CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ブルー Blue

2019-08-26 20:47:34 | 読書感想文とか読み物レビウー
ブルー Blue  作:葉真中 顕

平成の30年間を舞台にして、その頃から現代に続く、
日本の病巣といえばよいか、暗い闇のような事実を取り扱った、
サスペンス小説でありました
ミステリ要素はあまりないのだけども、
とある殺人事件をきっかけに、それにかかわりのある人たちを訪ねて、
やがてといった感じで、なかなか読み応えのある内容でありました

平成元年に望まれぬ子として生まれ、認知はおろか、
出生届も出されなかった少年、ブルーと呼ばれた男の子の
そのおかれた立場や、環境、周辺の親族というのが
まずもって、世の中にこういう人たちがいるのだと
思わされる何彼でありまして、
なかなか積まされる感じでありました
物語冒頭から語られる、彼自身は平成とともに生まれて、
平成とともに死んだという話から、
読み続けていくと、その日に近づいていくのはわかるんだが、
結構古い平成の話が興味深くて、
ついつい読まされてしまうのでありました

事件は、平成15年に起きていて、
容疑者の詳細や、様々な出来事を紡いでいくことで、
平成の前半が語られ、
また、別の事件によって、後半の平成が語られるようでもあり
懐かしさも交えて、面白い読書となったのでありました
その間に、狂騒した人々や、知らないうちに増えている外国人労働者、
その劣悪な環境なんかも示唆、あるいは、直接的に描写されて、
病巣ではないが、ずっとあった事実というものに
目を向けさせられるのでありました

物語は真相究明を軸にして、そこに関わった人たちの
心の問題なんかも取り扱ったりして、
時代だけではなく、人間そのものとして、
他人を愛す、愛されるということに
酷く不得手な人がいるというところも描写され、
単純に平成を懐かしみ、また、そこにあったであろうことにかこつけて、
何かを罵倒するわけではなく、
人間という存在そのものに、そういった多様性が包含されていると
思い知らされるようでありました

すっきりとはしないのだけども、色々考えさせられて
面白い小説だったと思うのであります