コンサルタントのためのコンサルタントが、長年の経験に基づき、経営やコンサルティングに関し、毎日複数のブログでお役立ち

戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本で最初にできた「経営士」資格付与と育成の経営コンサルタント団体

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 200526 なぜ論語は「善」なのに儒教は「悪」なのか—日本と中韓「道徳格差」の核心—

2020-05-26 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 200526 なぜ論語は「善」なのに儒教は「悪」なのか—日本と中韓「道徳格差」の核心—

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

   『なぜ論語は「善」なのに儒教は「悪」なのか—日本と中韓「道徳格差」の核心—』

                    (石 平著 PHP新書)

■ 何故『「儒教」と「論語」の違いを知る必要性』があるのか(はじめに)

 2017.6.27の本欄でご紹介した『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(ケント・ギルバード著)で、『「儒教」に対し抱いている日本人の「倫理・道徳規範」的イメージと、「特亜三国(中・韓・北鮮)」の非常識の源泉となっている「儒教」との乖離』と記されています。ここでは、「儒教」が二つの意味を含んでいます。善の「儒教」と悪の「儒教」です。
 石 平は今回の紹介本を通して、『善の「儒教」』は「論語」、『悪の「儒教」』は善・後漢時代の「儒教」と南宋時代以降の「朱子学」であるとし、『悪の「儒教」』の理論的準備の役割を果たしたのが孟子・荀子の「儒学」と位置づけ、「論語」⇒「儒学」⇒「儒教」⇒「朱子学〈「新儒学」「新儒教」〉」の道筋を明らかにしています。
 石 平は紹介本の中で、『前漢に成立した「儒教」は、南宋時代に「朱子学」という新しい教学を生み出し、それを理論的中核にして「新儒教」としての「礼教」が成立した。中国伝統の「礼教」と「礼教」のつくり出した社会は、「論語」の心の暖かい「礼(“仁”=“愛”にもとづく礼儀)」と「和(思いやり)」とは無縁な世界であり、過酷さと残忍さを基調とする世界であった』と述べ、心の暖かい「論語」との大きな隔たりを指摘しています。
 私達にとり、隣国「特亜三国」の支配的文明・文化「儒教」・「朱子学(新儒教)」と、江戸時代の御用教学「朱子学」を捨て「論語」に「愛」を求めた日本文化との違いを深く理解しておくことは、関連する様々な経営的判断をする上で必要な事と思います。このことを次項『初めて知る「論語」・「儒学」・「儒教」・「朱子学(新儒学・新儒教)」』で深堀してみたいと思います。

■ 初めて知る「論語」・「儒学」・「儒教」・「朱子学(新儒学・新儒教)」

【「論語」・「儒学」・「儒教」・「朱子学」を明確に区分・把握してみよう】
 石 平は、「論語」と「儒学」・「儒教」・「朱子学」は全く別物と強調します。賢明な生き方・学び方・物の見方を弟子たちに諄々と語り教えた、それが「論語」という書物のすべてであるとします。
 更に石 平は、一般的には儒家という括りで一緒になっている孔子・孟子・荀子について、『儒学がその始祖とすべきは儒学の学問的体系化をした戦国時代の孟子(「性善説」「徳治主義の王道政治」)・荀子(「性悪説」「礼治(政治)主義」)であり、春秋時代の孔子ではない。「王道政治」にしても「礼治主義」にしても「為政者が万民を導く」必要性を説くものであり、前漢・後漢以降の中央集権国家における支配的イデオロギーの理論的準備と言えるもので、孔子の「論語」とは正反対のもの』と主張します。
 それでは、前漢時代に成立する「儒教」と南宋時代に成立した「朱子学」についての石平説を見てみましょう。
 「儒教」「朱子学」の共通点は、皇帝(前・後漢以降清王朝まで)の地位と絶対的な権力を正当化するための思想・理論、御用教学・国教であることです。さらに、これらの思想・理論を試験科目とする「挙考簾」・「科挙」制度を通じて、国家権力を支える官僚組織に「儒教」「朱子学」が浸透して行ったのです。
 「儒教」「朱子学」の相違点です。まず「儒教」は前漢武帝の時代、董仲舒によって創成されました。董仲舒は、『天人相関説(【注1】参照)』により皇帝の地位の絶対化を図る装置を打ち立てました。さらに、この時代の儒学者たちにより「儒教」の経典として「五経(『詩経』『書経』『易経』『礼教』『春秋』)」が作られました。経典に「論語」が入っていないことに注目してください。
 その後、前・後漢に続く魏晋南北朝から北宋時代は仏教・道教が重用されましたが、儒教の御用・支配教学の地位は維持されていました。北宋王朝が女真族(満州民族/清)の金により滅ぼされ、南に逃れ南宋王朝(BC1127~)を創建します。その三年後、朱子が生まれ、成人して「朱子学」を打ち立てました。
 「朱子学」の特徴は、前・後漢時代の「儒教」を否定し、『理気二元論(【注2】参照)』と『性即理説(【注3】を参照)』の二つを基本的理論・思想とし、更に、朱子学の正統性を創るため、五経の内の「礼経」の注釈書である「礼記」から「大学」「中庸」を抜き出し、それに「論語」と「孟子」を加え「四書」とし朱子学の基本経典としての『「四書」「五経」(朱子独自の解釈書も創り上げる)』を制定します。こうして、新儒学(朱子による「孟子」の独自解釈+荀子の「性悪説」は継承しない)・新儒教(漢代の儒教を全面否定)としての朱子学を打ち立てたのです。


【注1】『天人相関説』;『天』の意思により『「天子」=「皇帝」』を通じて、『天下万民』を支配するという思想・理論。
【注2】『理気二元論』;万物が、形而上の「理(天地万物を主宰する法則性)」と形而下の「気(万物を構成する要素)」から成り立っている。「理」は根本的実在として「気」の運動に対して秩序を与えるとする存
在論。
【注3】『性即理説』;朱子学の実践倫理・理論。人間にあって「理」は精神を意味し、その精神を構成する人間の心は「性」と「情」から成り、「性」が「気」によって動くと「情」になり、さらに激しく動きバランスを崩すと「欲(悪)」となる。よって、たえず「情」を統御し「性」に戻す努力である『格物致知〈万物を観察・研究と「理」の発見〉』と『持敬〈心の静を保つ修養法、仏教=禅宗の二番煎じ〉』が必要と説く。この「性」にのみ「理」を認める(=性即理)。


 この二つの理論・思想から帰結する朱子学のスローガンは『在天理、滅人欲(天理を存し、人欲を滅ぼす)』です。その為の「格物致知」「持敬」が出来るのは一部エリート層のみで、それが出来ない一般民衆には導きが必要であり、導きの手段として社会全体と一般民衆を「朱子学」によって統制していくべきと考えます。
 そこで朱子学が提唱するのが「礼経社会」の実現です。「礼」即ち礼節と道徳規範を以って庶民を「教化」し、社会・一般民衆の心を「性」に立ち返らせることが朱子学の唱える「礼教」の役割だとします。こうして朱子学は、元、明、清王朝の体制教学として「礼教」にもとづく国家体制作りに利用される思想になっていくのです。

■ 文明・文化を知ることの意義(むすび)

 紹介本を通じ、中国で青年時代を経験した著者の正確・客観的な「儒教」観を知り、「儒学」「儒教」「朱子学」と「論語」を区分出来たのではないでしょうか。
 ここで大切なことは、『彼を知り己を知れば、百戦して殆からず』と同時に、『小異を残して大同につく(一般的には「小異を捨てて大同につく」)』の格言に従い、「儒学」「儒教」「朱子学」と「論語」がどの様な思想かを理解し、経営の場で判断材料として活用すると同時に、お互いが「共通のアイデンティティー(ビジョン)」を共有し、それに向かって進んでいく前向きな姿勢も大切にしたいものです。

■ 【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】200425 データとファクトで読み解く「ざんねんな中国」

2020-04-28 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】200425 データとファクトで読み解く「ざんねんな中国」

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

   『データとファクトで読み解く「ざんねんな中国」』

        (高橋洋一 石平 著〔対談〕 ビジネス社)

■ 中国に係るメタに基づく情報を得るチャンス(はじめに)

 紹介本では、“スーパー経済学者”の高橋洋一と“無敵のチャイナ通”の石平が、これまで対談の機会が無かったことが不思議だった二人の対談を通じ、中国に係るテーマを「米中貿易戦争の裏側で起きていること」「中国の実力を検分する」「粉飾の大国」「異形の国の不動産バブルと国際ルール」「香港は中国の支店になった」「台湾は守れ!韓国は見放せ!」「中国の本質」「日本経済に浮上の目はあるか?」の8つの章60(‟まえがき”と‟あとがき”を含む)項目につき、分析・解き明かしています。

 対談は、忖度や自分の思い入れではなく、数字や事実に基づき客観的に分析をしており、“メタ(表に必ずしも現れない事態の原因となっている真の事実)”な情報を得ることが出来ます。経営の参考にできる情報を得る良い機会ではないでしょうか。

 それでは、8つの章・60の項目の中から、私の注目点を選び、次項でご紹介します。

■ 中国を読み解く「注目点」

【関税の掛け合いで困っているのは中国】

 米中貿易戦争の関税掛け合いの結果、どの様に小売価格に反映されているのか、対談で明らかにしています。中国国内におけるアメリカからの輸入品の小売価格については把握出来ていないとしつつ、アメリカ国内における中国の輸入品の小売価格は上がっていないことを明らかにしています。

 その背景を分析し、中国からの輸入品は“代替品”つまり輸入先を台湾などの他国に替えられる物であるとし、結果中国企業がアメリカへの輸出品の小売価格が上がらないよう輸出価格を下げて関税分を“被って”いると結論付けます。トランプ政権は、絶対にアメリカ国内の小売価格が上がらないことを確認しながら段階的・戦略的に制裁関税を掛けて行ったとします。

 制裁関税の掛け合いは、中国の習近平政権の負けと結論付けます。中国はアメリカの貿易赤字を減らしアメリカの雇用創出をする政策(日本がとってきた対米戦略)は採らないし、一方アメリカも、中国資本・中国人を入れたら技術を盗まれると信用していないことから、アメリカ及びアメリカの影響力の強い経済圏に係る中国・中国人の進出は更に難しくなっていくと指摘します。

 またTPPについては、社会主義のベトナムが体制の変革を決め、痛みを覚悟し加入したが、中国については、金融の自由化・国有企業の改革が共産党体制を堅持する限り出来ないことから、加入できないとします。

 この様な状況を背景に、米中貿易戦争が長引くと、「アメリカ企業を含めて多くの外国企業が中国を離れる動きが出てくる」と指摘します。

【中国の対外政策の“韜光養晦”から“奮発有為”への大転換は正しかったか】

 対談は、中国の対外政策は、鄧小平・江沢民・胡錦涛の時代の政策から習近平時代の政策へと大きな転換がなされたと指摘します。それは、“韜光養晦(とうこうようかい;能力を隠して力を蓄える)”政策から “奮発有為(ふんぱつゆうい;勇んで事をなす)”政策への大転換がなされたというのです。

 また、対談は次のように“韜光養晦”政策と“奮発有為”政策の良否の比較をしています。『仮に今の中国の最高指導者の懐が深く、あと10年間我慢したら、アメリカも日本もどうにもならないかもしれない。しかし、習近平が指導者になり本性を剥き出しにして「先端技術でアメリカと競う」「一帯一路を打ち出して、アメリカを排除する」「軍事力を増大して南シナ海、東シナ海からアメリカを追い出す」と打ち出し完全にアメリカを怒らせてしまった。』『オバマは緩くて、いずれ中国は民主化するだろうとする甘い考えだった。天安門事件(1989年6月)以降30年間、アメリカも日本も“韜光養晦”政策に騙され続けて来た(が“奮発有為”政策で本性が見え目覚めた)。』と。

 さらに対談は、“奮発有為”政策で打ち出された“中国製造2025”“一帯一路”“AIIB(アジアインフラ投資銀行)”は『世界との標準が違い過ぎてワークしていない』と指摘します。

 結局“奮発有為”政策が、『米中貿易戦争を引き起こし、中国の傷を深くした』と指摘し、米中貿易戦争・米中経済デカップリングにおいて、中国が不利であることを明らかにしています。

【“政治的自由”と“経済的自由”はパラレル】

 対談では中国に関し、厳しい指摘をしています。『社会主義国は大国になれない。それは根本原理に“自由”がないからである。自由がない国には経済発展がない。』『政治的自由と経済的自由はパラレルでなければならない。これはミルトン・フリードマンが語っているが、正論である。』と指摘し、共産党政権がコントロールする中国の限界を社会科学理論から説いています。

■ 対談から今まで知らなかった情報を得て、今後の経営の参考とすべし(むすび)

 対談での中国に対する見方は、私が日本経済新聞(対談では“中国ベッタリの報道”と表現している)やTVなどのマスコミから得ている情報に比し、深く踏み込み且つ厳しい見方をしていると思います。いずれにしても、先行きどの様な状況になるのかは不透明・不確実といえましょう。

 この様な不透明・不確実な事象は、リスクと認識するのが正しい考え方ではないでしょうか。対談から読み取れる厳しい情報を一つの情報として頭に入れ、経営判断の材料としていく必要があるのではないでしょうか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】200325 大前研一氏の『日本の論点2020~21』

2020-03-24 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】200325 大前研一氏の『日本の論点2020~21』

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

  『日本の論点2020~21』

        (大前研一著 プレジデント社)

■ 大前研一の俯瞰するこれからの日本・世界観を見てみよう(はじめに)

 著者の大前研一は、英国エコノミスト誌から、「現代世界の思想的リーダー」として、ドラッカー(故人)やトム・ピータースと共に名前が挙げられています。

 著者がプレジデント誌に連載している「日本のからくり」の過去1年分のストック及び特集記事から読者の反響の大きかった記事に、加筆修正して出版したのが紹介本です。

 紹介本の副題は『「アホ」が支配する世界で私たちはどう生き抜くか』です。この副題が表しているように、前月ご紹介した『日経大予測2020「これからの日本の論点」』の様に世界・日本のPESTを総覧的に俯瞰するのではなく、大前流の世界・日本観を論じています。

 その意味では、日頃私たちがマスコミで見るのとは異なった結論に至る論説をいくつか見出します。それが紹介本の特徴であり、私達の頭の中に一般的な結論とは異なった見方を認識できる良い機会とも言えます。

 著者は、‟巻頭言”の中で「世界各国で台頭するポピュリスト政治家たち」「‟異形の大統領”トランプに破壊されたアメリカの政治システム」「世界の経済史の中から完全に消えた‟泰平の眠りについていた日本”」「日本の再生を妨げているのは、過去の成功体験だ」等と大前流の突っ込んだ論説を窺わせています。

ところで、2020年をスタートにこれからの世界・日本がどうなるのか、どの様

に対応すべきか、著者は「改革でも改善でもないゼロからスタートする時」と記述しています。その記述は、その様な厳しい時と伝わってきますが、何をすればよいのか分かりません。その取り掛かりを、紹介本の大括り項目の「日本編」「世界編」「特別編」から、各編の注目に値する論点を一つずつ選んで、次項でご紹介します。

■ 各編の注目する論点を見てみよう

【「日本編」『国の借金を容認する、嘘っぱちMMTに騙されるな』】

 2019年4月4日の国会の答弁で、安倍総理は「MMT(Modern Monetary Theory)の理論を実行しているわけではない」と述べています(2019.4.4ロイター・東京)。

 一方、『通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる貨幣を自在に創出できるため、インフレにならなければ財政赤字の膨張は問題ない、国は破綻しないとする学説「現代貨幣理論(MMT理論)」』の提唱者であるステファニー・ケルトン教授(NY州立大学)は、2019年7月16日都内で講演をしました。物価上昇を目指した金融緩和が続く日本の財政政策について「中央銀行の金融政策よりも、消費者の所得を向上させる財政政策の方がより直接的に機能する」と述べています(2019.7.16日経電子版)。

 又ケルトン教授は、講演とは別に、MMT理論に関係して、「巨額債務を抱えているのにインフレも金利上昇も起きない日本が実証している」「日本の景気が良くならないのは、インフレを恐れすぎて財政支出を中途半端にしてきたから」「MMTは日本が直面するデフレの解毒罪になる」とも述べています(紹介本より)。

 紹介本の著者は、MMT理論に関し『次の世代に重荷(国の債務)を押し付けて今の繁栄を享受したいと思っている人にはMMTは心地よく聞こえるかもしれないが、将来世代からすれば、「危険物・リスク(財政赤字)の解消は現役世代の責務」と考える。この問題を放置すれば、世代間闘争も勃発する可能性もある。』と指摘する。更には、『「インフレも金利上昇も起きない日本」の基本的な要因は「低欲望社会」である。しかし、リタイア―世代が、‟団塊世代”の後の‟バブル世代”となり「低欲望社会」から「高欲望社会」に移行した場合、インフレが起こり、MMTのご臨終と、中央銀行の大規模金融緩和政策の終焉に繋がることは言うまでもない』と指摘します。

 

【「世界編」『世界を覆う「ポスト・トゥルース」とワーキングプア反乱の問題点』】

 著者は、現在の世界政治の現状を、『政治のリーダーが「ワーキングプア」層に対し目をそむけたくなるような「真実」よりも聞き心地の良い「嘘」を放って世論をリードしていく、「ポスト・トゥルース(post truth 、脱・真実)」に走る政治家の台頭が欧米先進国で目立つ』と言います。アメリカのトランプ政権、イギリスのブレクジット、イタリアの「五つ星運動」と「同盟」の連立政権、ドイツの反EUの右派政党「ドイツの選択肢(AID)」の台頭などを具体例として挙げています。

 更には、これはポピュリズム、衆愚政治の極みと表現し、格差が広がり社会構造が二極化する中で、富の偏在を修正したり、社会に還元させたりする本来の政治の役割を果たさず、逆にそれを煽った方が票につながるとして「ポスト・トゥルース」に走っていると指摘します。

 一方、日本においては驚くほどワーキングプアが政治勢力化していないとして、その一つの要因として、身の丈に合ったような生き方を選ばせるような戦後の偏差値教育が強く影響していると指摘します。

 

【「特別編」『日本を成長させるのは「構想力」を持った人材である』】

 著者は、日本の低迷を「文部科学省が国内でしか通用しない人材をひたすら輩出している」ことを要因として挙げ、グローバルに通用する「論理的思考力」と「語学力」を育てる教育プログラムの必要性を説きます。更には、『経営は答えのない世界。そこで求められるのは見えないものを見る力「構想力」であり自分で答えを導き出す能力とスキルだ。これからの企業の浮沈はそれらを持ったグローバル人材をいかに世界中から集めてくるかにかかっている。』と指摘します。

 

【その他の「論点」】

 上記以外にも

〔日本編〕:「憲法8章を換えない限り、日本の地方衰退は進んでいく」

〔世界編〕:「いまや再選絶望のトランプ。次期大統領の候補は誰か?」

〔特別編〕:「21世紀サイバー経済でパスポートとなるのは、どんなスキルか」

等、大前研一流の知見と深い洞察力で書かれている「日本の論点」が多く掲載されています。詳しくは紹介本をお読みください。

「改革でも改善でもないゼロからスタートする」の意味を考えよう(むすび)

 著者が唱える「ゼロからのスタート」は、深い意味を持っていると思います。世界・日本を見渡しても、新しい予測不能な事態が次々と出ています。

 その様な不確実性の時代に生き抜いていくためには、感性の高いアンテナを張りめぐらし「メタ」を得、そこから導き出される情報を生かしながら、迅速且つ持続的・適切な企業経営のマネジメントを求められる年になりそうですね。

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 日本経済低成長からの脱却 松元 崇 著  NTT出版

2020-03-12 09:17:22 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】0922 日本経済低成長からの脱却 松元 崇 著  NTT出版

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

『日本経済低成長からの脱却』(松元 崇 著  NTT出版)

 

 

■ 日本経済低成長から脱却することの意義(はじめに)

 著者は、内閣府の元次官で、アベノミクスの立ち上げに参画した経験を有します。その様な著者が政権の当事者ではなく、第三者として客観的に日本経済を俯瞰し、日本経済の課題の核心を突き、対応策を提言しています。著者が指摘する現在の日本経済の問題点を以下で見てみましょう。

 

【世界の中で縮み続けている日本】

 世界の経済構造が1990年代以降大きく変わりました。それは、IT技術の進歩と通信コストの激減と自由貿易体制(米中もEUも保護主義的な政策をとりながらも、自由貿易が大切との看板は下ろさない)により、モノの生産という点で、世界が一つの国になったことです。世界は、グローバルな競争の中で、得意分野に経営資源を集中し、不得意分野は切り捨てる、「選択と集中」の時代になったのです。しかし、日本国内では雇用慣行などにより「選択と集中」が難しく(特に撤退が難しい)、日本企業は、撤退の伴うリスクは海外で投資をする形になってしまい、国内経済成長の低下要因になっているのです。技術革新力、研究開発費はOECDの中で、ドイツ・アメリカと並んでトップクラスにも拘らず、企業が国内の投資に向けない結果、成長率低下の一因となっているのです。

 

【成長会計から分析する日本の経済成長率の低迷】

 日本が低成長になっている事を、成長会計という手法で分析しています。経済成長には①技術革新など②資本③労働力が必要とされます。労働と資本の貢献以外を全要素生産性=TFP(total factor productivity)という概念で捉える理論です。著者は「スエーデン型」と「米国型」を示し、日本と比較し、日本のみが国内における機械・設備等(=資本)の投資が小さく、低成長の大きな要因とします。著者は少子化による労働人口の減少は、労働生産性の向上に加え、資本とTFPの増強で十分カバー出来ると考え、その中でも特に、日本国内への「資本」の増加が成長力強化に有効であると説くのです。2018年のGDP成長率は、アメリカ2.86%、スエーデン2.34%に対し日本は0.81%(IMF統計)。約2%の格差の内、日本国内への資本投資の少なさによるGDP成長率の低下要因を1%と見積もった場合、毎年5.5兆円のGDPが失われている事になります。これが既に20年以上続いたことにより、110兆円(5.5×20)が失われたことになります。結論として著者が言いたいことは、スエーデンは負担が高いと思われているが、日本も低成長の結果として、高い負担と同等の「隠れた増税(得られるべき所得が得られない)」が行われ、これからも「隠れた増税」が続くと言う事です。『「選択と集中」環境+高福祉の「スエーデン型」』を選ぶか、『「選択と集中」環境+格差社会の「米国型」』を選ぶか、『「選択と集中」環境がなく「隠れた増税」』を続けるのか、日本は今、その選択を求められているのです。

 

【労働生産性が伸びず賃金も上がらない元凶は日本の労働慣行】

 「選択と集中」環境を損なっている元凶は、終身雇用制、解雇権濫用法理、「ジョブ型」ではない「メンバーシップ型」労働契約・採用、等にあるとします。詳細は紹介本に譲るとして、一朝一夕では変えることのできない難しい課題が存在することを認識しておきたいと思います。

【働き盛り世代の貧困を回避し、年金制度を維持するには、低成長からの脱却が必須】 

 いわゆる2060年問題、それは高齢者一人を現役世代一人が支える時代です。2015年にGDP比25%の社会保障費は、45年後には30%になると推計されています。もし毎年経済成長率が1%アップすれば、45年後にはGDPが45%増えます。又日本の労働生産性が米国の約半分ですが、これを米国並みにすれば、現役世代の人口が倍増したのと同じ効果があります。つまり、著者のメインテーマは、社会保障の持続可能性の維持、それを支える側の所得(一人当たりGDP)を大きくして行く事、その為に低成長から脱却し先進諸外国並みの経済成長力を達成する事なのです。

 

■ 日本経済低成長から脱却するための提案

 「低成長からの脱却」について、著者の考えを、ご紹介しましょう。

【「働くことの幸せ」を国も一緒に創り上げるー国が現状を変える先行投資をー】

 著者の主張のポイントは、日本国内市場が、日本企業は勿論、世界の企業から選ばれる市場にすることです。つまり、『思い切った「選択と集中」』が出来るよう、日本の雇用市場を柔軟なものに改革することです。単に柔軟にするだけでは、格差社会が広がる「米国型」になってしまいます。転職する人がキャリアアップして、所得が増える仕組みを作っていく「スエーデン型」を目指すべきとの主張です。その様な社会になれば、「働くことの幸せ」が広がり、労働生産性も大きく向上します。

 しかし、その様な社会は簡単にできません。「選択と集中」による転職する人の生活を十分に支え、キャリアアップし、生産性の高い企業に再就職させる仕組みを作るには、国の現状を変える先行投資が必要です。

 投資の財源を、将来世代の負担を避ける方法で行うには、増税が必要です。しかし、今の日本の民主主義の下では、この種の重要な事項についての議論が十分に行われないのが現実です。著者は、真剣な議論のきっかけになればとの思いで、本書を著作したのです。

 戦後営々と築き上げて来た、分厚い中間層が消滅しないために、豊かな未来を子供たちに残してやるために、政治家も国民も真剣に議論してほしいと著者は結びます。

 

【日々進化する企業経営を】

 紹介本では、成長率を高めるための企業経営について多くの知見を紹介しています。その中で目に留まった一つをご紹介しましょう。  著者が引用している斎藤ウイリアム浩幸氏(日系二世の起業家)の発言です。「日本には(グループはあるが)チームがない」「イノベーションが加速する世界で、個人、企業、国家が生き延びるためには、異質な価値観、異質な才能、異質な文化を持つ人がチームを組んで、共通の目標のために助け合うことが絶対条件」という発言です。人的資源が豊かな日本で、「米国型」の経営を取入れ、破壊的創造による新たなモノ・サービスを増やし、成長率を上げる必要性を説きます。

 

■ 「日本経済低成長から脱却するための提案」に真摯に取組もう(むすび)

 紹介本により、高齢化・人口減少時代に、日本の世界における下降トレンドに歯止めを掛けるヒントを得られたことです。それは、日本の現実に希望を持つ事でもあります。将来を見据え、希望を持って、低成長から脱却する経営を目指しませんか。それは、人口減少社会の課題克服という社会貢献に繋がります。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】200225 日経大予測2020「これからの日本の論点」

2020-02-25 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】200225 日経大予測2020「これからの日本の論点」

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『日経大予測2020「これからの日本の論点」』
          (日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社)

 

■ 2020年の「日本の論点」に注目してみよう(はじめに)

 新しい年のスタートの時期に当たり、新年のPESTに係る本をご紹介します。

 紹介本は毎年日本経済新聞社から出版される恒例の本であり、表題の「2020『これからの日本の論点』」が出版されると、「もうそんな時期になったか」と思うと共に、新年はどんな年になるのだろうと、胸をどきどきさせながら読みます。

 2020年版は、「日本経済はこれからどうなる」「日本企業はこれからどうなる」「世界はこれからどうなる」の3Chapter、22項目に亘って日本経済新聞のベテランの専門記者22人が2020年の大胆な予測を提示したものです。

 日頃からPEST(政治・経済・社会情勢・技術)に関心を持ち、新聞やテレビなどから情報を取集しておられる方にとっては復習的になるかもしれませんが、改めて22のテーマについて読みますと、意外と新たなメタな情報の発見があります。

 22のテーマの中には、日頃のニュースではあまり報じられていないもの、報じられても表層的で、深く分析的に報道されていないものがあります。そのような中から「注目したい日本の論点」を、次項でご紹介します。

■ 2020年の『注目したい「日本の論点」』

【2020年は「節目の年」】

 2020年の日本経済を展望するうえで、最大の注目イベントは東京五輪・パラリンピックであることには異論はないでしょう。問題は、五輪後の日本経済がどうなっていくかです。

 ここで想起するのは、前回1964年10月の東京五輪後日本経済はどのような道を辿ったかと言う事です。

 正に、前回の東京オリンピックは「ジャパン アズ ナンバーワン(日本経済の黄金期)」に向けてスタートを切った節目の年でした。

 しかし一方、1964年を、「国運の分岐点」(デービッド・アトキンソン 講談社+α新書)では、‟この国をおかしくした1964年問題”と題して次のように指摘しています。『1964年に日本はOECDの21番目の加盟国となり、これをきっかけに「植民地支配の恐怖」から、株式持ち合い、前年に施行された中小企業基本法による、雇用は確保されたものの、日本の生産性悪化の元凶となっている非効率中小企業の増大・保護などの「日本型資本主義」「日本的経営」を生み出した。人口増加時代はそれで良かったものの、人口減少・高齢化の時代の今こそパラダイムシフトをしていかなければ、日本の強みを生かし経済を成長させていく事は不可能である』と。

 2020年の東京五輪の今こそ、「黄金期」から転げ落ちている日本を再生しなければならない、今手を打たなければ次にチャンスはない、まさに“崖ぶち”に立たされている「節目の年」といってよいでしょう。

【お金と人手、社会保障は二つの「不足」を克服できるか】

 2017年の最新の「日本の将来推計人口」に基づき、今「人口減少・高齢化問題」の中で特に問題視されているのが「2040年問題」です。

 それは2040年に向けて社会の支え手である現役世代が急激に減少していくからです。2050年頃になると、人口は減るものの、現役世代と高齢者の比率が安定してくるのです。2040年ごろまでの大きな変化を乗り切るのかというのが当面の大きな課題です。

 一言でいえば、現実の施策は簡単ではありませんが、現役世代・社会制度が負担に耐えられる社会をどのように創り上げていくかと言う事に尽きるのです。

 

【令和時代に日本企業が飛躍するための条件】

  平成の30年間、人々の生活水準は落ちていないと感じる人が多いかもしれませんが、世界全体における日本経済・企業力の大きな後退を象徴的に現しているのが「時価総額ランキング」です。平成が始まった30年前はランキング上位20社のうち、14社は日本企業でした。しかし平成30年時点を見ると、上位20社には日本企業は1社も入っていないどころか、最上位のトヨタでも40位近辺なのです。

 この原因は色々あるでしょうが、紹介本が上げているのが、日本企業(職場と言う観点では官公庁も含む)の『押し付けとやらされ感による「働く人の‟熱意”の低下」』であるとします。IBMの2016年の調査によれば、日本のエンゲージメント(‟熱意”の英訳。意訳すれば「主体的・自発的・積極的な関与による生き生きとした働き方」)は世界43か国中42位なのです。

 日本企業の30年間の「負け」を繰り返さないためには、採用・雇用制度、労働市場の流動性向上などをはじめとした、会社(官公庁も含め)と働く人の関係の再構築が、日本経済と日本企業が令和の時代に飛躍するための欠かせない条件であると紹介本は断言します。

 

【その他の注目する「日本の論点」】

  • 「5Gは産業や社会をどう変えるか」
  • 「深まる米中覇権争い、日本が直面する3つの試練」
  • 「米中テクノ冷戦、閉じる『デジタル鉄のカーテン』」
  • 「政治クライシスの欧州はどこへ向かうのか」

といったところが私の注目点です。以上以外にも多くの注目点がありますが、字数の関係もあり、上記に留めます。ご興味をお持ちの方は、紹介本をお読みください。

■ 2020年は問題山積の年。日本と世界のPESTのから目を離すな(むすび)

 「日本の論点2020」から読み取れる特徴は、「日本も世界も課題山積の年」と言えるのではないでしょうか。

 経営に係る私達は、見通しと対応の難しい年にどう対処したらよいのでしょう。私見ですが、『スピーディーなメタ(表に必ずしも現れない事態の原因となっている真の事実)を含む情報の収集、分析、仮説、検証、課題の見極め、課題解決の実行』をしていく事でしょうか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 『「国運の分岐点」中小企業改革で再び輝くか、○○の属国になるか

2020-01-28 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 『「国運の分岐点」中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

『「国運の分岐点」中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか』

(デービッド・アトキンソン著 講談社+α新書)

 

■         国運の分岐点にある現実を直視し「新しい日本」を築く時(はじめに)

 新年明けましておめでとうございます。新年早々、きつい表題の紹介本になりました。しかし、現実を避けて通ることはできません。著者が、日本を愛するが故に思詰めて、紹介本を著作した厳しい現実と、改革の緊急性の存在を確認すると同時に、経営改革の視点から早急に何をすべきか、紹介本から読み取りたいと思います。

 著者が指摘する厳しい現実とは何でしょうか。それは世界有数の「人材力」を誇る日本(2016年人材評価ランキングでは4位〈OECD 36ヵ国中〉、2018年国際競争力ランキングでは第5位〈WEF対象140ヵ国。2019年は6位。IMD統計とは別。〉)にも拘らず、生産性(一人当たりGDP)を見てみると、1990年は世界9位でしたが、いまは28位(2018年実質生産性では31位。対象190ヵ国。先進国ではイタリア、スペインを含む最下位水準。)です。この20年間の先進国の給料は約1.8倍に対し、日本は9%の減少です。

 この深刻な問題は、「先進国の中で唯一、経済成長をしていない」「デフレから何時まで経っても脱却できない」の二つに集約されると著者は指摘します。

 その原因は何か。著者は、データ分析の結果得た「奇跡的な発見」と自負しつつ、「小規模な企業で働く労働者の割合」が日本は、ギリシャと同レベル、イタリア、ポルトガルよりも低く、先進国の中では突出して低いことが原因と指摘します。

 著者が指摘する改革の緊急性とは何でしょう。「減る一方の労働者、増える一方の社会保険費用」が日本経済の根底にあることです。現役世代が高齢者を支える人数は「高齢社会白書2019年版」によると、2018年2.1、2025年1.9、2060年1.4とされています。現役世代の一人当たり一時間当たり社会保障負担額は、2019年は824円です。これに対し東京都の最低賃金は時給985円です。手元に残るのはほんのわずかな金額です。一時間当たり社会保障負担額は、現役世代の減少に伴い、2030年1137円、2040年1642円、2050年1900円、2060年2150円と増えていきます。少なくとも、年率約5%弱の最低賃金の伸びがないと現役世代は負担できないのです。2020年の日本の経済成長見通し0.9%(IMF予想)レベルの成長では社会保障制度は破綻すると著者は主張します。日本の新しい「グランドデザイン」が必要と説きます。それは、政策として、最低賃金を年率5%しかも全国一律で強制的に直ちに引き上げるべきとします。そうしなければ、日本は生き延びて行けないと主張するのです。この様な政策により、非効率な企業は集約される結果、小規模企業に働く労働者の割合が飛躍的に減り、経済成長も先進国並みになり、デフレも解消され、「国の破綻」は回避できると著者は主張します。

 生産性の観点から言えば、先進国では、小規模企業(20人未満。日本は約300万社の小規模企業で働く労働者は20.5%。スペイン、イタリアと同レベル。)に勤務する労働者の比率が高いほど、その国の生産性は低い(日本28位、スペイン32位、イタリア34位。対象190ヵ国中。)のです。その相関係数は0.93と極めて高いことが統計上明らかにされています(著者の前著「日本人の勝算」より)。

■         「新しい日本」を築くために何をすべきか!

【中小企業の経営改革をせよ-中小企業の集約・統合による高効率経営を-】

 著者の前著「日本人の勝算」(2019年7月のメルマガで紹介)では、次の表現で人口減少の厳しさを表しています。「日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は、現在(2017年)の7,682万人が2060年には4,418万人に減ることが予想されています。この4,418万人を大企業から順に割り振ると、352万社中299万社(10人以上30人未満企業の43.5%と10人未満企業すべて)には一人も割り振れないのです」と。つまり、大企業から順に割り振ると、2060年には中小企業は約300万社減り、50万社強しか残らないと言っているのです。

 著者はそのような厳しい現実を直視し、緩やか且つ自然体の企業の経営改善と人口減少要因による自然体での企業数減少では、日本の社会保障制度が破綻し「国の破綻」に繋がると主張するのです。

 「国の破綻」を回避するために、著者は最低賃金を年率5%、しかも、全国一律で強制的に上げていくことを、労働政策ではなく経済政策の「グランドデザイン」として実施すべきと強調するのです。その結果、経営効率を改革できない中小企業は様々な形を採りながら集約されていくと主張するのです(大企業の賃金も最低賃金引き上げの影響を受けるので、経営効率の改革を出来ない大企業も埒外ではない)。

 著者は、「賃上げ」は「国益」であり「義務」であると言い切ります。また前述「日本人の勝算」では、他国の事例を分析しながら、引き上げ率が10%以下であれば雇用・経済への危険性はないとしています。

 十分な政策論議を早急に行い、政策により非効率な企業の背中を押し、「高効率経営改革」をせざるを得ない環境作りが必要であると、紹介本から読み取れます。

【その他の提言】

 上述の最低賃金の政策的・強制的引上げ以外にも、幾つかの提言を著者がしておりますが、字数の関係もありメインテーマに絞り紹介させて頂きました。その他の提言も、企業経営の観点から参考になる事項が多くあります。紹介本を手に取りお読み下さい。

■         著者の提言を真摯に傾聴し、実践に移して行こう(むすび)

 「国運の分岐点」と表題をつけるほどに、著者は現状の日本経済の状況に危機感を抱いています。それは、著者が外国人なるが故とも思います。残念ながら、日本人の「面倒くさい文化」「なあなあ文化」が改革・進歩を妨げていると著者は言いたいのではないでしょうか(著者の既刊著書『イギリス人のアナリストだから分かった日本人の「強み」「弱み」』参照)。

 今こそ著者の真摯なアドバイスに耳を傾け、「国運の分岐点」の時において、「国益」と「義務」である‟高効率経営改革”を実践し、日本を再び輝く国にしようではありませんか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 経営に必須の『SDGs』入門 理解し活用する意義

2019-12-24 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 経営に必須の『SDGs』入門 理解し活用する意義

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

『SDGs入門』

(〈株〉日本総合研究所 村上 茅・渡辺 珠子著 日本経済新聞社)

 

■         企業経営にとって「SDGs」を理解し活用する意義(はじめに)

【「SDGs」とは何か】

 「SDGs(Sustainable Development Goalsの頭文字)」と言う文字を最近新聞等でよく見かけるようになりました。なんとなくイメージは沸きますが、「SDGs」の内容の正確な把握はできているでしょうか。紹介本が示す定義の要点をご紹介しましょう。

 「SDGs」は2015年9月25日の第70回の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。分かり易く表現すれば「2030に向けた、全世界共通の、『持続可能な成長戦略』」となります。

 「SDGs」は17の目標(ゴール)、169のターゲット、232の指標(ターゲットの進捗状況の計り方)から成り立っています。尚、ターゲットには“2・5”あるいは“2・b”といった符号がついています。前者は「ゴールの中身に関するターゲット」、後者は「ゴールの実現方法に関するターゲット」と使い分けられています。合わせて169になるのです。目標1~6は「住みやすい社会を作ろう」、目標7~12は「持続可能な経済圏を作ろう」、目標13~15は「我々を取り巻く環境を守ろう」です。更に、この目標1~15の目標を達成するために必要なのが、目標16の「平和を維持すること」と目標17の「お互いのパートナーシップ」です。

【「SDGs」と企業経営の繋がりを理解する】

 著者は『経営者が感じる「SDGs」の3つの魅力』を挙げています。①「新規事業開発や既存事業の拡大につながりそうだ」②「新たな人材獲得の武器になりそうだ」③「コミュニュケーションツールとして有効だ」です。

 この3つの魅力を実現するツールを著者が紹介しています。分かり易いツールの例として、『「SDGコンパス」+「PDCAサイクルによるSDGsの取り組み」』や『ロジックツリーを応用した「ロジックモデル」+「KPIマネジメント」』などが示されています。是非ご関心のある方は本書を手にして、読取・活用して頂ければと思います。

 ちなみに、2018年12月の経済産業省関東経済産業局「中小企業のSDGs認知度・実態等調査結果」によれば、「SDGsを全く知らない」+「内容を知らない」が92.2%との結果が出ています。中小企業の経営者に「SDGs」を良く分って頂くことで、課題である、生産性の向上の契機にできると思います。

 それでは、「3つの魅力」を実現した企業の実例を次項に記します。

■         企業が「SDGs」を有益に活用している事例

 「SDGs」の経営への活用・成功事例は最近急速に増えています。字数の関係もあり、紹介本に記述されている多くの活用事例、マスコミで取り上げられている多くの活用事例の中から、「3つの魅力」につき1事例のみ記させていただきます。それ以外の活用事例については、紹介本に加え、WEB等を是非参考にして下さい。

【「新規事業開発」と「既存事業拡大」の事例】

 セイコーエプソンでは、使用済みの紙を投入するとその場で100%の再生紙を製造する「ペーパーラボ(PaperLab)」と言う機械を開発しました。このペーパーラボは、 1時間でA4サイズ使用済用紙915枚を処理し、720枚の再生紙を作り出す事が出来ます。

 この処理は、水をほとんど使わず(通常はA4サイズの紙を1枚作るのにコップ1杯程度の水が必要)、外部への委託処理もありません。

 この結果、「SDGs」のターゲット8.4「消費と生産における資源効率を改善し経済成長と環境悪化の分断を図る」、12.2「天然資源の持続可能・効率的利用」、12.4「環境上適切な廃棄物の管理」、12.5「廃棄物の大幅削減」に貢献するだけでなく、ターゲット6.4「水の利用効率の大幅な改善」、9.4「資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大」、15.2「森林減少の阻止」等、様々なターゲットに貢献している画期的な製品と言えるのではないでしょうか。

【「新たな人材獲得」の武器として活用】

 「・・誰もがやりがいを持って働き続けること・・」をミッションとして「女性の再就職」を支援している株式会社ワリス(Waris)の事例です。

 ベンチャー企業は成長するに伴い、バックオフィス(管理部門)業務を派遣に任せ、本業に注力できる体制にする必要があり、バックオフィス職はベンチャー企業からの引き合いが多く、再就職する女性にはチャンスです。そこに注目したワリスは、ベンチャー企業のニーズを把握し、それに対応できるstaff(人材)、skill(能力)、style(リーダーシップ)などの独自のプログラムを有し、バックオフィス職に相応しい人材を確保し、或いは必要な教育等を実施し派遣プログラムを充実させています。それと同時に、インターンシップの導入、働く時間・場所を柔軟に選択できる体制の構築もしています。この結果顧客数は1700社、派遣登録者は1万人と大きく成長しています。

 ワリスは、この様にバックオフィス職の人材を豊富に有していることから、大小を問わず、企業がバックオフィス業務のみを切り出して、派遣に切替え固定費の人件費を変動費化するニーズにも応えています。

 ワリスの再就職支援や専門人材の活用支援は、ターゲット8.5「生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事」に加え、柔軟な働き方を支援することで8.5「安心な労働環境を促進する」を達成し、社会に貢献しているのです。

【「コミュニュケーションツール」として活用】

 大和証券グループは、社内に「SDGs推進委員会」を立上げ、中期経営計画にも取組み強化を盛り込んでいます。その結果、新しいSDGs商品の売り出しや、新しいSDGs事業への参入に成果を出しています。

 この様な成果は、SDGsへの取組み中で、社員にSDGsに係る取組み事例を募集したところ、直ちに120人もの社員から4200個を超える応募がベースとなっています。応募が多数にのぼった事は、SDGsの目標(ゴール)、ターゲット、指標が「コミュニュケーションツール」になっていることの証左ではないでしょうか。(「日経朝刊2019.9.30大和証券グループ広告」より)

■         必ず企業経営にプラスになる「SDGs」を早速はじめよう(むすび)

  SDGsの『経営にとっての「3つの魅力」』を実現するには、現在実施しているISO1400・9000等の中に「SDGs」を取込むことで直ちに始めることが可能です。勿論、前述した紹介本のツールを使って新たにスタートするのも良いでしょう。

 いずれにしても、SDGsを経営に取込むことで必ず経営の革新をもたらすと同時に、新たな企業価値の力強い発信力になるのではないでしょうか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 実例に学ぶ 人と組織の関係性 「エンゲージメント経営」

2019-11-21 16:30:26 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 実例に学ぶ 人と組織の関係性 「エンゲージメント経営」

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

実例に学ぶ 人と組織の関係性 「エンゲージメント経営」

 

(コーン・フェリー 柴田 彰著 日本能率協会マネジメントセンター)

 

■   欧米のグローバル企業の叡智の集積「社員エンゲージメント」(はじめに)

 著者は、50ヵ国以上の国において、7,500人以上のスタッフを抱え、人材戦略を主とするコンサルティングファームであるコーン・フェリーのパートナーです。著者は、近年特に、「社員エンゲージメント」等のコンサルティング実績を豊富に積み、紹介本を著作しました。著者は「社員エンゲージメント」の定義を「自分が所属す組織と、自分の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする社員の意欲」とします。

 著者は、かかる背景から、実例に基づき、且、グローバルな視点から、日本企業の「社員エンゲージメント」の実態を分析し、グローバル化の進展などによる日本の社会・経済の変化、将来の社会・経済の担い手となる若者の価値観の変化を踏まえ、欧米に比べ異常なほどに「熱意を持てない社員の比率の高さ」に危機感を抱き、「社員エンゲージメント」を欧米並みに高めていく事が重要な企業戦略・人事戦略の一つであると強調します。

 更に、欧米は多民族文化・社会です。その様な社会でグローバルな競争に打ち勝っていくために「社員エンゲージメント」は必須の戦略でした。その意味で、永年に亘り「社員エンゲージメント」を高める叡智を蓄積して今に至っています。しかし、日本は、新卒一括採用と終身雇用という日本独特の慣行を今も有し、それが、“明確な序列”と“集団の排他性”を持った「村社会」を成立させ、「閉鎖的なコミュニティー」を築いてきました。過去の高度成長期はそれがプラスに働いた時もありましたが、最早その様な時代ではなくなり、グローバル化が進み価値観が多様化する中で、「社員エンゲージメント」を欧米並みに高めていく事が、今後の日本の経済・社会の発展にとって必要不可欠である事に、経営者は気づき経営に取り込んでいかねば、生き残りはないと言います。

 加えて、「社員エンゲージメント」は、“会社は社員が期待することを提供できているか” ‟社員が仕事に幸せを感じて意欲的に取り組めているか”の二つの問いを対で判断すべきもので、社員満足度のように一方的に判断するものとは大きく異なります。人と組織の関係性の変化に気づき、対応していく事が経営に求められると言います。

 著者は、コンサルティングの実例を踏まえ、日本の企業の経営者の意識はまだ大きく遅れていると見ます。著者が示す『「社員エンゲージメント」を経営にいかに取り入れていけばよいか』の考えを次項で見てみましょう。

                       

■   欧米に大きく後塵を拝している日本企業が、まず取り組むべきこと

【先ずは、経営陣が本気になること】

 著者は、「日本は社員エンゲージメント元年を迎えたばかりである」といいます。つまり、「社員エンゲージメント」の概念(要因・及ぼす影響など)が普遍的・自然なものとして定着するにはまだ時間がかかるのです。

 しかしそこまで待っていたのでは、様々な問題が発生してしまいます。既に、「社員エンゲージメント」の低さが原因で、グローバル企業での、海外におけるマネジメントの失敗、国内企業における離職率の増加等の問題が発生していると著者は指摘します。

 この様な事実を踏まえ、経営陣が危機意識を明確に持ち、「社員エンゲージメント」を経営指標の一つとして取り入れ、真摯に実行・スタートをすることが大切です。「社員エンゲージメント」は社員一人一人が対象となるわけですから簡単ではありません。

 定点観測を定期的に行い、それに基づく改善活動を地道に続けていく必要があります。数年の活動を続けることで、「エンゲージメント」が向上してきます。現場の社員のエンゲージメントの向上に直接関与していくのは、現場の組織長です。だからと言って、組織長に責任を投げてはなりません。あくまで経営陣が責任を持って、鍵となる、熱意と継続性を持って、「エンゲージメント」向上に向かって進むことが重要です。

【「社員エンゲージメント」を高めるポイント】

 著者は、著者の所属するコンサルタントファームの調査結果を踏まえ、「社員エンゲージメント」と相関の高いドライバー(要素)のBest8を挙げています。

①   顧客に提供する体験的価値への自信

②   成果創出に向けた効果的な組織体制 

③   自社におけるキャリヤ目標達成の見込み

④   生産性を高めるための環境整備

⑤   やりがい・興味がある仕事を行う機会

⑥   仕事を高めるための十分な人員の確保

⑦   一個人としての尊重

⑧   自社の戦略と目標に対する信頼感

 定点観測から得られた、Best8のドライバーは何を示唆しているのでしょう。私の感想では、経営陣には経営の示唆を与え、現場の組織長には組織長の対応姿勢に示唆を与えています。「社員エンゲージメント」は正に、経営を改革し、現場の組織長の資質を向上し、社員の仕事と所属組織に対する熱意を上げる、Win-Winの効果をもたらすのです。それは、日本で問題とされている、労働生産性(付加価値額)の向上を待たらすのです。

【「社員エンゲージメント」に関するその他の知見】

 紹介本には、著者及び著者の所属するコンサルタントファームの「社員エンゲージメント」に係るコンサルティング実例を基にした知見が掲載されています。欧米の後塵を拝している日本企業にとっては参考となる知見を発見できます。字数の関係で十分なご紹介が出来ませんでした。ご興味のある方は、是非紹介本を手に取ってお読み下さい。

 

■   生き残りをかけて「社員エンゲージメント」を経営に取り込もう(むすび)

 著者が指摘するように、「日本は社員エンゲージメント元年を迎えたばかりである」のです。未だ、十分な方法論などの知見が蓄積されている訳ではありません。

 「社員エンゲージメント」の向上の重要性は十分理解できます。それは、経営陣が「うちの社員は本当に幸せなのだろうか」と素直に考えることと同義です。

 出来ることから始めましょう。定点観測のためのSaaSを使っても良いでしょう。自社で開発した物でも良いでしょう。自社で仕組みを創出するのも良いでしょう。

 まず、出来ることから始め、継続的・地道に続けることが大切と思います。必ず、「やって良かった」と思える日が来ることでしょう。

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 古き佳きエジンバラから新しい日本が見える

2019-10-22 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 古き佳きエジンバラから新しい日本が見える

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

   今日のおすすめ

     『古き佳きエジンバラから新しい日本が見える』

      (ハーディ智砂子著 講談社+α新書)

■ エジンバラでファンドマネジャーとして活躍する日本女性の視点(はじめに)

 著者はスコットランドの首都エジンバラで活躍する日本人女性です。エジンバラの著者に日本・日本人がどの様に見えたのか、その点に興味を持ち、また皆さんに知って頂きたい思いで紹介本を手に取りました。

 

【エジンバラは歴史的に見てどのような地政学的意味を持つのか】

 エジンバラは、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(イギリスの正式呼称=UK)を構成するカントリー、スコットランドの首都です。『エジンバラは経済において最大の産業は金融産業(保険、資産運用が強い)。ロンドン・フランクフルトに次いでヨーロッパ第3位、世界でも第6位の金融センター(二之湯武史「エジンバラ-21世紀型の都市-」より)』の論文と、著者が『エジンバラは地方都市かと思っていたが、先輩の話では、ヨーロッパの金融センターの一つで、多くの老舗金融機関の発祥の地であるという』と述べている事と符合するのです。

 スコットランドとイングランドは長い間お互い独立国として抗争を続けてきましたが、1707年スコットランドは経済力があり地政学的にイングランドに近いスコットランドのローランド(北部の山岳地帯はハイランド)勢力の賛同もあり、大ブリテン王国として、イングランドに併合され一つの国家としてスタートしました。(アイルランドは、1649年ピューリタン革命を起こしたクロムウェルにより制圧され植民地となり第二次世界大戦後アイルランド共和国として独立しますが、その際プロテスタントの多い北アイルランドはUKに残留)。

 そんなエジンバラは「国富論」のアダム・スミスとも深い関係があり、少し広いスコットランドから見ると、産業革命(更には資本主義)に強い影響力を持ったカルヴァン派の一派が主流となり、産出する石炭と相俟って、イギリスの産業革命を支えたのです。現在は北海油田を抱えるカントリーです。

 お話はエジンバラから更に跳んで、UKの複雑な歴史の一部を見ることになりましたが『イギリスの「EU離脱」』の先行きを読み解くうえの「メタ」な情報に繋がると思い、筆を滑らせました。

【日本から遥か離れたエジンバラから見える新しい日本】

 著者がファンドマネジャーとして著書を表すまでになるには、多大な努力と経験と時間とを積み重ねています。それに加えて女性ならではの感性を持っていると思います。そんな著者が、日本から遥か離れたエジンバラで熱心に仕事に打ち込んでいるからこそ見えたもの、その見えたものが結果という検証を経て、確信できる真理に到達しているのではないでしょうか。

 その様な真理は、私達経営に関わるものにとって大きなヒントとなるのではないでしょうか。著者が難しい理論ではなく、日常のビジネスの中で、自然体で捉え、見えた真理を次の項でご紹介します。

■ 著者が語る「エジンバラで確信した日本の成長性」

 

【エジンバラで確信した『「日本人の強み」「日本人ファンドマネジャーの強み」』】

 著者は、フランスの保険会社AXAグループの投資運用会社AXA Investment Managersで、日本株のファンドマネジャーとして活躍するプロです。著者は自分の強みを「普通の日本人であること」と強調します。それは、「日本人であるからこそ発言できる事」を「自信と思い入れ」を持って語れることだとします。

 著者は、ロンドンで開かれる全体会議に出席する以外は、エジンバラのサテライト・オフィスに拠点を置き、日本の経営者やIR担当者とコミュニュケーションを取り、著者の独自の戦略を以って抜群の成果を上げています。独自の戦略とは、勿論のこと的確な分析を前提としながら、『普通の生活者としての常識を失わない』『プロであっても素人の目を持ち続ける』『「トップダウン(日本経済全体)」ではなく、「ボトムアップ(個別の企業の成長性)」で判断する』に重点を置いているのです。

 

【エジンバラで確信した「成長する企業の特徴」】

〔日本の優良企業の人材選抜法〕

 著者は、ある経営者の次の発言にこれからの成長する日本企業の特徴を見いだしています。「企業として価値を生み出していくために、次々と増えるポストに、最も相応しい能力や性格は何か、そのような人材を判別・採用する方法は何かにエネルギーを注いでいる」。著者は、この経営者の発言に、「この様な変化は日本でも起こり始めている」と加え、経営学で最近盛んに言われている『「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への人事政策の転換』を先取りしている様に思えます。

 上記以外にも、何気ない「私の履歴書」的な語り口の中に、長期的に成長する優良企業のあるべき特徴について書かれていますが、字数の関係でご紹介できません。紹介本を是非手に取りお読みください。

 

【エジンバラで確信した「日本の未来は明るい」】

 著者は、『日本の「少子高齢化」を外国のファンドマネジャーは否定的に見るが、この様な課題を抱えているが故に、課題先進国として積み重ねたノウハウを更に発展させ、新たな道を開いていく力が日本・日本人にはある』として「日本の未来は明るい」と言い切ります。

 又、コストカットをして格段に高い報酬を得る欧米型経営のプロを対極に置いて、日本の優れた経営者は、会社を愛し従業員を愛する経営者が多くいると指摘し、そのような経営者が、従業員が高いモチベーションを持って企業価値を創造していく環境を作り出す事が出来るとして「日本の未来は明るい」といいます。

■ 今こそ『何を「守破離」すべきか』を考える時(むすび)

 「外国人の見る日本」については、多くの著書があり、この場でもいくつか紹介して参りました。そこでは、私たち日本人の価値観の変革を促す、良い知見を多く得ることが出来たと思います。

 「外国在住の日本人から見た日本」について書かれた本は、紹介本が初めてでした。日本人である著者の外国から見た日本観により、日本・日本人の良さを再確認すると同時に、日本人に良い方向に変わってほしい日本・日本人の弱み・課題も再確認することが出来たと思います。

 紹介本を読んで思うことは、多分著者も同じ思いと思うのですが、今直ちに企業経営の観点から着手すべきは、自社の強み・良さを明確にし、それを更に価値あるものに高め(守・命題)、更に飛躍して(破・対立命題)、新たな価値を創造する(離・統合命題)過程で、自社の課題・弱みを新たな価値を創造する基軸に貢献するよう改革し、持続的・長期的利益(SSP:Sustainable Superior Profit)を出せる企業へと経営革新を図っていくことではないでしょうか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 「日本人の勝算」大変革時代の生存戦略

2019-08-04 16:01:38 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 「日本人の勝算」大変革時代の生存戦略

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

『「日本人の勝算」大変革時代(ターニングポイント)の生存戦略』

 

    (デービッド・アトキンソン著 東洋経済新報社)

 

   人口減少を直視せよー今という「最後のチャンス」を逃すなー(はじめに)

 

 著者は在日30年になるイギリス人で、その間、ゴールドマン・サックスやアクセンチュアを経て、現在は文化財補修の最大手「小西美術工藝社」の社長を務めています。2017年には日本政府観光局特別顧問に就任。

 

 

 この様な著者が、日本が直面する最大の課題である「人口減少・高齢化」の問題に関し、先入観を持って誤った判断をしがちな日本人の思考(著者は『日本人の「変わらない力」は異常』と表現)を排除し、外国人(著者)の目と、海外118人のエコノミストの「人口減少と経済」に関する論文から得られた分析と、加えて、世界中の統計の分析から、客観的・冷徹に「人口減少・高齢化」を直視し、対応戦略をプラス思考で『日本人の勝算』として著書にしたのが紹介本です。

 

 紹介本が示す、「人口減少・高齢化」を乗り越える対応戦略『日本人の勝算』を、次項で見てみましょう。

 

 それは、我々の先入観を覆し、その通りと頷首出来る、日本の進むべき方向を示しています。しかも、今から始めなければ遅くなる「最後のチャンス」でもあります。

 

  外国人だから分かる『大変革時代の「日本人の勝算」』

 

【資本主義を「High road capitalism」にアップデートせよ】

 

 著者は現在の日本の経営を「Low road capitalism」「低付加価値・低所得資本主義」と位置付けます。言い換えると「いいものを安く」「同類の商品の価格競争」「仕事の自主性が低い」「管理する側の層が厚い肩書主義」だと主張します。このままで行くなら、日本は三流先進国に成り下がると言い切ります。『「人口減少・高齢化」時代に、日本の現システムを維持するため、GDPを維持していくには「人口減少・高齢化」で下がるGDPを生産性向上でカバーしていく必要がある』と主張します。何故ならば「経済成長=人口×生産性」が成立つからです。更には「経済成長=人口×一人当たりGDP」と考えるならば、一人当たりの所得を上げていく必要があります。その為に「High road capitalism」「高付加価値・高所得資本主義」にパラダイム転換を図っていく必要があるのです。それは「よりいいもものをより高く」「専門性の高い分野での品質競争」「労働者と経営層との階層が少ない」「一般社員の給与が相対的に高くなる」経済社会への転換であると著者は主張します。日本の不勉強な経営者に任せず、政府の政策転換(最低賃金引上げ政策等)で行わないとパラダイム転換はできないとまで言い切るのです。

 

【輸出小国から脱却せよ】

 

 日本は輸出大国と言われていますが、実は、輸出小国なのです。著者はこう指摘します。『日本は、輸出総額では世界第4位ながら、一人当たり輸出額では44位、GDP比では117位。日本の輸出潜在能力が十分に発揮されていない。今までは人口増加により国内市場が拡大し、日本企業は国内市場を相手にしていればよかった。しかし人口減少社会で国内市場が縮小し、生産設備余剰・供給過剰の状態になる。その状態を乗り越えるには、輸出を増やす必要がある。世界のGDPに対する輸出比率の平均は41.07%、総額3位のドイツは46.1%。これに対し日本は16.1%。ドイツのある大学の研究結果によれば、輸出をしたいという意思が重要で、輸出の結果として生産性が高まる等の良い結果が出てくる。』

 

 著者は、日本が輸出潜在能力を発揮し、生産性の向上に結び付けられていないのは、中小企業を中心として、輸出したいという意欲・識見が欠如していることを問題にしているのです。

 

【企業規模を拡大せよ】

 

 著者が注目すべき試算をしています。日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は、現在(2017年)の7,682万人が2060年には4,418万人に減ることが予想されています。この4,418万人を大企業から順に割り振ると、352万社中299万社(10人以上30人未満企業の43.5%と10人未満企業すべて)には一人も割り振れないのです。生産性の観点から言えば、先進国では小規模企業に勤務する労働者の比率の低さと生産性の高さの相関係数は0.93と極めて高いことが統計上明らかにされています。人材評価で世界4位(世界経済フォーラム「人的資本指数」2016年)に対し、生産性は28位となるのは、小企業で働いている日本人の比率が高いからと著者は指摘します。

 

 著者は、生産性の課題解決、輸出潜在能力発揮、「High road capitalism」へのパラダイムシフト等の点から、『企業規模の拡大』の重要性を主張します。

 

【最低賃金を引き上げよ】

 

 前述したように、GDP(=人口×生産性)を維持しようとするならば、人口減少社会では生産性を上げていく必要があります。著者は、生産性を上げるには意図的に誰かが上げる「人為的に伸ばす経済モデル」に転換していく必要性を強調します。

 

 マッキンゼーのレポートを引用し、問題になるのは中小企業の経営者の質の低さであると指摘します。中小企業の経営者の質を高める時間的余裕はもう有りません。著者は、そこで、強制的に経営者の質・生産性を高めるために、最低賃金の引上げを社会政策ではなく経済政策と考え、政府の所管を厚労省から、経産省に移し実施すべきと主張します。また、最低賃金の経済政策的引き上げは、併せて、経済成長、女性活躍、格差の是正、福祉問題、財政問題などに大きく貢献すると言います。

 

 著者のこの様な確信は、イギリスの最低賃金引上げ政策の実例があるからです。イギリスは1999年から2018年までの20年間に、12回、年率平均4.17%、金額では2.175倍最低賃金を引き上げました。失業への影響はなく、生産性の低かったサービス業の生産性が上がり、生産性の高い企業ほど雇用が拡大し生産性の低い企業の雇用は増えず、個々の企業の生産性の向上だけではなく、国全体の生産性を向上させた実績を残しています。

 

【その他の「日本人の勝算」】

 

 字数の関係で、上述に留めますが、他にも大切な「勝算」が書かれています。是非紹介本を手に取ってお読み下さい。

■   大変革時代の生存競争に生き残る「最後のチャンス」(むすび)

 

 

 紹介本から発信される「日本の勝算」を参考にしながら、かなり先と思えるものが、あっという間に到来する変化に対応すべく、今日から、前項で記しました仮説(生存企業数確率約15%)の生存企業に入る対策・改革を始めましょう。

 

 「最後のチャンス」の覚悟で取組むことで、良い結果を得る事が出来るのではないでしょうか。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】事例から学ぶ「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社

2019-06-25 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】事例から学ぶ「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社』

(小室淑恵 著 毎日新聞出版)

■      「表面的・緊急的」改革ではなく「本質的・地道・着実な」改革を(はじめに)

 紹介本は「働き方改革」という題名で、「働き方改革コンサルタント」である著者が、自身のコンサルタント体験を記した本です。

 4月に働き方改革法の施行が始まったことから、「働き方改革」というテーマが社会的に盛り上がっており、紹介本もその一環と言えます。しかし、著者がこの紹介本を通しての主張は、『重要な経営課題は経営改革・意識改革であり、「働き方改革」のテーマが盛り上がる前も、熱が冷めた後も、常に企業経営に必須の課題』だと述べています。

 そのことを主張するために、著者は『「表面的・緊急的」改革ではなく「本質的・地道・着実な」改革を』と述べているのです。その様な意味で、紹介本は「働き方改革」についての実践論を通して、企業経営における経営改革・意識改革の必要性と、方法論を展開しているのです。つまり、「働き方改革」という狭い領域ではなく、幅広くそして新しい時代に何をすべきかと言う事を、紹介本の改革手法並びに具体的な企業の事例から読み取り、企業経営の大きなヒントにして欲しいと、著者は思っているのです。

 それでは次項で、具体的企業の事例の中から、企業経営にヒントになる事例を、ご紹介しましょう。

■      事例が示す「働き方改革」は「経営改革」

【企業文化、ブランド、業績、社員の幸せ感などに好結果の出た中小企業M・O社】

 M・O社は2015年に三重県が推進する「ワーク・ライフ・バランス推進サポート事業(コンサルタント派遣事業)」に手を挙げた従業員58名の調剤薬局です。大阪、名古屋から1時間の三重県松坂市に本社を置く、人材・採用面で大都市圏に優位を奪われる難しい処に立地しています。

 M・O社が「推進サポート事業」を契機に、コンサルタントのサポートを得ながら、従業員4名のトライアル店舗で「推進サポート事業」の趣旨に沿った改革を始めました。4名全員でゴールイメージを決める『カエル会議(カエルには、‟仕事のやり方を「変える」“‟早く「帰る」”‟人生を「変える」”の三つの意味。著者提案の会議。)』に参加し、会議室もホワイトボードもない処方室で、分包機を机代わりにA3用紙にメンバーの意見を書き込み、立ったままで自由な意見交換をし、「全員の有給休暇100%取得」をゴールにしました。

 このゴールを実現するため、マニュアルとスキルマップを作成します。ここで面白いのは、社歴の浅い新入社員にマニュアルを作らせたのです。それは、若手が、仕事を覚え、信頼して任されることから、やる気が芽生える効果を、目論んだのでした。スキルマップを作ることで、誰が休んでも問題ないために、各自どんなスキルを補充すべきかの見える化が図られ、「全員有給休暇100%」に向けて体制が着々と出来ていったのです。

 実際に「有給休暇100%取得」が実現できた結果、トライアル店舗ではどんな変化が起こったのでしょう。有休取得率は前年比352%、医薬品売上は前年比230%となりました。このトライアル店舗の改革を経営トップが認め、「社員がプライベートを大切にし、社員の幸せを第一に考えよう」とのメッセージを全社に発信したのです。

 この取組みが全社に広がり実施されました。その結果、結婚数は2倍、出産数は2.5倍、出産による退職者ゼロとなったのです。この結果は、地域社会にも知れ渡り、2017年の新卒採用では、エントリー数が前年の33名から、約5倍の168名に増加しました。

 小さく始めた地道な「働き方改革」を機に、企業体質・文化、社員の意識、地域社会の評価など全ての点で大きな変革を果たしたのです。

【『時間外削減・生産性UPが収入減に繋がる』熱意ダウン現象を解消したM・P社】

 M・P社は首都圏や全国中核都市の大型オフィスビルや商業施設の運営・管理や工事・修繕を行う従業員1072名の会社です。物件担当をユニットとした4つのトライアルチームで取り組みをスタートさせました。著者の提案する『朝メール・夜メール(「段取りで8割が決まる」の原理を達成させるためのツール)』『カエル会議(前出)』を実施し、トライアンドエラーを重ね、チーム間のばらつきも経験しながら、最終的には、チームメンバー間の「仕事の‟見える化”‟効率化” ‟共有化と助け合い”」を通じ、時間外削減の知見を得て、その知見を全社に広げ、目標年の2016年には、計画通りの業績を達成した上で、取組みスタート時比16%の時間外削減と残業時間代8,000万円の削減の結果を出すに至りました。

 私がこの事例を採り上げたのは、残業時間が削減され、生産性が向上しても、収入・所得が減ってしまうという「熱意ダウン現象」を解決した点にあります。表面的には経営者が判断・決定したことですが、その背景にある経営者の判断を促す仕組みに注目して下さい。

 それは、著者の提案に基づき、「トップと現場がざっくばらんに意見交換する場」を設けた事でした。ここで出て来た現場の意見は『時間外を削減し生産効率を上げても、収入・所得が減少する、「熱意ダウン現象」の指摘』でした。この意見を受け入れたトップは、捻出された残業代8,000万円全額を、賞与を通じ還元したのです。さらに、新たな表彰制度を設け、熱意を持って、一定の残業時間削減と有給休暇消化を果たした部署に、賞与時に、一人当たり6万円を支給することにしたのです。これにより、時間外削減・生産性向上に取組む熱意をサポートしたのです。

【ほかにも多くの好事例】

 字数の関係上、事例紹介は二つに止めますが、他にも企業経営にヒントになる事例が掲載されています。是非紹介本を手に取り、読み取って頂ければ幸いです。

■      「働き方改革」は「経営革新」のチャンス(むすび)

 「働き方改革」というテーマは、全社・全社員に共通した課題として、誰でも参加出来るコンテンツを持っています。「人口減少・高齢化・人出不足」に前向きに対応していく「チャンス」として活用できる好テーマです。

 このテーマは、「チーム」という組織に力点を置き、従来の経営改革からパラダイムシフトした改革手法として、メンバー相互間の知の結合を図り、シナジーアップし、さらには、他の経営課題にも繋げていく事で、大きな成果を出す事が出来ます。取り組んでみませんか。

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。


■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?

2019-05-30 13:13:56 | 経営コンサルタントの本棚
■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?
 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■  今日のおすすめ
 
『未来年表「人口減少危機論のウソ」』

     (高橋洋一著 扶桑社新書)

 
 

 

   著者が解き明かす「人口が減少しても何も問題はない」(はじめに)

 

 私達は、「2065年には日本の総人口が8800万人まで減少する。加えて2.5人に一人が高齢者となる。」と言う数字と、それと同時に発信される「人口減少危機論」を受け入れ、悲観的な危機意識を強く持っているのではないでしょうか。

 

 しかし、紹介本の著者は、「人口が減少しても何も問題はありません」「その理由を解き明かします」と宣言し、主に統計学的・数理的・論理的な根拠を示すことにより、本質的な真実を明らかにすると同時に、人口減少時代にこそ、私達が、正しい認識を持ち、「何を為すべきか」という前向きな姿勢で、様々な事態に対処するよう求めています。

 

 私達は、紹介本に巡り合えたことを「好機」と捉え、今まで持っていた「人口減少危機論」を白紙に戻し、著者の主張に耳を傾けると同時に、真剣に人口減少時代に向き合い、「何を為すべきか」問い直してみようではありませんか。

 

 卑近な話ですが、先日、千葉市立中央図書館に行って「人口減少」をキーワードに所蔵図書を検索してみたところ、6か月以内に出版された数冊の図書はすべて貸し出し中でした。紹介本もやはり貸し出し中でした。如何に「人口減少」課題への関心が高いかがわかります。唯一、図書館の書架に在庫としてあったのは、貸出禁止の「総務省平成30年版ICT白書『人口減少時代のICTによる持続的成長』」だけでした。

 

 この「白書」は、GDPの需要面から見た構成要素を「消費」「投資」「政府支出」「輸出入」と定義した上で、「人口減少時代」に国内市場が縮小していく中で、ICTによる需要・供給両面が増加する要因を二つ挙げています。一つ目は産業・業種を超えたICT「プラットフォーム」によって、データのやり取りが容易になり、BtoB、BtoC、CtoCの関係が変化し、新たな価値や仕組みが生み出され、「市場」が広がるとしています。二つ目はICT輸出・海外展開・インバウンド需要といったグローバル需要に対応した、態勢整備、グローバル需要の取込みへの創造的対応等により、「市場」が広がるとしています。「白書」の例は一例にすぎませんが、「人口減少危機論」に手をこまねいているのではなく、大きな構造変革・仕組み変革・新たな価値の創造への道を歩むことで、「人口減少時代」を前向きに乗り越える道があることを示しています。紹介本の主張する意義もそこに有ると思われるのです。

 

 それでは、著者が語る「人口が減少しても、問題の無い根拠」を、次項で、その一部をご紹介します。

 

「人口が減少による懸念事項」について「問題ない」と解き明かします

 

【人口がGDP成長率に影響を与える割合】

 

 著者は、「GDP=みんなの平均給与×総人口」と定義し、2065年に人口が8800万人まで減少した場合の、GDPの変化率を、微・積分的な計算式で、△0.7%程度との解答を出し、「この程度は、影響はほとんどなし」と結論付けます。つまり、この程度の減少は、前述の「白書」を例に上げ、ICTの活用等による生産性の向上等でカバーしてお釣りが出ると主張するのです。

 

【人口増減率と一人当たりGDP成長率は相関が無い】

 

 著者は、世界208か国の人口増減率と一人当たりGDP成長率(2000~2017年)をマトリックス(縦軸に一人当たりGDP成長率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、△0.22の相関係数になるとの結果を示しています。つまり世界全体でいえば、人口増加は不味(まず)いが、人口減少は不味(まず)くないとの結論を導くのです。同様の手法を先進国に限って行うと、一人当たりGDPは、人口増減率と無相関との解答・結論を導き出すのです。要は、人口減少はマクロ的に見ると、全く問題ないと結論付けるのです。

 

【インフレ率と人口増減率、通貨増減率の相関関係】

 

 インフレ率と人口増減率の関係については、世界銀行のデータを使い、世界173か国の人口増減率とインフレ率(2000~2008年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、0.1程度の相関係数で、ほぼ無相関との解答を示しています。一方、世界各国の通貨増減率とインフレ率(2000~2009年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に通貨増減率)上にプロットすると、0.7の相関係数になるとの解答を示しています(相関が強い)。つまり、「人口減少=デフレ論」は統計手法・高等数学に弱い官僚・学者の主張であり、デフレは金融政策で対処できることに、これらの官僚・学者は、目を向けるべきだと著者は主張します。

 

【人口減少で社会保障は破綻しない】

 

 著者は、この問題について「破綻しない」という数理的に説明できる根拠を持ちながら、敢えて紹介本に示さず(ページが足りない)簡単に説明しています。現役世代が高齢者一人を支える人数は、「高齢社会白書2018年版」によると(単位:人)、2000年3,9、2017年2,0、2025年1,9、2065年1,3とされていますが、著者は『年金を支えるのは人数ではなく「人口×所得」の金額こそが年金数理上大切なのだ』と主張し、『人口が減少しても「人口×所得」の金額が減少しなければ、何ら問題は生じない。その様な政策・経営をしていく事で破綻を回避できる。』と主張するのです。

 

   「人口減少」を「チャンス」と捉えよう(むすび)

 

 今こそ「人口減少」を梃子に、今まで旧態依然と流れていた日本経済には、大企業病による「エンゲージメント」の低さと、それに伴う生産性の低さ等、改める点は山ほど有るのではないでしょうか。

 

 例えば3・6K(きつい、危険、汚い、給料が安い、休暇が少ない、カッコ悪い)職場を、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望が持てる)職場にAI・ICT等を用い変えていく事で、女性が働ける職場すなわち労働人口を増やして行く対応・変革をしている企業が増えています。「特定技能1級」の外国人労働者を受け入れる安易な法改正により、労働集約型職場を温存させる政策は、ポピュリズム政策ではないでしょうか。むしろ、労働集約型職場は淘汰され、資本集約・知識集約型職場が主流となっていく時代ではないでしょうか。それは「人口減少」を「チャンス」と捉え改革した企業が生き残り、従来の流れを温存した企業が淘汰・買収される時代に成っていくのではないでしょうか。

 

■■ 経営コンサルタントの本棚 バックナンバー ←クリック
 
 
 
 入会案内 ←クリック
 
【経営コンサルタントの育成と資格付与】
 
 
 
since 1951 特定非営利活動法人・日本経営士協会
 
 
 
 日本経営士協会は、戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本公認会計士協会と母体を同じくする、日本で最初にできた経営コンサルタント団体です。
 
 詳しくは、サイトでご覧下さい。 
 
 
 
    ↓ ↓  クリック
 
 日本最古の経営コンサルタント団体・日本経営士協会とは
 
 資格取得についてや入会の手続等
 
 コンサルタントへの依頼、講師捜しに関する情報
 
 コンサルタントとして成功するための各種情報
 
 経営や管理などに関する各種有益情報
 
 経営コンサルタントによるセミナー
 
 お問い合わせや入会・資格取得のお申し込み
 
 会員専用のID/パスワードが必要です

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 『組織の未来は「エンゲージメント」で決まる』

2019-04-23 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚
■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 『組織の未来は「エンゲージメント」で決まる』
 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■  今日のおすすめ
 

『組織の未来は「エンゲージメント」で決まる』

   (新居佳英 松林博文 著 英治出版)

 
 

■         日本企業の驚くべき現実!やる気のない社員が7割!(はじめに)

 私の日本企業観は、細かい処まで行き届く、品質的には世界のトップクラスを行き、日本企業(日本人)に対する、世界の信頼感は圧倒的に高いと思っていました。その考えは今も基本的には変わっていません。しかし、ここ1,2年の間に起きた、余りにも多い、しかも優良企業の、品質検査データ改ざん事件(旭化成建材、日産、スバル、神戸製鋼所、三菱マテリアル、KYB、日立化成等)を目にして、何故という疑問が答えのないまま、頭の中に残っていました。

 しかし、紹介本を読んで、最近の日本企業の現実を理解し、一つの答えが出てきたように思いました。紹介本が紹介する日本企業の現実とは、米国ギャラップ社が2017年に世界各国の企業を対象に実施した「従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査」結果に現れている事実です。日本は、「熱意溢れる社員」は6%、「やる気のない社員」は70%、「周囲に不満を撒き散らしている無気力な社員」は24%と驚く数字が出ているのです。調査対象139か国の中で132位と最下位クラスに属しているのです。

 著者は、『日本企業も高度成長期時代は、エンゲージメントは高かった。しかし、バブルが崩壊し「失われた30年」と言われる時代は、欧米の「事業」に関する指標が取り入れられ、それを基に「事業」の再構築が図られ、「事業」の指標に目が向けられる一方で、「組織」の状態を測る指標が存在しなかった。つまり経営者が「エンゲージメント」の側面を意識してこなかった結果が調査結果として現れている』と説きます。

 この結果、労働生産性(GDP/就業者数)国際比較においても、OECD32か国中22位(GDPでは18位)と、アメリカの労働生産性の6割程度に留まっている現実となっているのです。

 ここで、誤解の生じないよう、従業員満足度とモチベーションとロイヤリティーとエンゲージメントの違いに簡単に触れておきましょう。『「エンゲージメント」は、従業員相互の対等の関係に基づき、主体的・意欲的に取り組んでいる状態を言う。これに対し、従業員満足度(ES)は組織が与えるもので、ESは必ずしも業績や生産性の向上に結び付かない。モチベーションは個々人の動機付けであり、必ずしも組織としての生産性の向上とは結び付かない。ロイヤリティーは上下関係が生み出すもので、相互の対等の関係による「エンゲージメント」とは異なる。』と著者は記します。詳細は紹介本をお読みください。

 それでは、エンゲージメントが経営上どの様な成果を上げているか、次項で実例を参考に見てみたいと思います。

                       

■         ポテンシャルは高い日本企業。エンゲージメント経営で変革できる。

【JAL再生成功の本質】

 著者は、日本企業と日本人のエンゲージメントのポテンシャルとても大きいとし、その象徴的事例として、JAL再生成功を挙げています。

 JALは2010年1月に会社更生法の適用を申請。申請直後の2010/3期の営業利益は▲1,337億円。2012年9月に再上場。再上場直前の2012/3期の営業利益は2,049億円の黒字。約2年余りの再生期間で、3,349億円の採算改善を成し遂げました。

 かかる奇跡的な再生は何故できたのでしょう。再生に当たり、世界中から航空会社を再生させたと称するコンサルタント会社が売り込みに来ました。しかし、最終的には、JALの再建に携わった企業再生支援機構(現地域経済活性化支援機構)委員長の瀬戸英雄弁護士(瀬戸氏自身も倒産企業の再建のベテラン弁護士として、JAL再建成功のもう一つのカギと評価されている)が、京セラの名誉会長稲盛和夫氏を再生会社JALの会長に招聘することに成功したからです。

 稲盛和夫氏は、経営について次のような公式を持っています。『人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力』。JAL再生に当たってもこの公式を全面的に導入しました(「アメーバ経営」の導入)。その中でも特に「考え方」が大切と稲盛氏は主張します。特に、JALで実現すべき経営的「考え方」は、従来の組織構造を革命的に変革し、全社員との家族のような関係の構築、経営者意識を持った人材の育成、独立採算意識を浸透させるためのアメーバ組織と収益状態を管理するツール(「京セラ会計」)の導入、アメーバ組織間の利害対立の解消、全社員の会社経営への参画であると主張します。

 この様な思考を背景に、「考え方」を具現化したもの(手帳)が「JALフィロソフィー」です。JALフィロソフィーは、経営理念を指針化したもので40項目に亘ります。JALフィロソフィーは、社員メンバーを集め、自ら作り上げたのです。しかも、JALフィロソフィーの基本となる経営理念は、『≪全社員の物心両面の幸福を追求し、≫≪お客様に最高のサービスを提供します。≫≪企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。≫』でした。「公的支援を受けた企業」の経営理念には相応しくないと批判を浴びながら、あえて導入したのは、社員一人一人の幸福なしに、何事も進まないことを、稲盛氏はよく理解していたからでした。

 JALの再生成功を振り返ってみて、正にそれは『「エンゲージメント」経営』であると理解できるのではないでしょうか。米ギャラクシーの「従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査」で最下位クラスの日本でも、立派に出来ることの証ではないでしょうか。

【外国企業は先を走っている】

 ここ数年前から、グーグルは新しい幹部役員として「CHO(Chief Happiness Officer」という役職を置いています。又マイクロソフトでは、2014年にCEOに就任したサティア・ナダラ氏は「コンパッション(思いやり)」や「エンパシー(共感)」を重視した経営を行うと公言し、「私たちは、満たされていない、明確にされていない顧客ニーズを展開している。深い共感力、つまり他者の視点を持つ力なしには、この目的を果たし続けることはできない」と語り自らを「CHO」と称しています。両社ともニューヨーク株式市場の時価総額のトップクラスを競う企業に成長しているのです。

【日本の企業も『「エンゲージメント」経営』を導入し始めている】

 日本企業でも、大企業から中小企業に至るまで、著者の会社が売出す「WEVOX」(「エンゲージメント」の見える化のSaaS)を利用している会社が、リリース1年半で約500社に上ると著者は言います。紹介本にも幾つかの導入成功事例が紹介されていますが、これからの時代、「エンゲージメント」経営が注目されるのではと思います。

 

■         成長企業が新たな経営手法「エンゲージメント経営」を導入(むすび)

 前項で記しましたように、「エンゲージメント経営」が、世界では既述2社の他、アップルやディズニーなど多くの企業で導入されています。日本でも既述の如く多くの企業がトライをしています。

 これからの時代、「共創」「共感」「協働」「生産性の向上」「品質の向上」等、人・組織の行動を重視し持続的成長を目指す企業において、「エンゲージメント経営」が注目されて来るのではないでしょうか。

 
■■ 経営コンサルタントの本棚 バックナンバー ←クリック
 
 
 
 入会案内 ←クリック
 
【経営コンサルタントの育成と資格付与】
 
 
 
since 1951 特定非営利活動法人・日本経営士協会
 
 
 
 日本経営士協会は、戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本公認会計士協会と母体を同じくする、日本で最初にできた経営コンサルタント団体です。
 
 詳しくは、サイトでご覧下さい。 
 
 
 
    ↓ ↓  クリック
 
 日本最古の経営コンサルタント団体・日本経営士協会とは
 
 資格取得についてや入会の手続等
 
 コンサルタントへの依頼、講師捜しに関する情報
 
 コンサルタントとして成功するための各種情報
 
 経営や管理などに関する各種有益情報
 
 経営コンサルタントによるセミナー
 
 お問い合わせや入会・資格取得のお申し込み
 
 会員専用のID/パスワードが必要です

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】2019~世界と日本経済の真実「米中貿易戦争で日本は果実を得る」

2019-03-26 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】2019~世界と日本経済の真実「米中貿易戦争で日本は果実を得る」

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■  今日のおすすめ

 『2019~世界と日本経済の真実「米中貿易戦争で日本は果実を得る」

   (高橋洋一著 悟空出版

    日本を取巻く世界の政治・経済情勢のメタを知ろう(はじめに)

 

 著者の高橋洋一氏は、自らを「数量政策学者」と称しています。著者は「2019~世界と日本経済の真実」を、数量的分析と著者の経歴で積み上げた人脈からの情報により、他の著書では得られない、メタ情報として紹介本を通して発信しています。紹介本により、私達が持っている常識的な情報が、より深い新たな発見として見出す事が出来たり、全く違った認識に変えられたり等、新たな知見を与えてくれます。

 

 紹介本には、アメリカ、EU・イギリス・ロシア、中国・北朝鮮・韓国、日本について貴重な知見、しかも、それは著者独自のデータに基づいた知見をベースとした「世界と日本の真実」が書かれています。紹介本を読むことで“エッ!そうなのか”と新たな気付きを見出すことができます。

 

 紹介本の中で語られている“真実”のいくつかを次項でご紹介しましょう。

 

 

 

■  これだけは知っておきたい「2019~世界と日本経済の真実」

 

【紹介本の題名「米中貿易戦争で日本は果実を得る」とは何?】

 

 アルゼンチンで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議で議論するための参考資料として、2018年7月にIMFから発表された「The Global Impact of Escalating Trade」を基に、著者は、米中貿易戦争の日米経済への影響を試算しています。それは、「①鉄鋼、アルミへの関税及び2018年6月と7月に実行された対中輸入関税と中国による同額の報復関税による影響、②2018年9月に追加された対中輸入関税2,000憶ドル(10%)と中国による同規模の報復関税による影響、③自動車輸入関税:米国が全自動車輸入にかける追加関税(25%)と、各国の報復措置による影響」の3つの点に於いて1~5年後の日米両国のGDPへの影響比率を試算・算出しています。

 

 この試算は、米国が全ての項目において、GDPの減少の影響を受けるのに対し、日本は、③の自動車関税により、若干(最初の2年間は若干のプラス。5年後にマイナス0.1%程度のGDPの減少。)のマイナス影響があるものの、①②の項目ではGDPの若干の増加(プラス1.5%程度からプラス0.25%程度)と示しています。

 

 また、自動車については、日本はアメリカに174万台(約360億ドル)を輸出する一方で、アメリカ国内で377万台(アメリカからの輸出・国内販売を含め757億ドル)を生産し、150万人の雇用を生み出していると著者は指摘します。

 

 この様な観点から、著者は、米中貿易戦争に関しては、『日本は「高みの見物」でいい』と主張するのです。

 

【米中貿易戦争の根底にあるもの】

 

 昨年の12月のアルゼンチンで行われたG20の最中に行われた米中首脳会談では、米中貿易戦争の90日間の休戦とその間の交渉で合意した。しかし、米中貿易戦争の根底にあるものは、「資本の自由化」「公正な知的財産の保護」「公正な競争」です。

 

 著者は、その点について、『中国は一党独裁の社会主義国であり、自らが主張する「自由で公平な貿易、公正な国際秩序の継続」は、中国国内での「資本の自由化」「情報の自由化」引いては「司法の民主化」を求められる。しかし中国が一党独裁を続ける限りそれはできない。中国の主張(「自由で公平な貿易、公正な国際秩序の継続」)は口先だけである。米中貿易戦争の長期化は避けられない。』と言います。

 

 90日間の貿易戦争の休戦の期限(2019年2月)は延期され、3月月内には米中首脳会談が開催されると報道されています。一方、中国では中国全国人民代表大会が、3月5日から11日間、開かれます。この二つの政治的イベントは複雑に絡み合っています。この二つのイベントを終えた後に、米中貿易戦争の方向性が見えて来るのではないでしょうか。

 

 【中国に飲み込まれる韓国】

 

 「韓国の対中国輸出は2003年には、アメリカを上回り最大の輸出国になった。2017年には対中国輸出が1244億ドルと、韓国全体の輸出額の25%(韓国GDPの11%)を占め、更には、対中輸入額870億ドルを差し引いた対中貿易黒字は374億ドルとなっている。米中貿易戦争の影響で中国の景気が悪化すれば、韓国経済にとっては大きなダメージになる」と著者は言います。また政治的にも、『2017年5月に就任した文大統領も同年10月に訪中し「アメリカ主導のミサイル防衛システムには参加しない。日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させない。THAADを追加配備しない」と合意した。文大統領が北朝鮮の金委員長との米朝会談に貢献したことは事実だが、その背景には常に中国と連絡を取り合っており、中国の意向を受けていることは間違いないだろう』と著者は付け加えています。

 

 この様な事実から、韓国も北朝鮮も中国の傘下にあると考え、今後の朝鮮半島情勢の動向には注目する必要があると思います。朝鮮半島がアメリカの傘下になるか、中国の傘下になるか、いずれにしても、もし、実現した場合には日本に大きな影響をもたらす事になります。

 

【その他の注目したい真実】

 

 紹介本には、上述以外にも注目すべき「真実」が記述されています。

 

  □  EUとロシアと日本の今後を読む。

 

  □  EPA(経済連携協定)とFTA(自由貿易協定)の違い。共産党支配の中国は、絶対にEPA(経済連携協定)を結べない。

 

等です。是非紹介本を手に取って読んで下さい。

 

 

 

■  「真実」追い求め、冷静に対応して行こう(むすび)

 

 2019年も世界と日本の経済・政治は一見波乱に富んだ年になりそうです。そのような環境の中で、「真実」は何かを真剣に追い求め、そして分析し、それに基づいた冷静な判断を行い、対応していくべき年と思います。

 その場その場の情報に惑わされずに、『世の中の「真実」を見る目』を常に養いつつ、その「真実」に対応する中で、経営のレベルの向上を図りたいですね。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントの本棚 バックナンバー ←クリック

 
 
 
 入会案内 ←クリック
 

【経営コンサルタントの育成と資格付与】
 
 
 
since 1951 特定非営利活動法人・日本経営士協会
 
 
 
 日本経営士協会は、戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本公認会計士協会と母体を同じくする、日本で最初にできた経営コンサルタント団体です。
 
 詳しくは、サイトでご覧下さい。 
 
 
 
    ↓ ↓  クリック
 
 日本最古の経営コンサルタント団体・日本経営士協会とは
 
 資格取得についてや入会の手続等
 
 コンサルタントへの依頼、講師捜しに関する情報
 
 コンサルタントとして成功するための各種情報
 
 経営や管理などに関する各種有益情報
 
 経営コンサルタントによるセミナー
 
 お問い合わせや入会・資格取得のお申し込み
 
 会員専用のID/パスワードが必要です

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日経大予測2019「これからの日本の論点」 見るためのポイント

2019-02-26 14:30:25 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日経大予測2019「これからの日本の論点」 見るためのポイント

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■  今日のおすすめ

 『日経大予測2019「これからの日本の論点」』

   (日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社)

    2019年の「日本の論点」に注目してみよう(はじめに)

 

 新しい年のスタートの時期に当たり、新年のPESTに係る本をご紹介します。

 

 紹介本は毎年日本経済新聞社から出版される恒例の本であり、表題の「2019『これからの日本の論点』」が出版されると、「もうそんな時期になったか」と思うと共に、新年はどんな年になるのだろうと、胸をどきどきさせながら読みます。

 

 2019年版は、「経済・金融のこれから」「産業・企業はこれからどうなる」「政治・国際情勢・世界経済はこれからどうなる」の3Chapter、22項目に亘って日本経済新聞の記者が書き下ろしたものです。

 

 日頃からPEST(政治・経済・社会情勢・技術)に関心を持ち、新聞やテレビなどから情報を取集しておられる方にとっては復習的になるかもしれませんが、改めて22のテーマについて読みますと、意外と新たなメタな情報の発見があります。

 

 22のテーマの中には、日頃のニュースではあまり報じられていないもの、報じられても表層的で、深く分析的に報道されていないものがあります。そのような中から「注目したい日本の論点」を、次項でご紹介します。

 

 

 

    2019年の「日本の論点」の特徴は

 

【2019年は国際情勢が懸念の中心に】

 

 紹介本は、2018年を総括して、『トランプ大統領の「やりたい放題」の政策が現実の姿となって現れたのが、2018年という1年の特徴だった』と表現しています。更に『米前大統領のオバマ政権の時から、「もはや世界の警察官ではない」と公言し、世界のリーダー役から退く構えを示してきた経緯があったが、「世界秩序の破壊者」と称されるトランプ政権の時代になり、世界のリーダー役の不在が現実となってしまった。中国もロシアも強権国家であり、リーダーの代替にはなりえない。結局トランプ政権がもたらした国際的な混乱に世界は揺さぶられ、国際秩序は当面リーダーとなる調整役が不在のまま不安定な状況が続くとみるべきであろう』、と強調しています。

 

 崩れた国際秩序の中で、2019年はどんな懸念があるのでしょう。紹介本は22項目の内7項目を割いて国際情勢の懸念を予測しています。それは日本の政治・経済情勢が、国際情勢の影響を受けやすい年である事を特徴づけています。

 

 それでは、どんな国際情勢の懸念があるのか、重要と思われる幾つかを以下で採り上げてみましょう。

 

【米中貿易戦争と日本】

 

 米中貿易戦争は、米中が世界の政治・経済・技術での覇権争いです。米国と中国の競争状況を数字で拾ってみると、特許出願数では中国は日本を抜いて2位(1位は米国)、スーパーコンピューターの計算速度では中国は米国に次いで2位、スパコンの保有台数では中国が米国を抜いて1位、AIを手掛ける企業数では僅差で中国は米国に次いで2位となっており、米国としても中国の脅威を感じざるを得ません。

 

 加えて、トランプ、習近平の背景には、それぞれの国の政治情勢が深く絡んできます。習近平の権力も盤石とは言えません。北京の近くの保養地で毎年8月に開催される「北載河会議」、2018年は引退した江氏、胡氏等の長老と現指導部からは李克強など4名が出席したと報じられています。その会議で、江氏と胡氏が手を組み習近平に、外交・経済政策の見直しを求める1万字を超える意見書を提出したとの噂も出ていることから、盤石に見える習政権に何か変化が起きる可能性を否定できません。

 

 この様な米中の深い対立があって、日本と中国の外交的改善や協力関係の推進が持ち上がって来ていますが、米中の板挟みの中での日本の判断は悩ましいものとなりそうです。

 

【世界に広がる「ナショナリズム」と「ポピュリズム」】

 

 2018年に蒔かれた、トランプの「アメリカ・ファースト」が世界に多くの「ナショナリズム」と「ポピュリズム」の国家を生みました。「ナショナリズム」とは国家主義と訳せばいいのでしょうか。「ポピュリズム」とは大衆迎合政治と訳せばいいのでしょうか。ドイツの「ドイツのための選択肢」の躍進、オーストリアの極右・自由党政権の成立、イタリアの「五つ星運動」「同盟」の連立政権の成立、チェコ、ハンガリー、メキシコなどでの政権交代等世界は大きく変わってきています。

 

 今までの世界秩序を維持してきた、「普遍的・公正なルール」が通用しなくなるのではと懸念されます。G7、G20、APEC等の国際秩序を作ってきた同盟組織・機構が機能を果たせなくなる事態が起こるのではないかと懸念されます。そこから生じる地政学リスクに注意を払う必要のある年になりそうです。

 

【目を離せない中東情勢】

 

 アメリカの、核合意離脱によるイランへの制裁強化は、これからどのような影響を世界に与えていくのでしょう。まさかホルムズ海峡の封鎖には至らないでしょうが。

 

 あれだけ結束の固かった「湾岸協力会議」が、現在はメンバーの一員であるカタールがサウジアラビアと断交しています。ジャーナリスト、ジャマル・カジョギ氏の殺害から明らかにされつつある、サウジアラビアの非民主主義・強権国家・恐怖政治体制が中東の秩序にどのような影響を生じさせるのでしょう。中東からも目を離せません。

 

【まだまだ沢山ある国際情勢の懸念】

 

 以上述べてきた以外にも多くの、国際情勢の懸念が多くあります。字数の関係もあり、上記に留めますが、ご興味をお持ちの方は、紹介本をお読みください。

 

 

 

   2019年は課題満積の年。PESTの動きから目を離すな(むすび)

 

 「日本の論点2019」から読み取れる特徴は、既述いたしました様に「国際情勢からくる懸念に基づくPESTの動きに注目」と言えるのではないでしょうか。

 

 経営に係る私達は、見通しと対応の難しい年にどう対処したらよいのでしょう。私見ですが、『スピーディーな「メタ(表に必ずしも現れない事態の原因となっている真の事実)」情報の収集、分析、仮説、検証、実行』をしていく事でしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントの本棚 バックナンバー ←クリック

 
 
 
 入会案内 ←クリック
 

【経営コンサルタントの育成と資格付与】
 
 
 
since 1951 特定非営利活動法人・日本経営士協会
 
 
 
 日本経営士協会は、戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本公認会計士協会と母体を同じくする、日本で最初にできた経営コンサルタント団体です。
 
 詳しくは、サイトでご覧下さい。 
 
 
 
    ↓ ↓  クリック
 

 
 日本最古の経営コンサルタント団体・日本経営士協会とは
 
 資格取得についてや入会の手続等
 
 コンサルタントへの依頼、講師捜しに関する情報
 
 コンサルタントとして成功するための各種情報
 
 経営や管理などに関する各種有益情報
 
 経営コンサルタントによるセミナー
 
 お問い合わせや入会・資格取得のお申し込み
 
 会員専用のID/パスワードが必要です