黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『リカーシブル』米澤穂信(新潮社)

2013-02-22 | 読了本(小説、エッセイ等)
中学一年生の越野ハルカは、父の蒸発により、小学生の弟・サトルとともに母の故郷である坂牧市に引っ越してきた。しかしハルカは、父の再婚相手である母とサトルとは血のつながりななく、そんな母に密かに遠慮している。
新たな学校でも周囲から浮かないようにと、空気を読みつつ神経を張り詰めている彼女は、在原リンカというひとりのクラスメイトと親しくなる。
一方で、サトルがおかしなことを口にし始める。商店街の置き引きの犯人が逃げた先やナイフを持っていることを指摘したり、橋をひとりで渡ることを怖がったり、町にまつわるあれこれを言い当てたり、最初はハルカの関心を引きたいための嘘だと思っていたのだが、次第に予知能力があるのではと気になり始めた。
そんな中、たまたま社会の三浦に、未来が見える子供の話についてうっかり質問したところ、勘違いされ、町に伝わる予知能力者『タマナヒメ』の民間信仰を記した『常井民話考』という本を借りたのだが、その関連について気になったハルカだったが……

寂れた田舎町に越して来た女子中学生。血のつながらない弟が突然予言めいたことや知らないはずの過去などを言い出して、そこからタマナヒメという伝承について関わるようになり……というお話。一応ミステリ?
一応の決着はついているのだけれど…それゆえ余計に…この後ふたりはどうなるのだろうと、漠然とした不安と閉塞感に襲われる、とてもビターな読後感;;

<13/2/21,22>

『abさんご』黒田夏子(文藝春秋)

2013-02-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
巻貝のような書斎のある、大きな家に生まれ育った幼子。両親の片方は4歳の時になくなり、もう片方の親とともに暮らしていた。しかし親が50代、子が思春期を迎えた頃、外から<家事がかり>が家にやってきて、それまでの日常に変化が……“abさんご”、
下手ながらも孤りでも遊べる毬突きを好んでいたタミエ。
しかし、きょう、その毬の空気が洩れ、使いモノにならなくなってしまった。親からは二度と買ってやらないときびしく云い渡されているものの、新しい毬が欲しいタミエは……“毬”、
山を歩き植物と親しくなることで、自分の支配圏に置くことを楽しんでいたタミエ。彼女には、自分の花と思い定めている、紫色の特別な花があった。
ある日、学校をずるけて歩き回っていると、植物の研究をしているらしい一人の初老の男に植物の名を尋ねられ、自分が名付けた名を口にするが……“タミエの花”、
一度も虹を見たことがないというのが、劣等感だったタミエ。
梅雨晴れの或る日。学校に行かず、海辺にいたタミエは、どこまでもどこまでも行ってみたいと思い、歩きつづけていた……“虹”の4編収録。

表題作は芥川賞受賞作。
文章の表記文法等がかなり特殊(横書、ひらがな多様…等々)なので、なかなか内容が頭に入ってこないのが大変でした…。固有名詞や性別すら明らかにされない朦朧とした輪郭の登場人物たちにより、描かれる記憶の断片の生み出す空気感はなかなか素敵。
他3編は小学生低学年らしい少女・タミエのお話。天真爛漫というよりも、子供ゆえのあざとさと罪を犯すことへの恐れのなさが描かれているような気がします。こちらは随分前に描かれた作品で、一般的な表記(縦書)。

<13/2/18,19>

ハートマカロン'13@HAPPY SUGAR

2013-02-18 | スイーツ




 ハート型のマカロン。
 抹茶、レモン、木苺、ロイヤルミルクティー、ゆずの5種。後ふたつが、今年の新作っぽい。
 それぞれの風味のマカロン生地に、抹茶風味のホワイトチョコガナッシュ、レモンジャムとガナッシュ、ホワイトチョコガナッシュと木苺のコンフィチュール、紅茶ミルクガナッシュ、柚子ジャムとホワイトチョコガナッシュがそれぞれ入っています。
 ヴァレンタイン~ホワイトデイの期間限定。 

 HAPPY SUGAR:新潟(村上)

『散華ノ刻 居眠り磐音 江戸双紙』佐伯泰英(双葉社)

2013-02-18 | 読了本(小説、エッセイ等)
江戸藩邸から勾引された、父で豊後関前藩国家老・坂崎正睦の身柄を無事奪還した磐音たち。正睦と照埜は、磐音が道場を構える小梅村で幼子を囲み、つかの間水入らずの穏やかな日々を過ごしていた。
しかしすべてが解決した訳ではなく、未だ藩内での騒動は治まっていない。
藩主実高の正室お代の方の寵愛を得ている江戸家老・鑓兼参右衛門と、元物産方組頭である留守居役兼用人中居半蔵との間で対立が深まっていたが、その鑓兼の背後には磐音を排除しようとする老中田沼意次らの思惑があったのだった。
そんな中、江戸藩邸でお代の方と面会した磐音は、その変わり様に驚く。かつて仲睦まじく実高の傍らに慎ましく寄り添っていたお代の方は、鑓兼たちに心の隙間をつかれて操られ、奢侈に耽るようになっていたのだった……

シリーズ第四十一弾。前巻からの関前藩のお家騒動の続き。
利用されてたお代の方がちょっと切ないなぁ…;
他にはおそめちゃんと幸吉のその後の様子なども、ちらりと出てきたり、磐音が紀伊藩江戸藩邸の剣術指南役になったりという動きもありましたが、変わってなくてオチに使われる某さんが(笑)。

<13/2/18>

『ぶたぶた図書館』矢崎存美(光文社)

2013-02-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
本好きの女子中学生・麦谷雪音は、図書館の企画募集に「ぬいぐるみおとまり会」を提案する。
子供たちのぬいぐるみを預かり、夜の図書館での彼らの様子…本を読んだり、本を片付けたりする…を撮影するという企画。海外の図書館などで企画されていたのを知っていて、羨ましく思っていたのだ。
募集では落選するも、親しくなった司書の女性・三宅寿美子も同じ思いを抱いていたことから、協力して実現にむけて奔走するふたり。
プレゼンのポスター作成の為の撮影に、良いカメラが必要と知り、一眼レフのカメラを持っている人物を探すことにした雪音。
幸い親戚の知り合いのつてで借りる算段がつき、その相手がボランティアで撮影もしてくれるという。そんな彼女たちの前に現れたのは、山崎ぶたぶただった……“理想のモデル”、
カメラマンとして世界を飛び回っていた間宮秀は、半年前から実家に戻っていた。
帰国後、彼が連絡を絶っていた昨年に、ずっと実家で暮らしていた弟・栄が事故死していたことを知った間宮は、自分が弟のことを何にも知らずにいたことを悔いた。その穴を埋めようと考えるが、弟の内面を探る手掛りとなるのは、デジカメに残された画像と、つながらない電話番号がある携帯電話のみ。
そんなある日、時間つぶしに、図書館に立ち寄った間宮。併設のカフェでたまたま耳にした話と、栄が持っていたのと同じカメラバッグを目にしたことがきっかけで、図書館でのぬいぐるみおとまり会に一役買うことに……“何も知らない”、
娘の美帆は、何をするのもゆっくりでマイペース。母親である彩子は周囲の子供たちとの差と、娘との意思の疎通のはかれなさに悩む日々だが、彩子の妹・寿美子とは本好きという共通項もあり、意気投合している様子。
そんなある日、実家へ美帆と共に遊びにいった彩子は、寿美子が手がけることになったイベントの仲間たちと遭遇するが……“ママとぬいぐるみのともだち”の3編+プロローグ、エピローグを収録。

ぶたぶたシリーズ。タイトルが『図書館』なので、司書?と思ったら、カメラを貸しに行ったら、図書館で開催ようと思っているぬいぐるみイベントのポスターモデルにスカウトされるぶたぶたさんの巻(笑)。
本好きな中学生の女の子視点、それに関わることになった元カメラマン男性の視点、本好きな小さな女の子を持つ母(司書のおねーさんの姉)視点で、語られています。
それぞれにある悩みを抱えているけれど、ぶたぶたさんと関わることで解消するというか心境変化する感じかな。
それにしても、図書館業界で都市伝説化してるぶたぶたさんが楽しすぎる…(笑)。

<13/2/17>

『ホテル・メランコリア』篠田真由美(PHP研究所)

2013-02-16 | 読了本(小説、エッセイ等)
かつて横浜の高台にあり、多くの外国人客を迎えた小さなホテル。海が見えるオープン・テラス、年末にバンケットルームで開催される豪華絢爛なダンス・パーティ、評判のシェフが作り出す珍しい料理の数々、世間の目をはばかる客も多かった長期滞在客用のアパートメント……。
ある老婦人から、幼い頃、家族と食事に出かけた、名前も覚えていない記憶の中にあるホテルを探して欲しいと依頼された私は……“赤い靴を履いて”、
元ホテルマンだった老人から聞いた話。
戦前。アパートメントに、アジアの南の方にある古い国の、尊い王様の血を引く「殿下」がいたことがあった。
ある時、ホテルのロビー階の隅にある怪しげ画廊『柘榴画廊』に、殿下が由緒ありげな翡翠の玉を売ろうとしていたことがあった……“憂鬱という名のホテル”、
柘榴画廊の主人の息子が、父から聞いた話。
その画廊にはその名を冠した、柘榴の実が描かれたステンドグラスが置かれていたという。柘榴が、ギリシア神話の悲劇的な美少年として登場するように、当時ホテルに出入りしていた両性具有めいた美少年の話をする。
馬さんと呼ばれた女写真家の助手をしていた彼は、何故か錯乱状態に陥り、ホテルから飛び降りたという事件があったという……“黄昏に捧ぐ”、
ホテルで出会った美しい女性客。幼い少女だった私は、彼女と親しくなり、一緒に外国の珍しい本などを見るようになった。作家だったという彼女は、自分は予言の能力を持つカッサンドラと同じだという。
一方、ホテルでむかし掃除婦をしていた女が語る。当時「先生」と呼ばれていた女性客がいた。怒られて以来、避けていたが、ひょんなことから話すようになった。彼女にはおかしな癖があったという……“影に微笑むカッサンドラ”、
裏通りの骨董店に並んでいたビスクドールに呼ばれたように目を留めると、人形が語り出した。
ホテルのバーテンダーだった男が、妻に似ていると贈り物にした、紫の目が美しい人形。
彼はギリシアで船乗りだったが、妻亡き後、人形とともに日本へやってきた。彼女は吸血鬼になったのだと語る男は……“ビロードの睡り、紫の夢”、
花壇は百合の花が満開だというのに、百合の花が嫌いだという老人は、元医療用医薬品の製造会社の社長で、いまは引退し悠々自適な生活を送っている人物。子供の頃、思い出の場所だと業界誌のエッセイで書いていたのを目にし、それが件のホテルだったことから話を聞くべく訪れた私。
会社の令嬢だった母は、婿養子に入った父と別居状態。ホテルの特別室で暮らしていた彼女の元へたびたび遊びに出かけていたが、彼が十歳の時、ホテルの風呂で溺死して……“百合、ゆらり”、
かつてホテルの料理長をしていた男。廃業直前にある事情で店を去ったという彼は、自分は古代ローマ時代から生きていて、不老不死だと語る。
さまざまな経歴を経て、かつて自分の構えた店を騙し取られた紆余曲折の末、ホテルで働きだした彼。六十年後、彼を騙したかつての十五の少年が老人になり、グルメ評論家として店にやってきた……“あなたのためのスペシャリテ”、
二年前、老婦人から依頼を受け、いろんな人物からホテルについて話を聞いた私。
そんな彼女から、これまでのお礼がしたいとパーティに招かれた。実は私と前からの知り合いだったというが、心当たりがない……“時過ぎゆくとも(アズ タイム ゴーズ バイ)”の8編収録の連作短編集。

老婦人から依頼を受け、今はなくなってしまった古いホテルにまつわるエピソードを集めることになった男。彼の集めた話や、それ以外嘘かまことかわからないエピソードもありつつ、語られるお話。
さまざまな出来事の舞台となったホテルの、どこか憂いを帯びつつも美しい姿が脳裏に浮かび上がる様子が印象深い。

<13/2/15,16>


雪甘月ショコラマカロン'13@雪甘月

2013-02-14 | スイーツ
 先日せっかく雪甘月に買いに行ったのに、直前のヒトの分で品切れ……30分待てば用意できるといわれたけれど、乗りたい帰りのバスは10分後だし、その次のバスはさらに1時間後になってしまうので断念;
 幸い江口だんご各店で、予約注文はできるというので、行きやすい坂之上店の方に予約して、日を改めて取りにいってきました。

 今年は完全リニューアルされて種類が増え、5種類に。
 ヘーゼルナッツ、柚子、桜、抹茶、ショコラ。
 柚子と抹茶はそれぞれの風味のマカロン生地に、それぞれの風味のガナッシュ(ホワイトチョコベース)。
 他は、ショコラマカロンにチョコガナッシュ。マカロンかガナッシュのどちらかがそれぞれの風味(桜は、上の塩漬けの風味?)。
 さっくりと軽い食感で、小さめサイズなので、食べやすいです。
 期間限定。

 雪甘月:新潟(長岡)

『前世探偵カフェ・フロリアンの華麗な推理』大村友貴美(角川書店)

2013-02-14 | 読了本(小説、エッセイ等)
うらぶれた小路の突きあたりに、妖しげな明かりを放つバー<カフェ・フロリアン>。
オネエ系のママ・ショウは、前世の記憶を持っているといい、それ故に悩んでいる人々の相談に乗っている。
それまで度々店に通っていた図書館職員の相川南美は、ショウにある相談をする。
南美が二十歳の時、近所の小料理屋の女将と駆け落ちをした祖父のキサブローは、そのまま行方不明なのだが、先頃家に突然やってきた5歳の男の子・アサバテルトが、自分がキサブローだと主張し、言動も祖父そのものなのだった。彼曰く、女将とは駆け落ちしていないというのだが……“キサブロー、帰る”、
今時の大学生・越後昇太と恋人の名場馨子が、相談にやってきた。馨子が前世の夢をたびたび語るようになり、それにつられて昇太も怖い夢を見るようになったという。夢で見た光景から、過去の新聞や雑誌を検索してみたところ、彼女が話すのと同じ事件が二十五年前に実際に発生しているのを知る。
それは、とある県の山間地、人口千人のS村で起きた連続殺人事件。馨子はその犯人に殺害された少女・青田菜摘だったというのだ。
ショウに相談した二人だったが、結局馨子は我慢が出来ず、事件が起きた村へ行くと言い出して……“ロスト・ヴィレッジ”、
設計事務所で働く地井敬紀は、いくつかの前世の記憶を持っているが、どの時代場所においても、無実の罪を着せられ殺害されているような理不尽な思いを抱いており、それ故に現実社会でも人間不信に陥っているのだという。
そんな彼の中で、特に印象に残っている人物は明治時代に生きていた、イヅツタカシという男。ある人物の暗殺計画を止めに入ったのに、刺客の一味として斬り殺されてしまったのだという。
その人物が実在していたのかを調べて見ることにしたショウと地井は、勝間田憲三という政商を殺害した井筒高志という人物の存在を知る……“僕が殺された日”、
市長公室よろず相談室長という名の、実質クレーム処理係・寺見鈴太。職場ではいろんな雑用を押し付けられ、さらに妻の果歩の代わりに家事まで一手に引き受けざるをえない日々。
そんな彼は、夢で見る自分とは真逆の奥州の武士・サカタトウゴに憧れを抱いていた。その前世についてショウに相談したのだが、「彼は彼、あなたはあなた」と言われ、心の支えが折れてしまった寺見は、そのまま携帯の電源を切り、行方をくらます。
しかし数日後、とうとう金に困り、コンビニを襲う決意を固めるが……“虐げられた男は逆襲する”、
カフェ・フロリアンに、いつも野菜を届けている門部青果店の娘・蘭は、祖母・笑子からあることを頼まれた。
十七歳の時、八戸の宝念寺の境内に埋めた瓶を掘り出して欲しいという。そこには江戸時代のサエという女の人の死の真相が隠されているらしい。
祖母自身は青森に行ったはずはなく、どうやら前世でのことらしい……“また逢う日まで”の5編収録の連作短編。

いくつかの前世の記憶を持つオネエ系のママ(と、いつも店にいるオヤジ)が、その経験の豊富さからいろんなヒトの相談に乗って、悩みを解決するミステリ。
前世を引きずるのではなく、今を生きていく、未来へ向かうための手伝いをしている雰囲気なのが良い感じ。

<13/2/13,14>