kotoba日記                     小久保圭介

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緒形拳、

2008年10月12日 | 生活
山田太一原作のドラマ「いくつかの夜」観る。
緒形拳、追悼番組。
老人が夜中の街をとぼとぼ歩いている。
警察官に職務質問をされる。
しつこく。「家へ帰ったほうが良い」と。
「帰りたくないんだ、」
と抑えた怒気に続いて、動揺して緒形拳が言う。
この時点では理由は判らない。
「帰りたくない」という言葉が抽象的な状態で発される。

言葉を活かす俳優は、
希有である。
緒形拳。
冒頭のこのセリフで、
僕は物語に引き込まれていく。
凄い演技力。
脚本の言葉が、
緒形拳によって、
立ち上がってくる。
緒形拳が亡くなった知らせの日から、
ずっと毎日、数分かは、
緒形拳のことを考えていた。
一番印象的な映像は、
「長い散歩」という映画の中の緒形拳である。
あの映画の中でも、
緒形拳は怒気を発していた。
その怒気は、
のちに、
悲しみになる。
駅のロータリーの前で、
幼い女の子を抱き寄せ、
この世に、二人しかいない、
孤独なシーンがある。
群衆が取り囲んで見るのだから、
なおさら、寂しい。
僕は、あんなに悲しくて、
寂しいシーンを見たことがない。
緒形拳の魅力は、
激情と欲情である。
笑顔は、その付加的なもの。
獣のような、
美しい感性をもった人の、
追悼番組が連日、放映されている。

コメント
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