"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

満員御礼『つるとかめ~小春日和に民の謡』

2010年11月15日 22時10分45秒 | 主催する催し

 旧十月十日。東京は今宵の雨を境に急に冷え込むようです。しばらく続いていた“小春日和”ともしばしお別れになるのでしょうか。

 さて、一昨日の土曜日、11月13日に開催した『つるとかめライヴ~小春日和の会』には一杯のお客様にお越し頂きありがとうございました。1115tsurukame 当日は陽射しこそ薄かったものの気温は19℃まで上がって、まさに小春日和でした。
(写真はすべて水野稔さん撮影)
 “暮らしのリズム”が主催する『つるとかめ』のライヴは2007年以来毎年開催して今回が4回目。澤田勝秋師匠(津軽三味線・唄)、木津茂理さん(太鼓・三味線・唄)のお二人にとっても、勝手知ったる気の置けない空間になってきているようです。
 まだ外に明るさが残る頃、会場の居酒屋ニュー信州に到着したお二人は、早速小上がりにしつらえた舞台に楽器を組み上げて音を出し始めます。いろいろな曲を唄いながら、二人で合わせながら、プログラムを組み立てていました。ご予約頂いた皆さんには事前にリクエストを募っていましたが、一つ一つのリクエスト曲にじっくり向かい合い、演奏する曲を決めて行きます。そして出来上がったこの夜のプログラムがこちらです。

『つるとかめLive~小春日和に民の謡』演奏曲目
~第一部~
雨降り唄~越後松坂
俵積唄
おけさメドレー
(新しい)あいや節
(古調)あいや節
(ちょっと古い)あいや節
黒石よされ節

~第二部~
ホーハイ節
津軽三下り
信濃追分~小諸馬子唄
八丈ショメ
八丈太鼓囃子
津軽山唄
<リクエストコーナー>
 郡上踊りより かわさき~春駒
 南部牛追唄
 こきりこ節
津軽甚句
~アンコール~
東京音頭

 第一部の「あいや節」三曲はとても珍しく興味深いコーナーとです。 現在よく唄われている新しいスタイルは、澤田師匠によって唄われました。
1115norenそれに続いて今やほとんど唄う人がいないとされる、古調を木津さんが一人で唄います。「おけさ」の面影が三味線にも残っているということから、あいや節の流れを感じることが出来ます。そして、現在の新しいスタイルになる前の少し古いあいや節を澤田師匠が唄います。一つの唄が時代と共に変わってゆくさまをひと時に聴くことができる、貴重な時間でした。こんなことを粋にサラリとやってのけるのは、やはり“つるとかめ”だけなのでしょう。
 第二部の「信濃追分~小諸馬子唄」は、澤田師匠が「唄ってみたい」というチャレンジ精神から実現したメドレーです。じっと聴き入っていると、
1115tenugui噴煙をくゆらす浅間山を背景に旅人や馬がのんびり歩く牧歌的な情景が目に浮かんできます。
 リクエストのコーナーでは、郡上の「かわさき」を澤田師匠が初挑戦。ゆったりしたリズムでとても艶っぽい唄でした。お二人による二丁三味線も贅沢の極みです。「こきりこ節」では木津さんのワークショップ「しげりずむ」のメンバーがその場で参加して唄ってくれました。ありがとうございました。(写真上の暖簾はこの春に根津神社の境内で見つけ、ニュー信州のマスターが買い求めたつるとかめの刺し子のもの/写真下は舞台の背景に飾った手拭三点。どれも鶴と亀とが舞い遊んでいます)

1115kotsuzake  ライヴのあとは“暮らしのリズム”イベント恒例の酒宴です。ニュー信州からのお振る舞いのお酒は、北海道の幻の渓流魚、オショロコマの骨酒
(写真左)。澤田師匠のご発声で乾杯です(4分割写真右上)。宴もたけなわとなれば、澤田師匠がおしぼりをマイクに見立てて一曲(4分割写真左上)。もちろん一曲とはいかず、さらに二曲・三曲と続いて行きます。木津さんも「花笠音頭」でお返し(4分割写真右下)。夜が更けると共に贅沢な時間がどんどん濃密になってゆきます。こうなればお客様もじっとはしていられません。1115utage 愛知の豊田から駆けつけて下さったご夫妻は「三条凧囃子」を聴かせてくれました(4分割写真左下)
 唄が、手拍子が
、合の手が、自然に加わって行く。懐かしい昭和の民謡酒場って、きっとこんな感じだったのかもしれない、と思います。それとも、これぞ平成の民謡酒場なのかな、とも。こんな空間を自然に作ってくれる“つるとかめ”のお二人、澤田勝秋師匠、木津茂理さん、居酒屋ニュー信州の皆さん、おして何よりお客様には感謝の気持ちでいっぱいになります。皆さんありがとうございました。お疲れ様です。また来年も必ずやります。どうぞお楽しみに。