■【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】6-05 屋上架屋 ムダ・ムラ・ムリ~重複して、ムダのあること

四字熟語というのは、漢字四文字で構成された熟語であることはよく知られています。お恥ずかしいながら、その四字熟語というのは、すべてが中国の故事に基づくものとばかり思っていましたが、実はそうではないことを発見しました。
経営コンサルタントという仕事をしていますが、その立場や経営という視点で四字熟語を”診る”と、今までとは異なった点で示唆を得られることが多のです。「目から鱗が落ちる」という言葉がありますが、四字熟語を講演や研修の場で用いたり、自分の仕事や日常会話に活かしたりするようにしましたら、他の人が私を尊敬といいますとオーバーですが、自分を見てくれる目が変わってきたように思えたことがあります。
四字熟語の含蓄を、またそこから得られる意味合いを噛みしめますと、示唆が多いですので、企業経営に活かせるのではないかと考えるようにもなりました。これを「目鱗経営」と勝手に造語し、命名しました。
以前にも四字熟語をご紹介していましたが、一般的な意味合いを中心にお話しました。このシリーズでは、四字熟語を経営の視点で診て、つぶやいてみます。以前の四字熟語ブログもよろしくお願いします。
■ 第6章 仕事上手になる法
論理思考で現状分析をキチンとし、方向性を明確にしてからPDCAサイクルを回し始めても、実際に行動に移したときに旨くいかないことがあります。やりたいという気持ちはあっても、いざ行動に移そうとしたときに、動けないこともあります。
相手の人を説得したり、納得させたりしても、必ずしも相手は期待通りに動いてくれないことがあります。日常生活においてだけではなく、経営者・管理職にとっては、社員や部下が動いてくれないというのは深刻な問題です。
人の価値観というのは、多様性に富んでいます。論理思考で相手を説得したからといって、相手は納得したわけではありません。一つの価値観だけでは、相手は納得してくれません。人は、理屈だけで動いているわけでもなく、感情もあります。
うまくいかない原因として、やろうとしていることにコツやカンというものがあったり、それを行うための技術が必要であったりして、その習得ができていないことでうまく行かないことがあります。コツの飲み込み方が上手な人もいれば、そうでない人もいます。
このような時に、役立つ四字熟語がありますので、ご紹介します。ここでは、四字熟語の中から、相手を理解し、一方、相手にその気になってもらうには、どうしたらよいのか、心に訴えるヒントを感じ取っていただきたいです。
*
■6-05 屋上架屋 ムダ・ムラ・ムリ
~ 重複して、ムダのあること ~
「架」は、音読みで「か」ですが、訓読みすると「かける」とか「かかる」となります。例えば「架橋」といいますと、川などに橋を架けることです。
「架」は、「かける」という意味の他に「棚」という意味もあります。図書館の本棚のことを「書架」といいますが、まさにこの意味で使われる用例のひとつです。
「屋」は「屋根」という意味であることはどなたにも想像できることです。すなわち「屋上架屋(おくじょうかおく)」といいいますと、「屋上」は「屋根の上」ですので「屋根の上に屋根を架ける」ということになります。もともと屋根というのは、風雨から家を守るために作られている構造物ですので、厳しさに耐えられるように作られています。その上に、さらに屋根を作るとことは意味のないことです。このことから、屋上架屋は、「重複して、ムダのあること」、「無意味なことを繰り返す」という意味となります。
しかし、現実には意味のある屋上架屋もあります。例えば中尊寺のさや堂は、金箔の金堂を風雨から守るための建物で、金堂の屋根の上に、さらに屋根を作り、豪雪地帯ですので、雪や風雨が金堂に直接あたらないようにしています。これは特殊な例ではありますが、意味のある屋上架屋もあることになります。
経営コンサルタント業に永年携わってきていますが、例えば、製造現場におきまして、「ムダ・ムラ・ムリ」という「3ム」を基本として企業に遭遇することがしばしばあります。「3ム」を徹底することにより経費の無駄を省いたり、作業の効率が改善されたりします。
ムダの例として、包装のオーバースペックがあります。お菓子を例にみてみましょう。個別包装をして、その上に中袋を入れ、外箱をつけ、さらに包装紙で包み、手提げ袋に入れるということがあまりにもあたり前になってしまっています。お菓子の種類や包装の方法によっては、一度に全部を食べきれないものもありますので、個別包装されていると大変便利です。個別包装は、日本のように湿気の多い島国では、湿気や酸化防止の役割も果たしていますので、それなりの役割があります。また、包装の分だけかさばり、外見的には量がたくさんあるようにも見えます。企業におけるマーケティング戦略の一環としての結果でもあります。
欧米でクッキーを買ったことのある人はご存知でしょうが、個別包装をされていることはあまりありません。中袋に入れて、外箱や外袋で店頭に並べられています。極端な場合には、中袋も省略されていて、外袋に直接入れられていることがあるほどです。しかし、外袋が充分に中袋や個別包装の役割を果たしているのであれば、それでもよい場合が多いでしょう。
2011年の東日本大震災の後で茨城県の農家を支援しようと、東京にあります、あるNPOの人達が、茨城野菜の産地直売を支援しました。泥のついたまま、大きさもばらついたまま、選別もされていないので形もそのままの不揃い、という販売方法を採りましたが、大変な人気であったというニュース放映されました。
省けるところは、その気になってみればたくさん見つかるはずです。企業内から「ムダ」をなくしただけでも利益率を改善することができるかも知れません。原価が下がって、売価に反映させたり、宣伝広告をしたりして売上高を伸ばすことができるかも知れません。
身の回りでムダを見つけますと、例えば、電気をこまめに切るという習慣は省エネになり、計画停電という不便を囲わなくても済むこともあるかもしれません。「もったいない」という言葉が海外でも使われるようになったと聞いていますが、むしろ日本人の方がもったいないことをしていることが多いのかも知れませんね。
蛇足になりますが、「ムダ・ムラ・ムリ」という3ムの語尾部分をとって「ダラリの法則」という人もいます。
私の知っているある経営コンサルタントが、新しいクライアントを訪問したときに、決算書を見ていて違和感を持ったそうです。経営コンサルタントを永くやっていますと、決算書を見るポイントを掴んでいますので、このケースのように「何かが変だ!」と直感することが多々あります。数年間の決算書を基に、数字をよく見ますと売上高に対して仕入高が異常に高いことに直ぐ気がつきました。その原因は、直ぐにはわからなかったそうです。
通常より厚い鉄板を加工する会社で、競合も少ない、ニッチ産業とも言える業種ですので、本来なら利益率は高くてもやって行けるはずです。粗利率が低い会社では、仕入原価が高すぎるとか、製造原価が高いとか、不良在庫が多いというケースが一般的です。この会社の場合には、製造原価報告書を見る限りにおいては仕入原価も製造原価も高すぎないと判断できました。在庫そのものが少なく、不良在庫が問題になることはなさそうです。
ただ、売上件数に対して、仕入件数が多いことには気がつきましたが、あまり気にも留めていなかったそうです。結局、何処に原因があるのか、直ぐには解らないまま、加工工場を見学した後、工場の裏手に回ったところで、野ざらしの鉄板の山を見つけました。錆の出た鉄板の山を前にして、それが何かの説明を受けたところ、鉄板を斬った残りだというのです。
さらに詳しく訊きますと、顧客からの注文毎に、資材商社に発注したり、まっさらの鉄板を倉庫から出してきたりして、顧客の注文に応じてカットをしているという説明です。残りの部分を裏庭に運び出したものが、山となっているのです。すなわち、一度カットした鉄板は、残りをすべて廃棄していたのです。廃棄していますので、不良在庫にはならず、原価は、一枚分まるまるかかってきますので、当然のことながら粗利率が低いのです。
板をカットする前に、材料の取り方を検討させ、残りを工場内に一時保管したり、倉庫に運び込んだりして、再利用できるようにしました。それだけで利益が急速に改善しましたので、改善して上がった利益の半額を全てボーナスとして社員に支給しました。社員は大喜びしただけではなく、仕入の仕方やカット方法を工夫するなど、モラールが一挙に高まったそうです。
ちょっとした工夫で、ムダを省き、業績は改善し、社員のモラールは高く、明るい職場になったのです。難しい経営理論ではなく、ダラリの法則だけで収支トントンの企業が儲かる会社に生まれ変われるのです。
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論理思考で現状分析をキチンとし、方向性を明確にしてからPDCAサイクルを回し始めても、実際に行動に移したときに旨くいかないことがあります。やりたいという気持ちはあっても、いざ行動に移そうとしたときに、動けないこともあります。
相手の人を説得したり、納得させたりしても、必ずしも相手は期待通りに動いてくれないことがあります。日常生活においてだけではなく、経営者・管理職にとっては、社員や部下が動いてくれないというのは深刻な問題です。
人の価値観というのは、多様性に富んでいます。論理思考で相手を説得したからといって、相手は納得したわけではありません。一つの価値観だけでは、相手は納得してくれません。人は、理屈だけで動いているわけでもなく、感情もあります。
うまくいかない原因として、やろうとしていることにコツやカンというものがあったり、それを行うための技術が必要であったりして、その習得ができていないことでうまく行かないことがあります。コツの飲み込み方が上手な人もいれば、そうでない人もいます。
このような時に、役立つ四字熟語がありますので、ご紹介します。ここでは、四字熟語の中から、相手を理解し、一方、相手にその気になってもらうには、どうしたらよいのか、心に訴えるヒントを感じ取っていただきたいです。
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■6-05 屋上架屋 ムダ・ムラ・ムリ
~ 重複して、ムダのあること ~
「架」は、音読みで「か」ですが、訓読みすると「かける」とか「かかる」となります。例えば「架橋」といいますと、川などに橋を架けることです。
「架」は、「かける」という意味の他に「棚」という意味もあります。図書館の本棚のことを「書架」といいますが、まさにこの意味で使われる用例のひとつです。
「屋」は「屋根」という意味であることはどなたにも想像できることです。すなわち「屋上架屋(おくじょうかおく)」といいいますと、「屋上」は「屋根の上」ですので「屋根の上に屋根を架ける」ということになります。もともと屋根というのは、風雨から家を守るために作られている構造物ですので、厳しさに耐えられるように作られています。その上に、さらに屋根を作るとことは意味のないことです。このことから、屋上架屋は、「重複して、ムダのあること」、「無意味なことを繰り返す」という意味となります。
しかし、現実には意味のある屋上架屋もあります。例えば中尊寺のさや堂は、金箔の金堂を風雨から守るための建物で、金堂の屋根の上に、さらに屋根を作り、豪雪地帯ですので、雪や風雨が金堂に直接あたらないようにしています。これは特殊な例ではありますが、意味のある屋上架屋もあることになります。
経営コンサルタント業に永年携わってきていますが、例えば、製造現場におきまして、「ムダ・ムラ・ムリ」という「3ム」を基本として企業に遭遇することがしばしばあります。「3ム」を徹底することにより経費の無駄を省いたり、作業の効率が改善されたりします。
ムダの例として、包装のオーバースペックがあります。お菓子を例にみてみましょう。個別包装をして、その上に中袋を入れ、外箱をつけ、さらに包装紙で包み、手提げ袋に入れるということがあまりにもあたり前になってしまっています。お菓子の種類や包装の方法によっては、一度に全部を食べきれないものもありますので、個別包装されていると大変便利です。個別包装は、日本のように湿気の多い島国では、湿気や酸化防止の役割も果たしていますので、それなりの役割があります。また、包装の分だけかさばり、外見的には量がたくさんあるようにも見えます。企業におけるマーケティング戦略の一環としての結果でもあります。
欧米でクッキーを買ったことのある人はご存知でしょうが、個別包装をされていることはあまりありません。中袋に入れて、外箱や外袋で店頭に並べられています。極端な場合には、中袋も省略されていて、外袋に直接入れられていることがあるほどです。しかし、外袋が充分に中袋や個別包装の役割を果たしているのであれば、それでもよい場合が多いでしょう。
2011年の東日本大震災の後で茨城県の農家を支援しようと、東京にあります、あるNPOの人達が、茨城野菜の産地直売を支援しました。泥のついたまま、大きさもばらついたまま、選別もされていないので形もそのままの不揃い、という販売方法を採りましたが、大変な人気であったというニュース放映されました。
省けるところは、その気になってみればたくさん見つかるはずです。企業内から「ムダ」をなくしただけでも利益率を改善することができるかも知れません。原価が下がって、売価に反映させたり、宣伝広告をしたりして売上高を伸ばすことができるかも知れません。
身の回りでムダを見つけますと、例えば、電気をこまめに切るという習慣は省エネになり、計画停電という不便を囲わなくても済むこともあるかもしれません。「もったいない」という言葉が海外でも使われるようになったと聞いていますが、むしろ日本人の方がもったいないことをしていることが多いのかも知れませんね。
蛇足になりますが、「ムダ・ムラ・ムリ」という3ムの語尾部分をとって「ダラリの法則」という人もいます。
私の知っているある経営コンサルタントが、新しいクライアントを訪問したときに、決算書を見ていて違和感を持ったそうです。経営コンサルタントを永くやっていますと、決算書を見るポイントを掴んでいますので、このケースのように「何かが変だ!」と直感することが多々あります。数年間の決算書を基に、数字をよく見ますと売上高に対して仕入高が異常に高いことに直ぐ気がつきました。その原因は、直ぐにはわからなかったそうです。
通常より厚い鉄板を加工する会社で、競合も少ない、ニッチ産業とも言える業種ですので、本来なら利益率は高くてもやって行けるはずです。粗利率が低い会社では、仕入原価が高すぎるとか、製造原価が高いとか、不良在庫が多いというケースが一般的です。この会社の場合には、製造原価報告書を見る限りにおいては仕入原価も製造原価も高すぎないと判断できました。在庫そのものが少なく、不良在庫が問題になることはなさそうです。
ただ、売上件数に対して、仕入件数が多いことには気がつきましたが、あまり気にも留めていなかったそうです。結局、何処に原因があるのか、直ぐには解らないまま、加工工場を見学した後、工場の裏手に回ったところで、野ざらしの鉄板の山を見つけました。錆の出た鉄板の山を前にして、それが何かの説明を受けたところ、鉄板を斬った残りだというのです。
さらに詳しく訊きますと、顧客からの注文毎に、資材商社に発注したり、まっさらの鉄板を倉庫から出してきたりして、顧客の注文に応じてカットをしているという説明です。残りの部分を裏庭に運び出したものが、山となっているのです。すなわち、一度カットした鉄板は、残りをすべて廃棄していたのです。廃棄していますので、不良在庫にはならず、原価は、一枚分まるまるかかってきますので、当然のことながら粗利率が低いのです。
板をカットする前に、材料の取り方を検討させ、残りを工場内に一時保管したり、倉庫に運び込んだりして、再利用できるようにしました。それだけで利益が急速に改善しましたので、改善して上がった利益の半額を全てボーナスとして社員に支給しました。社員は大喜びしただけではなく、仕入の仕方やカット方法を工夫するなど、モラールが一挙に高まったそうです。
ちょっとした工夫で、ムダを省き、業績は改善し、社員のモラールは高く、明るい職場になったのです。難しい経営理論ではなく、ダラリの法則だけで収支トントンの企業が儲かる会社に生まれ変われるのです。
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