CLASS3103 三十三組

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【読書】推し、燃ゆ

2021-04-03 20:47:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
推し、燃ゆ  作:宇佐見りん

芥川賞らしい小説だった
そうだ、俺の知っている芥川賞はこういう小説だ
物凄くしっくりきたというか、かくありと思うほど
陰鬱とも違うが、何か重たい、どうしようもない激情が
まさに蠢いているといった感じを覚える内容だった

話は、アイドルを推している、それも派手に熱狂的にというではなく、
ある種狂気にも似た、でも静かに支持している、これが推すということかと
読みながら学ぶかのように、どっしりとした
ファンの鑑のような描写と、その内にある鬱屈が見事だった

いわゆる普通の生活がうまくできない、
勉強もできないし、食器を片付けたり、掃除をしたりできない
発達障害なのかとも思える主人公が、
ただ、アイドルを推すときだけ、とても精力的にこなせる、
その語録をまとめたり、様々なレビューを書いたりして
ガチ勢として、SNSではちょっとした有名人になっているけども、
そんなことはどうでもよくて、
ただ、推している、推すということがすべてという
独特な心の動きが興味深かった

やがて、アイドルが引退するという別れをどのように受け止めるか
想像もできないまま、本当にそのときを迎えてと
このあたりからの流れ、人格というか、人間としての形を失っていくかのような、
おそらくこれが喪失というものだと思ったんだが、
破壊と再生に至らない、残滓のようなものが見事に描かれていて
濃い絶望と、ひょっとしたらという一縷が見える小説だった

芥川賞を堪能した