【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】 1-2 博覧強記 経営は心でする
四字熟語というのは、漢字四文字で構成された熟語であることはよく知られています。お恥ずかしいながら、その四字熟語というのは、すべてが中国の故事に基づくものとばかり思っていましたが、実はそうではないことを発見しました。
経営コンサルタントという仕事をしていますが、その立場や経営という視点で四字熟語を”診る”と、今までとは異なった点で示唆を得られることが多のです。「目から鱗が落ちる」という言葉がありますが、四字熟語を講演や研修の場で用いたり、自分の仕事や日常会話に活かしたりするようにしましたら、他の人が私を尊敬といいますとオーバーですが、自分を見てくれる目が変わってきたように思えたことがあります。
四字熟語の含蓄を、またそこから得られる意味合いを噛みしめますと、示唆が多いですので、企業経営に活かせるのではないかと考えるようにもなりました。これを「目鱗経営」と勝手に造語し、命名しました。
以前にも四字熟語をご紹介していましたが、一般的な意味合いを中心にお話しました。このシリーズでは、四字熟語を経営の視点で診て、つぶやいてみます。以前の四字熟語ブログもよろしくお願いします。
■ 第1章 心の経営と経営の心
1970年代から半世紀もの永きにわたり経営コンサルタントとして、経営者・管理職の皆さんと接してきました。
【心 de 経営】を標榜してきました。【心 de 経営】は、二つの意味を兼ねたものです。「経営の心」すなわち、経営を行う真髄はなにかを、また「心で経営」は、人間性を大切にした、相手を思いやる気持ちを大切にする経営や自己管理を含む管理のあり方を、ノウハウ本としてではなく、読者それぞれに、行間を補完しながら、それぞれの方に適した形で感じ取っていただきたいのです。
本章では、経営者として、あるいは管理者としてのあり方を中心に四字熟語から選択して、私見をまとめてみました。
1970年代から半世紀もの永きにわたり経営コンサルタントとして、経営者・管理職の皆さんと接してきました。
【心 de 経営】を標榜してきました。【心 de 経営】は、二つの意味を兼ねたものです。「経営の心」すなわち、経営を行う真髄はなにかを、また「心で経営」は、人間性を大切にした、相手を思いやる気持ちを大切にする経営や自己管理を含む管理のあり方を、ノウハウ本としてではなく、読者それぞれに、行間を補完しながら、それぞれの方に適した形で感じ取っていただきたいのです。
本章では、経営者として、あるいは管理者としてのあり方を中心に四字熟語から選択して、私見をまとめてみました。
■ 博覧強記 経営は心でする
~ よく学び、自分のモノとする ~
西郷隆盛の名言「敬天愛人(けいてんあいじん)」は、旧出羽庄内藩の関係者が西郷隆盛から聞いた話をまとめた「南洲翁遺訓」に記されています。訓読みしますと「天を敬い、人を愛す」となります。「天」は、大和言葉の「高天原(たかまのはら)」という言葉からも空とか大空を表すのが一般的です。「天地万物の主宰者。造物主。帝。神。大自然の力(広辞苑第六版)」という意味もあります。仏教用語では天上に住む神々という意味でもあります。
「敬天」は、「天、天上を畏敬する、おそれ敬う」という意味です。「愛人」は人をいつくしみ愛することです。この「敬天愛人」という四字熟語は、社長室などに額に納められたりしていることがありますが、私はどういうわけか、この言葉と「博覧強記(はくらんきょうき)」という四字熟語が結びついてしまいます。
宗教を深く信じているわけではありませんが、ものごとがうまく行ったときには、何かに向かって「ありがとうございます」と心の中で、時には口に出していいます。その時の対象が特定の神様や仏様ではなく、「天」であるように私には思えます。
自分が心穏やかでありたいというのは、知識として吸収したり、書物から学んだりすることは難しいですが、「博覧強記」でありたいという思いから「蛍雪之功(けいせつのこう)」という四字熟語に連鎖します。
夏は蛍の光、冬は雪の反射光を利用して学ぶということから「苦労して学問に励む」という意味です。「蛍窓雪案(けいそうせつあん)」ともいいます。もともとは貧乏で夜本を読むための灯火に使う油を買うことができなかった中国・晋の国に住む車胤(しゃいん)と孫康(そんこう)の逸話から来ています。車胤は蛍を集めてその光で勉強したそうです。また孫康(そんこう)は雪明かりで学んだという故事があります。(四字熟語辞典)
「刻苦勉励(こっくべんれい)」は「刻苦」は「苦しみに耐える」「勉励」は、「勉め励む」という意味ですので、「一所懸命に勉学や仕事に勤(いそ)しむ」ということです。心身に苦を刻み込むほど、非常なる努力をする様子を言います。反対に、給料泥棒のことを「尸位素餐(しいそさん)」と言います。「尸位」は、「自分では能力があるわけではなく、家柄で高い地位に就く」ということで、「素餐」は「何もしないで飯を食う」ということです。このことから「尸位素餐」とは「高い地位に就いているにもかかわらず、職責を果たさない給料泥棒」のことを指します。しばしば、二代目の息子が、会社の専務の職に就き、「何にも専務」でいるような時に使う表現です。
「博覧強記」に戻りますが、「博覧」は、「博覧会」とか「博覧に供す」という使い方の時は、「ひろく一般の人々が見ること(広辞苑)」という意味です。しかし、ここでは「ひろく書物を見て物事を知ること(広辞苑)」という違う意味で使われています。
平家物語に「博覧清潔にして」というくだりがありますが、名を残している人は書物を読み、博識であることが多いことが記述されています。
「強記」は、「記に強い」すなわち「記憶力の良い」ことです。すなわち、「博覧強記(はくらんきょうき)」というのは、「広く書物を読み、博識で、かつそれらを良く覚えていること」という意味になります。
私事になりますが、永年経営コンサルタント業に携わってきました。かつては、経営コンサルタントというのは博覧強記な人であれば、その業として仕事をすることができました。と言いますより、そのような経営コンサルタントが一般的な時代で、「経営コンサルタントというのは、博覧強記たるべし」ということを若輩者の私に教えてくれる先輩が多数いたものです。
知識や情報が偏在している時代には、経営者・管理職との知識や情報格差を用いて、それを吐露することで、経営コンサルタントという仕事をすることができたのです。知識や情報の差だけで仕事をするのでは、真の経営コンサルタントとは言えません。ところが、残念ながら昨今においてもコンサルタントの中にそのような人が結構います。インターネットが発達している昨今、知識や情報格差だけでは経営コンサルタント業をやることは困難な時代になって来ています。そのようなコンサルタントは、経営者・管理職から見抜かれて、やがては「自然淘汰(しぜんとうた)」されてゆくでしょう。経営者・管理職が経営コンサルタントを選ぶときに注意すべきポイントのひとつと言えます。
「自然淘汰」は、ダーウィンが進化論の中で用いた言葉といわれています。もちろんイギリス人のダーウィンですので、日本語の四字熟語で行ったわけではありません。因みに英語で「natural selection」といいます。「淘汰」は「良いものと悪いものとをより分ける」という意味です。
選ぶということでは「取捨選択(しゅしゃせんたく)」があります。「取捨」は、「保存しておくべきものと捨てるもの」をいうことから、「悪いものや不要なものを捨て、良いもの、価値あるもののみを選り分ける」とう意味です。
今日のように高度な経営が求められる時代には、経営者・管理職も経営コンサルタントも「高度な博覧強記」が必要です。それを一人でこなせるようなスーパーマンは存在しないでしょうし、たとえ存在したとして、知識や情報だけでは経営はやってゆけません。
経営というのは自分の専門分野においては、知識や経験から滲み出てくる智恵を活かせなければ、うまく切り盛りをすることは難しいでしょう。すなわち「博覧強智(はくらんきょうち)」でないと昨今の時代には、企業は生き残れないのです。(博覧強智は、私による造語です)
企業というのは生き物ですから、一部分だけの博覧強智では、専門分野における部分最適な経営ができても、それは必ずしも全体最適とはいえません。再び経営コンサルタントの話で恐縮ですが、本格的なコンサルティングは、複数の専門家とそれをコーディネートできるリーダーで構成されたチームでなければ対応できない、難しい時代になってしまっています。それだけに経営者一人では、企業経営の舵取りが難しい時代とも言えます。
他方で、有能な人材を多数企業が雇用したり経営コンサルタントなどの外部からの人材を取り入れたりしていては人件費がかさみ、固定費が高くなってしまいます。その対応策として、例えば平素は、外部ブレインとして経営コンサルタントを、ゼネラルドクターや町医者のように使って、企業全般を観察してもらい、経営理念や経営計画からできるだけ逸脱しないように経営を注視してもらいます。そして、その外部ブレインが専門外の課題に対処するときには、専門家集団で対応してもらうことが現実的な対応といえます。
私の職業である経営コンサルタント仲間の中には、研究熱心で、論文や書籍をたくさん書いている人がいます。そのような人は知識も豊富でしょうから、私がその人と議論をしても太刀打ちできないかも知れません。
しかし、そのような経営コンサルタントの中には、自分の博識をひけらかし、難しい話をして相手を煙に巻く人もいます。「カミソリのように切れる・・・」と言われては得意げになっています。それで飯が食えると思っている人もいます。
経営は心でするものです。心が通じ合わなければ、社員は動きません。経営者・管理職や社員達と経営コンサルタントなどの外部ブレインが共鳴・共感しあえる経営でないと、ゴーイングコンサーン、すなわち企業の継続制が損なわれかねません。テレビやマスコミで、頭でっかちの「コンサルタント」というような人を見かけますが、企業に行ってそれを実践させたらおそらくその企業は衰退・倒産に繋がってしまうでしょう。
なぜなら、頭でっかちでは、心が通い合わないからです。
企業経営も経営コンサルタント業も、時代に応じた臨機応変な対応が必要となります。
~ よく学び、自分のモノとする ~
西郷隆盛の名言「敬天愛人(けいてんあいじん)」は、旧出羽庄内藩の関係者が西郷隆盛から聞いた話をまとめた「南洲翁遺訓」に記されています。訓読みしますと「天を敬い、人を愛す」となります。「天」は、大和言葉の「高天原(たかまのはら)」という言葉からも空とか大空を表すのが一般的です。「天地万物の主宰者。造物主。帝。神。大自然の力(広辞苑第六版)」という意味もあります。仏教用語では天上に住む神々という意味でもあります。
「敬天」は、「天、天上を畏敬する、おそれ敬う」という意味です。「愛人」は人をいつくしみ愛することです。この「敬天愛人」という四字熟語は、社長室などに額に納められたりしていることがありますが、私はどういうわけか、この言葉と「博覧強記(はくらんきょうき)」という四字熟語が結びついてしまいます。
宗教を深く信じているわけではありませんが、ものごとがうまく行ったときには、何かに向かって「ありがとうございます」と心の中で、時には口に出していいます。その時の対象が特定の神様や仏様ではなく、「天」であるように私には思えます。
自分が心穏やかでありたいというのは、知識として吸収したり、書物から学んだりすることは難しいですが、「博覧強記」でありたいという思いから「蛍雪之功(けいせつのこう)」という四字熟語に連鎖します。
夏は蛍の光、冬は雪の反射光を利用して学ぶということから「苦労して学問に励む」という意味です。「蛍窓雪案(けいそうせつあん)」ともいいます。もともとは貧乏で夜本を読むための灯火に使う油を買うことができなかった中国・晋の国に住む車胤(しゃいん)と孫康(そんこう)の逸話から来ています。車胤は蛍を集めてその光で勉強したそうです。また孫康(そんこう)は雪明かりで学んだという故事があります。(四字熟語辞典)
「刻苦勉励(こっくべんれい)」は「刻苦」は「苦しみに耐える」「勉励」は、「勉め励む」という意味ですので、「一所懸命に勉学や仕事に勤(いそ)しむ」ということです。心身に苦を刻み込むほど、非常なる努力をする様子を言います。反対に、給料泥棒のことを「尸位素餐(しいそさん)」と言います。「尸位」は、「自分では能力があるわけではなく、家柄で高い地位に就く」ということで、「素餐」は「何もしないで飯を食う」ということです。このことから「尸位素餐」とは「高い地位に就いているにもかかわらず、職責を果たさない給料泥棒」のことを指します。しばしば、二代目の息子が、会社の専務の職に就き、「何にも専務」でいるような時に使う表現です。
「博覧強記」に戻りますが、「博覧」は、「博覧会」とか「博覧に供す」という使い方の時は、「ひろく一般の人々が見ること(広辞苑)」という意味です。しかし、ここでは「ひろく書物を見て物事を知ること(広辞苑)」という違う意味で使われています。
平家物語に「博覧清潔にして」というくだりがありますが、名を残している人は書物を読み、博識であることが多いことが記述されています。
「強記」は、「記に強い」すなわち「記憶力の良い」ことです。すなわち、「博覧強記(はくらんきょうき)」というのは、「広く書物を読み、博識で、かつそれらを良く覚えていること」という意味になります。
私事になりますが、永年経営コンサルタント業に携わってきました。かつては、経営コンサルタントというのは博覧強記な人であれば、その業として仕事をすることができました。と言いますより、そのような経営コンサルタントが一般的な時代で、「経営コンサルタントというのは、博覧強記たるべし」ということを若輩者の私に教えてくれる先輩が多数いたものです。
知識や情報が偏在している時代には、経営者・管理職との知識や情報格差を用いて、それを吐露することで、経営コンサルタントという仕事をすることができたのです。知識や情報の差だけで仕事をするのでは、真の経営コンサルタントとは言えません。ところが、残念ながら昨今においてもコンサルタントの中にそのような人が結構います。インターネットが発達している昨今、知識や情報格差だけでは経営コンサルタント業をやることは困難な時代になって来ています。そのようなコンサルタントは、経営者・管理職から見抜かれて、やがては「自然淘汰(しぜんとうた)」されてゆくでしょう。経営者・管理職が経営コンサルタントを選ぶときに注意すべきポイントのひとつと言えます。
「自然淘汰」は、ダーウィンが進化論の中で用いた言葉といわれています。もちろんイギリス人のダーウィンですので、日本語の四字熟語で行ったわけではありません。因みに英語で「natural selection」といいます。「淘汰」は「良いものと悪いものとをより分ける」という意味です。
選ぶということでは「取捨選択(しゅしゃせんたく)」があります。「取捨」は、「保存しておくべきものと捨てるもの」をいうことから、「悪いものや不要なものを捨て、良いもの、価値あるもののみを選り分ける」とう意味です。
今日のように高度な経営が求められる時代には、経営者・管理職も経営コンサルタントも「高度な博覧強記」が必要です。それを一人でこなせるようなスーパーマンは存在しないでしょうし、たとえ存在したとして、知識や情報だけでは経営はやってゆけません。
経営というのは自分の専門分野においては、知識や経験から滲み出てくる智恵を活かせなければ、うまく切り盛りをすることは難しいでしょう。すなわち「博覧強智(はくらんきょうち)」でないと昨今の時代には、企業は生き残れないのです。(博覧強智は、私による造語です)
企業というのは生き物ですから、一部分だけの博覧強智では、専門分野における部分最適な経営ができても、それは必ずしも全体最適とはいえません。再び経営コンサルタントの話で恐縮ですが、本格的なコンサルティングは、複数の専門家とそれをコーディネートできるリーダーで構成されたチームでなければ対応できない、難しい時代になってしまっています。それだけに経営者一人では、企業経営の舵取りが難しい時代とも言えます。
他方で、有能な人材を多数企業が雇用したり経営コンサルタントなどの外部からの人材を取り入れたりしていては人件費がかさみ、固定費が高くなってしまいます。その対応策として、例えば平素は、外部ブレインとして経営コンサルタントを、ゼネラルドクターや町医者のように使って、企業全般を観察してもらい、経営理念や経営計画からできるだけ逸脱しないように経営を注視してもらいます。そして、その外部ブレインが専門外の課題に対処するときには、専門家集団で対応してもらうことが現実的な対応といえます。
私の職業である経営コンサルタント仲間の中には、研究熱心で、論文や書籍をたくさん書いている人がいます。そのような人は知識も豊富でしょうから、私がその人と議論をしても太刀打ちできないかも知れません。
しかし、そのような経営コンサルタントの中には、自分の博識をひけらかし、難しい話をして相手を煙に巻く人もいます。「カミソリのように切れる・・・」と言われては得意げになっています。それで飯が食えると思っている人もいます。
経営は心でするものです。心が通じ合わなければ、社員は動きません。経営者・管理職や社員達と経営コンサルタントなどの外部ブレインが共鳴・共感しあえる経営でないと、ゴーイングコンサーン、すなわち企業の継続制が損なわれかねません。テレビやマスコミで、頭でっかちの「コンサルタント」というような人を見かけますが、企業に行ってそれを実践させたらおそらくその企業は衰退・倒産に繋がってしまうでしょう。
なぜなら、頭でっかちでは、心が通い合わないからです。
企業経営も経営コンサルタント業も、時代に応じた臨機応変な対応が必要となります。
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