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【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】 1-1 天下布武 経営者は天下布武の視点で自省してはどうでしょうか

2024-04-06 12:03:00 | 【心 de 経営】 経営四字熟語・名言

  【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】 1-1 天下布武    経営者は天下布武の視点で自省してはどうでしょうか

 

 
  四字熟語というのは、漢字四文字で構成された熟語であることはよく知られています。お恥ずかしいながら、その四字熟語というのは、すべてが中国の故事に基づくものとばかり思っていましたが、実はそうではないことを発見しました。
 経営コンサルタントという仕事をしていますが、その立場や経営という視点で四字熟語を”診る”と、今までとは異なった点で示唆を得られることが多のです。「目から鱗が落ちる」という言葉がありますが、四字熟語を講演や研修の場で用いたり、自分の仕事や日常会話に活かしたりするようにしましたら、他の人が私を尊敬といいますとオーバーですが、自分を見てくれる目が変わってきたように思えたことがあります。
 四字熟語の含蓄を、またそこから得られる意味合いを噛みしめますと、示唆が多いですので、企業経営に活かせるのではないかと考えるようにもなりました。これを「目鱗経営」と勝手に造語し、命名しました。
 以前にも四字熟語をご紹介していましたが、一般的な意味合いを中心にお話しました。このシリーズでは、四字熟語を経営の視点で診て、つぶやいてみます。以前の四字熟語ブログもよろしくお願いします。

 第1章 心の経営と経営の心

 1970年代から半世紀もの永きにわたり経営コンサルタントとして、経営者・管理職の皆さんと接してきました。
 【心 de 経営】を標榜してきました。【心 de 経営】は、二つの意味を兼ねたものです。「経営の心」すなわち、経営を行う真髄はなにかを、また「心で経営」は、人間性を大切にした、相手を思いやる気持ちを大切にする経営や自己管理を含む管理のあり方を、ノウハウ本としてではなく、読者それぞれに、行間を補完しながら、それぞれの方に適した形で感じ取っていただきたいのです。
 本章では、経営者として、あるいは管理者としてのあり方を中心に四字熟語から選択して、私見をまとめてみました。

■ 天下布武    経営者は天下布武の視点で自省してはどうでしょうか
~ 民を豊にするものが天下を取る ~


「天下布武(てんかふぶ)」といいますと、「天下に武を布く」と訓読でき、国を治めるという織田信長の基本的な考えです。信長が美濃攻略をしたあとで、当時井ノ口と呼ばれていました地を「岐阜」と改名しました。その頃から「天下布武」の印章を用いていると言われています。
 一般的には、「武力を以て天下を取る」と解釈され、天下統一の意志を示すものとして理解されています。しかし、信長研究者の多くによりますと、信長の心は「暴力を抑え、戦いをやめ、全ての民を和ませ、物資を豊かにすることができる者が天下を治めるのにふさわしい」ということだそうです。日本史の授業で学んだことがあると思いますが、楽市楽座を積極的に推進したことからも、信長が意図した天下布武の一端を窺えるような気がします。
 信長の横暴さが目立つために、上述のように本来信長が意図したといわれます「天下布武」という言葉はなんとなく彼らしくないような気がしました。ところが私個人の、その解釈は、歴史を正確に把握していないことから起こる偏見なのでしょうか、信長ファンに、「信長の真の姿が理解されていないから、そのような見方しかできないのだ」と厳しく指摘されたことがあります。今では私もそのお考えに同意でき、後者の解釈を採用することにしています。
 秀吉の時代に「天下」といいますと、広く日本全国を指しますが、中世後期においては信長がいう「天下」とは、室町幕府が管轄する畿内を意味し、畿内領域のみの支配を意図したとする説もあるようです。すなわち、信長は日本全国を統一するという意図を持っていたわけではないということです。
 日本全国を統一するためには、それに見合うだけの勢力と、その人に対する魅力が必要であることを信長は理解していたのかもしれません。
 しかし、歴史や信長については素人の筆者ですが、信長は海外情報にも通じるところがありますので、はやり信長のいう「天下」というのは、日本国全体を指すのではないかと考えています。もしそうでありますと、戦国時代に生きた人としては、信長は先見の明があったと見て良いでしょうし、またそのくらいの器であったのではないかと思います。すなわち、グローバルな視点というまでに至っていたかどうかはわかりませんが、インターナショナルで政治を考える人であったのではないかと推察いたします。

 蛇足になりますが、「インターナショナル」の「インター」という言葉は、「相互間の」という意味です。高速道路の「インター」といいますと、ひとつの道と他の道との間を接続するというところから来ています。「ナショナル」というのは「国の」という形容詞ですので、「インターナショナル」というのは、「国と国の間を結ぶ」という意味で、「国境を越えた」間柄を指します。
 それに対して「グローバル」という言葉は、国境を意識しない、地球全体をひとつと考え、その中での地域性の存在を認める考え方です。「グローバル」は「グローブ(globe)」すなわち「球形」とか「地球」という意味の形容詞です。野球で使うのは「グラブ(glove)」です。

 話が、脱線してしまいましたが、信長は、自分を「神」と呼ばせた、あるいはそこまで言わないまでも「神扱い」させたということも聞きますが、世の中の社長には「企業は社長のもの」と思っている人が結構いるように思えます。近年は、「会社は株主を重視する」というアメリカ的な発想が根付いているようです。

 企業は「ステイクホルダー」のためということも良く聞きます。ステイクホルダーには、株主だけではなく、顧客、社員、仕入れ先、地域社会の人達等々企業に関係する人を指し、「利害関係者」という言い方もします。
 私の経験では、「社員をおろそかにしている企業の成長には限界がある」ように思えます。その一例として、私の知っているあるベンチャー企業の社長さんは、社員の抜擢人事をしばしば行いましたし、当時そのようなやり方がもてはやされました。すなわち「常套手段(じょうとうしゅだん)」、「同様な状況においていつも用いる方法」で、時には「古くさい、陳腐な」というニュアンスが込められます。
 後の秀吉である、藤吉郎が重用されるようになったことに代表されますが、信長の抜擢人事にも似たところがあります。経営がうまく行っている間は、それがその会社の企業体質ということで社員も納得せざるを得なかったのでしょう。
 その社長さんは、バブルがはじけてからも、その人事政策を続けていました。あるときリベラルな思想を持ち、社員からも信頼の厚かった常務取締役を、業績不振の責任をとらせるという理由で、平の取締役に降格することを決めました。「出処進退(しゅっしょしんたい)」を問われるのは、社長です。現場で指揮を執っている常務ではなく社長のワンマン経営に業績不振の原因があることを社員は良く知っていました。
「出」は「世に出て仕える」、「処」は「仕官をしないで家に留まる」という意味で、「出処進退」とは「官職にいて仕事を続けるか、民間に退くか」という身の処し方のことで「事に当たってのもの処し方」を意味します。
 社長は、「周囲がすべて敵ばかりで助けてくれる見方がいない状況」の「四面楚歌(しめんそか)」だったのです。中国で、楚の項羽と漢の劉邦が闘っているときに、楚の故郷の歌を歌う漢軍の歌を聞き、楚が漢に占領されてしまったと誤解したという逸話から来ています。
 その社長に嫌気がさしたのか、「一蓮托生(いちれんたくしょう)」、ゴッソリ揃って退社してしまいました。「一蓮托生」の「托」は「託」とも書き、もともとは仏教用語で「よりどころにする」「身を寄せる」という意味です。「よい行いをした者は極楽浄土に往生して、同じ蓮はすの花の上に身を託し生まれ変わる(四字熟語辞典)」を意味し、転じて、「仲間として行動や運命をともにする」という意味で使われます。
 皮肉にも退職した社員の多くは、その社長にかつて抜擢された社員でした。退職を決意した理由の一つは、人間を「駒」としてしか見ておらず、抜擢といっても社員の一面を見ただけで判断をし、その見方に沿わない社員は昇級も昇格昇進も期待できない人事政策だったのです。

「雲散霧消(うんさんむしょう)」とか「雲消霧散(うんしょうむさん)」ということが、この社長の下で起こってしまいました。雲や霧が、跡形もなく消えてしまうように、主な社員が散ってしまいました。類語に「雲集霧散(うんしゅうむさん)」がありますが、雲が集まるように人が一時的に集まりますが、たちまちの内に離散してしまう状況を指します。「離合集散(りごうしゅうさん)」とも言います。因みにこの反対の意味を表す「雲合霧集(うんごうむしゅう)」という言葉もあります。雲や霧が発生するときのように多くの人が一気に集まってくることを指します。
「社長は孤独である」という名言がありますが、「形影相弔(けいえいそうちょう)」という四字熟語はまさにそれを表します。自分の影と自分がお互いに慰め合うという意味から「孤独で寂しい」ことをいいます。同様な意味で「鰥寡孤独(かんかこどく)」、「天涯孤独(てんがいこどく)」という表現もあります。声をかけたり、訪問したりしてくれる人がいないのでは、孤独死を待つだけになってしまいますね。
「天下布武」という言葉の真の意味を私たちは見直して、自分自身に照らし合わせてみる必要がありそうです。
 
 
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