千の天使がバスケットボールする

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ある韓国人留学生が遺したもの

2006-03-21 23:14:54 | Nonsense
「NHKクローズアップ現代」より感想。

5年前の01年1月26日雪のふるJR新大久保駅で、酒に酔って線路に転落した男性を救助しようと、ふたりの男性が命を落とした事故を、ご記憶の方も多いことだろう。彼らの勇気ある行動への敬意と不運に対する大きな悲しみだけでなく、その1人が日本に留学中だった韓国の青年だったことも両国の歴史を考えると、人々になお深い印象と感銘を与えたのだと思う。

あれから5年。日本は女性を中心に韓流ブームにわき、もっとお隣さんとしてお近づきになりたい親しみと共感をもちながらも、政治的には小泉首相の靖国参拝問題、竹島領土問題と摩擦は一向に解消されない。そんななか、亡くなった留学生李秀賢(イ・スヒョン)さんの行動を通して、彼のとった行動の意味を問う、花堂純次監督の国交樹立40周年記念の日韓合作映画「あなたを忘れない」が製作中である。

しかし、製作に携わる日本と韓国は、さまざまな局面で意見が異なる。花堂監督は、スヒョンさんが映画の主題を韓国の”ウリ(仲間・同胞)”という仲間を大切にする伝統を日本人にもひろげたこと、徴兵制度による入隊経験が培う他人のために自己を犠牲にする精神を描きたいと考えたが、韓国人スタッフから反対される。韓国人の彼らに言わせればウリには特別な意味もなく、民族性を強調するよりも普遍性をもたせたいこと、また軍隊には近年、暴力や古い体質が社会問題になっていることから、事実を歪曲することになる。この映画が韓国で関心が高いことから、パク・チョルハン助監督は、誤った認識で描かれてはいけないと懸念を禁じえない。
結局、韓国の特殊性を強調しないで普遍性を出すことに着地した。

イ・スヒョンさんのご両親は、今どうされているのだろうか。大切な息子を異国でなんら彼には過失のない不運な事故で失っても、恨み言や怒りをあらわにすることもなく毅然とした態度は、日本人の”共感”をよんだ。「かけはしの会」の会長である北垣善男さんは、かって韓国人に偏見があったが父イ・ソンデさんの姿勢に感銘を受け、日本にくる韓国留学生を支援する奨学金制度「エルエスアイ奨学金制度」を設立した。

この話題は、花堂監督の映画製作における抱負と同様、美談にしてはいけない。
その奨学金を受けているキム・ジョンさんは、日本の若者は近代史には無関心である、しかし小さい頃から繰り返し歴史を学んできた自分は、逆にあの時代から逃げられないと語っている。韓国人の彼女のこの言葉は、非常に鮮烈だ。日本と韓国のかけはしに欠けている重要ななにかを示唆しているのような気がしてならない。
韓流ブーム以前から韓国映画が好きで、多くの作品を観てきたと自負していたが、韓国、韓国人を理解するのは難しい。「共感」には、背景や出自よりもひとりの人間としてのごく当り前の誠実なこころが何よりだと考えていたのだが。

http://www.korea-japan.jp/