328)AMPK活性化におけるαリポ酸とバイカリンとケトン食の相乗効果

図:AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)はα, β, γの3つのサブユニットからなるヘテロ三量体で、ATPが減少してAMP/ATP比が上昇すると、γサブユニットに結合していたATPがAMPに置換する。これによってAMPKの構造変化が起こると、LKB1というリン酸化酵素の親和性が高まり、αサブユニットのスレオニン172がリン酸化されると、さらにAMPKの活性が高まる。活性化したAMPKはmTORC1(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1)を阻害し、転写因子のFOXO3Aを活性化し、その他様々な機序で、がん細胞の増殖を抑制し、抗老化や寿命延長の効果を引き起こす。
αリポ酸はサーチュイン1の発現を誘導し、サーチュイン1はLKB1を活性化してAMPKを活性化する。メトホルミンはミトコンドリアの呼吸鎖を阻害してATP産生を低下させる機序とLKB1を活性化する両方の機序でAMPKを活性化する。運動やカロリー制限はATP産生を低下させAMP/ATPを上昇させることによってAMPKを活性化する。
がん細胞ではLKB1が変異していることがあり、この場合は、αリポ酸やメトホルミンによるがん細胞内でのAMPKの活性化が起こりにくい。LKB1を介さないでAMPKを活性化する方法としてカルモジュリンキナーゼキナーゼβ (CaMKKβ)やアディポネクチン (Adiponectin)を介したシグナル伝達がある。生薬の黄芩に含まれるバイカリンというフラボノイドがCaMKKβを活性化してAMPKを活性化するという報告がある。また、ケトン食がアディポネクチンを増やすという報告もある。したがって、ケトン食やカロリー制限に、αリポ酸やバイカリンを含む漢方薬やメトホルミンを併用すると、LKB1遺伝子に変異のあるがん細胞にもAMPKを効率的に活性化して抗がん作用を増強できる可能性がある。

328)AMPK活性化におけるαリポ酸とバイカリンとケトン食の相乗効果

【ポイツ・ジェガース症候群とLKB1】
がんの発生には様々な要因が関連しています。一般的には、食事と喫煙がそれぞれ3分の1程度に関与し、病原微生物による慢性炎症、紫外線、大気汚染などによる環境中の発がん物質など様々な原因によってがんが発生しています。
感染症による発がんとしては、胃がんを起こすヘリコバクター・ピロリ菌、肝臓がんを起こすB型とC型の肝炎ウイルス、子宮頚がんを引き起こすヒト・パピローマウイルス、白血病や悪性リンパ腫の原因になるヒトT細胞性白血病ウイルスなどが有名です。
全がんの原因として遺伝的素因の関与は約5%程度と言われています。
「がん家系」という言葉があるように、血縁者に同じがん(例えば胃がんや乳がんや卵巣がんなど)が多発している家系はそれほど珍しくありません。このような場合、食生活や生活習慣が類似しているから同じようながんになる場合(環境要因)と、ある種のがん(あるいは、いろんながん)になりやすい遺伝的素因が存在する場合があります。実際に、遺伝性腫瘍や家族性腫瘍と言われる遺伝するがんや多くのがんを発症する遺伝病も多数知られています。
がん細胞は細胞の増殖や分化や死を調節する「がん遺伝子」や「がん抑制遺伝子」に変異が生じて発生します。このような遺伝子変異が、活性酸素や発がん物質などによって後天的に蓄積することによってがん細胞を発生させるのですが、これらのがん化に関連する遺伝子が生まれつき異常を持っている場合は、そのがんは遺伝することになります。たとえば、家族性大腸腺腫症という遺伝病ではAPCというがん抑制遺伝子の変異を持ち、大腸や胃にポリープやがんが多数発生します。
BRCA1やBRCA2というがん抑制遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんを若い年齢で発症します。このような遺伝子異常が明らかな場合、予防的にがん化しやすい組織をがんになる前に切除する治療も行われています。
タバコを同じように吸っても肺がんになる人とならない人があるのは、タバコの煙の中の発がん物質を活性化したり無毒化する酵素に違いがあることが関与しています。
環境中の発がん物質によってがんが発生しやすい体質の人とがん化に抵抗性の高い体質が存在します。このような体質の違いは遺伝子の個体差(遺伝子多型という)によって決まります。
以上のような理由で、がん全体の発生要因のうち5%程度に遺伝的要因が関わっているようです。ほとんどのがんは遺伝しませんが、一部には「遺伝するがん」や「がんになりやすい体質」があるということです。
さて、ポイツ・ジェガース症候群(Peutz-Jeghers syndrome)という遺伝性疾患があります。食道を除く消化管に多数のポリープを生じ、口唇、口腔粘膜、手掌、足底に特有な色素斑をみとめます。ポリープの分布は小腸に多く、大腸には少なく、小腸ポリープが腸重積症の原因となり、イレウスや腹痛をきっかけに診断されることがしばしばあります。長期的にみると、この病気はがんの危険性が高く、特に大腸がんの発生が多くみられます。肺や卵巣や子宮など他の臓器のがんも認められます。
10万人に一人くらいの発症率で、常染色体性優性の遺伝形式をとり、原因遺伝子は19番染色体短腕にあるLKB1遺伝子です。

【LKB1遺伝子のがん抑制作用】
LKB1はセリン・スレオニンキナーゼで、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)をリン酸化して活性化します。
AMPKは細胞のエネルギー代謝を調節する因子として重要な役割を担っています。
AMPKは低グルコースや低酸素や虚血など細胞のATP供給が枯渇させるようなストレスに応答して活性化されます。
AMPKは触媒作用を持つαサブユニットと、調節作用を持つβサブユットγサブユニットから構成されるヘテロ三量体として存在します。
γサブユニットにはATPが結合していますが、ATPが枯渇してAMP/ATP比が上昇すると、γサブユニットに結合していたATPがAMPに置き換わります。その結果、アロステリック効果(酵素の立体構造が変化すること)によってこの複合体は中等度(2~10倍程度)に活性化され、上流に位置する主要なAMPKキナーゼであるLKB1に対して親和性が高くなり、LKB1によってαサブユニットのスレオニン-172(Thr-172)がリン酸化されると、酵素活性は最大に活性化されます。(トップの図)
リン酸化されたAMPKはmTORC1を抑制し、タンパク質や脂肪酸の合成を抑制して、がん細胞の増殖を抑制します。また、転写因子のFOXO3Aを活性化して抗酸化力やストレスに対する抵抗力を高め、抗老化や寿命延長効果を発揮します(318話参照)。
つまり、LKB1はAMPKを活性化する作用によってがん細胞の増殖を抑制する作用があるがん抑制遺伝子になります。AMP/ATP比を上昇させてAMPKを活性化するメトホルミンががん予防効果や抗がん作用を示す主要なメカニズムがAMPKの活性化です。
しかし、肺がんや子宮内膜がんなど多くのがんでLKB1遺伝子の変異が認められ、機能が失活しています。つまり、LKB1遺伝子に変異がある場合は、メトホルミンの抗腫瘍効果は期待できないことになります
そこで、LKB1以外のルートでのAMPKの活性化ががん治療において重要になってきます。LKB1以外では、カルモジュリンキナーゼキナーゼβ (CaMKKβ)アディポネクチン (Adiponectin)レプチン (Leptin)を介したシグナル伝達もまた、AMPKの活性化にとって重要であることが示されています。

【αリポ酸はサーチュイン1の発現誘導とAMP活性化プロテインキナーゼの活性化によって脂肪酸の酸化を促進する】
以下のような研究結果が報告されています。αリポ酸がAMPKを活性化しますが、これはLKB1を介しているようです。

α-Lipoic acid regulates lipid metabolism through induction of sirtuin 1 (SIRT1) and activation of AMP-activated protein kinase.(αリポ酸はsirtuin1(SIRT1)の発現誘導とAMP活性化プロテインキナーゼの活性化を介して脂肪代謝を調節する)Diabetologia 55(6): 1824-35, 2012年
【要旨】
目的と仮説:サーチュイン1(Sirtuin 1; SIRT1)は、栄養枯渇に応答してエネルギー産生と寿命を調節する長寿関連タンパク質である。肥満やメタボリック症候群の治療薬開発のターゲットとして注目されている。この研究では、C2C12筋管細胞(C2C12myotubes)において、αリポ酸がSIRT1の活性化や発現誘導を介して脂質低下作用を示すかどうかを検討した。
方法:培養したC2C12筋管細胞の培養液にαリポ酸を投与して、SIRT1阻害剤(ニコチンアミド)、SIRT1低分子干渉RNA(siRNA)、AMPK阻害剤(compound C)の存在下あるいは非存在下において、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、脂肪組織のトリアシルグリセロール・リパーゼ(ATGL)、脂肪酸合成酵素(FAS)の発現量、細胞内のトリアシルグリセロールの量、脂肪酸のβ酸化の変化を解析した。
生体内でのαリポ酸の脂質低下作用は、高脂肪食で飼育したストレプトゾトシン/ニコチンアミド誘発糖尿病マウスと遺伝性肥満マウス(db/db mice)を用いて検討した。
結果:C2C12筋管細胞(myotubes)においてαリポ酸はNAD+/NADH比を増加させ、SIRT1活性と発現量を高めた。その結果、αリポ酸はAMPKとACCのリン酸化を亢進し、パルミチン酸のβ酸化を亢進し、細胞内トリアシルグルセロール量を減少させた。
ニコチンアミドあるいはSIRT1siRNAで処理した細胞では、αリポ酸によって誘導されるAMPKとACCのリン酸化、細胞内トリアシルグリセロール量、パルミチン酸のβ酸化は抑制された。これはシグナル伝達においてSIRT1がAMPKの上流に位置することを示している。
αリポ酸は脂肪組織トリアシルグリセロール・リパーゼ(ATGL)の発現を増やし、脂肪酸合成酵素(FAS)の発現を抑制した。
高脂肪食で飼育した糖尿病マウスとdb/dbマウスにαリポ酸を経口投与すると、体重と内臓脂肪の量が著明に減少した。
結論:培養細胞とマウスを使った実験で、αリポ酸はSIRT1とAMPKの両方を活性化し、脂質を低下させる効果を示した。これらの結果は脂質代謝異常や肥満の治療においてαリポ酸が有用な作用を示すことを示唆している。

寿命を延ばす確実な方法としてカロリー制限があります。カロリー制限は、栄養不良を伴わない低カロリー食事療法で、霊長類を含む多岐にわたる生物種において老化を遅延させ、寿命を延長させることが知られています。

このカロリー制限のときに活性化されて寿命延長と抗老化作用に関与するのがサーチュイン遺伝子です。つまり、サーチュイン遺伝子が活性化されると老化が抑制されることになります。
サーチュインがAMPKの上流に位置するリン酸化酵素であるLKB1を脱アセチル化し、AMPKを活性化します。AMPKが活性化すると、AMPKは細胞内NAD+を増加させることでさらにサーチュイン活性が促進し、自ら活性が増強するループを形成しているという報告があります
サーチュイン遺伝子やAMP活性化プロテインキナーゼの活性化はがん細胞の増殖を抑制する作用を持ちます。
AMPKの活性化は、細胞内の脂肪酸のβ酸化を亢進し、脂質合成に関与するアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)と脂肪酸合成酵素(FAS)の活性を阻害します。脂肪酸の合成が阻害され、β酸化が亢進するとがん細胞は増殖が阻害されます
αリポ酸は抗酸化作用やグルコース代謝を促進する(αリポ酸はピルビン酸をアセチルCoAに変換するピルビン酸脱水素酵素の補酵素)作用が主体ですが、さらにSIRT1とAMPKを活性化して、脂肪酸のβ酸化を亢進して脂肪酸合成を阻害する作用もαリポ酸の抗腫瘍作用のメカニズムになっていると思われます。
αリポ酸はAMPKシグナル系を亢進し、抗酸化力を高め、線維化を抑制するという報告があります。

Alpha-lipoic acid attenuates cardiac fibrosis in Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty rats.(αリポ酸は大塚Long-Evans徳島肥満ラットにおける心臓線維化を軽減する)Cardiovasc Diabetol 2012 Sep 19;11:111. doi: 10.1186/1475-2840-11-111.
【要旨】
研究の背景:高血糖は心筋の酸化ストレスを高め、グルコースの恒常性のバランスを乱す。糖尿病性心筋症は心臓に肥大と線維化を特徴とする。しかしながら、糖尿病性心筋症の発症メカニズムは十分に解明されていない。
この研究は、大塚Long-Evans徳島肥満ラットにおける、心筋のエネルギー代謝、抗酸化作用、心臓の線維化に対するαリポ酸の作用を検討する目的で行った。
方法:非糖尿病のLong-Evans Tokushima Otsuka (LETO)ラットと、糖尿病を発症するOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットに、αリポ酸投与群(200mg/kg/日)と非投与群に分けて16週間飼育した。
糖尿病性心筋症はSirius Redによる染色で評価した。OLETFラットの心臓におけるAMPKシグナル系、抗酸化酵素、線維化関連遺伝子発現に対するαリポ酸の作用はウェスタンブロット法や組織染色で評価した。
結果:糖尿病を発症するOLETFでは、LETOラットに比べて心臓のAMPKシグナル系の活性の低下が認められ、αリポ酸の投与によってOLETFラットにおけるAMPKシグナル系の活性は亢進した。さらに、OLETFラットにおける抗酸化活性の低下はαリポ酸投与によって亢進した。OLETFラットの心臓ではLETOラットの心臓に比べて、より多くの結合組織の増加を認め、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)と結合組織増殖因子(CTGF)の発現亢進を認めた。そして、これらの増加はαリポ酸の投与によって減少した。
結論:αリポ酸はAMPKシグナル系、抗酸化活性、線維化抑制効果を亢進した。これらの結果はαリポ酸が糖尿病性心筋症の治療において有益な効果を示すことが示唆された。

以上の2つの論文から、αリポ酸はサーチュイン1とAMPKを活性化する効果があるので、ケトン食に併用すると、脂肪酸のβ酸化とケトン体産生の亢進に役立ちそうです。

【バイカリンのAMPK活性化作用】
生薬の黄芩(おうごん)に含まれるバイカリンがLKB1を介さない機序でAMPKを活性化することが報告されています。以下のような報告があります。

CaMKKβ Is Involved in AMP-Activated Protein Kinase Activation by Baicalin in LKB1 Deficient Cell Lines(LKB1欠損細胞におけるバイカリンによるAMP活性化プロテインキナーゼの活性化にCaMKKβが関与している)
PLoS One. 2012; 7(10): e47900. Published online 2012 October 22. doi:  10.1371/journal.pone.0047900
【要旨】
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)はエネルギー代謝において重要な役割を果たしており、その活性はシグナル伝達の上流に位置する2つのキナーゼ(リン酸化酵素)、すなわちLKB1とCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ・キナーゼ(CaMKKβ)によって制御されている。
以前の研究で我々は、中国伝統医学で使用される黄芩(おうごん:Scutellaria baicalensis)に含まれる主要なフラボノイドであるバイカリン(baicalin)が、高脂肪食で誘導される脂肪肝の発生を、AMPKの活性化を介する機序で阻止することを明らかにしている。しかし、AMPK活性化の機序については不明である。
この研究では、LKB1遺伝子が欠損したHeLa細胞 とA549細胞の2種類の細胞株において、バイカリンがAMPKのスレオニン172(Thr-172)のリン酸化を引き起こしてANPKを活性化し、その下流に位置するターゲットであるアセチル-CoAカルボキシラーゼのセリン-79(Ser-79)のリン酸化を起こすことを示した。
LKB1遺伝子が欠損したHeLa細胞 とA549細胞におけるバイカリンによるAMPKとアセチル-CoAカルボキシラーゼのリン酸化は、LKB1を発現しているHepG2細胞と同じレベルであった。
Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ・キナーゼ(CaMKKβ)の選択的阻害剤のST0-609によってCaMKKβの活性を阻害すると、HeLa細胞とHepG2細胞の両方において、バイカリンによって誘導されるAMPKの活性化が阻害された。これは、バイカリンによるAMPKの活性化がCaMKKβによって起こっていることを示唆している。
バイカリンの添加によって、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度が著明に上昇することが示された。この場合、HeLa細胞に比べてHepG2細胞では細胞内カルシウムの最高濃度は低かった。
細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)をキレート剤のEDTAやEGTAを添加してキレート(結合)させたり、小胞体のCa2+-ATPaseの阻害剤であるthapsigarginによって細胞内の貯蔵カルシウムイオンを枯渇させると、HeLa細胞におけるバイカリンによるAMPKの活性化は阻止された。
バイカリンによって細胞内ATPの量や活性酸素の産生には変化は起こらなかった。最後に、HeLa細胞において、オレイン酸添加によって引き起こされる細胞内脂肪蓄積を、ST0-609でCaMKKβを阻害したあとではもはやバイカリンは減少できなかった。
これらの結果は、バイカリンによるAMPKの活性化はCa2+/CaMKKβ依存性の経路の関与していることを示しており、CaMKKβがAMPKの上流に位置するキナーゼ(リン酸化酵素)として作用している

黄芩(オウゴン)はシソ科のコガネバナ(Scutellaria baicalensis)の根で、抗菌作用や抗炎症作用や抗がん作用があります。フラボノイドのバイカリンバイカレインオウゴニンなどが含まれ、その抗炎症作用や抗がん作用に関する研究は数多くあります。がんの漢方治療でも使用頻度の高い生薬です。
この論文では、黄芩の主要なフラボノイドであるバイカリンがCaMKKβを活性化してAMPKを活性化するという効果を報告しています。したがって、LKB1に変異があるがん細胞にもAMPKを活性化できることになります。
アスピリンの体内代謝産物で活性本体であるサリチル酸がAMPKを直接活性化する作用があることが報告されています。(Science 336(6083):918-922, 2012年)

サリチル酸はヤナギの樹皮から見つかった成分で、古くから鎮痛剤として利用されていますが、病原体感染に対して植物が産生する防御物質と考えられており、他の植物にも含まれています。ただ、サリチル酸がAMPKを直接活性化する濃度はかなり高いようですので、実用的かどうかは不明です。
また、生薬に多く含まれるオレアノール酸がAMPKを活性化しさらにFOXO3Aを活性化する作用が報告されています。(Int J Physiol Pathophysiol Pharmacol. 2009 Mar 25;1(2):116-126.)
オレアノール酸については125話206話219話で解説しています。白花蛇舌草などの抗がん生薬に多く含まれています。
また、植物にAMPKを活性化する成分が含まれている合目的な理由については309話311話で考察しています。
つまり、漢方薬の抗がん作用の作用機序において、AMPKの活性化はかなり重要なメカニズムになっていると思われます
メトホルミンのAMPK活性化の機序については308話で解説しています。メトホルミンはLKB1を介してAMPKを活性化するので、LKB1遺伝子に変異があるがん細胞の場合は抗腫瘍効果が期待しにくい可能性があります。
ケトン食がアディポネクチンを高めることは327話で紹介しています。
したがって、がんのケトン食療法やメトホルミンやフェノフィブラートやイソトレチノインなどを併用したがん治療を行うとき、LKB1以外の機序でのAMPKの活性化を目標にするため、黄芩や白花蛇舌草を多く含む漢方薬の併用は有効かもしれません(第324話参照)

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