平戸というと隠れ切支丹をイメージする方も多いだろう。現地を訪れると確かに、関連する場所も展示物も多い。しかし、きれいな展示がされている大きな博物館よりも、小さな集落の人があまり訪れないような場所の方が、信仰の切実さや強さが感じられる。
「平戸市切支丹資料館」は、生月の博物館に比べると大きくない。展示室は一部屋だけだし、ボランティアガイドさんも待っていない。それでも、この村に伝わってきた「よく時代が分かっていないモノ」が、その時代の雰囲気を伝えている。
いちばん大きな展示物は、この「納戸」。信仰を公に出来なかった時代、キリスト教関連の像はこういった家具の一角に隠されて、「納戸神」と呼ばれていた↓
実際に柱をくりぬいて隠されていた高さ三センチほどの木彫↓
十二単を着ているが、「まりやさま」なのだそうだ。
秘匿され続けて、いつの時代に誰がつくったのかも、研究はされていない。
「オラショ」とラテン語起源で呼ばれる祈祷文書も、誰かの家に伝わっていたモノが展示されている。それは江戸時代のものなのではなく、ノートに書き留められたカタカナ。戦後か?いずれにしてもそれほど古いものではないようだ↓
↑左上に「神ヨセ」として書きはじめられる。「キリストさま」に続いて、「ナカエのサン・ジョアン」様、「ヒラセのパブロー」様、「ヤスマンダ家のオクノイン」様と続いている。聖人たちの名前が多神教の神々のように並べられているわけだ。とても日本的である。
展示品が古い事が価値ではなく、受け継がれてきた信仰のカタチが、ありありと感じられる、こうした新しい(と思われる)展示の方がおもしろい。
博物館のすぐ裏には、17世紀はじめに処刑された遺体を積み上げてあったという場所があり、「おろくにん様」と呼ばれている。この石碑の場所を入って二十メートルほど行くと、石積みの小さな一角があり、空気が違って感じられた↓
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夕方になり、閉まる直前に、「宝亀教会」を訪れた。