308)メトホルミンの抗がん作用:update(最新情報)

図:メトホルミン(metformin)はインスリンおよびインスリン様成長因子-1(IGF-1)によって活性化されるPI3K/Akt/mTORシグナル伝達系のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質: mammalian target of rapamycin)の活性を阻害するAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を活性化することによって、インスリンおよびIGF-1による増殖刺激を抑制する。AMPKは肝臓の糖新生に関与する酵素の発現を抑制し、筋肉細胞や脂肪細胞のグルコースの取込みを促進し、細胞のインスリン感受性を高めることによってインスリン濃度を減少させる。AMPKはHMG-CoA還元酵素とアセチルCoAカルボキシラーゼを阻害することによって脂質合成を阻害する。メトホルミンは、ミトコンドリアの酸化的リン酸化を阻害してATPを減少させる作用(①)と、LKB1(liver kinase B1)を介してAMPKを活性化する作用(②)がある。メトホルミンによるAMPKの活性化はケトン食との併用でケトン体の産生を増やす効果が期待できる。これらの総合的な作用によってメトホルミンはがん細胞の発生や増殖を抑制する効果があり、ケトン食との併用の有用性が理論的に示唆される。

308)メトホルミンの抗がん作用:update(最新情報)

【がんの化学予防剤として注目されているメトホルミン】 
薬やサプリメントでがんの発生を積極的に予防する方法を「がんの化学予防(chemoprevention)」と言い、そのようながん予防物質を化学予防剤と言います。 
がん予防の研究分野では、そのような魔法の薬を見つけることが主な目標になっています。 
がんの化学予防の分野で最初に注目されたのがβカロテンビタミンAビタミンCビタミンEといった抗酸化性ビタミンですが、多くの臨床試験によってこれらの抗酸化性ビタミンのがん予防効果は「ほぼ否定、あるいは多少の効果があるかもしれない」というレベルで、βカロテンやビタミンEのような脂溶性ビタミンにいたっては、喫煙者で肺がんや頭頸部がんなどのがんを促進する作用が明らかになっています。
食物繊維のがん予防効果も否定的です。植物に含まれるポリフェノールなどのフィトケミカル(phytochemical)はがん予防効果が多くの動物実験で示されていますが、人での効果は証明されたものはまだありません。フィトケミカルの中では、ウコンに含まれるクルクミンや赤ブドウに含まれるレスベラトロールが注目されていますが、人体での消化管からの吸収自体が極めて悪く、人間での有効性はかなり懐疑的です。 
臨床試験などでがん予防効果や抗がん作用が証明されている「がん化学予防剤」の候補としては、抗炎症剤のアスピリン、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)選択的阻害剤のcelecoxib(商品名;セレブレックス、セレコックス)、ビタミンD、ω3系不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)エイコサペンタエン酸(EPA)などがあります。そして最近、急速に注目されてきたのがメトホルミン(metformin)です。
メトホルミンは2型糖尿病の治療薬(ビグアナイド系経口血糖降下剤)ですが、がんの予防や治療の分野でも注目されており、がん予防効果やがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果などが数多くの論文で報告されています。 
例えば、医学・生物学分野の学術文献検索サイトのPubMedで「metformin and cancer」(メトホルミンとがん)で検索すると1433件の論文があり、そのうち2012年分は365件あります(11月1日現在)。がん予防物質として有名なアスピリンを同様に検索すると3261件(432件)、COX-2阻害剤のcelecoxibは1422件(242件)、ウコンのクルクミンは1919件(458件)、レスベラトロールは1572件(369件)などとなっています。()内は2012年分。クルクミンやレスベラトロールは臨床試験のデータはなく、ほとんどが培養細胞や動物実験のレベルです。アスピリンやcelecoxibはシクロオキシゲナーゼの阻害作用ががん予防や抗がん作用と関連し、臨床試験での有効性も多数報告されています。がん化学予防における最近の注目度からは、メトホルミンはアスピリンに匹敵するレベルです。 
メトホルミンは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を介した細胞内信号伝達系を刺激することによって糖代謝を改善します。すなわち、筋・脂肪組織においてインスリン受容体の数を増加し、インスリン結合を増加させ、インスリン作用を増強してグルコース取り込みを促進します。さらに肝臓に作用して糖新生を抑え、腸管でのブドウ糖吸収を抑制する作用があります。これらの作用はインスリンの血中濃度を低下させます。インスリンはがん細胞の増殖を促進するので、インスリンの血中濃度を減らすだけで、がん細胞の増殖を抑制する効果があります(295話参照)。
さらに、AMPKはインスリンおよびインスリン様成長因子-1(IGF-1)によって活性化されるPI3K/Akt/mTORシグナル伝達系mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質: mammalian target of rapamycin)の活性を阻害します。また、HMG-CoA還元酵素とアセチルCoAカルボキシラーゼを阻害することによって脂質合成を阻害します(300話参照)。

これらの総合的な作用によってメトホルミンはがんの発生や増殖を抑制する効果があると考えられています。インスリン抵抗性を改善することは老化やがんの予防に有効であることが明らかになっており、メトホルミンはがん予防や抗老化の薬としても注目されるようになっています(216話217話300話参照)。 
メトホルミンは1920年代に合成され、血糖降下作用が認められていますが、この頃すでにインスリンが治療に使われはじめたため、糖尿病の治療に用いられるようになったのはずっと後です。メトホルミンの抗がん作用に関する基礎研究は1970年代から行われており、2000年代には動物発がん実験でメトホルミンの化学予防効果が報告されています。 
人間でのがん予防効果が最初に指摘されたのは2005年の論文で、2型糖尿病患者でメトホルミンを服用しているグループは全てのがんの発生率が低下することが後向きケース・コントロール研究(retrospective case-control study)で報告されています(British Medical Journal 330: 1304-1305, 2005)。 
2009年の論文では、メトホルミンが糖尿病患者の膵がんリスクを低下させることを示す結果が、米テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターの研究グループから報告されています。糖尿病の患者でメトホルミンを服用していた場合、メトホルミンを服用しなかった人々と比べて、膵がんのリスクが 62 %低減することが示されています。一方、インスリンまたはインスリン分泌促進薬を使用した糖尿病患者では、それらを使用しなかった患者と比較して、それぞれ、膵がんのリスクが 4.99 倍と 2.52 倍に増加しました。(Gastroenterology 137:482-488, 2009) 
台湾で実施された80万人を対象にした前向きコホート研究では、2型糖尿病があって血糖降下剤を服用していないグループでは、大腸がん・肝臓がん・胃がん・膵臓がんの発生率が約2倍くらいに高く、メトホルミンの服用によって非糖尿病グループのレベルに低下することが報告されています。この論文では、1日500mgのメトホルミンががん(特に、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん)の発生率を著明に低下させるという結論が記述されています。BMC Cancer 2011 Jan 18: 11(1):20) 
その後も、多くのがんで、メトホルミンのがん予防効果や抗がん作用が報告されており、数年前からは、非糖尿病のがん患者に対してメトホルミンの抗がん作用が検討されています。メトホルミンががん細胞やがん幹細胞の抗がん剤感受性を高める作用、転移を抑制する作用などが報告されています

【メトホルミンはがん幹細胞の抗がん剤感受性を高める】 
最近の研究結果は、メトホルミンががん治療において非常に有用であることを示しています。メトホルミンの抗がん作用に関する研究の動向を知るには、最近のいくつかの論文を読むと判ります。幾つかの論文の要旨を紹介します。

メトホルミンはがん細胞を死滅させ、放射線感受性を高め、がん幹細胞を優先的に死滅させる(Metformin kills and radiosensitizes cancer cells and preferentially kills cancer stem cells.)Sci Rep. 2012;2:362. Epub 2012 Apr 12.
【要旨】 
2型糖尿病の治療に広く使用されているメトホルミンの単独での抗がん作用あるいは放射線治療との併用による抗がん作用を、ヒト乳がん細胞MCF-7とマウス線維肉腫細胞FSallの2種類のがん細胞を用いて検討した。 
人間の臨床的に達しうる血中濃度において、メトホルミンはがん細胞のクローン形成性細胞死(clonogenic death:がん細胞が増殖してコロニーを形成できなくなること)を引き起こした。重要な点は、メトホルミンは非幹性がん細胞(non-cancer stem cell)に比べて、がん幹細胞(cancer stem cell)に対して殺細胞作用を強く示した。 
培養細胞の実験系において、メトホルミンはがん細胞の放射線感受性を高めた。さらに、C3Hマウスの下肢に移植したマウス線維肉腫細胞FSallの放射線照射による増殖抑制を著明に増強した。 
メトホルミンと放射線照射は、培養細胞(in vitro)と動物移植腫瘍(in vivo)の実験系で、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質: mammalian target of rapamycin)の活性を阻害し、S6K1や4EBP1のようなmTORの下流に位置するがん細胞の増殖や生存に重要なシグナル伝達因子の活性を抑制した。 
結論:メトホルミンはAMPKを活性化し、mTORを抑制することによって、がん細胞を死滅させ、がん細胞の放射線感受性を高め、さらに放射線抵抗性のがん幹細胞を根絶する。 

メトホルミンは食道腺がんの治療効果を高める(Metformin use and improved response to therapy in esophageal adenocarcinoma.)Acta Oncol. 2012 Sep 5. [Epub ahead of print]
米国テキサス州のMDアンダーソンがんセンターの放射線腫瘍部門(Department of Radiation Oncology)からの報告 
【要旨】 
背景:術前化学放射線療法を受けた食道腺がん患者において、メトホルミンを服用していた場合の治療効果への影響を検討した。 
方法:1997年から2012年の間に術前化学放射線療法を実施後に切除手術を行った285例の食道腺がん患者を対象にした。この中にはメトホルミンを服用している糖尿病患者が29例、メトホルミンを服用していない糖尿病患者が21例含まれ、残りの235例は糖尿病でなかった。 
204例において化学放射線療法の前後でPET検査が行われた。病理学的な治療効果は手術の時点で評価した。 
結果:全患者の病理学的な完全奏功率は20%であった。メトホルミンを服用しているグループの完全奏功率(34.5%)は、メトホルミンを服用していない糖尿病患者のグループの完全奏功率(4.8%, p = 0.01)と非糖尿病のグループの完全奏功率(19.6%, p = 0.05)と比べて統計的有意に高かった。 
病理学的完全奏功率はメトホルミンの用量に依存し、1500mg/日以上の服用群でより高い完全奏功率を示した。 
化学放射線療法におけるPET検査における取込みは、メトホルミンを服用している群で著明に低下した。 
メトホルミン服用が病理学的完全奏功率と独立に相関していた。メトホルミン服用は放射線治療後の再発の低下とも関連していた。 
結論:メトホルミンの併用は食道がんの化学放射線療法の治療効果を用量依存的に高め、化学放射線療法の感受性増強剤となる可能性が示唆された

早期乳がんにおけるメトホルミン:好機術前補助療法の前向き試験(Metformin in early breast cancer: a prospective window of opportunity neoadjuvant study.) Breast Cancer Res Treat. 135(3):821-30. 2012
【要旨】 
メトホルミンはインスリン介在性(insulin-mediated)の直接作用あるいはインスリンとは関連しない(insulin-independent)間接作用によって抗がん作用を示す。我々は、手術可能な乳がん患者を対象に、手術前の限られた期間(window of opportunity)にメトホルミンを投与する術前化学療法の効果について検討した。 
新たに診断された治療をまだ受けていない、糖尿病でない乳がん患者に、確定診断のための針生検の後から手術の直前までメトホルミンを1日1500mg(500mg x 3回/日)投与した。 
臨床所見(体重、症状、生活の質)と血液検査(空腹時血清インスリン濃度、血糖値、インスリン抵抗性指数(homeostasis model assessment :HOMA)、C-反応性蛋白(CRP)、レプチン)はメトホルミン服用の前後で比較し、針生検で得たがん組織と摘出したがん組織のTUNEL染色(terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP nick end labeling :アポトーシスを検出する染色法)とKi67スコア(増殖のマーカー)についても同様に比較した。 
39名の乳がん患者がこの研究に参加した。平均年齢は51歳で、メトホルミンを服用した期間は13日~40日で中央値は18日であった。手術前日の夜間まで服用した。 
51%はT1(大きさが2cm以下)で、38%でリンパ節転移を認め、85%はエストロゲン受容体あるいはプロゲステロン受容体が陽性で、13%はHER2の過剰発現を認めた。 
中等度の自制できる吐き気(50%)、下痢(50%)、食欲不振(41%)、腹部膨満(32%)の副作用をそれぞれ括弧内の率で認めたが、生活の質(QOL)を評価するEORTC30-QLQ function scalesでは有意な低下は認めなかった。 
ボディマス指数(BMI)(-0.5 kg/m2, p < 0.0001)と体重(-1.2 kg, p < 0.0001)とHOMA (-0.21, p = 0.047) は統計的有意に減少した。血中インスリン値(-4.7 pmol/L, p = 0.07)とレプチン (-1.3 ng/mL, p = 0.15) と CRP (-0.2 mg/L, p = 0.35)は減少傾向を認めたが統計的な有意差は認めなかった。 がん組織におけるKi67染色スコア(細胞増殖の割合)は 36.5 から 33.5 %(p = 0.016) に有意に減少し、 TUNEL 染色(アポトーシスを起こしている細胞)は0.56 から1.05( p = 0.004)に有意に増加した。手術前の短期間のメトホルミン投与は忍容性が高く、抗がん作用と一致する臨床所見とがん組織の変化を示した。生存期間のような臨床的エンドポイントを用いて適切な臨床試験を実施し、メトホルミンの抗がん作用に関する臨床的妥当性の評価が必要である。

解説: 
この論文はカナダのトロント大学のマウント・サイナイ病院とプリンセス・マーガレット病院(Mount Sinai Hospital and Princess Margaret Hospital)の腫瘍血液内科部門(Division of Medical Oncology and Hematology)からの報告です。 
タイトルにある「a prospective window of opportunity neoadjuvant study」の「neoadjuvant」というのは術前化学療法のことで、「prospective study」は前向き試験のことです。windowというのは、この場合は「範囲、実行可能時間枠、限られた短い時間」を言う意味で、opportunityは「機会、好機」ということで「window of opportunity」は「限られた時間での治療の機会」という意味です。つまり、「乳がんの診断が確定してから実際に手術が行われるまでの限られた機会を利用して、メトホルミンの術前化学療法としての効果を評価する前向き試験」を行ったということです。 
この研究では、メトホルミンを1日1500mg(1回500mgを3回)投与しています。投与期間は中央値が18日(13~40日)と比較的短期間の投与ですが、臨床症状や血液検査で、抗がん作用を示唆する結果が得られています。 
メトホルミンは2型糖尿病の治療薬ですが、インスリンの分泌を促進するのではなく、細胞のインスリン感受性を高める(インスリン抵抗性を改善する)作用なので、糖尿病でなくても血糖を下げ過ぎることは無いので、1日1500mgでも問題ないようです。

メトホルミンは試験管内(in vitro)および生体内(in vivo)において卵巣がんのがん幹細胞をターゲットにする(Metformin targets ovarian cancer stem cells in vitro and in vivo.)Gynecol Oncol. 2012 Nov;127(2):390-7. 
【要旨】 
目的:婦人科がん以外のがん細胞を使った研究では、メトホルミンががん幹細胞の増殖を阻害することが示されている。 
糖尿病をもつ卵巣がん患者における研究では、メトホルミンを服用しているグループでは服用していないグループに比較して生存率が高いことが示されている。この研究の目的は、卵巣がんのがん幹細胞に対するメトホルミンの作用を検討することである。 
方法:培養した卵巣がん細胞株の増殖と生存率に対するメトホルミンの作用はトリパンブルー染色法にて評価した。アルデヒド脱水素酵素(Aldehyde dehydrogenase: ALDH)を発現しているがん幹細胞はFACS(フローサイトメトリー)で定量した。培養した卵巣がん細胞株やヒト卵巣がん組織から分離したがん幹細胞の増殖に対するメトホルミンの作用はスフェアアッセイ法(がん細胞は非接着条件で培養すると殆どの細胞が死ぬが、がん幹細胞はsphereを作って生育できることを利用したがん幹細胞の試験法)で検討した。 
生体内(in vivo)におけるメトホルミンの治療効果と抗がん幹細胞効果は、培養がん細胞とALDH陽性のがん幹細胞を移植した腫瘍で確認した。 
結果:メトホルミンは培養卵巣がん細胞の増殖を顕著に抑制した。この抑制効果はシスプラチンと相加的に作用した。メトホルミンがALDH陽性の卵巣がん幹細胞を減少させることはフローサイトメトリー分析で確認された。生体内(in vivo)の試験で、全ての卵巣がん細胞株の移植腫瘍に対するシスプラチンの増殖抑制作用を著明に増強した。さらに、メトホルミンはALDH陽性のがん幹細胞の移植腫瘍の増殖を抑制した。この作用はALDH陽性がん幹細胞と細胞増殖と血管新生の減少と関連していた。 
結論;培養(in vitro)と生体内(in vivo)の実験系でメトホルミンは卵巣がん幹細胞の成長と増殖を抑制することができるこの作用は培養卵巣がん細胞株とヒト卵巣がん組織から分離したがん幹細胞のプライマリーカルチャーの両方において当てはまる。これらの結果は卵巣がん患者にメトホルミンを使用する理論的根拠となる。

肝内胆管がんのリスク要因:メトホルミン服用と発がんリスク低減の関係(Risk factors for intrahepatic cholangiocarcinoma: Association between metformin use and reduced cancer risk.)Hepatology. 2012 Oct 11. doi: 10.1002/hep.26092. [Epub ahead of print]
米国のメイヨークリニック(Mayo clinic)からの報告で、612例の肝内胆管がん患者と594例のコントロールを比較したケースコントロール研究では、糖尿病は肝内胆管がんの発生率を3.6倍に増やし、糖尿病患者の中で、メトホルミンを服用している人は服用していない人に比べて肝内胆管がんの発生率が60%減少する(オッズ比0.4: 95%信頼区間0.2-0.9, P=0.04)ことが報告されています。

2型糖尿病患者における肝臓がん予防のためのメトホルミン:システマティック・レヴューとメタ解析(Metformin for liver cancer prevention in patients with type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis.) J Clin Endocrinol Metab. 97(7): 2347-53, 2012 
メトホルミンは2型糖尿病患者における肝臓がんの発生率を62%減少させる(オッズ比0.38: 95%信頼区間 0.24-0.59)という結果が、総計105,495人を対象にした5つの試験のメタ解析で報告されています。

以上の論文は2012年に発表された論文の一部ですが、多くのがん研究者がメトホルミンの抗がん作用に注目していることが判ります。とくに、がん幹細胞の抗がん剤や放射線治療に対する感受性を高める作用が重要です。抗がん剤治療や放射線治療後に再発するのは、がん幹細胞がこれらの治療に抵抗性を示し生き残るからです。 
現在数多くの臨床試験が進行中で、大規模な臨床試験で証明されるまでは、その有用性はまだ確定できませんが、現時点では、多くのがんの治療にメトホルミンを1日500~1500mgを併用する意義は高いようです。 
メトホルミンにはメモリーT細胞に作用して免疫力を増強する作用や、がん性悪液質の改善効果があることが報告されています。 
また、AMPKの活性化はカロリー制限と同じ効果を発揮するので、ケトン食療法にメトホルミンを併用すると抗腫瘍効果を高めることができます。ケトン食とメトホルミンを併用するとがんの縮小効果が高まるという以下のような論文が報告されています。

ケトン食と糖新生阻害作用のある抗糖尿病薬のメトホルミンの併用による血糖値の完全なコントロールはがんの治療法として可能性がある(The complete control of glucose level utilizing the composition of ketogenic diet with the gluconeogenesis inhibitor, the anti-diabetic drug metformin, as a potential anti-cancer therapy.)Med Hypotheses. Med Hypotheses. 77(2):171-3, 2011 
【要旨】糖質をカロリーを制限したケトン食はがんの増殖を15~30%低下させる。肝臓や腎臓では糖新生によってグルコースができている。この糖新生を阻害すれば、ケトン体食の抗腫瘍効果を高めることができる。糖新生を阻害する薬として有効なのが糖尿病の治療に使われるメトホルミンで、ケトン食とメトホルミンを併用すると抗腫瘍効果を高めることができる。

この論文の著者にメールで問い合わせると、動物実験では、ケトン食とメトホルミンの併用で移植腫瘍の増殖を60%阻害したということでした。

ただし、がん治療でのメトホルミンの使用は保険適用外で、自己責任での使用になります。また、重度の肝障害や腎臓障害があるときは、メトホルミンの服用は乳酸アシドーシスを引き起こして危険です。医師の指導のもとに行ってください

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