
ゲイリームーアというギタリストが、昨日、スペインのホテルで、突然この世を去りました(訃報はこちらなど)。
今日会った友人ミュージシャンに聞かされ、僕も「・・・え?」でした。
その後、別な友人に「ねえ、知ってた?」と伝えると、その友人は、そのまましばらく固まってしまいました。
ゲイリーは、まず、あの強力なピックングと正確なテクニックと、ものすごいチョーキング(雑誌のチョーキングの凄いギタリストランキングではいつも一位でした)で、
ハードロック・ギタリストとして有名になり、大成功しまましたが
その後、突然
「俺、これからブルーズ・ギタリストになる。もうハードロックはやめた。」
と宣言し、僕たちをビックリさせました。
ハードロック界の失意は、それはそれは大きいものでした。
例えてみますと、そうだなあ、
・・・浅田真央ちゃんが
「私、スピードスケート選手になります。もう、二度とフィギュアはやりません」
とか、
イチロー選手が、
「俺、明日からソフトボールで世界一を目指すよ。もう二度と野球はやらない。」
とか、
餃子の王将が、
「明日から漬物屋さんになります。二度と餃子は焼きません」
とか
もういいか(笑)。
とにかく、「えーっ、もうゲイリーのハードロック、聴けないの?うっそーん
!」
というのは、皆が思ったことだと思います。
名盤「コリドールズ・オブ・パワー」に入ってる「Don't take me for a loser」とか「Falling In Love With You」(古いけど、いい・・・。懐かしいです
。)、
もっと遡れば、バカテクバンド、コロシアムllのこの曲「Inquisition」とかー(ドン・エイリーのセットにはミニモーグなども見えますねー
。ちなみに第一期のべースは、あのニール・マーレイ!・・・VOWファンなら、ニヤリですよね
)。
・・・うん、やっぱり、いい。
浸ってしまいます。
でも、お話を先に進めますね。
ってか、
「ブルーズからハードロックに転向するならともかく、逆なんて聞いたことないよねえ。」
「なんで華やかなハードロックの世界から、地味なブルーズの世界に・・・」
なんて思ったものです。仲間と、話したものです。
これにはちょっと説明が必要ですね。
当時はハードロックは世界的に全盛期だったのです。
大きなスタジアムやアリーナでばんばんコンサートが出来て、ステージや照明もど派手で、華やかで、たぶん、色んな意味で、ミュージシャンの待遇としては、とっても良い環境だったと思われるわけで。
だから、当時のロック・キッズは、当然のようにハードロックミュージシャンに憧れ、目指したり、そうでなくとも一度は通るのが当たり前のような風潮すらあったのです(いや、まあ、僕の周りではね
。全然違う世界もありましたけれども(笑))。
それに当時は、ブルーズは“もはや古い過去のもの”なんて認識でね。なんか、楽器の勉強の最初の段階で習う枯れたもの、というような捉えられ方をしていたと思います。
そりゃあブルーズは出来たほうがいいだろうけどさ、、今の時代、改めてそれを追及するのはなあ・・・というような感じ。
おじさんがやるもんじゃないの?みたいな。(←勿論、この認識は間違っています。当時は僕も、周りのキッズも若かった
。・・・ブルーズは、人生をかけて追求するに値する、素晴らしい音楽です
。また、上のスピードスケートやソフトボールの話はあくまで一時的な例えです。そちらのファンの方や選手の方は、誤解のなきようお願いいたしますね。)
まして、大成功してるハードロックの道を捨ててなんて・・・。
と思っていたのです。
この曲を、聴くまでは。
Still Got the Blues(You Tubeビデオ)
http://www.youtube.com/watch?v=Xx3yXUunEq8
このアルバムを手にするまでは。
Still Got the Blues(アルバム)
http://www.amazon.co.jp/Still-Got-Blues-Gary-Moore/dp/B000000WHC
「なんだっ、カッコいいじゃん!やっぱ、ゲイリー、スゲーッ!ブルースも、いいねぇっ」
逆に、ブルースそのものの良さは勿論、ブルースがちゃんと出来ることのカッコよさを再認識させてくれたりもして。
ってか、アルバムには本物のブルーズメンが沢山参加してるんですけど、そんな凄い人たちを向こうに、真っ向勝負してるゲイリーがかっこ良くて
。
ってかさ、やりたかったんですよね。
本当は、こういうことが。
彼は、それに気付いて、自分を裏切れなくなって、そして、それを貫いたんですよね。
最高の生き方じゃないですか。ねえ。
僕、このアルバムで一番好きなのは、勿論、曲たちはどれも素晴らしいのですが、なんといっても、
・・・このジャケットの写真なんです。
向かって右側のね、白黒の、小さな身体にはまだちょっと大きすぎる、レスポールを弾く子どもの方が表紙です。
アナログのレコードプレーヤー、壁には、きっと彼のヒーローなんでしょう、ジミヘン(ドリックス)のポスターが。
そして、裏表紙は、向かって左側、ゲイリーの写真。
ホテルの一室、缶ビール、ルームサービスに、CDプレーヤー。
でも、床に散らばっているアルバムは、昔も今も、古いブルーズの名盤たち。
そして、ギターとアンプは、変らずにずっと、レスポールにマーシャル。
薄暗い部屋で一人ギターを弾いていた少年が、やがて、世界の誰もが賞賛を惜しまない最高のギターヒーローになった・・・。
素敵でしょう。
でも、そのギター・ヒーローは、まだほんの58歳という若さで、突然、逝ってしまった。
金髪長髪のMから、さっき、メールが。
「今日は泣きっ放しだよ。」って。
わかるよ。
僕も、ここに紹介しようとして映像とか見てたら、なんだか、身体に力が入らなくなっちゃってるもの。
人の死に接した時、訃報を聞いたとき、いつも思うんですけど、
失ってから、ようやくというか、初めて、その本当の偉大さがわかるなんてね。
普段、一体、どこをよそ見していたんだろう、と、
なんと勿体無いことをしていたのか、と思います。
さようなら、ゲイリー。世界一熱いチョーキングと、とろけるようなビブラートを、ありがとうでした。
また、いつか、聞かせて下さいね。
R.I.P.
ではー。