千の天使がバスケットボールする

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ビクトリア・ムローバのブラームスVn協奏曲

2006-03-24 23:54:34 | Classic
「007に登場するほどの純然たるロシアの美女なんです。神秘的といってもいいほどの美しさでした。」
このようにピアノ演奏を嗜むcalafさまがあまりにもビクトリア・ムローバを絶賛するので、改めて92年1月25日サントリーホールでのクラディオ・アッバード指揮、ベルリン・フィルと共演した「ブラームスVn協奏曲」のビデオをとりだして拝聴。そしてとくとくとムローバの容姿を観察する。ロシアの美女というラベルは、米原万理さんも納得するのか。

ビクトリア・ムローバは、1959年旧ソ連ウクライナ出身。モスクワ音楽院でレオニード・コーガンに師事する。1982年チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、一躍世界のトップに踊り出るが、翌年フィンランド旅行中に亡命して、現在はロンドン在住。世界中の一流オケと共演する一方録音したCDが、グラミー賞などを受賞する。近年では、古楽器オケを指揮する反面ポップスやジャズの録音などその活動範囲は女性ヴァイオリニストには珍しく広い。

「ヴァイオリン界の女王」アンネ・ゾフィー・ムターと並んで、このようなオーラに満ちた表現をされるムローバであるが、あらためて音楽歴とこれまでの軌跡を考えると、その音楽性とともに女王の名にふさわしく威厳さえ感じられる。1963年生まれのムターが、女優のような美貌とスタイルで、セレブな感覚を漂わせて”女王”の座に君臨しているとすれば、かたやムローバーは指揮者も兼務するように統率力と地味だが威厳ある風格で、実力派女王と呼ばれるタイプであろう。優美さと亡命までする力の違いともいえようか。

さて、そのムローバが演奏するブラームスであるが、一本の沁が強靭なしなやかさで流れている。冷たくストイックな印象さえも与える。確かにこの演奏は、007に登場する鍛錬されたアストリートのような肉体を彷彿させる音楽性を感じる。実力は、勿論女王と称えられるにふさわしい。指揮者のアッバードの端整な指揮とも”お似合い”ではある。けれども、何かがものたりない。第三楽章の祝祭的な冒頭で考える。
ひと言で言ってしまえば、彼女の演奏は、整っているが色気に欠ける。

衣装は黒いズボン。そして霧に包まれた湖をイメージするほのかに紫がかった水色の長袖ブラウスには、同じ色と深いミッドナイトブルーの(ジョーゼット素材?)ポンチョに似た形の布が重なっている。かなり特徴のあるデザインではあるが、現代曲にふさわしく、ブラームスのこの音楽には違和感を感じる。かといって、当時の彼女の風貌では、ロングドレスは似合わないだろう。まして、ムターのような肩を出して体のラインを強調したオートクチュール姿は、申し訳ないが見たくもない。。。髪型は肩までのストレートロングで、金髪でなく本来の栗色。耳のわきを演奏のじゃまにならないようにピンでとめている。長身で、名女優のメリル・ストリープに似ている。
CDのポートレイトは、その後の金髪、ボブカットに女性らしく変身した時と思われ、当時とは印象がかなり違う。ムローバの「四季」は、瑞々しく美しく、清冽な印象を与える文字どおり清らかな色気に溢れているが、このブラームスはいただけない。何故ならば人生の悲哀と喜び、そして色気を感じられない「ブラームスはお好き」と尋ねられたら、返答に窮するだろう。
その後、共演した指揮者と一緒に暮らしているという!!(←calafさま情報)確か、こどもも産んでいるはずだ。だからというわけではないが、今こそ、40代半ばを過ぎたムローバの女っぷりのいいブラームスを是非聴きたいと願っている。