黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『荒海ノ津 居眠り磐音 江戸双紙』佐伯泰英(双葉社)

2010-12-01 | 読了本(小説、エッセイ等)
ひと月余り滞在した豊後関前を、二日前に発った坂崎磐音とおこんは、博多の町に到着していた。出産間近な今津屋のお佐紀のことを考えると、早く江戸に帰りたいところだったが、今後の関前のことを考え、博多の大商人・箱崎屋次郎平の強い招きに応えることにしたのだ。
その次郎平が磐音に頼みがあるという。番頭の一人が、福岡藩の前の国家老を務めた吉田久兵衛保年に、磐音がこの地に逗留していることを話したのだという。吉田は無類の剣術好きであることから、江戸でも名高い佐々木道場の高弟の妙技を見物したいという願いだった。
それに応じた磐音が藩の道場を訪れると、以前佐々木道場に門弟として通っていた小埜江六もいた。吉田は門弟たちから十人を選び、磐音と対戦させるが、その強さに手も足も出ない。しかしそこは剣術好き同士、磐音の性格も相俟って和やかな雰囲気となる。
その後、おこんと共に箱崎屋を訪れた磐音。次郎平の末娘・お杏が彼らを藩内を案内してくれることになり、荒戸の湊へ。ところがそこで、五人の侍が一人の若侍を囲んでいる場面に遭遇。側には武家娘もいたが、磐音が間に入り、侍たちを追い払っているうちに彼らもいなくなってしまう。その後、若侍は猪俣平八郎、娘はお咲ということがわかる。お咲は平八郎の上役の娘だが、ふたりは恋仲。その身分違いの恋が元で問題が起きているらしい。
一方、江戸。磐音たちが博多にしばらく逗留する旨を記した手紙が、今津屋に届いた。同じ内容の手紙が老分の由蔵により佐々木玲圓にも届けられた。
そんな中、品川柳二郎の心は弾まない。磐音やおこんの不在の上に、さらに問題が浮上しているためだ。
御家人である品川家の当主・清兵衛は、草加宿の食売女に入れ揚げて屋敷に戻らず、長兄・和一郎も遊女と出来て家を出ていた。そこに小普請組組頭・中野茂三郎からの呼び出しが。父も跡継ぎの兄も居なくては呼び出しにも応じられない。そして二人がいない事がばれてしまえば、品川家が廃絶の憂き目にあう事は必定だが、そうなると拝領屋敷も出て行かなければいけなくなり、住む場所も考えなくてはならない。
いろいろと思い悩む中、以前同じ北割下水に住まっていて、子供のころ親しくしていた御家人椎葉家の長女・お有と九年ぶりに再会。彼女には、御書院御番組頭の八幡鉄之進との縁談が持ち上がっているという。父は乗り気だが、八幡とは年も離れている上に、女癖が悪く過去三度も離縁していることから、お有自身は気が進まず悩んでいるという……

シリーズ第二十二弾。関前を出て江戸に戻る前に、博多に立ち寄ることになった磐音とおこん。一方江戸では、柳次郎の周辺でいろんな話が進行した巻でした。江戸側の方の展開がちょっと楽しかったかも(笑)。

<10/12/1>