旅倶楽部「こま通信」日記

これまで3500日以上世界を旅してきた小松が、より実り多い旅の実現と豊かな日常の為に主催する旅行クラブです。

「骨と十字架」観劇

2019-07-11 19:00:00 | 日記
人間は進化した猿なのか?

ガリレオの宗教裁判に代表されるように、科学的発見が宗教上の「真理」の矛盾を明らかにして糾弾されることは歴史上あった。
これは、北京原人の頭骨を発見した実在のイエズス会の司祭の話である。

ガリレオの生きたのは十七世紀だが、主人公ティヤール司祭が北京原人の頭骨を発見したのは1929年のこと。
この主題がいつの時代でも古くはならないことを示している。

優秀なイエズス会士であり考古人類学者でもあるティヤールの中で、科学と宗教は矛盾した事ではなかった。
しかし、北京原人の頭骨を発見し、現代の人間が猿から進化してきたいちばん先端にすぎないと思うに至り、悩み始める。

ジャワ原人(170万年前)⇒(北京原人70万年前)⇒ネアンデルタール人(40万年前)⇒クロマニヨン人(3万年前)
脳の容積がだんだんと大きくなり思考を深めるようになった猿が、やがて「神」という概念をつくりだしたのではないか?

地球が宇宙の中心で星々はそのまわりを回っているという「真理」は、今では過去のものになっている。

強い信仰心をもっていたが故に、自分の発見が導いた疑念との相克に苦しんだ。
ガリレオと違って宗教裁判にかけられたりはせず一般世界はティヤールを評価したのだが、ティヤール自身は生涯悩み続けていたようである。
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この主題を扱った今日の舞台は、華やかになどなりようがない。
男五人が激しく言葉をぶつけあう言語劇で、大衆受けはしにくいと思えた。
それでも、じゅうぶんに観客を深い思考に誘い落とす力に魅了された。

↓新国立劇場のロビーにもこんな絵が↓

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この舞台が翻訳劇ではなく、日本人の創作だということにもおどろいた。
一般的に宗教心の薄い日本人でもこういう主題を深く書くことができるのだ。
いや、日本人だからこそ書けたのかもしれない。
逆翻訳されて欧米で上演されたりしないかしらん。


コメント
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