2018年1月、久しぶりにプラハの市民会館・音楽堂を見学して、2009年にここで見た「プラハの春音楽祭」のオープニングを思い出した。
当時書いたブログはもう読めなくなってしまっているようなので、この機会に少しだけ記憶を振り返ってみようとおもう。
5月12日の「プラハの春音楽祭」のオープニングコンサートを観覧できたのは、今になってみるとても幸運だったと思う。
当時のチェコスロヴァキアの独立を宣言したこの市民会館で、スメタナの名前を冠したこの部屋で、現職チェコの大統領臨席のコンサートなのである↓
↑上の写真はステージのアップ。すぐ左のバルコニー席に大統領が座る。
我々の席はちょうどその場所がまっすぐ見える場所↓夫人らしき人はだいぶ前から着席されていたが、大統領自身はなかなか現れなかった。
客席が暗くなるほんの寸前に姿を現した↓
↑当時はクラウス大統領。ハヴェル前大統領のもとで経済改革を担当した大蔵大臣だった人物。
国有企業を民営化するために、18歳以上の全国民に株を買う権利を付与するというおもいきった政策を実行した。
政策は成功。国民はそれぞれの判断で株主となり、あるいは従業員たちが自分たちの勤める破たんしそうな国営企業を救ったりもした。
2009年は彼の大統領十年間の中では転換期だったかもしれない。前年のリーマンショックでユーロ周辺の小国からは資本が引き上げられ、通貨は暴落した年であるのだから。 まぁ、そんなことは我々通りすがりの観光客にはなかなか見えてこない。
さて、演奏は、この年のネーメ・ヤルヴィというエストニア国籍の指揮者。社会主義時代から活躍していた人のようだ。
「わが祖国」というと、どうしても第二楽章の「モルダウ」のメロディだけが有名。
そのメロディは知っていても、クラシック音楽愛好家でもない自分が全曲をじっくり聴かされて退屈しないかと心配していた。
だが、実際にはじまってみると二つの理由で杞憂に終わった。
①六楽章あわせても74分程度
②楽章がそれぞれはっきりと主題を感じさせる個性をもっている
何を言いたい楽章なのかをあらかじめ少し知っておくだけでぐっと魅力が増す
特に第一楽章の「ヴィシェフラード」は、プラハ創立神話の舞台であり、スメタナはじめチェコにとって大切な人々の墓地がある場所。この日我々は午前中に訪れているのだ。スメタナの墓前で行われた式典と合唱を見た。
第一楽章「ヴィシェフラード」↓=「高い城」 への入口↓
広い敷地の一角にぽつんと残るこの礼拝堂がこの城でいちばん古い建物だとされている↓
ヴォルタヴァ川の向こうにプラハ城が見える↓リブシェの見た幻影のごとく↓
第一楽章ではじめできこえてくるハープの音色は、リブシェが奏でていたように感じられる。
このメロディはあとから何度も聴こえてくる。
ドヴォルザークの墓↓
祖国の為に命を捧げた人々の記念碑の前で合唱隊が控える↓
いくつもの花輪がやってきて↓
スメタナの墓前に供えられる↓命日は今日、5月12日と刻まれている↓
第二楽章の「ヴォルタヴァ(ドイツ語で「モルダウ」)」は、はじめは小さな流れがだんだんと水量を増やしてボヘミアの野を流れゆく様
三、四、とばします
第五楽章 「ターボル」は、15世紀のフス戦争の中で徹底抗戦して壊滅した町。
第六楽章 「ブラニーク」は、フス戦争の戦士たちが眠る山の名前。祖国の危機には復活して救国にやってくると伝わる。
これらのストーリーをちょっと知っておくだけで、「わが祖国」は味わい深く染み入ってくる曲になる。