音楽家という職業は昔からあったわけではない。
歌舞音曲というのは、祭事に華を添えるためのものだった。
「おめぇ、うたうめぇからうだえ」
ぐらいの感じで声音のよい奴が歌わされていたにちがいない。
音楽で自立して食べていくというのは基本的に不可能で、文明社会が成熟してきた最近二百年ぐらいにやっと成立してきた生き方なのである。
一方、農業というのは、まさに地に足の着いた人間の生業。
そのルーツを追う事も難しい。
**
今日お会いしたSさんの肩書は「シンガー・ソング・ファーマー」。
農業を生業とし、自分の音楽を楽しんでくれる人と、自分が納得する音楽を発信されている。
これぞ、ひとつの理想的な音楽家の在り方ではないか。
**
何気ない看板ひとつ。
なんという事はない農家のひとつ
がっしりした人が、日焼けした穏やかな笑顔で迎えてくださる。
「剪定で陽にやけてしまてさぁ」
そんな言葉を聞くだけで嬉しくなる。
小松が到着したのは午後四時ごろ。今日は六時にお坊さんが来て法事だという。
それまでの時間で、ご自宅を案内していただき、小松来宅の趣旨をお話しする。
2016年の山形《手造の旅》企画では、地元に根付いている方々との繋がりこそが旅を豊かなものにしてくれる筈である。
案内していただいた古い蔵にはギターやベースがずらりいいなぁ、こういう自分の城を持てるのはうらやましい。
ここでCD録音もされるのだそうだ。音響的にも優れている。
母屋の方は江戸時代に建てられたという。囲炉裏と黒光りする柱。見渡せる広間。高い天井。
それでも文化財的な雰囲気ではなく、人が集う快適な空間に見える。冬はちと寒いかな(笑)
ここに百人近く入ってコンサートもやるそうだ。
さくらんぼのシーズンには蔵と自宅のあいだに屋根をかけてステージにしていたのを、Youtubeで見たっけ。
ああ、こういうスタイルで音楽をやっていくのは、儲からないだろうなぁ(笑)でも、確実にそこに集う人々の心に届くだろう。音楽をやる目的は、本来そういうものだ。
母屋の入り口に、レーガン元大統領からの手紙アメリカの基地政策(だったですかね?)について、大統領に直言の手紙を送ったら、ちゃんとこういう返事が返ってきたとのこと。考えたことを行動にする事、大事ですね。
今日は法事があるということで、すでに何人かの奥様方が集まって、台所からは忙しそうな雰囲気が伝わってくる。ここで紹介していただいたSさんの奥様が、実はただの「奥様」でないのを、あとから知ることになる。
六時が近くなり、Sさんの友人たちが集まってくる。
「こんどこんなのやるんですよ」と、地元でのコンサートチラシをくださる。Sさんと同じように音楽をやっている人も多い。こういう音楽のつながりに加わることが出来たら楽しいだろうな。
十数人、長いテーブルをかこんだところで、お坊さんがやってきた。
最近急逝したという友人の為の法事。しばらく厳粛な雰囲気と三本のお経。
その後、皆で会食となった。
厨房で忙しくされていた奥様達も参加され、本日のメニュー説明を「奥様」=けいこさんがされる。お皿の設計図を手に、どれがどんな食材のものなのか。自分が何を食べようとしているのか、知ること・知らせることで、より食事は意味にあるものになるのだ。
地元でしか飲めないような酒があけられる
真っ赤な肉は馬刺し!「さっきまで走ってたやつだよ」皿の上の緑色の丸いのは「ずんだ豆」のおはぎ。
マイタケの天ぷらがいたくおいしい。
はじめてお会いした皆さんのに、なんだかずうっと前からの知り合いのように話が出来る。
・・・手の空いた「奥様」=けいこさんが、ご自分で撮られたという雲海の写真を見せにきてくださった。
ひと目でちょっと雰囲気のある写真だと感じた。
「大きなカメラ持って行かれるのですか」とたずねると
「いえ、ふつうのコンパクトなのです」というお返事。
そう!そうなんです。旅の写真というのは「時」こそが一番大事。
その瞬間にシャッターを切ることができるか、なんですよね。
小松がこの四半世紀、旅の写真を撮り続けてきて感じている事を実践しておられる。
「ストーリーが感じられるのがすきなの」とおっしゃる。
なるほど、お撮りになる写真にはストーリーが感じられます。
Sさんが自作の紙粘土の人形を見せてくださった。
田畑で村で生きていく人々を、ちょっとコミカルに描写している。
道の駅あたりで売っていたら人気が出そうな。
「この人形で、こんなのつくったんだ」と、持ってきてくださったのは、写真の絵本。
開くと、それぞれのページに人形を登場させた写真が大きく載せられ、ストーリーに沿った短いセリフが添えられている。
「田植地蔵」という題名。誰でも知っている「傘地蔵」の田植えヴァージョンですね。なるほど(^^)
この本を制作されたのは、さっき写真を見せてくださったけいこさん。ストーリーのある写真というのを、自ら実作されていたのですね。
ひとしきりお酒がまわったところで、さっきから台所をてづだっていた若い女性がピアノと歌を披露してくださるという。
衣装もSさんのけいこさんが用意されているのだそうで、いったん引っ込んで、白い天使のような服で登場。
アップライトピアノに向かい、澄んだ落ちついた声が広間を満たす。
急逝した方を想ってつくられたという「ほしひとつ」という曲、しんっとこころに沁みました。
「お嬢様ですか」ときくと、
そうではなくて、Sさんがバックアップしている中川知美さんというシンガーだという。
※こちらに⇒「そして花になれ」のYoutube動画があります
何万枚も売れる曲も、誰か一人だけのために歌う唄もある。
優劣は聞いた人の数で決まるわけではない。
*
小松は、今日のうちに東京まで戻る予定にしていた。
次回はもう少しゆっくりできるスケジュールで再訪させていただけるようにしたいです。
山形の赤湯駅19:57発の新幹線でぎりぎり今日中の帰着。
翌日、帰り際にいただいたCDを聞いた。
「変な曲ですよ(笑)」と言って渡してくださったのだが、たしかにちょっときくとコミックソングみたいかもしれない。「キジのばかやろう」「ベゴがうられていく」「みんな百姓になれ」題名をきくだけで、かの地でファーマーをやっているSさんでなければつくれない曲なのがわかる。
これは、あの場所で、ぜひ生で演奏しているのを聴きたい。
2016年《手造の旅》で、実現させたいです(^^)
できれば、小松も競演させていただきたいです!
歌舞音曲というのは、祭事に華を添えるためのものだった。
「おめぇ、うたうめぇからうだえ」
ぐらいの感じで声音のよい奴が歌わされていたにちがいない。
音楽で自立して食べていくというのは基本的に不可能で、文明社会が成熟してきた最近二百年ぐらいにやっと成立してきた生き方なのである。
一方、農業というのは、まさに地に足の着いた人間の生業。
そのルーツを追う事も難しい。
**
今日お会いしたSさんの肩書は「シンガー・ソング・ファーマー」。
農業を生業とし、自分の音楽を楽しんでくれる人と、自分が納得する音楽を発信されている。
これぞ、ひとつの理想的な音楽家の在り方ではないか。
**
何気ない看板ひとつ。
なんという事はない農家のひとつ
がっしりした人が、日焼けした穏やかな笑顔で迎えてくださる。
「剪定で陽にやけてしまてさぁ」
そんな言葉を聞くだけで嬉しくなる。
小松が到着したのは午後四時ごろ。今日は六時にお坊さんが来て法事だという。
それまでの時間で、ご自宅を案内していただき、小松来宅の趣旨をお話しする。
2016年の山形《手造の旅》企画では、地元に根付いている方々との繋がりこそが旅を豊かなものにしてくれる筈である。
案内していただいた古い蔵にはギターやベースがずらりいいなぁ、こういう自分の城を持てるのはうらやましい。
ここでCD録音もされるのだそうだ。音響的にも優れている。
母屋の方は江戸時代に建てられたという。囲炉裏と黒光りする柱。見渡せる広間。高い天井。
それでも文化財的な雰囲気ではなく、人が集う快適な空間に見える。冬はちと寒いかな(笑)
ここに百人近く入ってコンサートもやるそうだ。
さくらんぼのシーズンには蔵と自宅のあいだに屋根をかけてステージにしていたのを、Youtubeで見たっけ。
ああ、こういうスタイルで音楽をやっていくのは、儲からないだろうなぁ(笑)でも、確実にそこに集う人々の心に届くだろう。音楽をやる目的は、本来そういうものだ。
母屋の入り口に、レーガン元大統領からの手紙アメリカの基地政策(だったですかね?)について、大統領に直言の手紙を送ったら、ちゃんとこういう返事が返ってきたとのこと。考えたことを行動にする事、大事ですね。
今日は法事があるということで、すでに何人かの奥様方が集まって、台所からは忙しそうな雰囲気が伝わってくる。ここで紹介していただいたSさんの奥様が、実はただの「奥様」でないのを、あとから知ることになる。
六時が近くなり、Sさんの友人たちが集まってくる。
「こんどこんなのやるんですよ」と、地元でのコンサートチラシをくださる。Sさんと同じように音楽をやっている人も多い。こういう音楽のつながりに加わることが出来たら楽しいだろうな。
十数人、長いテーブルをかこんだところで、お坊さんがやってきた。
最近急逝したという友人の為の法事。しばらく厳粛な雰囲気と三本のお経。
その後、皆で会食となった。
厨房で忙しくされていた奥様達も参加され、本日のメニュー説明を「奥様」=けいこさんがされる。お皿の設計図を手に、どれがどんな食材のものなのか。自分が何を食べようとしているのか、知ること・知らせることで、より食事は意味にあるものになるのだ。
地元でしか飲めないような酒があけられる
真っ赤な肉は馬刺し!「さっきまで走ってたやつだよ」皿の上の緑色の丸いのは「ずんだ豆」のおはぎ。
マイタケの天ぷらがいたくおいしい。
はじめてお会いした皆さんのに、なんだかずうっと前からの知り合いのように話が出来る。
・・・手の空いた「奥様」=けいこさんが、ご自分で撮られたという雲海の写真を見せにきてくださった。
ひと目でちょっと雰囲気のある写真だと感じた。
「大きなカメラ持って行かれるのですか」とたずねると
「いえ、ふつうのコンパクトなのです」というお返事。
そう!そうなんです。旅の写真というのは「時」こそが一番大事。
その瞬間にシャッターを切ることができるか、なんですよね。
小松がこの四半世紀、旅の写真を撮り続けてきて感じている事を実践しておられる。
「ストーリーが感じられるのがすきなの」とおっしゃる。
なるほど、お撮りになる写真にはストーリーが感じられます。
Sさんが自作の紙粘土の人形を見せてくださった。
田畑で村で生きていく人々を、ちょっとコミカルに描写している。
道の駅あたりで売っていたら人気が出そうな。
「この人形で、こんなのつくったんだ」と、持ってきてくださったのは、写真の絵本。
開くと、それぞれのページに人形を登場させた写真が大きく載せられ、ストーリーに沿った短いセリフが添えられている。
「田植地蔵」という題名。誰でも知っている「傘地蔵」の田植えヴァージョンですね。なるほど(^^)
この本を制作されたのは、さっき写真を見せてくださったけいこさん。ストーリーのある写真というのを、自ら実作されていたのですね。
ひとしきりお酒がまわったところで、さっきから台所をてづだっていた若い女性がピアノと歌を披露してくださるという。
衣装もSさんのけいこさんが用意されているのだそうで、いったん引っ込んで、白い天使のような服で登場。
アップライトピアノに向かい、澄んだ落ちついた声が広間を満たす。
急逝した方を想ってつくられたという「ほしひとつ」という曲、しんっとこころに沁みました。
「お嬢様ですか」ときくと、
そうではなくて、Sさんがバックアップしている中川知美さんというシンガーだという。
※こちらに⇒「そして花になれ」のYoutube動画があります
何万枚も売れる曲も、誰か一人だけのために歌う唄もある。
優劣は聞いた人の数で決まるわけではない。
*
小松は、今日のうちに東京まで戻る予定にしていた。
次回はもう少しゆっくりできるスケジュールで再訪させていただけるようにしたいです。
山形の赤湯駅19:57発の新幹線でぎりぎり今日中の帰着。
翌日、帰り際にいただいたCDを聞いた。
「変な曲ですよ(笑)」と言って渡してくださったのだが、たしかにちょっときくとコミックソングみたいかもしれない。「キジのばかやろう」「ベゴがうられていく」「みんな百姓になれ」題名をきくだけで、かの地でファーマーをやっているSさんでなければつくれない曲なのがわかる。
これは、あの場所で、ぜひ生で演奏しているのを聴きたい。
2016年《手造の旅》で、実現させたいです(^^)
できれば、小松も競演させていただきたいです!