黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『abさんご』黒田夏子(文藝春秋)

2013-02-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
巻貝のような書斎のある、大きな家に生まれ育った幼子。両親の片方は4歳の時になくなり、もう片方の親とともに暮らしていた。しかし親が50代、子が思春期を迎えた頃、外から<家事がかり>が家にやってきて、それまでの日常に変化が……“abさんご”、
下手ながらも孤りでも遊べる毬突きを好んでいたタミエ。
しかし、きょう、その毬の空気が洩れ、使いモノにならなくなってしまった。親からは二度と買ってやらないときびしく云い渡されているものの、新しい毬が欲しいタミエは……“毬”、
山を歩き植物と親しくなることで、自分の支配圏に置くことを楽しんでいたタミエ。彼女には、自分の花と思い定めている、紫色の特別な花があった。
ある日、学校をずるけて歩き回っていると、植物の研究をしているらしい一人の初老の男に植物の名を尋ねられ、自分が名付けた名を口にするが……“タミエの花”、
一度も虹を見たことがないというのが、劣等感だったタミエ。
梅雨晴れの或る日。学校に行かず、海辺にいたタミエは、どこまでもどこまでも行ってみたいと思い、歩きつづけていた……“虹”の4編収録。

表題作は芥川賞受賞作。
文章の表記文法等がかなり特殊(横書、ひらがな多様…等々)なので、なかなか内容が頭に入ってこないのが大変でした…。固有名詞や性別すら明らかにされない朦朧とした輪郭の登場人物たちにより、描かれる記憶の断片の生み出す空気感はなかなか素敵。
他3編は小学生低学年らしい少女・タミエのお話。天真爛漫というよりも、子供ゆえのあざとさと罪を犯すことへの恐れのなさが描かれているような気がします。こちらは随分前に描かれた作品で、一般的な表記(縦書)。

<13/2/18,19>