAITO:「プロデューサー。MEIKOではないですけど、僕達にとってお芝居は何を今さらです。どうして社長は許可なさらないのですか?用途外が理由というのは表向きのような気がしますが……」
 井辺:「……実は、あなた達に問題があるわけではないのです。あなた達だけが、あのミュージカルのように行うのであれば、何の問題も無いんです」
 ミク:「契約金が少ないとか……ですか?」
 井辺:「いえ、そういうわけでもありません。とても高いわけではありませんが、けして悪いお話ではないんです」
 MEIKO:「プロデューサー!もういい加減、はっきり言ってよ!」
 井辺:「主演を……あなた達以外の方にしてもらいたいという条件に、社長が渋られているんです」
 ミク:「わたし達以外?」
 レン:「人間の俳優さんってことですか?」
 井辺:「違います。エミリーさんとシンディさんですよ」

 この場にいたボーカロイド達は一瞬フリーズしてしまった。

 MEIKO:「あの鬼軍曹達に演技なんかできんの?」
 KAITO:「かなり未知数だねぇ……」
 井辺:「しかも完全に用途外です。社長はエミリーさんとシンディさんの出演を、頑なに拒否しておられているのです。このままでは、契約そのものをお断りする方向に……」
 ミク:「待ってください!わたし、お芝居やりたいですよ」
 リン:「ミュージカルじゃないってとこが、ちょっとアレだけどね」
 レン:「それに、平賀博士が仰ってましたけど、『ボーカロイドの可能性にチャレンジする』ということじゃないですか」
 MEIKO:「フン。どうせ見た目にほだされただけでしょう。あの2人にお芝居なんてできるもんですか」
 KAITO:「それにしてもプロデューサー、とうしてまた急にあの2人に出演依頼が来たんですか?」
 井辺:「この前、MEGAbyteのミニライブをDCJ科学館で行いました」
 KAITO:「はい、それは知っています」
 井辺:「この際、アルエットさんとの掛け合いトークがあったんですが、アルエットさんがアドリブで物真似なんかをやったんです」
 MEIKO:「誰の?」
 井辺:「あ、えーと……。と、とにかく……その時、この契約を持って来てくださった興行師の方がたまたまそこにいらっしゃいまして、アルエットさんの演技力に大変な関心をお示しになりまして……」
 MEIKO:「だったら、アルエットを入れればいいじゃない。1号機、3号機と8号機じゃ、用途が微妙に違うわけでしょ?」
 井辺:「それが、その主催者様は元々エミリーさんやシンディさんに関心を持っておられたんですよ。フルモデルチェンジ版とはいえ、同じマルチタイプのアルエットさんが上手いこと演技力を見せて下さったので、このお話を持って来て下さったというわけなんです」
 リン:「アルるんは出ないの?」
 井辺:「もちろん打診が来ています。ただ、アルエットさんは本来、科学館さんのマスコットガールとしての専属契約ですから、科学館さんとも話をして頂くことになりますので……」
 ルカ:「メンバーとしては、面白そうなのにね」
 MEIKO:「演劇『東京決戦』だったら、あの2人が参加しても大丈夫だと思うけどね。何しろ、余計な演技力なんて要らない。素でいいんですもの」
 KAITO:「プロデューサーはどう思われますか?」
 井辺:「私も面白い試みだとは思います。ただ、社長のお気持ちも分かるのです。エミリーさんやシンディさんは本来、演技を行うロイドではありませんので、MEIKOさんの仰る通り、それができるかどうか不安は大きいです」
 ルカ:「だったら、実験してみてはどうかしら?実際、マルチタイプの3人に演技してもらって、それでOKかどうか」
 リン:「おおっ、ルカ姉!グッドアイディア!」
 KAITO:「それは名案だ。プロデューサー、いかがでしょう?」
 井辺:「そうですね……。まだ時間もありますし、社長に相談してみましょう」

 井辺は会議室を出た。
 その足で社長室に向かう。
 導線上、共用部のエレベーターホールの前を通ることになる。

 井辺:「んっ?」

 このフロアに到着するエレベーターがあった。
 そこから降りて来たのは……。

 井辺:「平賀教授!」
 平賀:「あっ、井辺プロデューサー。こんにちは」
 井辺:「お疲れさまです」
 エミリー:「近くまでお越しになったそうですので、お立ち寄りとのことです」
 平賀:「最近、敷島さんの顔を見ていないものでね」
 井辺:「ああ、そうでしたか。社長は社長室に御在室です。どうぞ」
 平賀:「お邪魔します」
 井辺:(……ま、例の件は後ででいいか)

 井辺は事務室に戻った。
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“戦う社長の物語” 「ロイド達の挑戦」

2017-10-19 11:00:13 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月2日07:04.天候:晴 JR東北新幹線“なすの”252号1号車内→JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、総武快速線、横須賀線と京葉線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 エミリー:「社長、まもなく到着です」
 敷島:「ん?あー、そうか」
 エミリー:「社長なのですから、あまり朝早くに出勤されなくてもと思うのですが……」
 敷島:「うーん……。四季エンタープライズ並みに売り上げがデカくなったら考えるよ。朝飯なら、エミリーが朝早くに作ってくれたものがある」
 エミリー:「それはお任せ頂いても構わないのですが……」

 列車がホームに滑り込む。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 敷島:「アリスの通勤に合わせて、埼玉に住んでいるようなものだ。研究所が都心にでもあればいいんだがな」
 アリス:「多分、無理でしょうね」

 エミリーがしれっと答える。
 秘密の研究所的なものなのだから、関東でも寂しい所に建っているのが普通だ。
 さいたま市郊外の研究所は一般公開の科学館として再生したが、本来の極秘研究開発部門は、更に埼玉の山奥に移転している。
 研究職であるアリスは、そこへの異動が打診されたのだが、さすがにそれは断った。
 敷島はこれまで通りの『単身赴任』で行くと言ったのだが……。

[同日10:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島:「えっ?うちのボーカロイド達をですか?」

 敷島は応接室で興行師と話をしていた。

 興行主催者:「そうなんですよ。昔、敷島エージェンシーさんのボーカロイド達でミュージカルをされたそうじゃありませんか」
 敷島:「ええ、確かにやりました。あれは大変でしたよ」
 主催者:「しかし、その分の成功は大きいものだったと伺っています」
 敷島:「まあ……。興行収入的には大成功でしたね」

 ボーカロイド達が有名になった経緯はいくつかあるが、そのミュージカル“悪ノ娘と召使”の大成功もまた大きな理由の1つではある。

 敷島:「私には死に掛けましたけど……」
 主催者:「は?……ああ、それほどまでに色々な調整が大変だったということですね。分かります」
 エミリー:(違う違う)

 エミリーは傍らに立って話を聞きつつ、お気楽な主催者の言葉を否定していた。

 エミリー:(鏡音レンが暴走して社長を刺殺しようとした事件は、上手いこと闇に葬ることができたということか……)

 ドクター・ウィリーの猛攻が相次ぐ中でのミュージカル公演。
 コンピューター・ウィルスがばら撒かれたりもした。

 敷島:「つまり、またうちのコ達にミュージカルをやれということですね?」
 主催者:「んー、当たらずも遠からずですね。少し違います」
 敷島:「違う?」
 主催者:「演劇です。本当の演劇をやって頂きたいのです」
 敷島:「うーん……」

 それから30分後……。

 敷島:「お返事は保留ということで」
 主催者:「良いお返事を期待しております」

 主催者が事務所から出た。

 井辺:「社長、お返事は保留なんですか?」
 敷島:「まあな」
 井辺:「何か、先方の条件に問題でも?」
 敷島:「いや、条件自体に問題は無いんだ。ただ、ミュージカルでないという所が引っ掛かってね」
 井辺:「どんな感じなんですか?」
 敷島:「舞台演劇さ。そのまんま」
 井辺:「それなら別に問題無いのでは?」
 敷島:「井辺君、ボーカロイドのコンセプトは何だ?」
 井辺:「『歌って踊れるアンドロイド』です」
 敷島:「だろ?ミュージカルはまだそのコンセプト通りにできたからいいんだが、舞台演劇はその要素が薄くなる。最近、彼女らの持ち味を生かせる仕事が減って来たように感じてならない。できれば、また元の『歌って踊る』仕事をさせてやりたいんだよ」
 井辺:「社長……」
 敷島:「ちょっと俺、本社に行ってくるから」
 井辺:「あ、はい。行ってらっしゃいませ」

 井辺は敷島とエミリーを見送ると、自分は事務室に戻った。

 篠里:「プロデューサー、社長はお出かけですか?」
 井辺:「池袋の四季エンタープライズさんの方に出かけられました」

 篠里は初音ミクの専属マネージャーである。

 篠里:「さっきのお客様、あの帝都劇場の人ですよね?一体、何の御用だったんでしょう?」
 井辺:「もちろん劇場関係者です。その方が依頼しに来る内容と言えば1つです」
 緒方:「すると、演劇ですか」

 巡音ルカの専属マネージャーも話に参加してきた。

 緒方:「いいですね。自分もまだ学生だった頃、“悪ノ娘と召使”を観ましたよ。いやあ、ルカのミステリアスな大魔道師の役はハマり役でしたね」
 篠里:「あの後、シリーズが続いたほどの大人気ぶりでしたもんね。でも、どのシリーズでもミクが必ず死んでいるというのが解せませんでしたが」
 緒方:「それは言えてる」
 井辺:「原作がそういう展開なのですから、致し方無いでしょう」
 篠里:「プロデューサー、今回もまたそういう趣向で?」
 井辺:「いや。社長の話ですと、今度は通常の演劇だそうです」
 篠里:「通常の演劇?」
 緒方:「ミュージカルではないということですか」
 井辺:「そのようです。私も原案をチラッと見ましたが、どうも宝塚のようなノリのようなんです」
 篠里:「ええっ!?」
 緒方:「誰が男装するんですか?」
 井辺:「いやいや。うちは宝塚さんと違って、ちゃんと男性もいますから、あえて男装をさせる必要は無いでしょう」
 篠里:「でも、宝塚だったらちゃんと俳優が歌って踊る場面とかあるじゃないですか」
 井辺:「あくまでも、チラッと原案を見た感じがそうだというわけです。社長が渋られるくらいですから、本当はそういう場面は無いのかもしれません」
 篠里:「うーん……何だか難しそうだな」
 緒方:「『歌って踊る』のがメインのミュージカルだったら、あとの演技は端末入力で何とかなるのに、演技がメインとなると、なかなか難しいだろうね」
 井辺:「ええ。“悪ノ娘と召使”でも、端末入力や微調整は殆ど社長お1人でされたそうです。平賀博士や奈津子博士はボーカロイド達の整備で忙しく、ソフト面でのサポートはあまりできなかったそうですし、何しろあの時はまだシンディさんが敵対していた頃でしたからね」
 篠里:「うわ……」
 緒方:「出待ちを狙って、マシンガン掃射とかしたんですか?」
 井辺:「よくご存じで。社長も、『あの時は死ぬかと思った』と」
 緒方:「いや、普通死ぬでしょ!?私だって、フランケンに襲われた時は入院したんですから!」
 井辺:「社長はほぼ無傷だったそうです」
 篠里:「その時から既に、『不死身の敷島』伝説は始まっていたんですね。分かります」

 社員達の間でも伝説になっている、敷島の不死身ぶり。
コメント (1)
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