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【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】1-3 矯角殺牛 謙虚さがこじれ解消の薬 ~ 部分最適が全体最適を損なう ~

2024-04-20 00:03:00 | 【心 de 経営】 経営四字熟語・名言

  【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】1-3 矯角殺牛    謙虚さがこじれ解消の薬 ~ 部分最適が全体最適を損なう ~

 

 
  四字熟語というのは、漢字四文字で構成された熟語であることはよく知られています。お恥ずかしいながら、その四字熟語というのは、すべてが中国の故事に基づくものとばかり思っていましたが、実はそうではないことを発見しました。
 経営コンサルタントという仕事をしていますが、その立場や経営という視点で四字熟語を”診る”と、今までとは異なった点で示唆を得られることが多のです。「目から鱗が落ちる」という言葉がありますが、四字熟語を講演や研修の場で用いたり、自分の仕事や日常会話に活かしたりするようにしましたら、他の人が私を尊敬といいますとオーバーですが、自分を見てくれる目が変わってきたように思えたことがあります。
 四字熟語の含蓄を、またそこから得られる意味合いを噛みしめますと、示唆が多いですので、企業経営に活かせるのではないかと考えるようにもなりました。これを「目鱗経営」と勝手に造語し、命名しました。
 以前にも四字熟語をご紹介していましたが、一般的な意味合いを中心にお話しました。このシリーズでは、四字熟語を経営の視点で診て、つぶやいてみます。以前の四字熟語ブログもよろしくお願いします。

 矯角殺牛    謙虚さがこじれ解消の薬
  ~ 部分最適が全体最適を損なう ~


 中国の歴史書であります玄中記に、牛の角の形がわずかばかりゆがんでいることが気になり、それを矯正しようとしたら牛が死んでしまったという故事が掲載されています。それが「矯角殺牛(きょうかくさつぎゅう)」という四字熟語になりました。「矯」は、「矯正」という熟語にも使われますが、音読みで「ためる」となり「まがっている(正しくない)ものを(まげて)なおす<広辞苑第六版>」という意味があります。
「角をためて(なおして)、牛を殺す」と音読みができます。すなわち、牛の角が曲がってという些細なことを修正するために、大切な牛を殺してしまう」となります。すなわち矯角殺牛というのは、大勢にあまり関係しないような、わずかな欠点を正すために努力をしても、その結果、全体を損なってしまっては何もならないという意味です。(四字熟語辞典)
 類語に「蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)」があります。「蝸牛」は、カタツムリのことで、「角上」は文字通り「角の上」です。カタツムリの左の角には触氏が、右には蛮氏がいて、お互いに領地争いをするという寓話から「些細なことで争う」ことをたとえて言います。牛の角の形のことで煩うより、さらにミクロの世界の話です。因みに「骨肉相食(こつにくそうしょく)」という四字熟語がありますが、「肉親同士が醜い争いをする」ときに用います。「骨肉」は「血縁関係」を指します。
 蝸牛角上は、経営においても言えることです。「全体最適(ぜんたいさいてき)」という四字熟語は企業経営にとって、重要な視点であるために本書でも何度か採り上げています。企業経営にとって「何が重要なのか」という部分にだけ固執してしまいますと、矯角殺牛になり、牛ならぬ、企業を殺してしまうことにもなりかねません。
 企業経営というのは、「全体最適」ということを常に意識し、例えば経営改革をしようと言うときに、どこから手をつけなければならないのかを的確に判断しませんと、せっかくの努力がマイナスの効果に繋がってしまうことがあります。
 私が経営コンサルタントになりたての頃の話です。ある精密機械製造業の顧問先で、収益が良くないので何とかして欲しいという社長の意向に引きずられ、収益改善に重点を置いたコンサルティングをしました。その結果として、売上高は増加傾向になりましたが、利益率は一向に改善されません。
 その原因は、売掛金の管理体制にありました。売上高が伸びたために、どの部門も忙しくなり、社員の負荷が増加してしまいました。管理不充分なことから、ざる管理となってしまい、貴重な利益が隙間から水漏れしていたのです。お恥ずかしいことですが、全体最適なコンサルティングではなかったことにすぐに気がつかなかったのです。売上が拡大することにより、かえって顧問先や社員に迷惑をかけてしまうことになってしまいました。
 社員や部下を見るときも、その人の一部分を見ただけで、全体を理解したと思い込んで「あいつはダメだ」と烙印を押してしまってはならないと思います。「揣摩憶測(しまおくそく)」は「何と根拠もなく、推測だけで勝手に相手の気持ちを察する」という意味です。「揣摩」は「あれこれと憶測を働かせる」ということで「憶測」は、「揣摩臆測(しまおくそく)」というのが本来の表記です。
 私は、立場上、いろいろな人に、お説教じみたことを言わなければならないことがあります。それを「上から目線」というように捉える方もいらっしゃいますので、年齢や地位など各種の要因も考慮に入れ、できるだけ表現には気をつけるようにしています。しかし、経営コンサルタントを永年やっているとそれが染みついてしまっているのか、「拳々服膺(けんけんふくよう)」しているつもりでも後から自分を振り返ってみると多々失礼があったことに思い当たります。「傲岸不遜(ごうがんふそん)」な態度だけはとりたくないと思ってやってきました。「傲」は訓読みで「おごる」、「岸」は「切り立った崖」です。このことから「傲岸」は「おごりたかぶる」ことです。「不遜」の「遜」は「へりくだる」の意味ですので、「へりくだらない」ことを指します。従って「傲岸不遜」は「おごり高ぶった、思い上がった態度」で人を見下す上から目線の謙虚さを欠いた態度のことです。
 類語として「傲慢不遜(ごうまんふそん)」、「傲岸無礼(ごうがんぶれい)」がありますが、得てしてこのような人というのは「厚顔無恥(こうがんむち)」「無知厚顔(むちこうがん)」な態度をとりがちです。「厚かましくて、恥を知らない」ということから、他人の気持ちを斟酌したり、その場の空気を読めなかったりして、自分の考えや都合だけの言動を採ってしまうでしょう。
「拳々」は、両手で捧げ持つ、大切に持つという意味です。「膺」は棟を指しますので「拳々服膺」というのは「心に銘記して、決して忘れることがないように自分に言い聞かせる」という意味です。
「出藍之誉(しゅつらんのほまれ)」、社員や部下のほうが優れていたり、良いところがあったりするかもしれません。これを別項にもありますように「愚者一得(ぐしゃいっとく)」と言います。
「青は藍より出でて藍よりも深し」といいますが、青色染料は、その原料となる藍ほど青くないが、その藍より生まれてさらに素晴らしい色となることです。これと同様で「弟子が師より学び出でて、師を超えて優れる」という意味です。

 相手の人間性を尊重すれば、たとえミスを犯したからと言って、相手を全面的に否定したり、相手のレベルを決めつけたりすることはないと思います。もし、相手がミスをした場合に、一方的に攻めることをしないで、「愚者一得」を思い出すようにしています。すると自分の気持ちが治まってきます。一方、自分がミスを犯すこともあります。
 もし、自分がミスを犯してしまったら、率直に謝るようにします。すると、相手の気持ちが治まりはじめるきっかけとなります。相手が、上司の場合には、謝ってから、現状報告やその理由などを冷静に話します。説明がくどいて、いい訳がましく聞こえ、心証を悪くしてしまいます。また、結論を先に言うと話がこじれてしまうこともあります。相手が感情的になっていることが多いですので、気持ちを和らげることが先決です。感情と事実説明とのバランスが大切です。
 経営コンサルタントの先生方で、「自分は偉い」、「俺の言うことを聞けば会社は必ず良くなる」、と威張っている人がいます。同様に、「自分は社長だから偉い」「部長の俺に従わない部下が悪い」というように振る舞っている人も見かけます。
 人間の能力というのは、それほど大きな違いはなく、たまたまある分野で多少人様よりよく知っている面があるというに過ぎないことが多いのです。それにもかかわらず、自分の能力を過大評価し、尊大な態度を取ることを「夜郎自大(やろうじだい)」といいます。他の人より多少何かを多く知っているということで、反省することなく、知識の切り売りをしていては、いずれ壁にぶち当たり、伸び悩んでしまいます。
 謙虚になれる人こそ、信頼される人なのではないでしょうか。
 
 
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