黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『平台がおまちかね』大崎梢(東京創元社)

2008-07-24 | 読了本(小説、エッセイ等)
老舗ながらかろうじて中程度の出版社・明林書房の新人営業マン・井辻智紀。本が大好きで、大学時代にバイトで入ったここにそのまま就職したのだが、同じようなジャンルの本を扱うことから、しょっちゅう顔を合わせる佐伯書店の営業マン・真柴司からは、からかわれてばかり。
ある日、出かけた書店で、別の女性書店員から声をかけられた井辻。しかし、東横線沿線にあるという彼女が勤めるその書店には、明林の人間は出入りしていないという。
そんな中、自社で出版の、ウィリアム・エマーソンの『白鳥の岸辺』という作品がやけに売れている書店の存在を知り、御礼をいう為、そのワタヌキ書店を訪ねた井辻はそこで先日出会った女性書店員に再会。作品への、力の入ったディスプレイに感激するが、店長・綿貫は何故か冷たい態度で……『平台がおまちかね』、
各出版社の営業マンのマドンナ的存在である、ハセジマ書店の店員・望月みなみが、ずいぶん落ち込んでいるという。どうやら“つまらない女”などと彼女に言い放った男がいるらしい。話を聞いた井辻と真柴たちは、調査に乗り出すが……『マドンナの憂鬱な棚』、
明林書房が主催している宝力宝賞の第14回贈呈式および祝賀会を控え、その準備に大いそがしの井辻たち。両面テープを買いにホテルを抜け出した井辻は、その会場の前で、老紳士に声をかけられ、今回の受賞者である塩原健夫に伝言を頼まれる…“君もずいぶん大胆な手をつかうようになったじゃないか”と。ところが、その塩原が時間になっても現れず大騒ぎ。そこへ真柴が、神田の三省堂で彼を見かけたといってきて……『贈呈式で会いましょう』、
絵本の販売に力を入れているという、地方の書店・ユキムラ書店を訪ねた井辻。ところがシャッターには閉店を知らせる貼り紙がされており、がっかり。隣の蕎麦屋にきくと、彼同様に店の前で立ち尽くしていた青年がいたらしい。その後、別の書店で、“のんたん、ばばーる、じょーじ、はりー”という歌を歌う女の子とすれ違い、その話を書店員にすると、それはユキムラ書店の看板を指しているのではといわれる。しかし女の子とその母に訊くと、たまたま出逢った青年に描いてもらったものだという……『絵本の神さま』、
某大型書店のフロアマネージャーの発案で、平台陳列の座をかけて、ポップ作りで対決することになった各出版社の営業たち。ジョン・ダニングの『死の蔵書』を選んだ井辻に対し、真柴が選んだのは、そのキャラクタに似合わず、加納朋子の『ななつのこ』。それぞれの本が並べられたのだが、本の並びがたびたび動くという事件が起きて……『ときめきのポップスター』の5編収録の他、『新人営業マン・井辻智紀の一日』を収めた連作短編集。

出版社の新人営業マンとして奮闘する井辻くんの周囲で起こる謎を解く、日常系ミステリ。
真柴が井辻を“ひつじくん”と呼ぶ度に律儀に訂正してるのが、可愛いというか何というか…(笑)。
普段知ることのできない出版社の営業マンの仕事も垣間見れて、興味深かったです。

<08/7/24>