瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

君と一緒に(ルナミ編―その5―)

2009年10月15日 17時37分45秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】



「着いたァーー!!!!」

バスから1番に降りた俺は、両手を挙げて思っ切し叫んだ。
ふと耳ん中にクリスマスソングが流れて来る。
音楽のする方をたどって見たら、そこには白字で多分「ハウステンボス」って書いてある、赤茶色の建物が在った。
多分って言うのは、英語で書いてあったせいで、読めなかったからだ。(後でナミから「あれはオランダ語よ!」ってツッコまれた)
建物の真ん中にはトンネルみてーな穴が掘られてて、穴の両側には門松みてーにクリスマスツリーが飾ってある。
壁に刺さってる2本の旗が、強い風にあおられてバタバタ音を立ててた。
バスの窓から見えたでっけー建物は、トンネルの向こう側に見える。
きっとあれが「ハウステンボス」への入口だ、前のトンネルは関所みてーなもんで、くぐる人間をあらためる場所なんだろう。
入り方に悩んでた俺の頭に、突然――ゴォーン!!!って重い衝撃が走った。

「い痛ェェ~!!!」

目の前で花火が散ったほど痛くて、思わずうずくまる。
振り返ったそこには恐い顔して旅行カバンを抱えたナミが立っていた。

「おまえな!!頭ばっかり狙うなよ!!しかもカバンの角で!!のーみそはトウフみてーに柔らかいから、いたわんなきゃいけねーってTVで言ってたぞ!!」
「あんたの脳味噌はス××ジだから大丈夫!そんな事より――停車するのを待たずに、しかも前に座ってる人を差し置いて降りようとすな!!あんたのせいで連れの私が白い目で見られて謝る破目になったんだからね!!」

大声で抗議した俺よりさらに恐ろしい怒鳴り声でナミが迫る、俺も負けずに歯を食いしばって迫った。
そやってしばらくにらめっこしてたけど、先に降参したのは俺の方だった。

「ゴメンなさい!」
「解れば良し!」

おじぎして謝った俺を見て、ナミが満足そうにうなずく。
しゃくにさわったけど、よく考えればナミの言ってる事は正しい、だから納得した。

「…ところで何処から入れば良いんだろ?周りに建物がポコポコ在って、どれがどれやら…」

周りをキョロキョロ見回しながらナミがつぶやく。
俺は目星を付けといた中がトンネルになってる建物を、自信満々指差して教えた。

「あの関所をくぐって、向うのでっけー建物から入るみてーだぞ!」
「関所!?テーマパークに入るのに関所通るの!?」
「最近テロとか起きててぶっそーだからな!きっとトンネルん中で持ち物を厳しく取り締まられるんだ!」
「えーーー……」

せっかく教えてやったのに、ナミは疑わしそうな目でいる。
けどカバンを肩にかけ直すと、俺の指差した通りにトンネルへ向ってった。
その後に俺もついてく、くぐる所でナミは振り返って言った。

「関所かはさて置き、前の人達に付いて行けば良いと思うわ」

ナミから説明を聞いた俺は成る程と思った。
トンネルの中には俺達と一緒のバスに乗って来て、俺達より後に降りたけど、俺達より先にくぐって行った、家族連れと女のグループの姿が見える。
やっぱりナミは頭が良いなと感心した。



てっきり厳しい取調べを受けると思ったのに、トンネルの中では何も無かった。
ただトイレやコインロッカーが有ったり、壁にクリスマスのポスターが貼ってあるだけだ。
真ん中辺りに右へ折れ曲る道が在って、横にズラッと窓が………何だ?あそこ??

「どうやらあそこがパスポートの発券所みたいね」

足を止めてズラッと窓の並ぶコーナーを見たナミが言う。

「え!?って事は、あそこが入口か!?」
「傍の角に案内所みたいなのが在るし、多分そうじゃない?」

そういやT○Rに在るパスポート発券所によく似てる。

「なァ、コインロッカー有るんなら、荷物置いてこねェ?このままじゃ回りにくいぞ」
「んー…そうねェー……」

俺の言葉を聞いたナミが、数秒無口になって考えこむ。
そうしてから再びトンネルの出口を目指して歩いて行った。

「え?コインロッカーに荷物置いてかねーの?このまま進んだって、トンネル通過するだけじゃね?入口はここなんだろ?」
「だって前の人達…」

話しながら、俺の方を振り返る。

「荷物持ったままトンネル抜けてくじゃない?
 旅行会社から貰った説明書の中に、『場内ホテル宿泊者は、入場前に場内ホテル受付で荷物を渡せば、宿泊するホテルに送って貰える』って書いてあったんだけど…
 空港から一緒に来たって事は、前の人達も私達と同じ遠方からの観光客で、ホテルに宿泊する訳でしょ。
 だから後付いてけば、その場内ホテル受付とやらに連れてって貰えると思って」

言われてみれば前の奴らも大荷物抱えてんのに、コインロッカーに預けてかない。
そうか、空港から一緒に来たって事は、俺達とは仲間なんだ。
やっぱりナミは頭が良いなと、俺は再度感心した。

トンネルを抜けると、目の前にはバスの窓から見た、青い屋根で赤茶色のでっけー建物が横向きにそそりたってた。
近くで見るとますますでっかくて迫力だなァ~。
ハゲた木と外灯ときれーな花だんが、その建物への道しるべみてーに、左右に並んで続いてる。
と、俺達の前歩いてた奴らは――

「あそこに入ってったわね。ええと…『場内ホテル受付』――此処だわ!」

トンネル抜けて直ぐ左横に在った店(?)の看板を確認したナミが、明るい声で叫んだ。
ドアを開けて入ってみる、中にはナミが言った通り、俺達の先を歩いてた奴らが集合してた。
中の店員が次々荷物を受け取ってく、そうか、あいつらに渡せば良いんだな。
一緒に後ろでやりとりを見ていたナミは、俺に貴重品を持ち出してから、荷物を預けるようにって注意した。
ナミも俺も小型のバッグに貴重品をつめて、残りは店員の女に預けた。
受け取った女は「チェックインまでに御宿泊予定のホテルにお運びします」って笑顔で約束してくれた。
親切なやつだなー。
それからナミは女からの説明を聞いて、ここのカウンターでパスポートを買い、場内地図やイベント情報なんかを手に入れた。
ようやく冒険の準備が整ったァーって気分で外に出る。

「けどそーするとこのオモチャの城みてーな建物は一体何なんだ??」

やたら目立って建ってるから、てっきりこれが入口かと思ったのに。
俺の疑問を聞いたナミが、場内地図を開いて確認してくれた。

「えーと…ハウステンボスジェイアール全日空……ホテルだって」
「ホテルゥ!?なんだ、ただのホテルか」
「気になるんだったら、ちょっと寄ってみる?」

ホテルって判ってガッカリしたものの、俺が未だ興味をひかれてるのを察して、ナミがにこやかに誘う。
正直中がどんな風になってるのかすっげー気になった。
きっと外とおんなじくらい、きれーで立派な造りになってんだ。
でっけークリスマスツリーとか飾ってあるんだろうな。
けど風がどんどん強くなって来てる、空は明るいけど、トンネルの上一列に並んだ旗が、うるせェくらい鳴ってる。

早く行かなきゃヨットに乗れなくなるかも――不安になった俺は、ナミの手を握り、トンネルへ駆け戻った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「ひょー、すげー!!超オランダだァ!!」

川向こうの花畑が広がる岸に、風車が回ってるのを見つけた俺は、感心して大声を出した。

「だからそういう明け透けな感想は止めてってば!」

隣からナミがペン!と俺の後ろ頭を叩いて非難する。
痛くはなかったけど、さっきからポンポン叩かれ通しで、いいかげん腹にすえかねてた俺は、しかめっ面作って抗議した。

「おまえこそ他人の頭をカスタネット代わりにすんのは止せよ!そーゆーのがクセ付くと、結婚した時『ディービー』とか言って、問題にされるんだからな!」
「あんた、意味解らずに言ってるでしょ?」
「しっけーだな、おまえ!それぐらい俺だってTV見て知ってるさ!」
「じゃあ『DV』って略さず正式名で答えてみせて!」
「えーとディービー…『DB』だから……ド、ドラゴンボールか??」
「違う!!『DV』でドメスティック・バイオレンスよ!!やっぱり解ってないじゃない!!」
「そーそれ!ダメなバイオレンス!!つまりやっちゃいけない暴力って意味だろ!?」
「暴力にやって良いものなんて無いでしょうが…まったく…」

ナミがため息吐いて頭を抱えちまう。

「あんたってば馬鹿な上に正直なんだもん…隣で気まずい思いしてる私の事も少しは考えてよ」
「別にけなしてるわけじゃねーよ!本物のオランダみてーにきれーだって、ほめてんじゃねーか!」
「だからそれちっともフォローになってないってばもー!」

頭を抱えたナミが、ますます抱えて、うずくまっちまった。
正真正めい本気でほめてんのに…川向こうに見える景色は、写真で見たオランダとそっくりに、きれーでのどかだった。
花いっぱい咲いてる岸の向うには、オモチャみてーに可愛い家が続いてて、あっちも良い眺めだと思った。
まるで絵葉書だ、絵になる景色って、こーいうのを言うんだろうな。
うっとり眺めてた俺の前を、屋根付きの船がゆっくり過ぎてった。

「お!ナミ!船だぞ!!屋形船かな!?」

こーふんして指差す、船は風車が回る花畑の方から、オモチャの家が建ち並んでるエリアを横切るように進んでった。
確か園内には「カナルクルザー」って言う、運河を回る遊らん船が有るって、ここのサイトに紹介されてたっけ。
きっとあれがその「カナルクルーザー」だ、って事は乗れるんだ!
花畑の方から来たって事は、その近くに船着場が在るんだろう、推理した俺はナミを引っ張って連れてこうとしたけど、先にナミに腕を引っ張られて急がされた。

「もう、直ぐに引っ掛かって立ち止まるんだから!」

そう言うナミの顔は怒ってるみてーに恐ェ。
入口ゲート先のクリスマスツリーの前で写真を撮ろうと足を止めたり、跳ね橋渡った所の城の前で写真を撮ろうと足を止めたのはナミじゃねーか。
その後城の向うに風車の回る花畑を見つけ、俺を呼んではしゃいだのもナミじゃねーか。
と言ってやりたかったけど、先を急ぐ事には俺も賛成だったんで、だまって城ん中へ引きずられてった。



城をくぐったとたん、中に居た女に「いらっしゃいませ♪」と声をかけられた。
中は入口同様トンネルになってて、中世の王様女王様のカッコしてる熊のぬいぐるみ達やら、イカス甲冑像やら槍やら、巨大熊のぬいぐるみやらが置いてあった。
「わー、可愛いv」と早速ナミがカメラで熊のぬいぐるみを撮りまくる。
場内でやってるイベントについての案内板も、通路に沿って続いてる。
城ん中に居た女が、「このナイアンローデ城は中世オランダの古城を再現した物で、館内はテディベアの博物館になっています」と笑顔で説明してくれた。
ふーんそうか、だから熊のぬいぐるみが飾ってあるんだな、けど城は強そうな造りなのに、なんかミスマッチに感じちまうな。
女はさらに博物館に寄ってかないかって誘ったけど、俺はぬいぐるみなんかに興味無ェ。
それより甲冑かぶらせてくれって頼んだら怒られるだろうか?(ナミに)
けど今は何よりヨットだ!博物館に寄ってこうとせがむナミを引きずり、俺は先を急いだ。
トンネルの出口そばに座ってる、サンタコートを着た巨大熊ぬいぐるみには、ナミだけでなく俺も誘惑されかけたけど、死に物狂いで振り切って外へ出た。



城を出た先は道がいくつも分かれててまた悩んだ。
一体どっちへ行けば良いんだ!?一瞬頭がふっとーしかけたけど、左の橋向うにチラって風車と花畑が見えたんで、左の道を選んで行った。

橋の上から河を見下ろす、そこにはさっき見たのと同じ船が停まってた。
乗りこむ人の列も見える、行列は花畑の対岸に在る建物から伸びていた。
橋の下、右の建物が乗船場なんだろう。
橋を戻って行列につこうとした俺のパーカーのフードをナミがつかむ。
首が絞まった俺の口から「ぐえっ!!」ってうめき声が出た。

「何すんだよ!?首が絞まって死ぬじゃねーか!!」

フードをつかんで無理矢理俺の足を止めたナミは、また恐い顔をしていた。
さっきからこいつ、何怒ってやがんだ??

「…何処行く積りなの?」

低い声でナミがたずねる、俺は素直に行き先を告げた。

「スパ…スパ…スパゲッティ??」
「………スパーケンブルグってエリア?」
「そーそのスパゲッティ!!」
「だったらバスに乗って行った方が早いみたいよv」

にっこり笑って乗船場の右の道を指す、そこには停留所が在って、ナミの髪と同じ色したバスが停まってた。
ちなみに乗船場の裏には貸し自転車屋が在るみたいで、自転車に乗った奴らがそこから続々と走ってった。

「え?でもよー、船に乗って行った方が楽しいじゃん。きれーな花畑も見れそーだし…おまえ花見たいって言ってたろ?」
「船だと途中で降りなきゃいけないの!!バスじゃなきゃ、あんたの言うスパゲッティとやらに停まんないのよ!!!」

迫力有る笑顔でまくしたてたナミは、有無を言わせず俺をバスまで引きずってった。






…何度も行ってて慣れてるから鈍くなってるけど、陸路からのハウステンボスへの入口って、初めて来た人には判り難いだろうなぁと思う。
入国棟に「入口」って表示は有るし、ゲートまでは何となく行けるだろうけど。
場内ホテルに宿泊する場合、「場内ホテル受付」に荷物を預ければ、ホテルまで送って貰えるよ~と言われても、一体それが何処に在るのか惑うんではないかと。
極めて目立つハウステンボスジェイアール全日空ホテルが、輪をかけて惑乱させてる気がする。
目立つからつい引き寄せられちゃうんですよ。(笑)
話の中でナミが「人に付いてけば良い」って後付いてくけど、もしもその客が全日空ホテルに泊まる客なら、一緒に全日空ホテルのフロントまで連れてかれる破目になる。(そこで案内を受けられるだろうけど)
初めて行く人にとっては海路からの方がスムーズ・インだろうな~と書きながら思ったのでした。

03年迄は専門のガイドブックが出てたけど、今は長崎ガイドとくっ付いてるからなぁ。
まぁ此処に限らず、大抵のテーマパークって、初めての人には判り難い入口になってる気がする。
T○Lが雛形作ったから…あそこの様に毎日行列が出来てるなら判り易いけど、行列が出来てない所は判り難くなるのは仕方ない訳で。

写真は去年のクリスマスシーズン、ゲートを過ぎて目の前広がる庭園に飾られてた、エントランスツリー。
多分今年のクリスマスシーズンにも飾られるだろう。
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