CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】六人の嘘つきな大学生

2021-07-06 21:21:48 | 読書感想文とか読み物レビウー
六人の嘘つきな大学生  作:浅倉秋成

面白い推理小説だった
就職活動の最終選考が、ちょっと変わったグループディスカッションになって
そこに選ばれた6人の大学生たちの行動と、グループディスカッションで起きる
不穏な事件とを追っかけていく物語でありました
かなり凝っていて、凄く丁寧にヒントが積み上げられているので
しっかり読んでいったら、なるほどなと謎というか、
犯人がわかってしまうのは、ある意味惜しいというか、
そういう読み方せずにいたいのに、謎を解かせたがるような筆運びに
ついつい、あれこれと考えながら読んで
無事、その回答にたどり着いて満足だったのでありました
作者に踊らされてしまったようにも思うが、悔いは無い

謎解きを丁寧に、主人公と一緒になって進めていけるような感じなので、
達成感というか、解けたという感覚は楽しかったのだけども
結構、二転、三転と、他人の評価がめまぐるしく変わるという情景が
生々しいというか、訴えたかった内容と合致していて
なるほどなぁとも思わされてしまうのだが、
最終的には、とても救われた内容で〆てくれるので
清清しいお話になっておりました
ただ、それゆえにというか、えらい丁寧に逆転というか、
気持ちのよい答えへと行き着いてしまうので
若干物足りないと思ってしまうのもまた、
困ったものである、なんか、すわりがよすぎるんじゃないかとか
感じてしまったのだ

就職活動で、どれほどの人事担当が、
学生たちの本当のことをわかるというのだろうという、
ごく当たり前のそれを現実的に描いた内容だとも思えて、
結局人が、人を選ぶということは
つまりそういうことなのだなと
運といっても差し支えない揺らぎが存在する
システムとしてはきわめて不十分なそれで、
そこに向けて四苦八苦する学生たち、そして、人事担当者、
両者の喜劇めいたものでもあるなというのは
考えさせらられるというか、むしろ、考えることを止めさせられるような内容だった

運命を左右する数十分というのも間違いないところだが、
それは、選択が決定するだけで、正解を選ぶか選ばないかという
試験の結果とは異なるものだなと改めて思うのでありました
もっとも、どこもかしこも就職できなかったというならば、
この言は生ぬるいことになるので
おおっぴらに、就職活動を気に病むなというのもまた
違うなぁと反省ではないが、考えてしまうのでありました