旧正月十四日。昨日は二十四節気の【雨水(うすい)】でした。
雪散じて水と為る也(『暦林問答集』)
雪解けが始まる頃、草木が芽吹き始める頃、なのでしょう。立春を過ぎても冬のような寒気に支配され、余寒が厳しかったのですが、ようやく「三寒四温」の気配が感じられるようになってきました。梅やまんさくの花も咲き、春の香り沈丁花の蕾もはちきれんばかりの膨らみを見せています。いよいよ春本番ですね。
足立区で伝統工芸の江戸指物をされている田中清八さんを久し振りに訪ねました。
奥様から電話を頂き、新潟県小千谷に新築される日本家屋の障子が完成し、数日後に工務店に納品する、というお話しだったので、その前にひと目拝見したいと思い、出掛けてゆきました。
震災で大きなダメージを受けた小千谷ですが、地震に負けない頑丈な日本家屋を、ということで、親子二人の大工が伝統工法で一年間かけて築いた家に収まるそうです。
4枚の障子が二組。高さはいずれも七尺二寸三分(219cm)。1枚の幅は狭い方が二尺二寸二分(67cm)、広い方は二尺八寸五分(86.5cm)。材料は最も高級で時間の経過と共に美しく表情を変えてゆく米檜材です。
大きい障子は横組子が多い“横繁障子”で二本の縦組子を中央に寄せた“吹寄障子”の意匠を採り入れ、さらに室内側の小障子が上下する“摺上げ障子”(関東では“猫間障子”と言いますね)になっています。
小さい障子は縦横の組子が荒く大きい“荒間障子”の意匠でこれも“摺上げ障子”になっています。
シロウトが下手なコメントをしてもしょうがないのですが、凛とした姿で、美しさと暖かさがあります。こんな障子に冬の低い角度の日差しが当たる様を見てみたいものです。この障子が収まる和室の顔になることでしょう。
田中さんはここしばらく体調を崩されていた、ということですが、以前お会いしたときに話していた、江戸時代の駕籠の制作意欲は衰えを知らず、この日もかつて修繕に係わった時の写真を見ながら熱く語って下さいました。ぜひお元気で、夢を実現して欲しいものです。
田中清八さんに関してはこちらもぜひご覧下さい。
2007年6月17日『職人技に触れる。指物師・田中清八さんとの再会』
2006年7月2日『指物・建具工芸師、田中清八さんを訪ねる』